フィンランドの神話を器に刻んだ ウオシッキネンの叙事詩プレート
フィンランドを代表する陶器メーカーARABIA社の記念プレートです。デザイナーのライヤ・ウオシッキネンはARABIA社の専属デザイナーとして勤務し、エミリア(Emilia)やアリ(Ali)、パヤッツォ(Pajazzo)、アーメッド(Ahmed)などの名作を生み出しました。こちらのカレワラ(Kalevala)もウオシッキネンが考案したもので、現在まで多くのコレクターの間で根強い人気を誇っています。
カレワラとはフィンランドで19世紀に医師であり学者でもあったエリアス・リョンロートが収集し取りまとめた国内の叙事詩のことです。日本でいうところの『古事記』や『日本書紀』に類するもので古代の伝説が収録されています。ウオシッキネンは、フィンランドの人々の間で語り継がれてきた神話的な風景を図案化して、食器に落とし込み、イヤープレートとして毎年クリスマスのシーズンに発表しました。1976年から製造が始まり1999年の製造終了まで、四半世紀に渡って毎年新しいデザインのプレートが発表されています。
こちらは記念すべき1976年の初年度に製造されたプレートです。年老いた英雄ワイナミョイネンが母親の胎内から産み落とされた後、海を漂流し立ち上がった大地に種を蒔くシーンが描かれています。ワイナミョイネンは母親の胎内に700年以上いたとされ、生まれたときから老成した姿で描かれています。指導者的な英雄で9世紀頃に実在したシャーマンだったとも言われています。カレワラは翌年から人気が出たため初年度のイヤープレートは生産数が少ないものでした。そのため初年度プレートはヴィンテージ市場では特に付加価値の高いものとなっています。
ARABIA — フィンランドが世界に誇る陶磁器の名窯

1873年、スウェーデンのロールストランド社がヘルシンキに設立した分工場がARABIAの始まりです。当初はロシア帝国向けの陶磁器を生産していましたが、1917年のフィンランド独立後に完全なフィンランド企業となり、20世紀半ばにはフィンランド最大の陶磁器メーカーへと成長しました。

黄金時代を築いたデザイナーたち
カイ・フランク(1911–1989)は「フィンランドデザインの良心」と呼ばれ、キルタ(後のティーマ)やカルティオなど、無駄を削ぎ落とした機能美の名作を生み出しました。1949年にはARABIAのクラウンマーク(王冠のバックスタンプ)もデザインしています。
ウラ・プロコッペ(1921–1968)は、コバルトブルーの手描きが美しいバレンシア(1960–2002年)と、鉄粉を施した独特の土色が魅力のルスカ(1960年代–1999年)を手がけました。ルスカの粗い表面は日本の楽焼に似た風合いで、北欧と日本の美意識の近さを感じさせます。

このほか、ビルガー・カイピアイネン(1915–1988)は「装飾の王」と呼ばれ、名作パラティッシをはじめ華やかな装飾陶芸を制作。エステリ・トムラはフローラシリーズの植物画で知られ、ライヤ・ウオシッキネンも数多くの装飾パターンを手がけました。
ヴィンテージの見分け方 — バックスタンプ(刻印)ガイド

- 1874〜1930年頃:素地への型押し(インプレスト)が主流。1878年以降はフィンランドの紋章入りカラーマークも併用。
- 1932〜1949年:クルト・エクホルムがデザインした「パイプスタンプ」。工場に導入された122mのトンネル窯を表現したデザイン。
- 1949年〜現在:カイ・フランクがデザインしたクラウンマーク(王冠)。月桂樹の輪を逆さにして王冠に見立てた斬新なデザイン。1964年、1971年、1975年、1981年、2014年に更新。
- 生産年の読み方:1940年代以降は月→年の順で数字が刻印。2等品にはローマ数字IIや色付きドットが付されます。
- 2016年以降:ヘルシンキ工場は2016年3月に閉鎖され、現在はタイとルーマニアで生産。ヴィンテージ品はすべてフィンランド製で、「MADE IN FINLAND」の刻印があります。
■詳細スペック
- メーカー:ARABIA / アラビア
- デザイナー:Raija Uosikkinen / ライヤ・ウオシッキネン
- 年代:1976年
- 製造国:フィンランド
- サイズ:横幅20cm 縦幅20cm 高さ2cm
■コンディション:★★★★★(5:完品)
飾り皿として使用されていたものです。特筆すべきダメージはなく、製造時の姿をそのまま留めた大変良いコンディションです。










