社内アトリエで一点ずつ手描きされた 同じものが二つとないARABIAの芸術品
アラビアの社内工房アトリエGOGで制作された、GOG直筆のビッグマグです。デザイナーのグンヴァル・オリン・グラングヴィストは、アラビア社で量産品のデザインを担う一方、自らのアトリエを社内工房という形で持ち、ハンドペイント作品の制作も行っていました。アトリエGOG銘の作品は現在も根強い人気を誇り、量産品とは明確に異なる手仕事の質感を楽しめるシリーズとして知られています。
本作の最大の魅力は、ハンドペイントをGOG自身が担っている点です。通常、底部の表記はGOGの後にスラッシュが入り、その右側に絵付けを担当したペインターのイニシャルが記されます。しかし本作はGOGとしか表記されておらず、ペインターのイニシャルが入りません。これはGOG自身がペイントを担ったことを示しています。アトリエGOG作品の中でも、作者本人の筆致が明確に感じられる個体は珍しく、線の勢い、塗りの厚み、釉薬の景色に、量産品にはない緊張感があります。
全体のデザインは、下絵として緑と薄緑の横線が走り、その上にコバルトブルーの釉薬でストライプが厚く塗られています。青の濃淡や溜まり、筆のリズムがそのまま残り、使う器でありながら一種の陶器像のような迫力を備えています。
さらに本作は、サイズそのものが希少です。一般にビッグマグとされる容量は適正約950ml、満水時約1100mlですが、本作はそれを上回る適正容量1000ml、満水時1250mlという超特大サイズです。
アラビアの名作ルスカに連なるSモデルのマグよりも遥かに大きく、2回り以上のボリューム感があります。ここまで大きいと日常のマグとしては規格外で、インテリアとしての存在感を意識して製作されたともいえます。
本作のサイズは水を満たすと重さが2キロを超えるため、実用面で取り扱いは難しく、結果としてほとんど製作されなかったのではないかと推測されます。アトリエGOG作品の中でも、この最大級マグカップはヴィンテージ市場での流通が極端に少なくコレクション性が高い逸品です。
ARABIA — フィンランドが世界に誇る陶磁器の名窯

1873年、スウェーデンのロールストランド社がヘルシンキに設立した分工場がARABIAの始まりです。当初はロシア帝国向けの陶磁器を生産していましたが、1917年のフィンランド独立後に完全なフィンランド企業となり、20世紀半ばにはフィンランド最大の陶磁器メーカーへと成長しました。

黄金時代を築いたデザイナーたち
カイ・フランク(1911–1989)は「フィンランドデザインの良心」と呼ばれ、キルタ(後のティーマ)やカルティオなど、無駄を削ぎ落とした機能美の名作を生み出しました。1949年にはARABIAのクラウンマーク(王冠のバックスタンプ)もデザインしています。
ウラ・プロコッペ(1921–1968)は、コバルトブルーの手描きが美しいバレンシア(1960–2002年)と、鉄粉を施した独特の土色が魅力のルスカ(1960年代–1999年)を手がけました。ルスカの粗い表面は日本の楽焼に似た風合いで、北欧と日本の美意識の近さを感じさせます。

このほか、ビルガー・カイピアイネン(1915–1988)は「装飾の王」と呼ばれ、名作パラティッシをはじめ華やかな装飾陶芸を制作。エステリ・トムラはフローラシリーズの植物画で知られ、ライヤ・ウオシッキネンも数多くの装飾パターンを手がけました。
ヴィンテージの見分け方 — バックスタンプ(刻印)ガイド

- 1874〜1930年頃:素地への型押し(インプレスト)が主流。1878年以降はフィンランドの紋章入りカラーマークも併用。
- 1932〜1949年:クルト・エクホルムがデザインした「パイプスタンプ」。工場に導入された122mのトンネル窯を表現したデザイン。
- 1949年〜現在:カイ・フランクがデザインしたクラウンマーク(王冠)。月桂樹の輪を逆さにして王冠に見立てた斬新なデザイン。1964年、1971年、1975年、1981年、2014年に更新。
- 生産年の読み方:1940年代以降は月→年の順で数字が刻印。2等品にはローマ数字IIや色付きドットが付されます。
- 2016年以降:ヘルシンキ工場は2016年3月に閉鎖され、現在はタイとルーマニアで生産。ヴィンテージ品はすべてフィンランド製で、「MADE IN FINLAND」の刻印があります。
■詳細スペック
- メーカー:ARABIA / アラビア
- デザイナー:Gunvor Olin-Grönqvist / グンヴァル・オリン・グラングヴィスト
- 年代:1960年代(推定)
- 生産国:フィンランド
- サイズ:高さ12cm 直径13.5cm 適正容量1000ml 満水時1250ml
■コンディション:★★★★☆(4.5:極美品)
側面と内部底は光に透かすとスレがわずかに見られます。内部底には製造時の黒点がいくつか見られます。未使用品に近いコンディションとなります。また、高台部に一箇所見られる凹みは欠けではなく、半分ほど透明な釉薬が流れ込んでいるため製造時に生じたものと思われます。 GOGマグカップによく見られる貫入がなく、オリジナルの色つやを留めており大変美麗なコンディションです。ビッグサイズとGOG本人のペイントという点を踏まえると、アラビア食器ヴィンテージのマグカップのなかでも希少性のかなり高いコレクターズアイテムとなります。










