
和洋を選ばない桜色のサンゴ礁 手描きが生む一枚ごとの表情
フィンランドを代表するアラビアの《コラーリ》20cmプレートです。コラーリは「サンゴ礁」を意味し、桜の花びらを想わせるピンクサンゴの意匠が、白地の上で軽やかに踊るように配されています。穏やかなピンクと落ち着いたブラウンのコントラストがやさしく空間になじみ、光の加減で色の深みがふっと変わるのも魅力です。装飾は手描きならではの筆致や濃淡に個体差があり、一枚ごとに表情が異なります。和洋どちらのインテリアにもなじむ、汎用性の高いデザインです。
デコレーションは《エミリア》《カレワラ》で知られるライヤ・ウオシッキネン。ウオシッキネンは一九八六年にアラビアを退いており、1983年に発表されたコラーリは晩年を飾る仕事のひとつです。フォルムは《ルスカ》や《バレンシア》で名高いウラ・プロコッペによる「Sモデル」を継承しています。1960年代に確立されたこの標準フォルムは、その後も装飾を替えて多くの名作に受け継がれました。「同じ」を意味するフィンランド語の“サマ”に由来して「エスモデル」と呼ばれたと伝えられるとおり、没後も20年近く評価され続けた普遍性の高い形です。
ピンクサンゴは本来、北欧では見られない南方の海のモチーフです。ウオシッキネンは《エミリア》でアメリカの街並みを描くなど、しばしば北欧の外の世界を軽やかに取り入れました。地域性に縛られない自由な想像力を、北欧らしい節度と実用性の上に咲かせた——コラーリは、まさにその姿勢を体現したシリーズと言えます。
ARABIA — フィンランドが世界に誇る陶磁器の名窯

1873年、スウェーデンのロールストランド社がヘルシンキに設立した分工場がARABIAの始まりです。当初はロシア帝国向けの陶磁器を生産していましたが、1917年のフィンランド独立後に完全なフィンランド企業となり、20世紀半ばにはフィンランド最大の陶磁器メーカーへと成長しました。

黄金時代を築いたデザイナーたち
カイ・フランク(1911–1989)は「フィンランドデザインの良心」と呼ばれ、キルタ(後のティーマ)やカルティオなど、無駄を削ぎ落とした機能美の名作を生み出しました。1949年にはARABIAのクラウンマーク(王冠のバックスタンプ)もデザインしています。
ウラ・プロコッペ(1921–1968)は、コバルトブルーの手描きが美しいバレンシア(1960–2002年)と、鉄粉を施した独特の土色が魅力のルスカ(1960年代–1999年)を手がけました。ルスカの粗い表面は日本の楽焼に似た風合いで、北欧と日本の美意識の近さを感じさせます。

このほか、ビルガー・カイピアイネン(1915–1988)は「装飾の王」と呼ばれ、名作パラティッシをはじめ華やかな装飾陶芸を制作。エステリ・トムラはフローラシリーズの植物画で知られ、ライヤ・ウオシッキネンも数多くの装飾パターンを手がけました。
ヴィンテージの見分け方 — バックスタンプ(刻印)ガイド

- 1874〜1930年頃:素地への型押し(インプレスト)が主流。1878年以降はフィンランドの紋章入りカラーマークも併用。
- 1932〜1949年:クルト・エクホルムがデザインした「パイプスタンプ」。工場に導入された122mのトンネル窯を表現したデザイン。
- 1949年〜現在:カイ・フランクがデザインしたクラウンマーク(王冠)。月桂樹の輪を逆さにして王冠に見立てた斬新なデザイン。1964年、1971年、1975年、1981年、2014年に更新。
- 生産年の読み方:1940年代以降は月→年の順で数字が刻印。2等品にはローマ数字IIや色付きドットが付されます。
- 2016年以降:ヘルシンキ工場は2016年3月に閉鎖され、現在はタイとルーマニアで生産。ヴィンテージ品はすべてフィンランド製で、「MADE IN FINLAND」の刻印があります。
■詳細スペック
- メーカー:ARABIA / アラビア
- パターンデザイン:Raija Uosikkinen / ライヤ・ウオシッキネン
- シリーズ名:Koralli / コラーリ
- 年代:1983〜1987年
- 生産国:フィンランド
- サイズ:直径20cm 高さ2cm
■コンディション:★★★★☆(4.5:極美品)
中央付近は光に透かすとごくわずかなスレが見られます。割れや欠けはなくオリジナルのツヤを留めた極美品のヴィンテージとなります。


