オーブンから食卓へ、そのまま運ぶ 1952年のリンドベリが描いた笹の葉
グスタフスベリ(Gustavsberg)のゲフィール(Gefyr)シリーズ、笹の葉をかたどった30cmのリーフ型プレートです。スティグ・リンドベリ(Stig Lindberg)が1952年に手がけた耐熱シリーズの一枚で、裏面にはオーブン耐熱を示す「ウグンセルドファスト(UGNSELDFAST)」の語が刻まれています。
ゲフィールが提案したのは、オーブンで焼いた料理を別の器に移さず、そのまま食卓へ運ぶという食事のかたちでした。窯の熱に耐えることと、食卓に置いて美しいこと。この二つを一つの器で満たすのがシリーズの主題です。当店はここに、リンドベリの設計の順序が逆転していると読み解いています。耐熱の器に飾りを足したのではなく、食卓に置きたい形をまず決めて、その形のまま焼ける土と釉薬を与えたのです。ゲフィールのフォルムが楕円であり、雫であり、この笹の葉であるのは、そのためです。
横幅30cm、縦幅10.5cm、高さ3.2cm。細長い葉の形で、片端には葉柄をかたどった小さな突起がついています。この突起は形の締めくくりであると同時に、器を持ち上げるときに指がかかる場所でもあります。深さは3cmあまりと浅く、幅は10.5cmしかありません。ニシンやアスパラガス、細長く切った野菜を一列に並べるための寸法で、食卓では他の器のあいだにすっと差し込めます。
色はやわらかなパステルイエローです。縁のきわまで一様に色が回り、白い素地は裏面にだけ残されています。釉薬は厚く、光を受けると内側の面がまるく反射します。炻器(ストーンウェア)ですので、手に持つと見た目よりずっしりと重みがあります。
裏面の刻印にある「52」は製造年ではなく、フォルムごとに与えられた型番です。ゲフィールには26番、30番、56番といった別の形が確認されており、同じ笹の葉形で長さ29.5cmの作例にも52の刻印が見られます。あわせて押される「パステル(PASTELL)」は、この語をもたない作例も存在することから、ゲフィールのなかの一群を指すものです。
ゲフィールが製作されたのは1952年から1956年までの短い期間です。オーブンから食卓へ。1950年代のスウェーデンが思い描いた新しい食事の風景が、この笹の葉の一枚に残されています。
グスタフスベリ — 200年の歴史を持つスウェーデン陶磁器の聖地
1825年、ストックホルム群島のヴェルムド島にグスタフスベリ磁器工場が創設されました。当初はイギリス式の製法を導入し、1839年に現在も知られる錨(アンカー)のマークを採用しています。1863年にはコーンウォールから粘土を輸入してボーンチャイナの生産を開始し、やがてスウェーデンを代表する窯へと成長しました。
黄金時代を築いた巨匠たち
1917年に初代アートディレクターに就任したヴィルヘルム・コーゲ(1889–1960)は、「美しい日用品をすべての人に」という理念のもとで労働者向けの食器リリエブローを発表しました。さらにアルジェンタ、ファルスタなどの名シリーズを生み出しています。
1949年にコーゲの後任となったスティグ・リンドベリ(1916–1982)は、ベルサ、スピサリブ、プルーヌス、アダムなど数々の名作を手がけ、グスタフスベリの黄金時代を築きました。「千の芸術家(Tusenkonstnären)」と呼ばれた彼は、陶磁器だけでなくテキスタイル、ガラス、グラフィックデザインなど多岐にわたる分野で活躍しています。
ヴィンテージの見分け方 — バックスタンプ(刻印)ガイド
グスタフスベリの食器には裏面にバックスタンプ(刻印)が施されています。このスタンプのデザインは時代とともに変化しており、製造年代を特定する重要な手がかりとなります。1839年に採用された錨(アンカー)マークは現在まで同社のシンボルとして受け継がれています。1993年にオリジナルの食器生産が終了し、現在はHPF社が復刻版を製造しています。ヴィンテージ品はフリント陶器やフェルトスパット磁器で、復刻版のボーンチャイナとは素材が異なります。
■詳細スペック
- メーカー:Gustavsberg / グスタフスベリ
- デザイナー:Stig Lindberg / スティグ・リンドベリ
- シリーズ名:Gefyr / ゲフィール
- 型番:52
- 刻印:GUSTAVSBERG(錨マーク)/UGNSELDFAST/GEFYR/PASTELL
- 年代:1952〜1956年
- 素材:炻器(ストーンウェア・耐熱)
- 色:パステルイエロー
- 製造国:スウェーデン
- サイズ:横幅約30cm/縦幅約10.5cm/高さ約3.2cm
■コンディション:★★★★★(5:完品)
未使用のまま保管されてきたデッドストック品です。割れ、欠け、ヒビはなく、カトラリー跡も見られません。釉薬の下に青緑色の小さな点が一箇所ありますが、これは製造時のペイント飛びで、焼成前についた顔料がそのまま釉薬に封じ込められたものです。顔料は釉薬の下にありますので、表面は平滑です。70年を経てなお、大変美麗な状態を保っています。










