ロールストランド ミラマーレのコーヒーカップ&ソーサー|乳白色の地に紺と青の帯の北欧ヴィンテージ食器

ロールストランド ミラマーレ(Mira Mare)完全ガイド|マリアンヌ・ウェストマンが帯で描いた、海の色の器

北欧食器タックショミュッケ編集部
木のテーブルに置かれたロールストランド ミラマーレのコーヒーカップ&ソーサー
わずかにグレーを帯びた乳白色の地に、紺と青の帯をめぐらせたロールストランド ミラマーレのコーヒーカップ&ソーサー。

スウェーデン最古の窯、ロールストランド(Rörstrand)の「ミラマーレ(Mira Mare)」は、青い四弁花で知られるモナミ(Mon Amie)と同じデザイナー、マリアンヌ・ウェストマン(Marianne Westman)が手がけたシリーズです。けれどもこちらに花はありません。明るい地のうえを、紺・青・水色の帯が静かにめぐります。

皿やソーサーでは、その帯が同心円を描きます。カップや鉢では、胴をひとめぐりする横の帯になります。描かれているのは線と帯だけで、絵柄で器を飾るのではなく、帯の置きどころで器そのものの輪郭を引き立てています。名前が思わせるのは、イタリア語で海を意味する言葉です。幾重にも重なる青の帯は、水平線の見える海の色を想起させます。

この記事では、ミラマーレがどんなシリーズなのか、デザイナーのマリアンヌ・ウェストマンがどんな人だったのか、そして300年つづくロールストランドという窯の歩みを、スウェーデンの風景とともにたどります。裏側に押された「三つの王冠」の印の読み方まで、ひととおりご案内します。

この記事でわかること

  • ミラマーレがどんなシリーズか——手描きの帯と年代
  • デザイナー、マリアンヌ・ウェストマンの歩み
  • 花柄のモナミと、帯のミラマーレの違い
  • 「三つの王冠」の裏印と、年代の見分け方
目次
  1. ミラマーレ(Mira Mare)とは
  2. 「海を見る」——名前と帯のデザイン
  3. モナミと対をなす——花柄と帯
  4. デザイナー、マリアンヌ・ウェストマン
  5. スウェーデン最古の窯、ロールストランド
  6. 当店のミラマーレ
  7. 年代の見分け方——三つの王冠とミラマーレの印

ミラマーレ(Mira Mare)とは

ミラマーレは、ロールストランドが1970年代に製造した食器のシリーズです。デザインを手がけたのはマリアンヌ・ウェストマンです。素地は厚みのあるストーンウェア(炻器)で、わずかにグレーを帯びた乳白色の地が特徴です。

装飾は帯だけで構成されています。紺・青・水色——濃さの異なる三つの青を重ね、皿やソーサーでは縁に沿った同心円に、カップや鉢では胴をめぐる横帯になります。花も人物も風景も描かれていません。帯の太さと置く位置だけで、一枚いちまいの器のかたちを見せていきます。裏印には「HANDPAINTED」の表示があり、帯は筆で引かれています。縁の揺らぎや濃淡に筆の運びが残り、同じかたちの器でも一点ごとに表情がわずかに異なります。

そろえられたかたちも豊富でした。カップ&ソーサー、各サイズの皿や深皿、ボウル、蓋付きのボウルやキャセロール、ティーポット、ピッチャー、クリーマー、シュガーボウル、エッグスタンドまでがつくられ、朝の食卓から取り分けの器までをひととおりまかなえる、日々の暮らしのための一式として組まれていました。

白背景で見るロールストランド ミラマーレのピッチャーの帯模様
乳白色の胴に、青と紺の太い帯を重ねたピッチャー。帯の濃淡だけでかたちを見せるミラマーレの装飾。

かたちごとに変わる帯の見え方

同じ帯でも、器のかたちによって表情が変わります。平らな皿やソーサーでは、帯は中心をかこむ同心円になり、紺の細い線と幅広の青の帯が交互にめぐります。カップやボウルのように立ち上がりのある器では、帯は胴をひとめぐりする横のラインになり、見る角度によって幅が変わって見えます。蓋付きのキャセロールでは、蓋の縁と胴の裾とに帯が分かれてめぐり、あいだの乳白色の胴とコントラストをつくります。かたちは違っても、帯の置きどころで器の輪郭を引き立てる考え方は、シリーズを通して一貫しています。

真上から見たロールストランド ミラマーレのソーサーの同心円の帯
ソーサーを真上から。縁から中心へ、紺の線と青の帯が同心円を描く。

「海を見る」——名前と帯のデザイン

ミラマーレ(Mira Mare)という名は、イタリア語で海を意味する「mare」を思わせる響きをもっています。濃い紺から淡い水色へと移ろう帯の重なりは、沖から岸へと色を変える海の面や、水平線のかさなりを想起させます。

ウェストマンがここで用いたのは、線と帯という最小限の要素だけでした。器の縁に一本、胴に太い一帯、裾にもう一本——帯の数と間隔を変えるだけで、カップは軽やかに、深皿はゆったりと見えてきます。絵柄で表面を埋めるのではなく、余白を残して器の輪郭を際立たせる考え方が、このシリーズの静けさを生んでいます。

島々が浮かぶストックホルム群島の夏の海
島々が低く連なるストックホルム群島の夏の海。沖へと色を変える水の面。

青を層にして海を思わせるという発想は、スウェーデンの暮らしと無縁ではありません。無数の島が浮かぶ群島、国土をうるおす大きな湖——水辺はこの国の風景の芯にあります。帯の色の移ろいを眺めていると、そんな水の景色が自然と重なってきます。

ダーラナのシリヤン湖に浮かぶ白い蒸気船と雲の映り込み
ダーラナのシリヤン湖に浮かぶ白い蒸気船と、水面にうつる雲。スウェーデンの暮らしに寄り添う水辺。

モナミと対をなす——花柄と帯

ウェストマンの名を最も広めたのは、1952年に発表されたモナミ(Mon Amie)です。白い地に咲く青い四弁花は、スウェーデンでもっとも親しまれた食器のひとつになりました。花が器いっぱいに散りばめられた、晴れやかで明るい絵柄です。

青い四弁花が並ぶロールストランド モナミの皿のテーブルセッティング
白地に咲く青い四弁花のモナミ。器いっぱいに花を散らした、ウェストマンの代表作のひとつ。

ミラマーレは、そのモナミとちょうど対をなします。使う色は同じ青で、青と白のすっきりした取り合わせも受け継がれています。けれども花はひとつもなく、描かれるのは帯だけです。にぎやかに咲かせたモナミに対して、ミラマーレは線を引き、間をあける。ひとりのデザイナーのなかにある、華やかさと静けさという二つの表情を並べて見ることができます。

青い食器をもっと広く見渡したい方は、ロールストランドやARABIAの青の名作をまとめた北欧の青い食器ガイドもあわせてご覧ください。

デザイナー、マリアンヌ・ウェストマン

マリアンヌ・ウェストマン(Marianne Westman、1928–2017)は、スウェーデン中部ダーラナ地方の町ファールンに生まれました。銅鉱山で栄えた土地で、鉱山由来の赤い顔料「ファールン・レッド」は、スウェーデンの木造家屋をいろどる、あの深い赤の故郷でもあります。

ダーラナ地方ファールンの銅山大露天掘り跡と街並み
ダーラナ地方ファールンの大露天掘り跡「ストラ・ストーテン」と、奥に広がる街並み。
夏の緑とバラに囲まれたスウェーデンの赤い木造家屋
夏の緑とバラに囲まれた、スウェーデンの赤い木造家屋。ファールン・レッドでいろどられた家並み。

ウェストマンはストックホルムのコンストファック(国立美術工芸デザイン大学)で陶芸を学び、1950年にロールストランドへ入りました。以後1971年まで在籍し、モナミ、野菜をモチーフにしたピクニックやポモナなど、スウェーデンの家庭に深く根づいた食器を次々に生み出しました。最盛期には、ロールストランドのデザインの約45%を彼女ひとりが担うまでになりました。

ストックホルムのコンストファック美術工芸デザイン大学の校舎
ストックホルム南部テレフォンプラーンにある、現在のコンストファックの校舎。スウェーデンの作家を育ててきた美術学校。

生まれ故郷ダーラナの夏は、湖と森と、赤い木造家屋のいろどりに満ちています。花と緑の葉で飾ったメイポールを立てる夏至祭は、この地方でとりわけ色濃く受け継がれてきました。器に落とし込まれた青と白の清潔な取り合わせの奥には、こうした北欧の光と水の記憶が流れているように思えます。

ダーラナ地方ラルタの夏至祭で立てられた緑の飾りのメイポール
ダーラナ地方ラルタの夏至祭。緑と花輪で飾られたメイポールと、民族衣装の人びと。

ウェストマンの生涯と代表作をより詳しくたどりたい方は、マリアンヌ・ウェストマン完全ガイドをご覧ください。

スウェーデン最古の窯、ロールストランド

ロールストランドは、1726年にストックホルムで設立された、スウェーデン最古の陶磁器工場です。王室の庇護のもと、ファイアンス焼きから始まり、やがてボーンチャイナやフリント陶器へと技術を広げていきました。ミラマーレが生まれるよりずっと前、18世紀の首都ストックホルムから、この窯の物語は始まっています。

ストックホルム旧市街ガムラ・スタンの広場ストールトルゲットの切妻屋根の商家
ストックホルム旧市街ガムラ・スタンの広場ストールトルゲット。色とりどりの切妻屋根の商家が囲む。
ストックホルムの水辺に建つ19世紀のロールストランド磁器工場の版画
水辺に煙突を連ねる19世紀のロールストランド磁器工場。版画に残された、かつての工場の姿。

工場は1926年にヨーテボリへ、さらに1936年から39年にかけてリードヒェーピング(Lidköping)へと移りました。スウェーデン最大の湖ヴェーネルンの岸にひらけたこの町は、以後ロールストランドの器づくりの中心地になりました。ミラマーレもまた、この湖畔の工場で焼かれた器です。

リードヒェーピングの赤レンガの旧ロールストランド工場の建物
リードヒェーピングに残る旧ロールストランド工場の赤レンガの建物。現在はロールストランド・センターとして使われている。
ヴェーネルン湖の岸に広がるリードヒェーピングの街の空撮
ヴェーネルン湖の岸に広がるリードヒェーピングの街を望む空撮。
夕暮れのヴェーネルン湖の岩の岸辺
夕暮れのヴェーネルン湖の岩の岸辺。リードヒェーピングの工場が面した、スウェーデン最大の湖。

スウェーデン国内での生産は2005年12月30日に終了しました。閉じられたのはリードヒェーピングの国内工場で、ブランド自体は現在もフィスカース(Fiskars)グループのもとで続いています。2005年以前につくられた器は、北欧デザインの充実した時代を伝えるヴィンテージとして受け継がれています。窯の300年の歩みは、ロールストランド入門と創業300年の記事で詳しくたどれます。

当店のミラマーレ

当店では、ミラマーレのカップ&ソーサー、ピッチャー、蓋付きキャセロール、ボウル、エッグスタンドをお取り扱いしています。いずれも1970年代にスウェーデンの工場で製造された品で、帯の色合いやかたちの違いを並べて見ることができます。

ロールストランド ミラマーレの蓋付きキャセロール 小(14cm)
蓋付きキャセロール 小(14cm)
ロールストランド ミラマーレのチョコレートカップ&ソーサー
チョコレートカップ&ソーサー
ロールストランド ミラマーレの18.5cmボウル
18.5cm ボウル
ロールストランド ミラマーレの19.5cm大ボウル
19.5cm 大ボウル

コーヒーカップ&ソーサーは、口径8.5cm、容量約200mlのカップに直径14.2cmのソーサーを合わせた、日々のコーヒーのために作られたサイズです。ひとまわり大きいチョコレートカップ&ソーサーは、直径10cm、高さ8.2cmのカップで、ホットチョコレートをたっぷり注ぐために作られました。

高さ14cm、容量約900mlのピッチャーと、直径14cmの蓋付きキャセロール 小は、帯がもっとも大きく見える器です。18.5cmのボウルと19.5cmの大ボウルは、サラダや果物を盛って食卓の中央に置く盛り鉢として作られました。乳白色の椀を帯の台が支えるエッグスタンドは、未使用のデッドストック品です。

各商品のページから、裏印を含む各面の写真をご覧いただけます。在庫は入れ替わりますので、最新の品ぞろえはミラマーレの商品一覧でご確認ください。

年代の見分け方——三つの王冠とミラマーレの印

ミラマーレの器を裏返すと、ロールストランドの象徴である「三つの王冠」のバックスタンプが押されています。イタリック体の工場名「Rörstrand」を三つの王冠が囲み、その下に「SWEDEN」の文字、さらに筆記体で「Mira Mare」とシリーズ名が添えられています。シリーズ名の下には「HANDPAINTED(手描き)」「OVENPROOF(オーブン対応)」の表示が入り、上には品質表示の「VDN」マークが並びます。

ロールストランド ミラマーレの三つの王冠の裏印とHANDPAINTED OVENPROOFの表示
ミラマーレの裏印。VDNマーク、三つの王冠とRörstrand、SWEDEN、筆記体のMira Mare、HANDPAINTED・OVENPROOFの文字が並ぶ。

「OVENPROOF」は、オーブンから食卓へそのまま出せる器として製造されたことを示す、当時の表示です。製造から半世紀近くを経た器ですので、当店では手洗いと、急な温度変化を避けた慎重な扱いをおすすめしています。

「三つの王冠」のマークは1884年から2000年まで使われました。1937年には製造時期を示す3桁の数字コードが導入されました。最初の2桁が製造年、3桁目が年内の時期を示します。ただし、裏面には型番など年代とは関係のない数字もあるため、区別して読む必要があります。「SWEDEN」の刻印は、スウェーデンの工場で焼かれた証です。刻印の変遷と年代の読み方は、ロールストランドのバックスタンプ(刻印)完全ガイドで体系的に確認できます。

まとめ

要点の整理

  • ミラマーレは、マリアンヌ・ウェストマンがロールストランドのために手がけた1970年代のストーンウェアのシリーズ
  • 花柄のモナミとは対照的に、紺・青・水色の帯だけで器のかたちを引き立てるデザイン。帯は裏印の表示どおり手描き
  • デザイナーの故郷はダーラナ地方ファールン、学んだのはストックホルムのコンストファック
  • ロールストランドは1726年創業のスウェーデン最古の窯で、器はリードヒェーピングの工場で焼かれた
  • 裏印には「三つの王冠」とRörstrand、SWEDEN、筆記体のMira Mareが見られます。製造年代を示すコードがあれば、年代判別の手がかりになります。

絵柄をそぎ落とし、帯だけで海の色を思わせるミラマーレは、ウェストマンの静かな一面をよく伝えるシリーズです。にぎやかなモナミと並べてみると、ひとりのデザイナーの幅の広さがいっそう際立ちます。

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