北欧食器の素材ガイド|陶器・磁器・炻器(ストーンウェア)・ファイアンスの違いと見分け方

北欧食器の素材ガイド|陶器・磁器・炻器(ストーンウェア)・ファイアンスの違いと見分け方

北欧食器タックショミュッケ編集部

北欧のうつわを手に取ると、商品の説明に「磁器」「ストーンウェア(炻器)」「ファイアンス」「フリントゴッズ」といった言葉が並んでいることに気づきます。同じ「やきもの」なのに、なぜこれほど呼び名があるのでしょうか。じつはこれらは、うつわの土台となる素地——つまり素材の種類を表す言葉です。

素材が違えば、白さも、光の透け方も、手に伝わる重さも、経年の表情も変わります。原料と焼成温度を知ると、棚に並んだ一枚の皿が「どんな土から、どれくらいの温度で焼かれたのか」という物語をまとって見えてきます。それは、スウェーデン南部の炻器の里ヘガネスや、ストックホルムに窯を築いたロールストランド、ヘルシンキ郊外のアラビアへと、北欧の土地をたどる旅でもあります。

この記事では、やきものの三つの大きな区分(陶器・磁器・炻器)を出発点に、北欧でよく登場する「ファイアンス」「フリントゴッズ」という言葉の意味、そして素材を見分けるための手がかりまでを、当店の在庫の器やヨーロッパの窯の歴史とともにご紹介します。

ヘガネス製 白釉のストーンウェアのボウル
スウェーデン南部ヘガネスで作られた、白い釉薬のストーンウェア(炻器)のボウル。緻密で厚みのある素地。(写真: W.carter, CC BY-SA 4.0)

この記事でわかること

  • やきものの三つの区分——陶器・磁器・炻器(ストーンウェア)の違いと、焼成温度・透光性・吸水の目安
  • 「ファイアンス(fajans)」という言葉の本来の意味と、北欧での少しゆるやかな使われ方
  • 白磁への憧れから生まれた北欧の窯——ロールストランド、マリーベリ、ヘガネス、アラビアの物語
  • 手元のうつわの素材を見分ける実際の手がかり(透光性・重さ・地肌の色・音)

目次

  1. 「やきもの」は大きく三つ——陶器・磁器・炻器
    1. 陶器(アースンウェア)——土のぬくもりと多孔質の素地
    2. 磁器(ポーセリン)——光を通す白と、澄んだ響き
    3. 炻器(ストーンウェア)——高温で焼き締めた、北欧作家の器
    4. シャモット——炻器にざらつきを与える「砕いた土」
  2. ファイアンスという言葉——錫釉と、北欧の「fajans」
  3. 白磁への憧れ——マイセン、ロールストランド、そしてカオリン
  4. 塩釉の里ヘガネス——北欧のストーンウェアの産地
  5. 白い食器の量産——フリントゴッズと19世紀の食卓
  6. 素材を見分ける手がかり——光・重さ・地肌・音
  7. 素材と、価値・手入れのこと
  8. ガラス・金属・木——うつわはセラミックだけではない
  9. まとめ

「やきもの」は大きく三つ——陶器・磁器・炻器

粘土を成形して焼いたものを、まとめて「やきもの(陶磁器)」と呼びます。その中身は、大きく三つに分けられます。陶器・磁器・炻器です。三つを分けるいちばんの要素は、焼く温度と、素地がどこまで焼き締まってガラス化するか。温度が上がるほど素地は緻密になり、水を通しにくく、硬くなっていきます。

ここで大切なのは、これらが「産地」でも「ブランド」でもなく、うつわの土台そのものの分類だということです。同じロールストランドの器にも磁器と炻器があり、同じ皿の中でも生産時期によって素材が変わることさえあります。まずは三つの素地を、順に見ていきましょう。

ろくろで粘土を成形する手
ろくろの上で形づくられる粘土。どんな土を選び、どこまでの温度で焼くかが、陶器・磁器・炻器を分ける。(写真: Gannu03, CC BY-SA 4.0)

陶器(アースンウェア)——土のぬくもりと多孔質の素地

陶器は、三つの中でもっとも低い温度で焼かれるやきものです。焼成温度はおおよそ1,000〜1,150℃ほど。素地は完全には溶けきらず、内部に細かな隙間が残った多孔質の状態になります。そのため陶器は光を通さず、無釉のままでは水を吸い、指ではじくと低く鈍い音がします。ガラス質の釉薬をかけて初めて、水を通しにくくなります。

素地の色は、原料となる粘土に大きく左右されます。鉄分の多い土は赤茶や褐色に、精製された白い土では淡い色に焼き上がります。さらに焼成の温度や炎の性質(酸化か還元か)によっても色は変わるため、産地や土、焼き方しだいで表情に幅が出ます。土のぬくもりを感じさせる素朴な質感は、この多孔質の素地ならではのものです。

ウェッジウッドのクリームウェアの皿
クリーム色に精製された陶器「クリームウェア」。18世紀イギリス、ウェッジウッド。のちに北欧の白い食器の下敷きとなる素材。(写真: JasperWare, CC BY-SA 4.0)

磁器(ポーセリン)——光を通す白と、澄んだ響き

磁器は、カオリンと呼ばれる白い粘土に、長石や石英を配合した素地を高温で焼いたやきものです。焼成温度はおおむね1,300℃前後から、硬質磁器では1,400〜1,450℃に達します。この高温で長石が融剤として働き、素地そのものがガラス化して緻密に焼き締まります。

その結果、磁器は白く、薄い部分では光を通す半透明性をもち、水をほとんど吸いません。硬く傷がつきにくい一方、強い衝撃には脆く割れます。指ではじくと、澄んだ高い音が響きます(音の高さは器の形や厚みでも変わります)。中国で先に完成されたこの素材にヨーロッパは長く憧れ、白く硬い磁器は「白い金」とも呼ばれました。

マイセン磁器の壺
ヨーロッパで初めて硬質磁器を実らせたマイセンの壺。白く硬い素地が「白い金」と呼ばれた。(写真: Adiddles123, CC BY-SA 4.0)

北欧の窯でも、白く硬質の磁器は作られてきました。たとえば当店にあるロールストランドのプリムール(Primeur)は、白い器のシリーズで、オークションカタログでは磁器(porslin)として扱われることが多い器です。デザインしたシグネ・ペション=メリンは炻器の作家としても知られる人で、同じ作家の中にも磁器と炻器が同居しているのが北欧のおもしろさです。

ロールストランド プリムール 白いプレート
ロールストランド プリムール(Primeur)の白いプレート。装飾を削ぎ落とした、静かな白の器。ロールストランド プリムール 21cmプレート

炻器(ストーンウェア)——高温で焼き締めた、北欧作家の器

炻器は、スウェーデン語で「stengods(ステンゴッズ)」、英語で「ストーンウェア」と呼ばれます。焼成温度はおよそ1,200℃前後(広くは1,100〜1,300℃)。陶器より高い温度で素地が焼き締まり、緻密で水をほとんど通さなくなります。ただし磁器のような透光性はなく、光を通さない不透明な素地になるのが特徴です。

色は用いる土によって、灰色・褐色・茶・黄褐色などに焼き上がります。純白にはなりにくいかわりに、土そのものの深い色合いと、しっとりとした質感が生まれます。この地肌の質感は、20世紀北欧のスタジオ陶芸——作家がひとつずつ手がける美術陶芸——で特に重んじられました。グスタフスベリのベルント・フリーベリは宋代中国の炻器に着想した釉薬で知られ、リサ・ラーソンも炻器を主要な素材として数多くの作品を残しています。

塩釉のストーンウェアの水差し
1613年、ドイツ・フレッヒェンの塩釉ストーンウェアの水差し。緻密で不透明、褐色に焼き締まった素地。(写真: Daderot, パブリックドメイン)

当店のリサ・ラーソンのフラワーベースは、この炻器を素材にした一点ものです。表面のざらついた粒状の地肌は、次に触れる「シャモット」を混ぜた炻器土ならではの表情です。

リサ・ラーソン シャモットのフラワーベース
リサ・ラーソンのフラワーベース。ざらついた土の地肌と、上部のなめらかな釉薬。シャモットを混ぜた炻器の質感がよくわかる一点。リサ・ラーソン ユニークピース 花弁とシャモットのフラワーベース

シャモット——炻器にざらつきを与える「砕いた土」

シャモット(chamotte)は、いちど焼いた陶土を砕いて粉状にし、あらためて粘土に練り込んだものです。英語ではグロッグ(grog)、スウェーデン語ではskärvmjölと呼ばれます。すでに焼いた土を混ぜることで、乾燥や焼成のときの縮みやゆがみ、割れを抑える働きがあり、同時にざらついた粒状の肌合いが生まれます。

リサ・ラーソンの作品に見られる、砂を含んだような素朴な地肌は、このシャモットを混ぜた炻器の特徴です。つるりとした磁器とは対極にある、土の手ざわりを残した表現。北欧のスタジオ陶芸が炻器とシャモットを愛したのは、この「土であること」を隠さない質感にあったといえます。

ファイアンスという言葉——錫釉と、北欧の「fajans」

北欧のうつわでよく出会う「ファイアンス(faience/北欧語でfajans)」。これは美術・陶芸の用語としては、錫を含む白く不透明な釉薬(錫釉)をかけた陶器を指すのが本来の意味です。多孔質の陶器の上に白い錫釉をかけ、その白を下地に絵付けをする。イタリアのマヨリカ、オランダのデルフト、フランスのファイアンスは、いずれもこの錫釉陶器の系譜で、名前はイタリアの陶都ファエンツァ(Faenza)に由来します。

ここで一点、注意が必要です。スウェーデン語の「fajans」は、必ずしも文字どおりの錫釉に限らず、装飾をほどこした陶器やアート陶器を広く指すゆるやかな使われ方もします。グスタフスベリなど20世紀の窯では、美術陶芸の製品区分の名として「fajans」が用いられ、本来の錫釉陶器の定義とは少しずれています。北欧の器で「ファイアンス」とあるとき、それは素材としての錫釉陶器のことも、装飾陶器という区分のこともある——そう覚えておくと混乱しません。

錫釉陶器の皿
白い錫釉を下地に絵付けした錫釉陶器(ファイアンス)の皿。農耕の情景と銘が描かれる。ファイアンス本来の姿。(写真: Reptonix, CC BY 3.0)

スティグ・リンドベリがグスタフスベリの美術陶芸スタジオ(Gスタジオ)で手がけた手描きの大皿やボウルは、この「fajans(ファイアンス)」の区分にあたります。白い下地に透明の釉をかけた陶器の上に、のびやかな絵付けがほどこされています。炻器とは異なる、明るく軽やかな陶器の表現です。

スティグ・リンドベリ 手描きファイアンス 花柄
スティグ・リンドベリがグスタフスベリのGスタジオで手がけた、手描きファイアンスの器。白い陶器地に描かれた花。スティグ・リンドベリ ボウル 花柄 中サイズ 手描きファイアンス グスタフスベリ

ファイアンスそのものをより深く知りたい方は、当店コラムのファイアンスとは?意味・歴史と錫釉陶器の世界で、グスタフスベリの器とともに詳しくご紹介しています。

白磁への憧れ——マイセン、ロールストランド、そしてカオリン

やきものの原料の物語は、ヨーロッパが長く抱いた「白磁への憧れ」と切り離せません。17〜18世紀、東インド会社の船で運ばれた中国や日本の磁器は、王侯貴族の富の象徴でした。透けるように白く硬いその素地の製法は、ヨーロッパで長いあいだ解き明かせないままでした。

その謎がようやく解かれたのが、1710年に設立されたドイツのマイセンです。前年ごろに硬質磁器の焼成に成功し、決め手となったのはザクセンの白い土——カオリンでした。カオリンに長石と石英を合わせるという磁器の基本の組成は、ここで確立されます。ヨーロッパは、憧れの白磁をついに自分たちの手で焼けるようになったのです。

カオリナイト(カオリン)の鉱物標本
磁器の決め手となる白い粘土、カオリン(カオリナイト)。長石・石英とともに磁器の骨格をつくる。(写真: パブリックドメイン)

では、磁器を焼けなかった時代の北欧はどうしていたのでしょうか。答えが、ファイアンスです。本物の磁器を得られないあいだ、北欧の窯は白い錫釉のファイアンスで、憧れの白磁を模倣しました。その先頭に立ったのが、1726年にストックホルムで創業したロールストランドです。ドイツ人技術者の指導で始まったこの窯は、スウェーデンで初めてファイアンスを作り、中国に倣ったコバルト青の絵付けをほどこしました。窯が建った城「ロールストランド」が、そのまま名前になっています。

1896年のロールストランド工場
1896年のロールストランド。スウェーデン初のファイアンスを生んだ、ストックホルムの窯。(写真: パブリックドメイン)

18世紀のストックホルムでは、もうひとつの窯マリーベリ(Marieberg)がロールストランドの好敵手として、華やかな錫釉ファイアンスを作りました。二つの窯は競い合い、やがて1782年、ロールストランドがマリーベリを買収します。北欧の食卓は、こうしてファイアンスの白と青から始まったのです。

マリーベリのファイアンスのスープ入れ
1758〜66年ごろ、ストックホルムのマリーベリで作られたファイアンスのスープ入れ。ストックホルム・北方民族博物館蔵。(写真: Daderot, CC0)

やがて磁器の技術も北欧へ伝わります。フィンランドのアラビア(ARABIA)は、1873年にこのロールストランドの子会社としてヘルシンキ郊外に生まれました。輸出関税の低さとロシア市場への近さが決め手だったといわれます。翌1874年に建てられた工場は、地名「アラビア」からその名をとりました。第一次大戦期にロールストランドがアラビアの株を手放すと、アラビアはフィンランドを代表する窯へと歩み出します。

ヘルシンキのアラビア工場の建物
ヘルシンキ郊外に建つアラビアの工場ビル。ロールストランドの子会社として1873年に始まった窯。(写真: Markus Koljonen, CC BY-SA 3.0)

ちなみに磁器の原料となるカオリンは、遠い異国だけのものではありません。スウェーデン南部スコーネのイヴォー島や、デンマークのボーンホルム島にも、古い花崗岩が風化してできたカオリンの鉱床があり、イヴォーには歴史的な採掘坑が残っています。北欧の白磁への憧れは、じつは足もとの土ともつながっていたのです。

塩釉の里ヘガネス——北欧のストーンウェアの産地

炻器(ストーンウェア)の物語をたどるなら、訪ねたいのはスウェーデン南部スコーネのヘガネス(Höganäs)です。1797年、エリック・ルート伯爵がこの地に石炭採掘の会社を興しました。そして石炭を掘るときに出る粘土を陶土として生かし、1835年ごろから炻器の生産が始まります。

ヘガネスの名を有名にしたのが、塩釉の保存容器「ヘガネスクルース」です。塩釉とは、高温で焼いている窯に塩を投げ入れ、その蒸気で器の表面に硬いガラス質の被膜をつくる技法。こうして焼き締められた褐色の壺は、塩漬けの魚や肉、ピクルス、卵などの保存のためにデザインされ、北欧の暮らしを支える実用の器として親しまれていました。ヘガネスの中心部には、鉱山と陶磁器の歴史を伝える博物館があり、産業遺産をたどる旅の目的地になっています。

ロールストランドの葉形の飾り皿
北方民族博物館に収められたロールストランドの葉形の飾り皿。とかげや虫を写した装飾。北欧の窯は実用の器から美術陶芸までを担った。(写真: Rörstrand, CC0)

ヘガネスに象徴される北欧の炻器の伝統は、20世紀に入ると美術陶芸へと受け継がれます。グスタフスベリのフリーベリやリサ・ラーソンが、土の色と釉薬の深みを追い求めて選んだのも、この炻器という素地でした。実用の保存容器から、作家の手による一点ものまで——炻器は北欧のやきものの背骨のような素材だといえます。

白い食器の量産——フリントゴッズと19世紀の食卓

北欧の器の説明でしばしば見かける「フリントゴッズ(flintgods)」も、素地を表す言葉です。これは、焼いて砕いたフリント(燧石)を白い土に混ぜた、白く硬い陶器。イギリスのウェッジウッドが完成させたクリームウェアの系譜にある素材で、「porslin(磁器)」と呼ばれることもありますが、区分としては磁器ではなく陶器の仲間です。

19世紀のスウェーデンでは、この英国由来のフリント混合の白い陶器が、工業的に量産されました。ロールストランドは18世紀後半から英国式のフリント陶器を手がけ、銅版転写(コッパープリント)による装飾で大量生産へと踏み出します。1825年に創業したグスタフスベリも、初期は英国人技術者を招いて、この英国式の白い陶器を主に作っていました。磁器より安価で白いフリントゴッズは、それまで磁器に手の届かなかった中産階級の食卓を大きく変えたのです。ちなみにグスタフスベリは、スウェーデンで今も操業する唯一の陶磁器工場です。

1946年のグスタフスベリ陶磁器工場
1946年、ストックホルム近郊ヴェルムドー島のグスタフスベリ陶磁器工場。白いフリントゴッズの食器を量産した窯。(写真: Sune Sundahl, CC0)

当店にある19世紀末〜1930年代のグスタフスベリ「ヴェクショー(Wexiö)」は、まさにこのフリントゴッズの器です。銅版転写で花や鳥の文様がうつされた、100年以上前のうつわ。半磁器・硬質陶器と呼ばれることもありますが、正式にはフリントゴッズ——つまり陶器の仲間にあたります。手に取ると、量産の白い食器が北欧の家庭に広まっていった時代の空気が伝わってきます。

グスタフスベリ ヴェクショー スクエアプレート
グスタフスベリのヴェクショー(Wexiö)スクエアプレート。銅版転写の文様が入ったフリントゴッズの器。100年前の北欧のお皿 グスタフスベリ製 ヴェクショー(Wexiö)スクエアプレート 大サイズ

スティグ・リンドベリの名作「ベルサ(Berså)」をはじめ、20世紀グスタフスベリの定番食器の多くも、このフリントゴッズを素地としています。白く親しみやすいこの素材が、北欧デザインの日常食器を支えてきました。

素材を見分ける手がかり——光・重さ・地肌・音

では、手元のうつわが陶器・磁器・炻器のどれなのかは、どう見分ければよいのでしょうか。決め手は一つではなく、いくつかの手がかりを重ねて判断するのが基本です。

光を透かしてみる

薄い縁の部分を明るい光にかざしたとき、ほんのり光を通して透けるなら磁器の可能性が高くなります。まったく光を通さず不透明なら、陶器か炻器です。透光性は、磁器を見分けるいちばんわかりやすい手がかりです。

無釉の高台(糸底)を見る

器を裏返し、釉薬のかかっていない高台(糸底)の地肌を見ます。ここは素地がむき出しになった、素材を知る手がかりの多い場所です。白く緻密でなめらかなら磁器や白い陶器、灰色や褐色でざらついていれば炻器や土ものの陶器が考えられます。指で触れてみて、水を吸いそうなざらつきがあれば多孔質の陶器寄りです。

重さと、音

同じ大きさなら、緻密に焼き締まった磁器や炻器はずっしりと重く、多孔質の陶器は比較的軽く感じられます。また、器のふちを指で軽くはじいたとき、澄んだ高い音が響けば磁器、こもった鈍い音なら陶器という傾向があります(音は器の形や厚み、貫入の有無でも変わるため、あくまで参考です)。

ただし、これらの手がかりだけで断定できないやきものもあります。フリントゴッズのように、白く硬くて磁器のようでいて区分は陶器、という中間的な素地も少なくありません。一つの手がかりで決めつけず、複数を重ねて総合的に見るのが、素材を読むこつです。

素材と、価値・手入れのこと

素地の違いは、うつわの価値や手入れの仕方にも関わってきます。たとえば同じデザイナーの作品でも、ひとつずつ手がけられた炻器の一点ものと、フリントゴッズで量産された定番食器とでは、市場での位置づけが変わります。炻器のスタジオ作品が高く評価されるのは、素材そのものと向き合う作家の手仕事が、そこに刻まれているからです。

手入れの面では、多孔質の陶器やファイアンスは、緻密な磁器に比べて水分や汚れをやや吸いやすい性質があります。長く漬け置きにしたり、急激な温度変化を与えたりするのは避けるほうが安心です。また、釉薬の表面に細かな網目状の亀裂——貫入(かんにゅう)が入ることがありますが、これは経年の表情であり、素材の欠陥ではありません。ヴィンテージの手入れでは、絵柄の色を傷めるおそれのある漂白剤は使わないのが賢明です。

ARABIA バレンシア シュガーボウル コバルトブルーの絵付け
ARABIAのバレンシア(Valencia)。コバルトの手描き文様が全面を覆う。生産の初期はファイアンス、後年は強化磁器へと素地が変わったといわれるシリーズ。ARABIA(アラビア)バレンシア(Valencia)シュガーボウル

バレンシアのように、同じシリーズでも生産時期によって素地が変わる例もあります。だからこそ、素材を手がかりに一点ずつ器と向き合うと、そのうつわがいつ、どんな技術で作られたのかという物語が、少しずつ見えてくるのです。

ガラス・金属・木——うつわはセラミックだけではない

ここまで陶磁器の素地を見てきましたが、北欧のうつわの魅力は、やきものだけにとどまりません。フィンランドのヌータヤルヴィ(Nuutajärvi)やイッタラのガラス、ゲンセ(Gense)のステンレスカトラリー、ダーラナホースに代表される木工——それぞれの素材が、北欧デザインの別の表情を見せてくれます。

ガラスは、砂(珪砂)を主原料に高温で溶かして成形する、陶磁器とはまったく別の原料です。透明感と光の反射が身上で、フィンランドのガラス作家たちは、氷や湖の水面を思わせる表現を追い求めました。金属や木もまた、それぞれの手ざわりと経年変化をもっています。うつわの素材という視点をもつと、棚に並んだ北欧の品々が、いっそう豊かに見えてくるはずです。

ヌータヤルヴィ ルンメ ガラスのキャンドルホルダー
ヌータヤルヴィのルンメ(Lumme)キャンドルホルダー。陶磁器とは別の素材、ガラスならではの透明感。ARABIA ヌータヤルヴィ Lumme(ルンメ)キャンドルホルダー 小サイズ

まとめ

やきものの素材は、陶器・磁器・炻器という三つの区分を軸に、ファイアンスやフリントゴッズといった言葉が重なり合っています。低温で焼いた多孔質の陶器、カオリンを高温でガラス化させた白く透ける磁器、その中間で緻密に焼き締めた不透明な炻器。そこに、白磁を模倣した錫釉のファイアンスや、英国式の白い量産陶器フリントゴッズが加わります。

これらの素地は、中国の白磁への憧れから、ロールストランドやマリーベリのファイアンス、ヘガネスの塩釉炻器、そしてグスタフスベリやアラビアの量産食器へと、北欧のやきものの歩みそのものを映しています。手元のうつわの素地に目を向けると、その一枚が、どんな土から、どんな温度で、どんな時代に生まれたのかが見えてきます。素材を知ることは、北欧のうつわをもう一歩深く味わう手がかりになるはずです。

要点の整理

  • 陶器は約1,000〜1,150℃で焼いた多孔質の素地。光を通さず、無釉では水を吸い、音は鈍い
  • 磁器はカオリンを約1,300℃以上でガラス化させた素地。白く、薄い部分は光を透し、水を吸わず、音は澄む
  • 炻器(ストーンウェア)は約1,200℃前後で緻密に焼き締めた不透明の素地。北欧のスタジオ陶芸が愛した素材
  • ファイアンス(fajans)は本来、錫釉をかけた陶器。北欧では装飾陶器を広く指すゆるやかな用法もある
  • フリントゴッズは英国式の白い硬質陶器で、磁器ではなく陶器の仲間。19世紀の量産食器を支えた
  • 素材は、透光性・無釉の高台の色・重さ・音などを重ねて総合的に見分ける

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