ARABIA パラティッシのヴィンテージ オーバルプレート

北欧食器の「廃盤」とは|シリーズが姿を消す理由と、生産終了を見分ける手がかり

北欧食器タックショミュッケ編集部

この記事でわかること

  • 「廃盤」という言葉のほんとうの意味と、食器での正しい呼び方(生産終了・廃番)
  • 北欧食器のシリーズが姿を消してきた、いくつかの背景
  • ロールストランド・ARABIA・グスタフスベリ、三つの窯がたどった本国の大規模生産の終わり
  • あるシリーズが生産終了しているかどうかを確かめる手がかり
  • 「廃盤」と「復刻」の違いと、生産を終えた器との出会い方

「イッタラのあのシリーズは廃盤になったのだろうか」「ロールストランドのシルビアは、もう手に入らないのか」——北欧食器を集めていると、こうした問いにたびたび出会います。ヴィンテージ食器の世界は、生産を終えたシリーズの上に成り立っています。だからこそ「廃盤」という言葉は、価値や希少性、そして復刻をめぐる話題と分かちがたく結びついています。

この記事では、まず「廃盤」という言葉そのものを整理し、北欧食器のシリーズがなぜ生産を終えてきたのか、その背景を三つの窯の歩みとともにたどります。そのうえで、気になるシリーズが生産終了しているかどうかを確かめる手がかりと、「廃盤」と「復刻」の違いをまとめます。読み進めるほどに、スウェーデンやフィンランドの工場のある街並みへと、少しずつ足を延ばしていくような構成にしました。

ロールストランド博物館の展示室に並ぶ大型の装飾陶器
リードヒェーピングのロールストランド博物館。本国生産を終えた窯の跡地に、歴代の装飾作品が並ぶ展示室。写真: Majjaw / Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0

目次

  1. そもそも「廃盤」とは——レコードの言葉が食器に使われるまで
  2. 北欧食器のシリーズは、なぜ姿を消すのか
  3. 本国の大規模生産の終わり——三つの窯がたどった道
  4. 生産終了かどうかを確かめる手がかり
  5. 「廃盤」と「復刻」は別物——一度消えて甦るシリーズ
  6. 生産を終えた器との出会い方

1. そもそも「廃盤」とは——レコードの言葉が食器に使われるまで

意外に思われるかもしれませんが、「廃盤(はいばん)」はもともと食器の言葉ではありません。国語辞典は「廃盤」を、製造を中止したレコード盤のことと説明しています(デジタル大辞泉ほか)。文字どおり、円盤状の「盤」——レコードやCD、DVDといった音楽・映像メディアの製造・販売が終わった状態を指す言葉でした。

では、品番のついた工業製品や食器の生産終了は何と呼ぶのでしょうか。慣用的には「廃番(はいばん)」が使われます。品番を台帳から外して製造・販売を終える、という意味です。「廃盤」と「廃番」は同じ読みで、対象こそ違うものの意味が近く、実際にはしばしば混同して使われます。本来レコードのための「廃盤」が、食器やガラスの生産終了にもそのまま当てはめられてきたわけです。なお書籍の場合は、印刷のもととなる版を絶やす「絶版(ぜっぱん)」という別の言葉があります。

メーカー自身は、俗な言い回しよりも「生産終了(品)」といった表現を用いることがあります。国内の食器メーカーでも、生産を終えた品番を「生産終了品」としてアウトレットの区分で案内する例が見られます。呼称はメーカーによって幅がありますが、この記事では、検索でよく使われる「廃盤」という言葉を入り口にしつつ、意味としては「生産終了」を指すものとして読み進めていただければと思います。

廃盤・生産終了・現行品・復刻——言葉の地図

言葉 本来の対象 意味あい
廃盤 レコード・CD・DVD 製造を中止したメディア。食器には転用された言い方
廃番 品番のある工業製品・食器 品番を外して生産・販売を終えること
生産終了 製品全般(メーカー公式) 追加の生産を止めた状態。もっとも中立的な表現
絶版 書籍・出版物 版を絶やし、増刷ができなくなること
現行品 製品全般 いまも製造・販売が続いている製品。廃番の対義語
復刻/再発売 製品全般 生産を終えた製品を、後年に正規メーカーが改めて製造・発売すること

この地図が頭にあると、後半の「廃盤と復刻の違い」がすっきり整理できます。ここでいったん、なぜシリーズが生産を終えるのか、その背景に目を向けてみましょう。

2. 北欧食器のシリーズは、なぜ姿を消すのか

ひとつのシリーズが生産を終える理由は、ひとつではありません。北欧食器の歩みを追っていくと、いくつかの背景が繰り返し現れます。

解体の途中にあるグスタフスベリの旧工場建屋
2015年、グスタフスベリの旧工場建屋の解体の様子。生産体制の移り変わりを物語る一場面。写真: Holger.Ellgaard / Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0

本国の高い人件費と、生産の国外移管

もっとも大きな背景が、本国での量産採算です。スウェーデンやフィンランドは人件費が高く、日常食器を国内で量産し続けることが年々むずかしくなりました。その結果、多くの窯が生産の一部または全部を人件費の低い国へ移し、本国の工場を閉じていきます。本国製の日常食器そのものが姿を消し、往時のシリーズが「ヴィンテージ」として市場に残る——この構図が、北欧食器の廃盤の中心にあります。

企業の買収・統合による整理

20世紀後半以降、北欧の窯は買収と統合の波を経験します。1990年にはイッタラを含むグループがハックマンの傘下に入り、2007年にはフィスカース(Fiskars)がイッタラ・グループを取得しました。こうしてロールストランド、ARABIA、イッタラといった名前が同じグループのもとに集まると、重なり合う製品ラインが整理され、シリーズの統廃合が進みます。ブランドをまたいだ「選択と集中」が、いくつものシリーズの生産終了につながりました。

工場そのものの閉鎖

生産拠点だった工場が閉じれば、そこで焼かれていたシリーズは終わりを迎えます。次の章で見るように、ロールストランドのリードヒェーピング、ARABIAのヘルシンキ、グスタフスベリの各工場は、それぞれの時期に日常食器の生産を終えました。工場の煙突が沈黙することは、そのまま多くのシリーズの生産終了を意味しました。

デザイナーの時代の区切りと、流行の移り変わり

デザイナーが窯を離れ、あるいは一つの時代が区切りを迎えると、その手による人気シリーズも役目を終えていきます。加えて、暮らしの好みや色の流行は時とともに移ります。ある時代を象徴した図柄が、次の時代には作られなくなる——これも自然な生産終了の姿です。もっとも、生産終了は必ずしも希少や値上がりを意味しません。流通量の多かったシリーズは、生産を終えたあとも数多く残ります。この点は最後の章で改めて触れます。

3. 本国の大規模生産の終わり——三つの窯がたどった道

ここからは、スウェーデンとフィンランドを代表する三つの窯が、どのように本国での生産を終えたのかをたどります。工場のある街の風景とともに、北欧を少し旅してみましょう。

ロールストランド——リードヒェーピングの2005年

ロールストランド(Rörstrand)は1726年、ストックホルムで創業した、ヨーロッパでも有数の歴史をもつ窯です。約200年続いたストックホルムの工場は1926年に閉鎖・取り壊され、生産はやがてスウェーデン西部の街、リードヒェーピング(Lidköping)へと移っていきました。1932年に現地のリードヒェーピング磁器工場と合併し、1936年から段階的に生産をこの地へ集約します。

ヴェーネルン湖に近いリードヒェーピングの公園と教会の尖塔
ロールストランドの本国生産が続いた街、リードヒェーピングの公園。写真: AleWi / Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0

そのリードヒェーピングの工場が閉じたのが、2005年12月30日でした。1726年の創業以来、約280年にわたるスウェーデンでの生産に、ここで幕が下ろされます。ブランドはその後フィスカース・グループのもとで受け継がれましたが、スウェーデン本国で焼かれた日常食器は、この日をもって過去のものとなりました。だからこそ、シルビア(Sylvia)やアネモン(Anemon)、プリムール(Primeur)といったシリーズは、本国製ヴィンテージとして今も静かに探し求められています。

すみれを描いたロールストランド シルビアのカップとソーサー、ケーキ皿
ロールストランド シルビア(Sylvia)。シルヴィア・レウショヴィウスが手がけた、すみれ(ビオラ)の柄。本国生産を終えたスウェーデンの名作のひとつ。
茶色の花を描いたロールストランド アネモンのカップとソーサー
ロールストランド アネモン(Anemon)。落ち着いた褐色の花を並べた、1970年代を思わせる柄。

閉鎖後の生産をどの国へ移したのかについては、資料によって記述が分かれます。跡地は「ロールストランド・センター」として生まれ変わり、ロールストランド博物館を含む施設群が入りました。窯の記憶は、街の一角に受け継がれています。ロールストランドの歩みは、ロールストランド(Rörstrand)入門でも詳しく紹介しています。

ARABIA——ヘルシンキ・アラビアランタの2016年

フィンランドを代表する窯ARABIA(アラビア)は、1873年にスウェーデンのロールストランドの子会社として、ヘルシンキのトゥーコラ(のちにアラビアランタと呼ばれる一帯)に設立されました。翌1874年に生産を始め、その後フィンランド資本へと移り、ヴァルチラ、ハックマンを経て、2007年以降はフィスカースの傘下に入ります。街のシンボルとなった、壁面に「ARABIA」の文字を刻む工場ビルは、長くこの窯の象徴でした。

壁面に縦書きでARABIAと記されたヘルシンキのアラビア工場ビルと煙突
ヘルシンキ・アラビアランタに建つ、ARABIAの文字を刻んだ工場ビル。写真: Markus Koljonen / Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0

2015年9月、フィスカースはヘルシンキの窯業工場での陶磁器生産を2016年中に国外のパートナー網へ移す計画を発表しました。そして2016年、アラビアランタでの陶磁器生産は終わりを迎えます。以後の製品は、タイやルーマニアで作られるようになりました。フィンランド本国で焼かれたARABIAの食器は、ここで一区切りを迎えたことになります。クロッカス(Krokus)やパラティッシ(Paratiisi)といった本国期のシリーズが、ヴィンテージとして親しまれ続けている理由のひとつが、この生産地の変化にあります。ARABIAの価値の背景は、アラビア(ARABIA)食器はなぜ高い?でも掘り下げています。

黒い線で草花を描いたARABIA クロッカスの17cmプレート
ARABIA クロッカス(Krokus)17cmプレート。エステリ・トムラによる黒い線描の草花。フィンランド本国期を代表する図柄のひとつ。

グスタフスベリ——1993年の工場閉鎖

スウェーデン、ストックホルム近郊のヴェルムドー島にあるグスタフスベリ(Gustavsberg)は、スティグ・リンドベリやリサ・ラーソンを擁した、北欧デザインの一大拠点でした。港沿いに広がる工場地区は、20世紀の黄金期に多くの名作を生み出します。しかし、その大規模な家庭用磁器工場は1993年に閉鎖されました。

1946年、森と入り江に囲まれたグスタフスベリの工場群を上空から捉えた白黒写真
1946年のグスタフスベリの工場群。ヴェルムドーの入り江に沿って、のこぎり屋根の建屋が広がる。写真: Sune Sundahl / Wikimedia Commons, CC0

工場が閉じたあとも、グスタフスベリという名は受け継がれ、この地での制作は続いています。現在のグスタフスベリ製陶所(Gustavsbergs Porslinsfabrik)は、いまも同じ土地で磁器と炻器を作っており、ベルサも2005年から現地で再生産されています。けれど、往時の量産体制で焼かれた日常食器の多くは、ここで生産を終えました。100年以上前のアンティークにあたるヴェクショー(Wexiö)から、1960年代のベルサ(Berså)まで、この窯のヴィンテージは幅広い時代にまたがっています。グスタフスベリの全体像は、グスタフスベリはなぜ高い?もあわせてご覧ください。

鳥と草花を写した、金の縁取りのあるグスタフスベリ ヴェクショーの深皿
グスタフスベリ ヴェクショー(Wexiö)の深皿。19世紀末から作られた、鳥と草花のアンティーク。生産を終えてから、すでに1世紀近い時が流れている。
ボートが並ぶグスタフスベリの港と、対岸の給水塔・教会
現在のグスタフスベリの港。窯の街は、水辺の穏やかな景色の中にある。写真: Holger.Ellgaard / Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0

4. 生産終了かどうかを確かめる手がかり

「このシリーズは、いま作られているのか、それとも生産を終えたのか」。気になったとき、推測に頼らずに確かめる手がかりがいくつかあります。

手がかり1:メーカーの現行カタログを見る

もっとも確実なのは、正規メーカーの公式サイトで現在のラインナップを確認し、あわせて生産終了品の案内や公式発表を調べることです。公式サイトに掲載されていないことだけでは生産終了とは断定できませんが、イッタラのように生産終了品を公式に一覧で案内しているメーカーもあります。実際、イッタラは今も定期的に品目を整理しており、2024年には長く親しまれたカルティオやティーマの一部の色・サイズなどが生産終了となりました。生産終了は過去の話ではなく、いまも続いている動きなのです。

ヘルシンキの街角にあるイッタラの店舗の外観とロゴ
ヘルシンキのイッタラ直営店。現行品かどうかは、こうした公式の売り場や公式サイトで確かめられる。写真: Stefano Vigorelli / Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0

手がかり2:裏面のバックスタンプ(刻印)で製造時期を読む

器の裏面にあるバックスタンプ(刻印)は、その一枚が作られた時期を知る手がかりになります。刻印の意匠は時代とともに変わるため、「この刻印はいつ頃のものか」がわかれば、本国製の古い個体なのか、比較的新しいものなのかをおおまかに見分けられます。たとえば本国生産を終えた窯であれば、その終了時期より前の刻印をもつ個体は、本国期に焼かれたものと考えられます。刻印の読み方は北欧食器のバックスタンプ総合ガイド、ブランド別ではロールストランドの刻印グスタフスベリの年代の見分け方で詳しく解説しています。

白地に青で草花と「SKÅNE」の文字、ロールストランドの筆記体を記したバックスタンプ
ロールストランドのバックスタンプ(スコーネ柄)。裏印の意匠は、製造時期を読み解く手がかりになる。写真: Eskil Malmberg / Wikimedia Commons, CC BY 4.0

手がかり3:復刻版があるかどうかを確かめる

生産を終えたと思っていたシリーズが、実は正規メーカーの手で復刻されている場合があります。そのため「オリジナルは生産終了だが、復刻版は現行品」という二重の状態が生まれます。あるシリーズについて調べるときは、オリジナルの生産終了時期に加えて、その後に復刻版が登場していないかもあわせて確かめると、全体像がはっきりします。白い縁取りの線だけをまとったプリムール(Primeur)のように、清楚な佇まいゆえに時代を超えて探される本国製シリーズもあります。

白磁に細いオレンジの縁取りだけを施したロールストランド プリムールのデミタスカップとソーサー
ロールストランド プリムール(Primeur)のデミタスカップとソーサー。シグネ・ペション=メリンによる、細い縁取りだけの白い磁器。

5. 「廃盤」と「復刻」は別物——一度消えて甦るシリーズ

ここで大切なのが、「復刻品はオリジナルのヴィンテージとは別個の、現行で新たに作られた製品だ」という点です。同じ名前・同じ図柄でも、生産を終えた当時の一枚と、後年に作り直された一枚は、由来も年代も異なります。北欧食器には、一度生産を終えたのちに甦ったシリーズがいくつもあります。

スティグ・リンドベリの名で発表されたベルサ(Berså)は、1961年に登場し、1974年に生産を終えました。その後、2000年代なかば以降に復刻され、緑の葉の連なりがふたたび作られるようになります。オイヴァ・トイッカのカステヘルミ(Kastehelmi)も、1964年の発表後にいったん製造を中止し、2010年に復刻された一例です。こうしたシリーズでは、生産を終えた当時のヴィンテージと、現行の復刻版が市場に併存しています。

白地に緑の葉を並べたグスタフスベリ ベルサの角皿
グスタフスベリ ベルサ(Berså)の角皿。1961年に登場し、1974年にいったん生産を終え、のちに復刻された緑の葉の柄。

ARABIAのパラティッシ(Paratiisi)は、ビルガー・カイピアイネンの手による豊かな果実と花の図柄で知られ、こちらも復刻を経て親しまれてきたシリーズです。飾って眺めるためにデザインされたかのような装飾性は、壁やスタンドに立てて味わうのにふさわしい存在感があります。

黄色い果実と青い花、黒い実を描いたARABIA パラティッシのオーバルプレートをスタンドに立てて窓辺に飾った様子
ARABIA パラティッシ(Paratiisi)1971年製のオーバルプレート。果実と花の装飾を、窓辺のスタンドに立てて。

ヴィンテージと復刻版を見分ける具体的なポイントは、北欧ヴィンテージと復刻版(再発売)の見分け方にまとめています。クロッカスやカステヘルミといった個別シリーズについては、クロッカスカステヘルミのガイドもご参照ください。

6. 生産を終えた器との出会い方

本国での生産を終えたシリーズは、新品として棚に並ぶことはありません。その代わり、かつて各家庭や市場に渡った器が、ヴィンテージとして人の手から手へと巡り、いまも北欧から日本へと届いています。生産を終えたシリーズと出会う場は、ヴィンテージ市場に移っているのです。

眼鏡とパイプの男性が、青いガラスの器を光にかざして見つめている
イッタラのガラス工場でのタピオ・ヴィルカラ。北欧のガラスは、廃盤と復刻を繰り返しながら歴史を重ねてきた。写真: Herman Alfred Turja / Wikimedia Commons, CC BY 4.0

とりわけ北欧のガラスは、生産終了と復刻を繰り返してきた分野です。イッタラでは、キャンドルホルダーや器の多くが時期ごとに整理され、生産を終えていきました。手のひらにおさまる小さなガラスにも、作られた時代の空気が宿っています。

透明なガラスを丸くふくらませたイッタラ シルムのキャンドルホルダー
イッタラ シルム(Silmu)のキャンドルホルダー。「芽」を思わせる、まるく澄んだガラス。生産を終えたフィンランドのガラスのひとつ。
放射状のさざなみが刻まれた、タピオ・ヴィルカラのイッタラ ソラリスのガラス皿
イッタラ ソラリス(Solaris)のガラス皿。タピオ・ヴィルカラによる、放射状のさざなみを刻んだ透明ガラス。

視野を大手の窯の外に広げれば、コスタ・ボダ(Kosta Boda)のような作り手にも、生産を終えた愛らしいガラスの造形が残されています。北欧食器の「廃盤」をめぐる旅は、有名シリーズだけでなく、こうした小さな出会いにも広がっています。

透明なガラスで作られた、座ったカバの姿のコスタ・ボダのオブジェ
コスタ・ボダ(Kosta Boda)Zooのカバ。ベルティル・ヴァリーンによる、透明ガラスの動物。

ひとつ、心に留めておきたいことがあります。生産終了は、必ずしも希少や値上がりを意味するわけではありません。多く作られたシリーズは、生産を終えたあとも数多く残ります。相場が上がるのは一部にすぎず、「もう作られていない」という事実そのものが、そのまま価値を約束するわけではないのです。生産終了がなぜ価値の文脈で語られるのかは、ロールストランドはなぜ高い?イッタラ(iittala)はなぜ高い?で整理しています。イッタラの生産を終えたガラスの名作は、イッタラの廃盤シリーズ一覧にもまとめました。

時を経た器は、当時の造形や色をそのままに、暮らしの風景の中で静かな存在感を放ちます。手元に置くときの向き合い方は、北欧ヴィンテージ食器の保存と手入れもあわせてどうぞ。

まとめ

要点の整理

  • 「廃盤」は本来レコードの言葉で、食器の生産終了には「生産終了」「廃番」がより正確。メーカー公式は「生産終了」を用いる
  • 北欧食器のシリーズが姿を消す背景には、本国の高い人件費と生産移管、企業の買収・統合、工場の閉鎖、デザイナーの時代の区切りと流行の変化がある
  • ロールストランドは2005年にリードヒェーピング、ARABIAは2016年にヘルシンキで本国生産を終了。グスタフスベリでは1990年代に従来の大規模量産体制が終わったが、現在も現地で磁器生産が続いている
  • 生産終了かどうかは、現行カタログ・バックスタンプ・復刻の有無という三つの手がかりで確かめられる
  • 復刻品はヴィンテージとは別個の現行品。ベルサやカステヘルミのように、一度消えて甦ったシリーズもある
  • 生産終了は必ずしも希少や値上がりを意味しない。生産を終えた器との出会いは、ヴィンテージ市場に移っている

あわせて読みたい関連記事

関連商品をチェック

コラムに戻る