
スウェーデンの国民的作家が生んだ 手のひらに宿る北欧の物語
リサ・ラーソンが1993年にグスタフスベリ社内に構えた工房「Kスタジオ」で制作した、ハンドペイントの大柄なシュガーボウルです。丸々とした胴に、勢いのあるコバルトブルーがのびやかに回り、白磁の余白を残しながら大胆に構成されています。筆の運びがそのまま器の表情になっており、同じ図柄でも二つと同じものが生まれない——量産品では得られない“手の跡”を楽しめる一品です。
絵付けはリサ本人が担ったもので、底面には直筆で「リサ・ラーソン/Kスタジオ/グスタフスベリ/スウェーデン」と書き込まれています。サインは、この作品が工房作品であること、そして作者の手を経て完成したことを端的に示す重要なポイントです。
リサは1980年にいったんグスタフスベリを離れたのち、創作に専念できる環境を整えられ、再び同社に迎え入れられました。世界的な作家となったのちの“工房での再出発”とも言える時期に生まれたのが、このKスタジオ作品群です。1990年代のリサ作品は、ミッドセンチュリー期とは異なる成熟した製陶技術を背景に、釉薬の透明感や発色、白の余白の扱いまで含めて、より自由に陶を試す時代でした。本作の青と白のコントラストは、グスタフスベリ時代の名作を思わせる爽やかさを持ちながら、より洗練された“抜け”があり、現代の食卓やジャパンディの空間にもよく映えます。
ふた付きの器は、砂糖はもちろん、塩・スパイス、キャンディやティーバッグ、小さなアクセサリー入れにも。置くだけで絵になる、工芸と日用品の境界に立つシュガーボウルです。
リサ・ラーソン — 北欧の愛すべき陶芸家
師匠スティグ・リンドベリとリサ・ラーソン。1年の試用期間が26年に。
リサ・ラーソン(1931-2024)。スウェーデン南部スモーランド地方エルムフルトに生まれ、ヨーテボリの工芸学校でテキスタイルから陶芸に転向。1954年、学生コンペの審査員を務めたグスタフスベリの巨匠スティグ・リンドベリに才能を見出され、「1年の試用期間」で工場に招かれました。その1年は、やがて26年間の創作活動へと続いていきます。
リンドベリが「レクストゥーガ(遊び小屋)」と呼んだ工房で、リサは「リッラ・ズー(小さな動物園)」「ABCガールズ」「アフリカ」など数々の名作を生み出しました。ある日、暗褐色のシャモット陶土でしっぽを立てた猫を作ったことが、生涯で約30種もの猫の陶器を生むきっかけとなります。
日本とリサ・ラーソン
ABCガールズの「ドーラ」に命を吹き込むリサ。1950年代の痩身美の風潮に対し、古代の豊穣の女神に着想を得たふくよかな女性像を創りました。
一つひとつ手描きで絵付けされるリサ・ラーソンの陶器。職人の手仕事ゆえの個体差が、ヴィンテージ品の魅力です。
1970年、リサは大阪万博を訪れ、益子焼の人間国宝濱田庄司と出会います。民藝運動に触れたこの体験が、彼女の手仕事への信念をさらに深めました。2010年には日本の絵本のために赤い縞模様の猫「マイキー」を描き、やがてこの猫は日本中で愛されるキャラクターに。2014-15年の日本巡回展には21万人以上が来場しました。
ヴィンテージと復刻版の見分け方
リサ・ラーソン作品の制作時期は、バックスタンプで判別できます。
- グスタフスベリ工場時代(1954-1980) — 錨マークに「GUSTAVSBERG」「LISA L.」「SWEDEN」の刻印。最もコレクター価値が高いヴィンテージ品。
- フリーランス時代(1980-1992) — ロールストランド、イエ・ガントフタなど各メーカーの刻印。
- ケラミックストゥディオン時代(1992年〜) — 「K-Studion」の刻印。リサが共同設立した工房で、ヴィンテージの名作を手作りで復刻。高品質ですがオリジナルとは異なります。
当店で取り扱うリサ・ラーソン作品は、スウェーデンから直接買い付けたヴィンテージのオリジナル品です。
■詳細スペック
- メーカー:Keramik Studion Gustavsberg / グスタフスベリKスタジオ
- デザイナー:Lisa Larson / リサ・ラーソン
- 年代:1990年代
- 生産国:スウェーデン
- サイズ:高さ12cm 直径12cm
■コンディション:★★★★★(5:完品)
割れ・欠け・貫入がなく、保存上の擦れも見られない完品コンディションです。使用歴はありませんが、元々の個体差として、ふたの噛み合わせにわずかな浮きが見られます(写真をご参照ください)。
