ロールストランド エリザベスの37cmオーブン皿|乳白色の見込みを緑の帯と紺の縁が囲む北欧ヴィンテージ食器

ロールストランド エリザベス(Elisabeth)完全ガイド|マリアンヌ・ウェストマンが緑と紺の帯で描いた、オーブンから食卓への炻器

北欧食器タックショミュッケ編集部
ロールストランド エリザベスの37cmオーブン皿を真上から見た姿|乳白色の見込みを緑と紺の帯が囲む
乳白色の見込みを、緑の帯と紺の縁がふちどるエリザベスの37cmオーブン皿。

スウェーデン最古の窯、ロールストランド(Rörstrand)の「エリザベス(Elisabeth)」は、灰色がかった乳白色の炻器(ストーンウェア)に、緑と紺の幅広い帯をめぐらせた食器のシリーズです。デザインしたのは、青い花模様のモナミ(Mon Amie)で知られるマリアンヌ・ウェストマン(Marianne Westman)でした。

花も鳥も描かれていません。器の縁を紺で締め、その内側に緑の帯を一周させるだけの構成です。筆の跡が残る帯は、器によって濃くも淡くも見え、同じ形の皿でも一枚ごとに表情が少しずつ違います。大小のオーブン皿や蓋付きのキャセロールもそろえられ、オーブン皿などの裏印には「OVENPROOF」の文字が刷られています。

この記事では、エリザベスがいつ、どのように作られたのかを、博物館の所蔵記録と当店の実物をもとにたどります。名づけに関わった親族のいるダーラナ地方、器が焼かれたヴェーネルン湖畔の町、そして裏印の一行ずつの読み方まで、順にご案内します。

この記事でわかること

  • エリザベスの製造年代・素材・デザイナー
  • ダーラナの女性親族が名づけた、ウェストマンの炻器シリーズの成り立ち
  • ティーポットからオーブン皿まで、器種の広がり
  • 裏印に並ぶ「VDN S555」「HANDPAINTED」「MW」「OVENPROOF」の読み方
目次
  1. エリザベス(Elisabeth)とは
  2. 名前の由来——ダーラナの親族が名づけた食器
  3. 緑と紺の帯——デザインを観察する
  4. オーブンから食卓へ——炻器と「OVENPROOF」
  5. 器種の広がり——博物館の所蔵品と当店のエリザベス
  6. 裏印の読み方——VDN S555から「MW」まで
  7. ロッタ、イーダ、そしてアニカ——姉妹のシリーズ

エリザベス(Elisabeth)とは

エリザベスは、ロールストランドが1969年から1981年まで製造した炻器の食器シリーズです。この年代は、オーストラリアのビクトリア国立美術館(NGV)が所蔵するエリザベスのティーポットや皿の記録に記されています。デザイナーはマリアンヌ・ウェストマンで、裏印には彼女のイニシャル「MW」が入ります。

シリーズ名 エリザベス(Elisabeth)
窯 ロールストランド(Rörstrand)/スウェーデン・リードヒェーピング
デザイナー マリアンヌ・ウェストマン(Marianne Westman, 1928–2017)
製造年 1969〜1981年
素材 炻器(ストーンウェア/スウェーデン語でstengods)
色 灰色がかった乳白色の地に、緑と紺の幅広い帯
裏印の主な表示 VDN S555、三つの王冠とRörstrand、SWEDEN、筆記体のElisabeth、HANDPAINTED、MW、OVENPROOF
受賞 ドイツの「Die gute Industrieform(よい工業デザイン)」

シリーズ名は、裏印では筆記体で「Elisabeth」とsの綴りで刷られています。日本ではエリザベスと呼ばれ、英語圏の綴りにならってElizabethと表記されることもあります。

ドイツの工業デザイン賞「Die gute Industrieform」

ウェストマンは、エリザベスでドイツの「Die gute Industrieform」を受けました。この賞は1953年、ハノーファーの見本市を運営するドイツ・メッセとドイツ産業連盟の工業デザイン部会によって始まり、1954年から毎年、すぐれた工業製品を選んできました。のちのiFデザインアワードにつながる賞です。

スウェーデンの家庭の器が、工業デザインの国ドイツで評価されたことになります。ウェストマン自身も、ロールストランドを離れたあとの1972年から、ドイツの磁器メーカー、フッチェンロイター(Hutschenreuther)の契約デザイナーとして21年にわたって仕事をしました。

エリザベスのオーブン皿の端を近くで見た様子|オリーブ色の帯に流れるような濃淡が見える
オーブン皿の端を寄って見る。オリーブ色の帯に、流れるような濃淡が残る。

名前の由来——ダーラナの親族が名づけた食器

ウェストマンは1928年、スウェーデン中部ダーラナ地方の町ファールン(Falun)に生まれました。ストックホルムのコンストファック(国立芸術工芸デザイン大学)で1946年から1950年まで学び、22歳でロールストランドに入社しています。

夕暮れの空から見たファールンの市街と湖|ダーラナ地方の町
夕方の空から見たファールン。市街の向こうに湖と島々が広がる。画像:Calle Eklund/V-wolf/Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0

1960年代、ウェストマンは自分が手がけた炻器の食器シリーズの名づけを、ダーラナの女性の親族たちに任せました。こうして名づけられたのが、ロッタ(Lotta)、イーダ(Ida)、そしてエリザベスです。どれもスウェーデンの女性の名前で、アトリエで作られた素朴な趣の食器でした。色づかいは青と緑で、ロッタとエリザベスには幅の広い帯の装飾が入ります。

華やかな花柄でロールストランドの顔となったモナミとは、ずいぶん印象が違います。工業製品の洗練よりも、素朴な親しみやすさを前に出したシリーズでした。名づけを故郷の親族に任せたことにも、その性格がよく表れています。

民族衣装の女性と少女が輪になって踊る1931年のレトヴィークの夏至祭
1931年、ダーラナ地方レトヴィークの夏至祭。民族衣装の女性と少女たちが手をつないで踊る。画像:スウェーデン国立遺産庁(Swedish National Heritage Board)/Wikimedia Commons/パブリックドメイン

ダーラナは、赤い木馬のダーラナホースや、壁や箱を彩る花模様のクルビッツ(kurbits)で知られる地方です。湖と森に囲まれた村々には、赤く塗られた木造の家が並びます。エリザベスの帯に見られるおおらかな筆の流れと、緑や紺の落ち着いた色合いは、こうした土地の景色ともよく響き合います。ダーラナの手仕事についてはダーラナホース完全ガイドで詳しく紹介しています。

ダーラナ地方テルベリ村の道沿いに並ぶ赤い木造の家と納屋
ダーラナ地方テルベリ村。道沿いに赤い木造の家と納屋が並ぶ。画像:Arild Vågen/Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0

ウェストマン本人の生涯と代表作については、マリアンヌ・ウェストマン完全ガイドで詳しくたどっています。

白地に濃紺の花が全面に描かれたロールストランド モナミの角皿
白地に濃紺の花を敷きつめたモナミの角皿。ウェストマンの代表作のひとつ。画像:Nicklas Berfeld(Mother Sweden)/Wikimedia Commons/CC BY-SA 2.0

緑と紺の帯——デザインを観察する

エリザベスの装飾は、縁の紺と、その内側をめぐる緑の帯の二色だけで組み立てられています。オーブン皿を真上から見ると、平らな見込みは乳白色のまま残され、立ち上がりの内側に緑の帯、いちばん外側に深い紺の縁が重なります。余白を大きくとっているので、帯の色がいっそう引き立ちます。

緑の帯は一様な塗りではありません。帯に沿って筆を引いたような流れが見え、釉の厚いところは深い緑に、薄いところはオリーブ色から茶色を帯びた色に変わります。同じシリーズの器を並べると、帯の幅や濃淡が一点ずつわずかに異なっていることがわかります。

ロールストランド エリザベスの30cmオーブン皿を上から見た姿
30cmのオーブン皿。緑の帯の濃淡が皿ごとに異なる。

立体の器では、帯は胴をひとめぐりする横のラインになります。博物館に収められたティーポットやピッチャーでは、胴の裾に紺、その上に緑の帯が重なり、注ぎ口が紺で塗られたものもあります。器の形が変わっても、紺と緑の二本の帯で輪郭を引き締める考え方は変わりません。

ロールストランド エリザベスのエッグスタンド|乳白色の受け皿と紺から緑へ移る脚
乳白色の受けを紺の縁が囲むエッグスタンド。脚は上が紺、下が緑。

同じウェストマンが1970年代に手がけたミラマーレ(Mira Mare)も、花を描かずに帯だけで器をまとめたシリーズでした。紺・青・水色を重ねたミラマーレと、紺と緑を組み合わせたエリザベスを比べると、色の選び方ひとつで印象が大きく変わることがよくわかります。詳しくはロールストランド ミラマーレ(Mira Mare)完全ガイドをご覧ください。

オーブンから食卓へ——炻器と「OVENPROOF」

エリザベスの素地は炻器です。陶器より高い温度で焼き締められた硬い焼き物で、磁器ほど白くはなく、灰色がかった落ち着いた地肌をしています。博物館の記録でも、エリザベスの素地は灰色と記されています。陶器・磁器・炻器の違いは北欧食器の素材ガイドで解説しています。

ウェストマンは、炻器の素地づくりにも関わったデザイナーでした。研修旅行の途中、ドイツの工場で塩釉をかけた灰色がかった炻器を目にし、ロールストランドにも同じような素地を開発させています。新しい炻器は、成形・乾燥から装飾と施釉までをすませたうえで焼成できる素地で、会社に大きな利益をもたらしました。

クリーム色の地に水色の花模様が描かれたロールストランドの炻器の壺
ロールストランドの炻器の壺。両耳つきで、胴に水色の花模様が入る。画像:FBQ/Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0

ウェストマンはそれ以前から、オーブンからそのまま食卓へ出せる器を手がけていました。エリザベスでも大小のオーブン皿や蓋付きのキャセロールがそろえられ、オーブン皿やボウルの裏印には「OVENPROOF(オーブン対応)」と刷られました。台所で焼いた料理を、器ごと食卓の中央に置くための器です。

1960年代末のスウェーデンの標準的なキッチンの白黒写真|吊り戸棚とオーブン付きのコンロ
1960年代末のスウェーデンの標準的なキッチン。タイル張りの壁の前に、引き出し付きの調理台とオーブン付きのコンロが並ぶ。画像:Holger Ellgaard/Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0

製造から半世紀前後を経た器ですので、当店では急な温度変化を避けた扱いと手洗いをおすすめしています。裏印の表示とヴィンテージの器の扱い方は、北欧ヴィンテージ食器は食洗機・電子レンジ・オーブンで使える?で詳しくまとめています。

ヴェーネルン湖のほとり、リードヒェーピングの工場で

エリザベスが焼かれたのは、スウェーデン最大の湖ヴェーネルン(Vänern)の南岸にある町、リードヒェーピング(Lidköping)の工場です。ロールストランドは1726年にストックホルムで創業し、ヨーテボリを経て、1930年代にこの町へ生産を移しました。リードヒェーピングの工場は2005年に生産を終えています。2006年に撮影された工場棟には、博物館の看板が掛かっています。窯の歩みはロールストランド創業300年でたどっています。

リードヒェーピングにあるロールストランドの煉瓦造りの工場棟と博物館の看板
2006年のリードヒェーピングの工場棟。壁にロールストランドの名と、博物館・工場直売店・カフェの看板が掛かる。画像:Harri Blomberg/Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0
ヴェーネルン湖に面したリードヒェーピング港の防波堤と赤い帯の白い灯台
リードヒェーピングの港。防波堤の先に、赤い帯を巻いた白い灯台が立つ。画像:Öyvind Lund/Wikimedia Commons/CC BY 3.0

リードヒェーピングの北、湖に突き出たコーランド島(Kållandsö)の先端には、白い壁と玉ねぎ形の屋根をもつレッコー城(Läckö slott)が建ちます。

白壁と玉ねぎ形の屋根を持つレッコー城の正面とスウェーデン国旗
ヴェーネルン湖畔のレッコー城。白壁の正面の前に、スウェーデン国旗がひるがえる。画像:Lars Mongs, Arxfoto/Wikimedia Commons/CC BY 4.0
紅葉した木々と石垣が続くスウェーデンの自然保護区の秋の草地
リードヒェーピングと同じヴェステルヨートランド地方、ヴェスメストルプ自然保護区の秋。石垣の奥で木々が色づく。画像:Gunnar Creutz/Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0

器種の広がり——博物館の所蔵品と当店のエリザベス

エリザベスは、毎日の食事をひとそろいまかなえるように、器の種類が幅広く作られました。ダーラナ博物館には、エッグスタンド、取っ手付きのボウル、ボウル、ピッチャー、ティーポット、蓋付きのキャセロール、両手付きの皿、そして皿と角皿の一式が収められています。ビクトリア国立美術館にも、ティーポット、カップ&ソーサー、ボウル、直径21cmの皿と27.1cmの皿が所蔵されています。

ティーポットとピッチャー

ダーラナ博物館所蔵のロールストランド エリザベスのティーポット|胴にくすんだ緑と紺の帯
ダーラナ博物館所蔵のティーポット。胴の裾に紺、その上にくすんだ緑の帯がめぐり、注ぎ口と蓋の縁は紺。画像:ダーラナ博物館(Dalarnas museum)/DigitaltMuseum/CC BY

ティーポットは、円筒形の胴の裾に紺、その上に緑の帯をめぐらせ、注ぎ口を紺で仕上げています。ピッチャーも同じ順に帯が重なり、注ぎ口の側を大きく張り出した形です。

ダーラナ博物館所蔵のロールストランド エリザベスのピッチャー
ダーラナ博物館所蔵のピッチャー。下から紺、緑の順に帯が重なる。画像:ダーラナ博物館(Dalarnas museum)/DigitaltMuseum/CC BY

キャセロールと両手付きの皿

オーブンから食卓へ運ぶための器も、さまざまな形で作られました。両側に取っ手のついた蓋付きのキャセロールは、蓋の縁と取っ手、胴の裾を紺で、蓋の上面と胴の中ほどを緑で彩っています。両手付きの皿は見込みが紺で、立ち上がりと外側の乳白色との対比がはっきりした一枚です。

ダーラナ博物館所蔵のロールストランド エリザベスの蓋付きキャセロール
ダーラナ博物館所蔵の蓋付きキャセロール。両側に取っ手がつく。画像:ダーラナ博物館(Dalarnas museum)/DigitaltMuseum/CC BY
ダーラナ博物館所蔵のロールストランド エリザベスの両手付き皿|見込みが紺
ダーラナ博物館所蔵の両手付きの皿。見込みが紺、縁と外側は乳白色。画像:ダーラナ博物館(Dalarnas museum)/DigitaltMuseum/CC BY

皿とボウル

皿は、縁の紺と内側の緑の帯で中央の乳白色をふちどる構成です。大皿、深皿、小皿とサイズをそろえ、角皿と組み合わせた一式として収蔵されている例もあります。ボウルは内側にも外側にも帯が入り、上から覗いても横から眺めても二色の帯が見えます。

ダーラナ博物館所蔵のロールストランド エリザベスの皿と角皿の一式
ダーラナ博物館所蔵の一式。角皿と、大小の平皿・深皿を重ねて並べる。帯はオリーブ色を帯びる。画像:ダーラナ博物館(Dalarnas museum)/DigitaltMuseum/CC BY
ロールストランド エリザベスのスープ皿と木のスプーン
直径20.5cmのスープ皿。紺の縁と緑の帯が、乳白色の見込みを囲む。
ダーラナ博物館所蔵のロールストランド エリザベスのボウル
ダーラナ博物館所蔵のボウル。内側にも紺とオリーブ色の帯がのぞく。画像:ダーラナ博物館(Dalarnas museum)/DigitaltMuseum/CC BY
立てて置かれたロールストランド エリザベスの24.5cmプレート
直径24.5cmのプレート。紺の縁の内側に、茶を帯びた緑の帯がめぐる。

当店のエリザベス

当店では、エリザベスのオーブン皿を2サイズご用意しています。30cmのオーブン皿は縦30cm・横21.5cm・高さ4.5cm、37cmのオーブン皿は縦37cm・横26.5cm・高さ5cmで、37cmは当店で扱うエリザベスのなかでもっとも大きなサイズです。どちらも使われずに保管されていたデッドストック品で、オーブン皿として使われた跡はありません。

各商品のページでは、裏印を含む各面の写真をご覧いただけます。エッグスタンドやスープ皿など、ほかの器種も入荷することがありますので、ロールストランド エリザベスのコレクションもあわせてご確認ください。エッグスタンドの文化については北欧のエッグスタンド完全ガイドで紹介しています。

裏印の読み方——VDN S555から「MW」まで

エリザベスの器を裏返すと、黒で刷られた数行の表示が縦に並びます。当店の37cmのオーブン皿では、上から次の順に読み取れます。

  • VDN S555——スウェーデンの商品品質表示制度に基づく記号
  • 三つの王冠とRörstrand——ロールストランドの工場印
  • SWEDEN——スウェーデン製の表示
  • Elisabeth——筆記体のシリーズ名
  • HANDPAINTED——装飾が手描きであることの表示
  • MW——デザイナー、マリアンヌ・ウェストマンのイニシャル
  • OVENPROOF——オーブン対応の表示
  • D-9——アルファベットと数字の組み合わせ
ロールストランド エリザベスの裏印|VDN S555、三つの王冠とRörstrand、Elisabeth、HANDPAINTED、MW、OVENPROOF
37cmのオーブン皿の裏印。VDN S555から三つの王冠とRörstrand、筆記体のElisabeth、HANDPAINTED、MW、OVENPROOF、D-9まで。下に型押しの93。

VDNは、スウェーデンの商品宣言委員会(Varudeklarationsnämnden)が運用した品質表示制度です。エリザベスの裏印には「VDN S555」が記されており、当時の品質表示制度に基づく記号であることがわかります。表示の仕組みは北欧食器のVDNマークとはで詳しく解説しています。

ロールストランド エリザベスの30cmオーブン皿の裏印|最下行がA-5
30cmのオーブン皿の裏印。並びは37cmと同じで、最下行がA-5。

同じシリーズでも少しずつ違う表示

裏印の表示は、すべての器で同じではありません。当店の30cmと37cmのオーブン皿では、最下行がそれぞれ「A-5」と「D-9」で、素地に型押しされた数字も「92」と「93」と異なります。ビクトリア国立美術館のボウルの記録では、「HANDPAINTED」と「MW」がなく、シリーズ名の下に「OVENPROOF」だけが入ります。ダーラナ博物館の目録には、「Handprinted」と書き起こされた器もあり、オーブン対応の表示も「Ovenproof」のほか「Owenproof」「Ovenware 150」と記録されています。

ロールストランド博物館は、素地に型押しされた数字や文字の多くを、型や素地の種類を示す記号で年代とは関係がないものと説明しています。年代を読む手がかりになる数字とそうでない数字の区別は、ロールストランドのバックスタンプ(刻印)完全ガイドで整理しています。

ロッタ、イーダ、そしてアニカ——姉妹のシリーズ

エリザベスとともにダーラナの親族が名づけたシリーズに、ロッタとイーダがあります。いずれもウェストマンの炻器で、青と緑を基調にしています。

ロッタ(Lotta)は1966年から1974年まで作られたシリーズで、青と緑の縁取りが入ります。エリザベスと同じく幅の広い帯の装飾をもち、裏印には「handpainted」「MW」と並んでシリーズ名の「LOTTA」が刷られています。イーダ(Ida)は、緑のりんごに青の縁、枝と葉を描いた皿が知られ、帯のエリザベスやロッタとは違って具体的なモチーフを描いたシリーズです。

帯の装飾は、その後も別のシリーズへと広がりました。1971年の夏、ウェストマンはオレンジや茶を帯びた緑で新しい帯の装飾案を描きました。そこから生まれたアニカ(Annika)は大きな成功を収め、エリザベスと同じ1981年まで作られました。紺・青・水色の帯で知られるミラマーレも、同じ流れから生まれたシリーズです。帯の色と幅を変えながら、ウェストマンは花柄とは別の、もうひとつの系譜を築いていきました。

オーブンから食卓へという考え方では、同じロールストランドでヘルタ・ベングトソンが手がけたコカ(Koka)も、オーブンで焼いた料理を食卓へ運ぶための青い器でした。あわせてロールストランド コカ(Koka)完全ガイドもご覧ください。

まとめ

要点の整理

  • エリザベスは、マリアンヌ・ウェストマンがロールストランドのためにデザインした炻器の食器シリーズ。製造は1969〜1981年
  • 名前は、ウェストマンの故郷ダーラナの女性の親族が名づけたもの。同じく名づけられた姉妹にロッタ、イーダがある
  • 灰色がかった乳白色の地に、紺の縁と緑の帯。帯の濃淡は一点ずつ異なる
  • ティーポットやピッチャーから、裏印にOVENPROOFと刷られた大小のオーブン皿まで、器種が幅広い
  • ドイツの工業デザイン賞「Die gute Industrieform」を受賞
  • 裏印にはVDN S555、三つの王冠とRörstrand、筆記体のElisabeth、HANDPAINTED、MW、OVENPROOFが並ぶ。素地に型押しされた数字の多くは年代と関係がない

モナミの華やかさとは別に、ウェストマンは故郷の親族に名づけを託し、二色の帯だけで静かなシリーズを組み立てました。裏返して一行ずつ表示を読んでいくと、半世紀前のリードヒェーピングの工場と、ダーラナの家族の姿が少しずつ見えてきます。

参考資料
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