アラビアの刻印(バックスタンプ)年代別完全ガイド——裏面の印で製造年代を読み解く
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アラビア(ARABIA)のヴィンテージ食器を手にしたとき、まず気になるのが裏面の刻印(バックスタンプ)です。1873年の創業から現在まで、アラビアは26種以上のバックスタンプを使用してきました。この刻印を読み解くことで、製造年代を正確に絞り込むことができます。
バックスタンプとは
バックスタンプとは、食器の裏面(底面)に印刷・刻印されたメーカーのロゴや製造情報のことです。ブランド名、製造国、デザイナー名、パターン名、そして時には製造年を示す記号が含まれています。アラビアの場合、1873年の創業以来、時代ごとにロゴデザインが変化しており、その変遷を把握することで製造年代をかなり正確に絞り込むことができます。
刻印の種類——マッサレイマとヴァリレイマ
アラビアのバックスタンプには、大きく分けて2種類の技法があります。
- マッサレイマ(massaleima / 型押し刻印)——素焼き段階で素地に直接押し込む刻印。凹凸として残るため、釉薬をかけた後もうっすらと確認できます。最も初期から使われた技法です。
「ARABIA SUOMI FINLANDIA」の型押し
- ヴァリレイマ(värileima / 色刻印)——インクで印刷されるカラースタンプ。鮮明で読み取りやすいのが特徴です。緑、黒、茶、青など時代や用途によって色が異なります。
(当店取扱 She-Fo デミタスC&S)
(当店取扱 エミリア スクエアプレート)
同じ製品にマッサレイマとヴァリレイマの両方が押されていることもあります。この場合、マッサレイマが製造元を、ヴァリレイマがブランドや品質情報を示していることが多いです。
アラビアのロゴ変遷——年代順に解説
以下に、アラビアが1873年の創業から現在まで使用してきたバックスタンプを年代順に紹介します。
※年代の重複があるのは、複数のマークが同時期に併用されていたためです。用途(一般食器/装飾品/輸出向け)によって異なるマークが使い分けられていました。
1874〜1890年代——創業期の刻印
アラビアは1873年にスウェーデンのロールストランド社のフィンランド子会社として設立され、1874年に生産を開始しました。創業期のマークには「ARABIA」の文字と、さまざまな装飾的デザインが用いられています。現存数が極めて少なく、コレクター市場でも稀少な品です。
右端の刻印は1874年から1930年頃まで長期間にわたって使用された基本マークです。円形の枠に「ARABIA」の文字を配したシンプルなデザインで、初期のマークの中で最も長期間にわたって使われました。
1878〜1910年——帝政ロシア時代
フィンランドは1809年から1917年の独立まで、ロシア帝国の自治大公国でした。独自の法律や通貨を維持しつつも、ロシアとの経済的つながりが強く、アラビアの生産量の約3分の1がロシア市場向けでした。この時代のマークには、フィンランド国内向けとロシア向け輸出で異なるバリエーションが存在します。
1889〜1920年——世紀転換期のバリエーション
19世紀末から20世紀初頭にかけて、アラビアは急速に成長し、製品ラインも多様化しました。この時期には用途別・グレード別に多くのバックスタンプが併用されており、バリエーションが最も豊富な時代です。装飾品、一般食器、業務用など、カテゴリーごとに異なるマークが使われていました。
この時代のマークを見分ける際は、文字の書体やフレームのデザイン、使用されている色に注目してください。同じ年代でも複数のバリエーションが存在するのは、工場内の異なる部門で別々のスタンプが使われていたためです。
1917〜1927年——独立後初期
1916年にアラビアはロールストランド社から完全に独立し、翌1917年にはフィンランド自体がロシアから独立を果たしました。名実ともにフィンランドの窯として新たなスタートを切った時期です。この時代のマークはフィンランド語で「トルニレイマ(tornileima)」すなわち「塔マーク」と呼ばれ、回転窯(ロータリーキルン)の塔を様式化したデザインが特徴です。
1928〜1932年——過渡期
1920年代後半、アラビアは新しいロゴデザインへの移行期を迎えました。この時期のマークは短期間しか使われなかったため、比較的珍しいものです。
1932〜1949年——ピイップレイマ(煙突マーク)
1932年、アラビアはそれまでの多様なマークを統一し、工場のシルエットを描いた新しいロゴを導入しました。フィンランド語で「ピイップレイマ(piippuleima)」、すなわち「煙突マーク」または「パイプマーク」と呼ばれるこのデザインは、クルト・エクホルム(Kurt Ekholm)がデザインしたもので、当時導入されたばかりの新しいトンネル窯を様式化して描いています。「ARABIA」に加え「Suomi Finland(フィンランド)」の表記が入ります。
足元に描かれた斜めの構造物は工場の建物ではなく、1929年に稼働を開始した「トンネル窯」——全長約112メートル、当時世界最長——のシルエットです。この時代のヴィンテージは日本市場では稀少で、コレクター垂涎の品です。
1949〜1964年——クルーヌレイマ(王冠マーク)
1949年、アラビアは新しいロゴに移行しました。フィンランド語で「クルーヌレイマ(kruunuleima)」すなわち「王冠マーク」と呼ばれるこのデザインは、それ以前の塔マーク(tornileima)や過渡期マーク(APA/AAA)に描かれていた回転窯の縁飾り(kranssi)を上下反転させたもので、王冠のようなシルエットが特徴です。
この時代は、カイ・フランク、ウラ・プロコッペ、ライヤ・ウオシッキネンなどの名デザイナーが活躍した黄金期と重なります。
この時代は国内向けと輸出向けで別々のマークが使い分けられていました。国内向け (左) は王冠シンボルと「ARABIA」のテキストのみ、輸出向け (右) は「ARABIA」に加えて「MADE IN FINLAND」の表記が入ります。王冠のデザイン自体はどちらも同じです。
1964〜1971年——王冠マークの統一
1964年、それまで国内向けと輸出向けで別々だったマークが一つに統一されました。王冠のデザイン自体は1949年版と同じですが、すべての製品に「ARABIA MADE IN FINLAND」の表記が入るようになりました。この時期にはビルガー・カイピアイネンのパラティッシが誕生し(1969年)、アラビアの歴史の中でも特に重要な作品が数多く生まれました。
1971〜1975年頃——ヴァルチラ表記の追加
この時期、バックスタンプに親会社ヴァルチラ(Wärtsilä)の社名が加わり、「ARABIA WÄRTSILÄ FINLAND」という表記が一般的になりました。ヴァルチラは1947年にアラビアを買収していましたが、バックスタンプに社名が広く使われるようになったのは1971年頃からです。ただし、それ以前にも一部の製品——たとえば1968年製のパラティッシ試作品——にヴァルチラのロゴが確認されており、移行は段階的に進んだと考えられます。王冠のシンボルは引き続き使用されています。
当店ではこの時代のアラビア製品を多数取り扱っており、実物のバックスタンプを確認いただけます。
1975〜1981年——ヴァルチラ表記の削除
1975年、バックスタンプからヴァルチラの社名が外され、「ARABIA FINLAND」のシンプルな表記に戻りました。王冠のシンボルは引き続き使用されています。この時代のマークは流通量が多く、日本のヴィンテージ市場でも最も多く見かけるバックスタンプの一つです。
1982年以降——現行マーク
1981/1982年頃に導入された現行マークでは、「FINLAND」の文字が従来よりも明らかに大きくなっています。王冠のシンボルと「ARABIA FINLAND」という構成は1975年版を踏襲していますが、文字のバランスが変わり、「FINLAND」がブランド名と同等の存在感を持つデザインになりました。
その後アラビアは、1990年にハックマン(Hackman)グループ、2004年にイッタラグループ、2007年にフィスカース(Fiskars)グループへと統合されていきます。2000年代に入ると一部の製品がタイ工場で生産されるようになり、「MADE IN THAILAND」の表記が見られるものもあります。フィンランド製ヴィンテージとの区別には、この国名表記が重要な手がかりとなります。
2014年、生産拠点が国外に移転したことをきっかけに、王冠マークが廃止され、「ARABIA 1873」というテキストのみの新しいロゴに変更されました。創業年の「1873」を冠したシンプルなデザインで、現在もこのロゴが使われています。
ロゴの変遷一覧——1873年から現在まで
以下に、アラビアの主要なバックスタンプを時系列で並べました。王冠マーク以降(1949年〜)は王冠のデザイン自体はほぼ変わらず、テキスト部分の変化で年代を判別できます。
塔マーク
過渡期
煙突マーク
王冠(国内)
王冠(輸出)
統一マーク
Wärtsilä期
現行ロゴ
年代刻印(数字)の読み方
1899年頃から1974年頃まで使用された年月刻印は、ヴィンテージ品の年代を最も正確に特定できる手がかりです。1940年代にフォーマットが変更され、それ以降の刻印の形式は概ね以下の通りです。
- 「8-63」→ 1963年8月製(月+年の下2桁)
- 「55」のみ → 1955年製(月が省略される場合もある)
この数字刻印はロゴマークとは別の場所(パターン名やデザイナーイニシャルの近く)に押されていることが多く、虫眼鏡を使って確認するのがおすすめです。1974年頃以降は年月刻印が徐々に省略されるようになり、ロゴの形状による年代特定がより重要になります。
年代特定のコツ——4つのステップ
アラビアのヴィンテージ食器の年代を特定するには、以下の手順で複数の手がかりを組み合わせるのが効果的です。
- ロゴの形状で大まかな年代を判断——上記のロゴ変遷一覧と照合し、まず大きな年代区分を絞り込みます。
- 年月の数字刻印を確認——「8-63」形式の数字があれば、製造年月を特定できます(1940年代〜1974年頃の製品)。
- パターン名・デザイナーイニシャルを確認——バックスタンプの周辺に記されたパターン名やイニシャルから、具体的なシリーズを特定できます。
- 製造国表記を確認——「MADE IN FINLAND」はフィンランド製、「MADE IN THAILAND」はタイ製(2000年代以降)です。
不明な刻印があれば、お気軽にお問い合わせください。当店スタッフがお答えいたします。
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