専門店の店主が推す、いちばん色の良い年代のパラティッシ
フィンランドのARABIA(アラビア)社が1971年に製造した、パラティッシ(Paratiisi)の21cmオーバルプレートです。ケーキ皿や取り皿にちょうどよい大きさで、楕円のかたちは食卓の上で場所を取らず、並べたときに柄の流れがよく見えます。フィンランド語で楽園を意味するこのシリーズは、1969年にビルガー・カイピアイネンがデザインしたものです。1972年には同名シリーズのモノクロ版もデザインされています。
店主が推す、いちばん色の良い年代
北欧食器の専門店として、はっきり申し上げます。パラティッシの頂点はこの年代の作品です。
理由は色にあります。1971年製の素地は乳白色のファイアンスで、シルクスクリーンで刷られた顔料が釉薬の下に沈み込んでいます。スミレの青は群青から薄紫までの階調を持ち、果実の黄は温かみのある卵色、黒い実には青い光が差し、葉のオリーブ色には細い線描がそのまま残っています。色が素地の白に溶け込み、絵柄が表面に浮いて見えません。手に取ると、印刷というより彩色に近い深みが感じ取れます。
1988年以降のフィンランド製は素地がヴィトロ磁器に変わり、下地が青白く硬質になったぶん、色は表面に載って見えます。現行のタイ製はさらに色が濃く均一で、白もくっきりしています。どちらも美しい器ですが、この柔らかな発色だけは、1970年代前半の素材と工程の組み合わせでしか生まれませんでした。当店がパラティッシの中でこの年代を選んで揃えている理由です。
裏面の刻印は王冠に「ARABIA WÄRTSILÄ FINLAND paratiisi」、その下にフィンランド語・スウェーデン語・英語で食洗機対応の表記が入る、1971〜74年の様式です。1969〜71年の年号入り初期ロゴとは別のものです。刻印の左側に葉が羽のように飛び出す裏面装飾も、この年代のパラティッシならではの見どころです。
「装飾の王」が生んだ楽園
パラティッシをデザインしたビルガー・カイピアイネン(1915-1988)は、フィンランドが誇る「装飾の王(Koristeiden kuningas)」。青年期にポリオを患い、ろくろが使えない身体でありながら、50年以上にわたりアラビア工場で装飾芸術に人生を捧げました。
ミニマリズムが席巻する北欧デザインの潮流に、彼は真っ向から抗いました。
「装飾性は人類最古の執着である。それを去勢すれば、人間は弱者になる。私は単調さと単純化が嫌いだ」
妻の死、スミレ、そして楽園へ
1966年、カイピアイネンは最愛の妻マッギを失います。彼女の棺をブルーのスミレで覆ったその日から、スミレは彼の生涯のモチーフとなりました。
「ショパンはスミレを愛した。私はショパンを愛する」
悲しみの中で生まれたのが、200万個のセラミックビーズで構成された40平方メートルの巨大壁画「オルヴォッキメリ(すみれの海)」。1967年モントリオール万博でグランプリを受賞しました。
このオルヴォッキメリの延長線上に、1969年、パラティッシは誕生します。元の名前は「タルハ(果樹園)」。ベルギー国王ボードワン夫妻がアラビア工場を訪問した際、完成したばかりのこのデザインに一目惚れ。ファビオラ王妃が自宅用に購入を希望し、「パラティッシ(楽園)」と名付けられました。
アラビア工場 — パラティッシが生まれた場所
ヴィンテージと現行品の違い
パラティッシの生産は1969年に始まり、1974年に一度中断。1988年に復活しましたが、その際に素材がファイアンス陶器からヴィトロ磁器に変わりました。さらに2016年にはフィンランド工場が閉鎖され、現在はタイで製造されています。カイピアイネン自身が工場にいた時代に作られたのは、1974年までの作品だけです。
パラティッシのバックスタンプ(ロゴ)の変遷
■詳細スペック
- メーカー:ARABIA / アラビア
- デザイナー:Birger Kaipiainen / ビルガー・カイピアイネン
- シリーズ名:Paratiisi / パラティッシ
- 素材:ファイアンス(陶器)
- 年代:1971〜74年
- 製造国:フィンランド
- サイズ:横幅21cm 高さ2.8cm
■コンディション:★★★★☆(4.5:極美品)【複数在庫品】
在庫のいずれも写真と同等の極美品です。光に透かして見るとわずかに薄いスレがある程度で、割れ、欠け、貫入、釉薬の剥がれはなく、色味も冴えています。価格は1枚あたりのものです。












