
カイピアイネンが描いた「楽園」 フィンランド製オリジナルの名作
ARABIA社の名器パラティッシのほとんど存在しない幻のティーポットです。本作のフォルムはモレーニ(Moreeni)という1990年代の初めに販売された無地の食器シリーズを踏襲しています。
シリーズの1作品であったモレーニのティーポットに、パラティッシの柄がプリントすることで表現されています。そのため底面のバックスタンプにもシリーズ名として”MOREENI”の刻印があります。
1990年台にARABIAではモレーニの無地の柄に、様々なプリントを施すことで記念モデルを制作しています。おそらくパラティッシのティーポットは、その時期に合わせて作られたものではないかと思います。
パラティッシシリーズはさまざまな食器が展開されていますが、ティーポットはシリーズとしては正式に販売されていません。そのため本作は限定品や非売品ではないかとおもいます。
希少シリーズという存在を越えて「珍品」と表現するほうが良い作品です。おそらくほとんど数が製造されなかったためヴィンテージ市場に出てくることは極めて珍しいと思います。パラティッシの歴史の一部としてこの機会にぜひご覧ください。
「装飾の王」が生んだ楽園

パラティッシをデザインしたビルガー・カイピアイネン(1915-1988)は、フィンランドが誇る「装飾の王(Koristeiden kuningas)」。幼少期にポリオを患い、ろくろが使えない身体でありながら、50年以上にわたりアラビア工場で装飾芸術に人生を捧げました。
ミニマリズムが席巻する北欧デザインの潮流に、彼は真っ向から抗いました。
「装飾性は人類最古の執着である。それを去勢すれば、人間は弱者になる。私は単調さと単純化が嫌いだ」
妻の死、スミレ、そして楽園へ
1966年、カイピアイネンは最愛の妻マッギを失います。彼女の棺をブルーのスミレで覆ったその日から、スミレは彼の生涯のモチーフとなりました。
「ショパンはスミレを愛した。私はショパンを愛する」
悲しみの中で生まれたのが、200万個のセラミックビーズで構成された40平方メートルの巨大壁画「オルヴォッキメリ(すみれの海)」。1967年モントリオール万博でグランプリを受賞しました。

このオルヴォッキメリの延長線上に、1969年、パラティッシは誕生します。元の名前は「タルハ(果樹園)」。ベルギー国王ボードワン夫妻がアラビア工場を訪問した際、完成したばかりのこのデザインに一目惚れ。ファビオラ王妃が自宅用に購入を希望し、「パラティッシ(楽園)」と名付けられました。
アラビア工場 — パラティッシが生まれた場所


ヴィンテージと現行品の違い
パラティッシの生産は1969年に始まり、1974年に一度中断。1988年に復活しましたが、その際にオリジナルの楕円形プレートから丸形に変更され、素材もファイアンス陶器からヴィトロ磁器に変わりました。さらに2016年にはフィンランド工場が閉鎖され、現在はタイで製造されています。
つまり、フィンランド製のヴィンテージ・パラティッシは——特に1969〜1974年のオリジナル期のものは——カイピアイネン自身が監修した時代の、もう二度と作られることのない器です。
パラティッシのバックスタンプ(ロゴ)の変遷

■詳細スペック
- メーカー:ARABIA / アラビア
- デザイナー:Birger Kaipiainen / ビルガー・カイピアイネン
- シリーズ名:Paratiisi / パラティッシ
- 年代:1990年頃(推定)
- 生産国:フィンランド
- サイズ:横幅23.5cm 高さ13cm 底面直径175cm 容量1200ml(満水時1500ml)
■コンディション:★★★★★(5:完品)
特筆すべきダメージのない完品のコンディションです。使用歴がなく保存状態も大変良いデッドストック品となります。

