VDNマークとは|北欧食器の裏印『VDN555』の意味とスウェーデンの商品表示
北欧食器タックショミュッケ編集部スウェーデン・フィンランドから北欧ヴィンテージ食器を直接買い付け、1,000点以上を検品してきた当店が、一次情報と実物の観察にもとづいて執筆・編集しています。
Share
VDNマークとは——北欧食器の裏に残るスウェーデンの商品表示
Photo: Wikimedia Commons / Anden2000 / CC0
スウェーデンのヴィンテージ食器を裏返すと、窯の印のそばに「VDN F555」「VDN P555」といった文字が入っていることがあります。
VDNは、スウェーデンの商品表示の機関Varudeklarationsnämnden(ヴァルデクラレーションスネムンデン)の略です。日本語にすると「商品表示委員会」で、1951年8月から1972年末まで活動しました。品物の性質を決まった方法で試験し、その成績を品物に表示させる仕組みで、品質を保証する印ではありません。「VDN555」の「F」や「P」は素材を、「555」は三つの性質の成績を表します。
VDNの印は、機関が消費者庁に統合された1973年より後も使われました。1980年代の器にも入っているので、印だけで製造年は決まりません。なお、ワインの「VDN(ヴァン・ドゥー・ナチュレル)」はフランスの甘口ワインの呼び名で、北欧食器のVDNとは別のものです。
目次
VDNの基本情報
| 正式名称 | Varudeklarationsnämnden(ヴァルデクラレーションスネムンデン) |
| 日本語訳 | 商品表示委員会 |
| 略称 | VDN |
| 活動期間 | 1951年8月〜1972年末(1973年1月に消費者庁へ統合) |
| しくみ | 決まった試験方法にもとづく任意の商品表示。品質の保証ではない |
| 運営 | 非営利の団体。費用の大半は国の補助 |
| 対象 | 食品・衣類・家具・家電・家庭用品・陶磁器など。表示の規格は最多で150(1968年) |
| 陶磁器の表示 | 1950年代後半の器にすでに入り、1980年代の器にも使われた |
| その後 | 1973年に消費者庁(Konsumentverket)へ統合。家具の表示は1972年からMöbelfakta(ムーベルファクタ) |
日本では「品質保証マーク」や「日本のJISのようなもの」と紹介されることがありますが、VDNは品質の合格・不合格を決める印ではありません。理由は下の節で説明します。
VDN555の意味——文字は素材、数字は三つの成績
陶磁器のVDNの印は、「VDN」の3文字、素材を表すアルファベット1文字、成績を表す3桁の数字でできています。
アルファベット——素材
| 文字 | スウェーデン語 | 素材 |
|---|---|---|
| B | Benporslin | ボーンチャイナ |
| F | Flintgods | フリント陶器(長石陶器) |
| P | Fältspatporslin | 長石磁器 |
| S | Stengods | 炻器(ストーンウェア) |
同じシリーズでも、器の種類によって素材が違うことがあります。グスタフスベリのダートは、ボウルやティーカップが炻器の「S555」、コーヒーカップがボーンチャイナの「B555」です。ベルサも、皿やボウルは「F555」、小さいコーヒーカップ&ソーサーは「B555」です。フリント陶器については長石陶器とはで詳しく説明しています。
3桁の数字——三つの成績
3桁の数字は、左から順に三つの性質の成績です。5が最も高い段階で、陶磁器では成績を器の裏に直接入れました。
| 桁 | 性質 | 段階の意味 |
|---|---|---|
| 1桁目 | 釉 | 5=釉にひびが入るおそれがない 3=急な温度の変化ではひびが入らないが、年月とともにひびが出ることがある 1=急な温度の変化に耐えない |
| 2桁目 | 料理への向き | 5=どんな料理にも向く 3=酸を含む料理に長く触れさせない 1=酸を含む料理には向かない |
| 3桁目 | 洗浄 | 5=75℃の食洗機に耐える 3=45℃の手洗いに耐える 1=洗うと傷むおそれがある |
つまり「555」は、三つの性質がどれも最も高い段階だったという表示です。食洗機の試験では、釉が75〜80℃に耐えることが5の条件でした。
ただし、この成績は作られた当時の新品に対するものです。数十年を経たヴィンテージの器にそのまま当てはまるわけではないので、当店は手洗いをおすすめしています。詳しくは北欧ヴィンテージ食器は食洗機・電子レンジ・オーブンで使える?をご覧ください。
555以外の数字——ゲフレのF535
市場で見かけるVDNの印は、ほとんどが「555」です。スウェーデンの博物館の収蔵記録でも、印が読める陶磁器115点のうち108点が555です。
残る7点は、ゲフレ(Gefle)の「コスモス(Kosmos)」に入った「VDN F535」です。デザインはベリット・テルネル(Berit Ternell)で、1966〜1977年に作られたボウル、ソース入れ、耐熱皿、深皿がイェーヴレボリ県立博物館に収められています。真ん中の数字が3なので、料理への向きが「酸を含む料理に長く触れさせない」段階だったことになります。
VDNは、成績のよい品だけが印を入れる制度ではありませんでした。ゲフレの歴史はゲフレ磁器とはにまとめています。
VDNという組織——1951年に始まった商品表示
VDNのもとになったのは、1946年にスウェーデン政府が置いた、品質の研究と消費者への情報提供についての調査委員会です。委員会は1949年の報告書で、製造・卸・小売の業界と消費者の代表が集まり、商品の表示をそろえる機関を作るよう提案しました。翌1950年にスウェーデン規格協会(SIS)が設立を引き受け、「Varudeklarationsnämnden」という名前を考えました。1951年の国の予算に設置費7万5,000クローナが計上され、VDNは1951年8月1日に活動を始めます。
Photo: ArkDes / Wikimedia Commons / Public Domain
VDNは非営利の団体で、議長は政府が任命しました。運営には13の団体の代表が加わります。業界からは製造・卸・小売のすべての段階、消費者の側からは労働組合の全国組織、主婦の団体、家庭科の教員の団体、家庭研究所(Hemmens forskningsinstitut)です。費用の大半は国の補助でした。1971/72年度は総費用約300万クローナのうち約200万クローナを国が出し、協同組合連合(KF)や業界の団体、労働組合も拠出しています。
VDNが作った表示の規格は、1961年の75から1968年には150に増え、1972年は110でした。対象は陶磁器のほか、食品、衣類、家具、家電、家庭用品、スポーツ用品、救命胴衣、パック旅行にまで及びます。表示の名前は、1954年に店頭に出た「D Deklaration」から、1961年に「VDN Varufakta」、のちに「VDN Fakta」と変わりました。テレビでは「Läs på lappen(ラベルを読んで)」という短い映像を流しています。
VDNの表示は品質の保証ではない
VDNの表示は任意でした。表示したいメーカーや輸入業者、販売業者が申し込むと、その品目の規格どおりに表示する許可が出ます。表示には、規格が決めた項目を多くも少なくもなく載せなければなりません。VDNは表示の刷り見本を前もって確かめ、店に並んだ品を抜き取って検査しました。検査は原則として品目ごとに年1回で、表示と中身が違えば直させ、従わなければ許可を取り消します。実際に取り消したのは2回だけです。
VDNは原則として、品質の合格・不合格を決めませんでした。性質を一つずつ同じ物差しで示し、どれを重んじて選ぶかは買う人が決める、という考え方です。当時の政府の報告書にも、VDNの印が一種の保証と受け取られ、消費者を誤らせるおそれがあると書かれています。日本で見かける「品質保証マーク」「日本のJISのようなもの」「表示が義務だった」という説明は、どれも当たりません。
陶磁器の表示はいつからいつまで
陶磁器の規格の資料は、スウェーデン国立公文書館に1952年の分から残っています。1958年1月に買われたグスタフスベリのスピサ・リブのカップ&ソーサーには、すでに「VDN. B555」の印が入っています。陶磁器の表示は1960年代に始まったと紹介されることがありますが、1950年代の後半には印の入った器が店に並んでいました。
1972年の調査では、スウェーデンで売られていた日常の食器99点のうち94点にVDNの表示がありました。輸入品には、ほとんど表示がありませんでした。
1973年1月、VDNは国立消費者問題研究所、国立消費者評議会と統合され、消費者庁(Konsumentverket)が生まれました。VDNの規則は消費者庁のもとでも効力を持ち、表示の許可も続きます。1976年からは検査も費用の請求も行われなくなりましたが、1981年1月の時点でも、陶磁器の規格を6社が使っていました。消費者庁はメーカーにVDNの表示をやめるよう勧めていましたが、印はすぐには消えなかったのです。
家具の表示は、1972年に家具研究所(Möbelinstitutet)が始めた「Möbelfakta(ムーベルファクタ)」に移りました。Möbelfaktaは自らの歩みを、1951年のVDNから書き起こしています。
VDNの印で年代はわかるか
VDNの印だけでは、製造年は決まりません。博物館の記録と当店で扱った品から、印の入った器と作られた年を並べると次のとおりです。
| 窯・シリーズ | 印 | 作られた年 | 所蔵 |
|---|---|---|---|
| グスタフスベリ スピサ・リブ | VDN. B555 | 1958年1月に購入 | クルトゥーレン(ルンド) |
| ゲフレ アグネタ(Agneta) | VDN 555 | 1975〜1979年 | イェーヴレボリ県立博物館 |
| ロールストランド シルビア(250年記念) | VDN P555 | 1976年に発表 | 当店で扱った品 |
| グスタフスベリ デミ(Demi) | VDN DEMI S 555 | 1978〜1980年 | スウェーデン国立美術館 |
| ロールストランド プリムール(Primeur) | VDN P 555 | 1980年 | 北方民族博物館 |
| ロールストランド レインボー(Rainbow) | VDN P555 | 1983〜1996年 | メルンダール市立博物館 |
| ロールストランド クアトロ(Quattro) | VDN P 555 | 1987年 | レーシュカ美術館 |
「VDNの印がある=1973年以前」とは言えません。年代は、窯の印の型や、シリーズが作られた期間と合わせて見ます。グスタフスベリはグスタフスベリの年代の見分け方、ロールストランドはロールストランドのバックスタンプ完全ガイドで、印の読み方を説明しています。
VDNを使った窯——アラビアの器にも
1972年の調査でVDNの表示が見つかった窯は、ロールストランド、ゲフレ、グスタフスベリ、ホガナス(Höganäs)などです。調べられた器には、ロールストランドのグレーン・アンナ、コカ・ブロー(Koka blå)、モナミ、グスタフスベリのアダム、プルーヌス、ゲフレのコスモスが並びます。博物館の記録では、ウプサラ・エクビーの器にも「VDN F555」の印があります。
同じ調査では、フィンランドのアラビア(Arabia)の品にもVDNの表示がありました。VDNの許可は、スウェーデンのメーカーだけでなく、輸入業者や販売業者も受けられました。VDNの印は、スウェーデン製の証明ではなく、スウェーデンで売られた品の表示です。
当店の器で見るVDNの印
ロールストランド——グレーン・アンナのF555、モナミとシルビアのP555
Photo: Wikimedia Commons / Anden2000 / CC0
Photo: タックショミュッケ(モナミ 特大スクエアプレート)
マリアンヌ・ウェストマンが1952年にデザインしたモナミ(Mon Amie)は、ロールストランドの長石磁器のシリーズです。当店で扱ったモナミのスクエアプレートの裏には「VDN P555」が入っています。
Photo: タックショミュッケ(シルビア 250年記念食器)
シルビアは、ロールストランドの創業250年を記念して1976年に生まれた食器です。VDNが消費者庁に統合された後に生まれたシリーズにも、「VDN P555」の印が入っています。
グスタフスベリ——プルーヌスのF555、ダートのS555とB555
Photo: タックショミュッケ(プルーヌス スクエアプレート 小)
スティグ・リンドベリのプルーヌスでは、当店で扱ったスクエアプレートの裏に「FLINTGODS VDN 555」とあり、フリント陶器の表示です。
Photo: タックショミュッケ(ダート 小ボウル)
Photo: タックショミュッケ(ダート ティーカップ&ソーサー)
Photo: タックショミュッケ(ダート コーヒーカップ&ソーサー)
ダートは、同じシリーズの中で素材が分かれる例です。ボウルとティーカップは炻器の「VDN S555」、コーヒーカップはボーンチャイナの「VDN B555」です。
ベルサ——F555とB555は器の種類で分かれる
Photo: タックショミュッケ(ベルサ 17.5cm 丸柄プレート)
スティグ・リンドベリが1961年に発表したベルサ(Berså)では、皿・ボウル・ポットなど多くの器が「VDN F555」のフリント陶器、小さいコーヒーカップ&ソーサーが「VDN B555」のボーンチャイナの表示です。文字は製造の時期ではなく、器の種類で分かれています。B555の表示があるヴィンテージも、今の復刻版のボーンチャイナとは材質も質感もはっきり違います。
1973年の第一次石油危機を受けて、ベルサは1974年に生産を終えました。北欧の食器づくりが大きく傾いた年です。ベルサの裏印の型や緑の数字の読み方はベルサの裏印の読み方に、ベルサそのものの歩みはベルサ完全ガイドにまとめています。
まとめ
要点の整理
- VDNは、スウェーデンの商品表示の機関Varudeklarationsnämndenの略。1951年8月から1972年末まで活動し、1973年1月に消費者庁へ統合された
- 「VDN555」の文字は素材(B=ボーンチャイナ、F=フリント陶器、P=長石磁器、S=炻器)、3桁の数字は釉・料理への向き・洗浄の三つの成績
- 「555」は三つとも最も高い段階。ゲフレのコスモスには「F535」もある
- VDNの表示は任意で、品質の保証ではない
- 印は1950年代後半の器から1980年代の器まで使われた。印だけで製造年は決まらない
- フィンランドのアラビアの品にも表示があった。VDNの印はスウェーデン製の証明ではない
VDNの印は、性質を同じ物差しで示し、選ぶのは買う人に任せるという、戦後スウェーデンの商品表示の考え方を器の裏に残しています。北欧の器を裏返したときは、窯の印とあわせて、VDNの文字と数字も読んでみてください。
参考資料
あわせて読みたい関連記事
関連商品をチェック
当店では、VDNの印が入ったロールストランドやグスタフスベリなどの北欧ヴィンテージ陶磁器を、観賞用・装飾用の品として販売しています。
当店の北欧ヴィンテージ食器
スウェーデンから直接買い付けたヴィンテージ食器や北欧雑貨を、状態を確認したうえでご紹介しています。1万円以上で送料無料(北海道・沖縄は1.3万円以上)。