グスタフスベリ ベルサのスクエアプレート|緑の葉が三列に並ぶフリント陶器の北欧ヴィンテージ食器

長石陶器とは|フリント陶器(flintgods)とボーンチャイナの違いと、ヴィンテージのベルサの手触り

北欧食器タックショミュッケ編集部
グスタフスベリ ベルサのスクエアプレート|裏にフリント陶器の表示がある長石陶器の器
グスタフスベリのベルサ(Berså)のスクエアプレート。三本の枝に緑の葉が並ぶ

北欧ヴィンテージ食器の説明で、ときどき「長石陶器」という言葉を見かけます。長石陶器とは、長石や石英を含む白い素地を、磁器のようには焼き締め切らずに仕上げた陶器のことです。スウェーデンでは「フリント陶器(flintgods)」がこれにあたり、グスタフスベリ(Gustavsberg)の日用食器の素地として使われました。

この言葉がとくに気になるのは、スティグ・リンドベリ(Stig Lindberg)のベルサ(Berså)を手にしたときです。ヴィンテージのベルサと2005年に登場した復刻版は、手に取るとはっきり違います。裏をのぞくと「F555」とあるものも、「B555」とあるものもあります。この記事では、長石陶器という素地そのものと、ボーンチャイナとの手触りの違い、そして裏の文字から素材を見分ける方法をまとめます。

この記事でわかること

  • 長石陶器(フリント陶器)とはどんな素地か
  • ボーンチャイナとの違いと、手に取ったときの質感の差
  • 名前の似た長石磁器(フェルトスパット磁器)との区別
  • ヴィンテージのベルサの裏で、長石陶器とボーンチャイナを見分ける文字

目次

  1. 長石陶器とは——長石と石英を含む白い素地の陶器
  2. スウェーデンの長石陶器「フリント陶器(flintgods)」
  3. ボーンチャイナとの違い——素材と製法、そして手触り
  4. 長石磁器(フェルトスパット磁器)とは別物
  5. ヴィンテージのベルサは長石陶器とボーンチャイナの両方——裏の文字で見分ける
  6. まとめ

長石陶器とは——長石と石英を含む白い素地の陶器

やきものは、焼く温度と素地の焼き締まり方によって、陶器・磁器・炻器に分かれます。三つの一般的な違いは、北欧食器の素材ガイドで詳しく扱っています。ここでは、そのうちの陶器の中でも、白い素地をもつ長石陶器に絞って見ていきます。

長石陶器の白さを支えているのは、原料の顔ぶれです。白く焼き上がる粘土に、長石や石英といった鉱物を加えて素地をつくります。原料だけを見ると磁器と共通するところがありますが、長石陶器は磁器ほど高い温度で焼き締めず、素地がガラスのように溶け合う手前で仕上げます。白い陶器でありながら、磁器ではないという位置づけです。

正長石の結晶の塊|長石陶器の名前の由来になった鉱物
正長石の結晶。長石は白いやきものの素地に加えられる鉱物(写真: Didier Descouens, CC BY-SA 4.0)

原料——粘土・長石・石英

スウェーデンの資料が挙げる白い陶器の配合例には、カオリン、粘土、長石、石英が並びます。白い粘土だけでなく、長石と石英という二つの鉱物が素地の大切な一部になっています。長石陶器という呼び名は、この長石を含む素地からきています。

透明な石英の群晶|白い陶器の素地に加えられる鉱物
石英(水晶)の群晶。長石とともに素地に加えられる原料(写真: Didier Descouens, CC BY-SA 4.0)
白いカオリンの塊|白く焼き上がる粘土
カオリンの塊。白く焼き上がる粘土(写真: Shannon Heinle, CC0)

ファイアンスとの違い

白い陶器というと、グスタフスベリのファイアンス(fajans)を思い浮かべる方も多いでしょう。ファイアンスは、赤みのある土の素地に白い錫の釉薬をかけて、表面を白く見せる陶器です。白さは釉薬の層がつくっています。長石陶器は、素地そのものが白い陶器です。同じ「白い陶器」でも、白さのありかが違います。ファイアンスについてはファイアンスの解説記事で詳しく紹介しています。

スウェーデンの長石陶器「フリント陶器(flintgods)」

スウェーデン語で長石陶器にあたるのが、フリント陶器(flintgods/フリントゴッズ)です。名前のフリントは、火打ち石のことです。焼いたフリントを明るい色の粘土に混ぜて、素地を白くしたことからこの名で呼ばれます。もとは炻器から発展した陶磁器の一種ですが、炻器とは別の素地です。

スウェーデン南部スコーネ地方のフリント|火打ち石の割れ口
スウェーデン南部スコーネ地方のフリント(火打ち石)。灰色から黒の割れ口に、白い外皮が残る(写真: スウェーデン地質調査所 Anders Damberg, CC BY 2.0)

18世紀の半ばには焼成温度を下げる工夫が加わり、焼き締まり切らない軽い素地が生まれました。フリント陶器は「フリント磁器(flintporslin)」とも呼ばれましたが、本来の意味の磁器ではありません。美術館の英語の記録では、陶器(earthenware)やクリームウェア(creamware)と記されています。

ロールストランドの透かし彫りの縁をもつ白い皿|1820年ごろのフリント陶器
1820年ごろ、ロールストランドで作られた透かし縁の白い皿。所蔵館の記録では素材はフリント陶器。ヨーテボリ、レーシュスカ美術館所蔵(写真: Carl Ander, CC BY 4.0)

グスタフスベリとフリント陶器

スウェーデンでフリント陶器が本格的に広まったのは、1820年代にグスタフスベリの窯が開かれてからでした。当時は「普通の磁器(ordinärt porslin)」や「上等なファイアンス(finfajans)」とも呼ばれていました。グスタフスベリは1854年に品質を高めたフリント陶器を発売し、10年後の1864年にはボーンチャイナ(benporslin)の製造を始めます。19世紀の白い食器の量産については、素材ガイドの該当の節にまとめています。窯の歩み全体はグスタフスベリの総合ガイドをご覧ください。

ひとつの素地に、いくつもの呼び名

スウェーデンの古いカタログやオークションの記述を読むと、同じ素地がいくつもの名前で書かれていることに気づきます。次の呼び名は、いずれもフリント陶器を指しています。

  • flintgods(フリントゴッズ)――もっとも一般的な呼び名。VDNの表示ではF
  • flintporslin(フリント磁器)――「磁器」とつくが、本来の意味の磁器ではない
  • ordinärt porslin(普通の磁器)――19世紀のグスタフスベリで使われた呼び名
  • finfajans(上等なファイアンス)――同じく19世紀の呼び名。錫釉のファイアンスとは別の素地

名前に「磁器」や「ファイアンス」が入っていても、素材は長石陶器です。日本語で「長石陶器」「フリント陶器」と書かれている器も、これらと同じものを指しています。

1890年代のグスタフスベリの港と工場|帆船と窯の煙突
1890年代のグスタフスベリの港と工場。帆船の奥に煙突と窯が並ぶ(写真: 撮影者不詳、スウェーデン海事博物館所蔵, CC BY-SA 4.0)
1850年ごろのグスタフスベリ製の白い仕切り付き小皿|釉に貫入のあるフリント陶器
1850年ごろ、グスタフスベリで作られた白い仕切り付きの小皿。釉の表面に細かな貫入。スコークロステル城所蔵(写真: Jens Mohr, パブリックドメイン)
ヴェルムドーの群島に沈む夕日|グスタフスベリの町がある島
ストックホルムの東、ヴェルムドーの群島に沈む夕日。グスタフスベリの町がある島(写真: Arunima Rosenblad, CC BY-SA 4.0)

ボーンチャイナとの違い——素材と製法、そして手触り

ボーンチャイナは、イギリスで生まれた素地です。基本の配合はおよそ骨灰50%、カオリン25%、陶石(長石質の石)25%で、名前のとおり焼いた動物の骨の灰を大量に含みます。英国の陶磁器業界団体は、焼いた骨に由来するリン酸カルシウムを30%以上含み、光を通す素地をボーンチャイナと定めています。グスタフスベリの磁器工場は、骨灰45%以上を本物のボーンチャイナの条件とし、自社の素地はそれをわずかに上回ると説明していました。

イングランドのストーク・オン・トレントに残るとっくり型のれんが窯
イングランド中部ストーク・オン・トレントに残る、とっくり型のれんが窯(写真: Roger Kidd, CC BY-SA 2.0)

長石陶器とボーンチャイナは、原料が違うだけではありません。骨灰を主役にした素地と、粘土に長石と石英を合わせた素地とでは、つくり方からして別のものです。長石陶器のヴィンテージ品は、復刻版のボーンチャイナと、素材だけでなく製法から異なります。

1815〜20年ごろのスタッフォードシャー製ボーンチャイナの蓋付きカップと受け皿
1815〜20年ごろのスタッフォードシャー製ボーンチャイナ。金彩と風景の絵柄の蓋付きカップと受け皿(写真: David Jackson, CC BY-SA 2.0 UK)

手に取ったときの違い

違いは、手に取るとすぐにわかります。長石陶器のヴィンテージのベルサは、質感が柔らかくしっとりしていて、手に吸い付くようです。復刻版のボーンチャイナは硬質で、冷たさを感じます。ただ、ヴィンテージは柔らかい分、破損しやすいという弱点がありました。

もうひとつ覚えておきたいのは、ヴィンテージのベルサにもボーンチャイナがあることです。裏に「B555」とある当時のボーンチャイナも、現代の復刻版のボーンチャイナとは、手触りがかなり異なります。同じボーンチャイナという名前でも、ヴィンテージと復刻版を同じ質感のものとして見ることはできません。ヴィンテージと復刻版の見分け方全般は、ヴィンテージと復刻版の見分け方で扱っています。

グスタフスベリ ベルサのヴィンテージ コーヒーカップ&ソーサー|裏にボーンチャイナの表示
ヴィンテージのベルサのコーヒーカップ&ソーサー。裏にボーンチャイナの表示がある一客

長石磁器(フェルトスパット磁器)とは別物

長石陶器とよく似た名前に、長石磁器(フェルトスパット磁器/Fältspatporslin)があります。こちらは陶器ではありません。硬質磁器や真正磁器とも呼ばれ、粘土(とくにカオリン)がおよそ半分、長石と石英が4分の1ずつという配合で、約1400℃の高温で焼き締めます。長石を含む点は同じでも、焼き締まり方がまったく違う、別の素地です。

スウェーデンの器では、ロールストランド(Rörstrand)のシルビア(Sylvia)が長石磁器の例です。裏に「P555」の表示があり、Pは長石磁器を示します。シルビアについてはシルビアの完全ガイドで紹介しています。当店にはシルビアの17cmケーキ皿があります。

ロールストランド シルビア 17cmケーキ皿の裏|長石磁器を示すVDN P555の表示
シルビアの17cmケーキ皿の裏。VDN P555、ロールストランド、スウェーデン製、シルビア、250年記念食器の文字

スウェーデンの器の裏で素材を表す文字は、次の四つです。1951年から1973年まで続いた商品表示の制度(VDN)で使われました。数字「555」の意味や制度の成り立ちは、VDNマークのガイドをご覧ください。

文字 スウェーデン語 素材
F Flintgods フリント陶器(長石陶器)
B Benporslin ボーンチャイナ
P Fältspatporslin 長石磁器
S Stengods 炻器(ストーンウェア)

長石陶器はF、長石磁器はPです。日本語では一字違いの名前ですが、裏の文字ははっきり分かれています。

ヴィンテージのベルサは長石陶器とボーンチャイナの両方——裏の文字で見分ける

ベルサは1961年から1974年までグスタフスベリで製造され、2005年に復刻されました。復刻版はボーンチャイナです。一方、ヴィンテージのベルサには、長石陶器(フリント陶器)のものとボーンチャイナのものの両方があります。ベルサそのものの歩みはベルサの完全ガイドで紹介しています。

1938年ごろ グスタフスベリの工房に立つヴィルヘルム・コーゲとスティグ・リンドベリ
1938年ごろ、グスタフスベリの工房に立つヴィルヘルム・コーゲ(左)とスティグ・リンドベリ(右)(写真: 撮影者不詳, パブリックドメイン)

「FLINTGODS」「F555」なら長石陶器

裏の葉の輪の中に「FLINTGODS」「F555」とあれば、長石陶器(フリント陶器)です。ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館が収蔵するベルサの皿と水差しも、この表示をもち、素材は陶器として記録されています。当店のベルサのスクエアプレートの裏にも、同じ文字が入っています。

グスタフスベリ ベルサ スクエアプレートの裏|VDN F555とFLINTGODSの表示
スクエアプレートの裏。葉の輪の中に、グスタフスベリ、VDN F555、ベルサ、フリント陶器(FLINTGODS)、スティグ・L、スウェーデン製の文字

「Benporslin」「B555」ならボーンチャイナ

「Benporslin」「B555」とあれば、ボーンチャイナです。スウェーデンのマルメ博物館が収蔵するベルサのコーヒーカップ&ソーサーでは、ソーサーの裏にこの表示があり、カップには「Gustavsberg benporslin made in Sweden」とあります。当店のヴィンテージのコーヒーカップ&ソーサーも、ソーサーの裏にボーンチャイナの表示をもつ一客です。

グスタフスベリ ベルサ コーヒーカップ&ソーサーの裏|VDN B555とBENPORSLINの表示
コーヒーカップ&ソーサーの裏。葉の輪の中に、グスタフスベリ、VDN B555、ベルサ、ボーンチャイナ(BENPORSLIN)、スティグ・L、スウェーデン製の文字

カップとソーサーは別々に確かめる

カップ&ソーサーは、カップとソーサーの裏をそれぞれ確かめます。マルメ博物館の一客では、ソーサーには葉の輪の裏印があり、カップには葉の輪のない「Gustavsberg benporslin made in Sweden」の表示が入っています。同じ一客でも、カップとソーサーで裏印の図柄が違うことがあります。片方だけを見て一客全体の素材を決めず、両方の文字を読むようにしましょう。

VDNの表示とベルサの製造時期の関係は、VDNマークのガイドにまとめています。

素材の文字がない裏印

ヴィンテージのベルサには、葉の輪の中に素材の文字が入っていない裏印もあります。たとえば「BOHUS-BERSÅ」と記された裏印は、ブランド名とデザイナー名、製造国だけで構成されています。この場合、裏の文字からは素材を読み取れません。当店のヴィンテージのエッグカップも、この裏印です。

グスタフスベリ ベルサ ヴィンテージ エッグカップの裏|素材の表示がない葉の輪の裏印
ヴィンテージのエッグカップの裏。葉の輪の中に、グスタフスベリ、ボーフス・ベルサ、スティグ・リンドベリ、スウェーデンの文字。素材の表示はない

復刻版の裏印

2005年に登場した復刻版の裏には、葉の輪ではなく、グスタフスベリの錨のマークが入ります。当店で扱った復刻版のカップ&ソーサーの裏には、錨の左右に「20」「05」の数字があり、その下に「MADE IN GUSTAVSBERG SWEDEN」と記されていました。葉の輪の裏印があればヴィンテージ、錨のマークであれば復刻版と、まず裏の図柄で時代を分け、ヴィンテージであれば次に素材の文字を確かめる、という順番で見ると迷いません。

復刻版のグスタフスベリ ベルサ カップ&ソーサー|ボーンチャイナの復刻版
復刻版のベルサのカップ&ソーサー。葉の緑はヴィンテージより明るい色合い
復刻版のグスタフスベリ ベルサの裏印|錨のマークと20 05の数字
復刻版の裏。錨のマークの左右に「20」「05」、下にグスタフスベリ製・スウェーデンの文字

当店のヴィンテージのベルサ

ヴィンテージのベルサは、器の種類ごとにかたちや葉の並びが異なります。当店には、スクエアプレート(フリント陶器の表示)やコーヒーカップ&ソーサー(ボーンチャイナの表示)のほか、ピッチャー、18cmプレート、エッグカップがあります。裏の表示は、それぞれの商品ページの写真でご確認いただけます。

グスタフスベリ ベルサのピッチャー|縦に伸びる枝と緑の葉
ベルサのピッチャー。胴をめぐって縦に伸びる枝と緑の葉
グスタフスベリ ベルサの18cmプレート|縦の枝に緑の葉が並ぶ
ベルサの18cmプレート。縦の枝に並ぶ緑の葉

まとめ

長石陶器は、長石や石英を含む白い素地を、磁器のようには焼き締め切らずに仕上げた陶器です。スウェーデンではフリント陶器と呼ばれ、グスタフスベリの日用食器を支えました。ヴィンテージのベルサには長石陶器とボーンチャイナの両方があり、裏の「F555」「FLINTGODS」と「B555」「Benporslin」で見分けられます。手に取ったときの柔らかくしっとりした質感は、復刻版のボーンチャイナにはない、ヴィンテージの長石陶器ならではのものです。

要点の整理

  • 長石陶器――長石・石英を含む白い素地を、磁器のようには焼き締め切らずに仕上げた陶器。スウェーデンではフリント陶器(flintgods)
  • ボーンチャイナとの違い――素材だけでなく製法から異なる。長石陶器のヴィンテージは柔らかくしっとりと手に吸い付く質感、復刻版のボーンチャイナは硬質で冷たい。ヴィンテージは柔らかい分、破損しやすい
  • 長石磁器とは別物――長石磁器(Fältspatporslin、裏の文字はP)は約1400℃で焼く硬質磁器
  • ベルサの裏の文字――FLINTGODS・F555なら長石陶器、Benporslin・B555ならボーンチャイナ。2005年に登場した復刻版は錨のマークで、素材はボーンチャイナ
  • 当時のボーンチャイナ――B555のヴィンテージも、復刻版のボーンチャイナとは手触りがかなり異なる

参考資料

  • Victoria and Albert Museum, Collections: Berså plate(O168717)/jug(O161523)
  • Malmö Museer: Kopp och fat, Berså(MM 061412:019)
  • Gustavsbergs Porslinsfabrik: Benporslin
  • Röhsska museet: Tallrik, Rörstrand(RKM 61:1-1965)

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