白い胴にコーヒーの名を並べ、赤い蓋をのせた台所のキャニスター ARABIA製
■詳細スペック
- メーカー:ARABIA
- デザイナー:Esteri Tomula / エステリ・トムラ
- 年代:1970年代
- 製造:1970年10月(底の刻印「10-70」)
- サイズ:1辺9.5cm 高さ13.3cm
■コンディション:★★★★☆(4.5:極美品)
未使用品です。経年による色の変化がわずかに見られますが、良い状態です。密閉型の容器ではなく、フタは上に置くだけの作りで、元からの仕様としてかなりの遊びがあります。
■商品解説
ARABIAには、シリーズ名で語られる食器とは別に、台所で使われた保存容器の系統があります。カネル(Kanel=シナモン)やカフェ(Kaffe=コーヒー)のように、中身の名前を器そのものに記したスパイスジャーやキャニスターがその代表で、当店でも定番として扱ってきました。本品は、その系統に連なるコーヒーのためのキャニスターです。
中身の名を器の正面に大きく記す意匠は、台所の棚に器を並べて使う暮らしから生まれたものです。蓋を開けずに中身がわかり、同じ形の容器を並べても取り違えない。香辛料やコーヒーを量り置きしていた当時の台所で、文字はそのまま道具の機能を担っていました。
胴は白、文字は黒、蓋は赤という三色だけで構成されています。並ぶのはコーヒーを意味する六つの語で、上からフランス語のカフェ(CAFÉ)、フィンランド語のカハヴィ(KAHVI)、スウェーデン語のカッフェ(KAFFE)、ロシア語のコーフェ(КОФЕ)、英語のコーヒー(COFFEE)、ドイツ語のカフェー(kaffee)です。
ひとつの言語で足りるところを複数の語で重ねたのは、国を越えて通じる器として考えられたためです。花や果実を描いた同時代のARABIAの絵柄とは発想が異なり、文字そのものを図案の主役に据えた、グラフィックデザインに近い一品です。赤い蓋は、黒い文字が整列する白い胴に対して唯一の色面として効いています。
ARABIA — フィンランドが世界に誇る陶磁器の名窯

1873年、スウェーデンのロールストランド社がヘルシンキに設立した分工場がARABIAの始まりです。当初はロシア帝国向けの陶磁器を生産していましたが、1916年にフィンランド資本の企業となり、20世紀半ばにはフィンランド最大の陶磁器メーカーへと成長しました。

黄金時代を築いたデザイナーたち
カイ・フランク(1911–1989)は「フィンランドデザインの良心」と呼ばれ、キルタ(後のティーマ)やカルティオなど、無駄を削ぎ落とした機能美の名作を生み出しました。
ウラ・プロコッペ(1921–1968)は、コバルトブルーの手描きが美しいバレンシア(1960–2002年)と、鉄粉を施した独特の土色が魅力のルスカ(1960年代–1999年)を手がけました。ルスカの粗い表面は日本の楽焼に似た風合いで、北欧と日本の美意識の近さを感じさせます。

このほか、ビルガー・カイピアイネン(1915–1988)は「装飾の王」と呼ばれ、名作パラティッシをはじめ華やかな装飾陶芸を制作。エステリ・トムラはフローラシリーズの植物画で知られ、ライヤ・ウオシッキネンも数多くの装飾パターンを手がけました。
ヴィンテージの見分け方 — バックスタンプ(刻印)ガイド

- 1874〜1930年頃:素地への型押し(インプレスト)が主流。1878年以降はフィンランドの紋章入りカラーマークも併用。
- 1932〜1949年:クルト・エクホルムがデザインした「パイプスタンプ」。工場に導入されたトンネル窯を表現したデザイン。
- 1949〜2014年:クラウンマーク(王冠)。1964年、1971年、1975年、1981年、2014年に更新。
- 生産年の読み方:1940年代以降は月→年の順で数字が刻印。2等品にはローマ数字IIや色付きドットが付されます。
- 2016年以降:ヘルシンキ工場は2016年3月に閉鎖され、現在はタイとルーマニアで生産。ヴィンテージ品はすべてフィンランド製で、「MADE IN FINLAND」の刻印があります。









