縁に白を一本残した楕円 使われてきた器の記録をそのままに
グスタフスベリ(Gustavsberg)のゲフィール(Gefyr)シリーズ、楕円形のオーブン皿です。スティグ・リンドベリ(Stig Lindberg)が1952年に手がけた耐熱シリーズの一枚で、裏面にはオーブン耐熱を示す「ウグンセルドファスト(UGNSELDFAST)」の語が刻まれています。
ゲフィールが提案したのは、オーブンで焼いた料理を別の器に移さず、そのまま食卓へ運ぶという食事のかたちでした。窯の熱に耐えることと、食卓に置いて美しいこと。この二つを一つの器で満たすのがシリーズの主題です。
横幅28.3cm、縦幅19.8cm、高さ3.8cm。グラタンやローストを一皿ぶん受けとめる大きさです。ただの楕円ではありません。長辺の両端がゆるやかに立ち上がって反り、そこがそのまま持ち手になっています。ミトンをはめた手で掴んでも滑りにくい形で、オーブンから食卓まで運ぶ動作のために設計されたことがわかります。
色はやわらかなパステルイエローで、縁のきわだけ白い釉薬が細い線となって残されています。この一本の白が、平たい楕円の輪郭をくっきりと際立たせます。裏面は白い素地のままです。炻器(ストーンウェア)ですので、手に取るとかなりの重みがあり、その質量がそのまま蓄熱の力になります。
ゲフィールが製作されたのは1952年から1956年までの短い期間です。本作は、その用途どおりに使われてきた一枚です。表面に残るカトラリーの跡は傷というより、この器が70年前のスウェーデンの台所で果たしていた役割の記録といえます。
グスタフスベリ — 200年の歴史を持つスウェーデン陶磁器の聖地
1825年、ストックホルム群島のヴェルムド島にグスタフスベリ磁器工場が創設されました。当初はイギリス式の製法を導入し、1839年に現在も知られる錨(アンカー)のマークを採用しています。1863年にはコーンウォールから粘土を輸入してボーンチャイナの生産を開始し、やがてスウェーデンを代表する窯へと成長しました。
黄金時代を築いた巨匠たち
1917年に初代アートディレクターに就任したヴィルヘルム・コーゲ(1889–1960)は、「美しい日用品をすべての人に」という理念のもとで労働者向けの食器リリエブローを発表しました。さらにアルジェンタ、ファルスタなどの名シリーズを生み出しています。
1949年にコーゲの後任となったスティグ・リンドベリ(1916–1982)は、ベルサ、スピサリブ、プルーヌス、アダムなど数々の名作を手がけ、グスタフスベリの黄金時代を築きました。「千の芸術家(Tusenkonstnären)」と呼ばれた彼は、陶磁器だけでなくテキスタイル、ガラス、グラフィックデザインなど多岐にわたる分野で活躍しています。
ヴィンテージの見分け方 — バックスタンプ(刻印)ガイド
グスタフスベリの食器には裏面にバックスタンプ(刻印)が施されています。このスタンプのデザインは時代とともに変化しており、製造年代を特定する重要な手がかりとなります。1839年に採用された錨(アンカー)マークは現在まで同社のシンボルとして受け継がれています。1993年にオリジナルの食器生産が終了し、現在はHPF社が復刻版を製造しています。ヴィンテージ品はフリント陶器やフェルトスパット磁器で、復刻版のボーンチャイナとは素材が異なります。
■詳細スペック
- メーカー:Gustavsberg / グスタフスベリ
- デザイナー:Stig Lindberg / スティグ・リンドベリ
- シリーズ名:Gefyr / ゲフィール
- 刻印:GUSTAVSBERG(錨マーク)/UGNSELDFAST/GEFYR/PASTELL
- 年代:1952〜1956年
- 素材:炻器(ストーンウェア・耐熱)
- 色:パステルイエロー
- 製造国:スウェーデン
- サイズ:横幅約28.3cm/縦幅約19.8cm/高さ約3.8cm
■コンディション:★★★☆☆(3:並品)
表面は光に透かすとカトラリー跡が見られます。割れや欠けはなく、実用に向く一枚です。










