アラビア パラティッシ カラー オーバルプレート ヴィンテージ

パラティッシ(Paratiisi)完全ガイド — 歴史・ロゴの変遷・ヴィンテージの見分け方

北欧食器タックショミュッケ編集部

パラティッシ(Paratiisi)は、フィンランドの陶磁器メーカーアラビア(ARABIA)が誇る最も有名な食器シリーズです。フィンランド語で「楽園(Paradise)」を意味するこの名作は、1969年にデザイナービルガー・カイピアイネンによって発表されました。

この記事では、パラティッシの歴史、デザイナーの人物像、バリエーション、バックスタンプ(ロゴ)の変遷、ヴィンテージと復刻版の違い、アイテム一覧、そして購入ガイドまで、すべてを網羅した完全ガイドをお届けします。

アラビア パラティッシ カラー 25cmオーバルプレート ヴィンテージ ビルガー・カイピアイネン

(アラビア パラティッシ カラー オーバルプレート — 果物と花の楽園)


この記事の要点

  • パラティッシ(Paratiisi)は、フィンランドのARABIA社が1969年から製造する食器シリーズ
  • デザイナーはビルガー・カイピアイネン(Birger Kaipiainen, 1915-1988)。フィンランド陶芸界を代表する巨匠
  • 名前はフィンランド語で「楽園(Paradise)」を意味する
  • カラー(1969年〜)、パープル(限定)、ブラック(2000年再生産〜)の3バリエーションが存在
  • 1969〜1971年製造のヴィオラロゴ入りパラティッシが、ヴィンテージ市場で最も高値で取引される
  • ヘルシンキの工場は2016年の春先に製造を終え、その後のパラティッシは国外の契約工場で作られている

目次


パラティッシの歴史

アラビア(ARABIA)は、1873年にフィンランドのヘルシンキに設立された陶磁器メーカーです。あまり知られていませんが、元々ARABIAはスウェーデンのロールストランド(Rörstrand)社がロシア向けの陶器を生産する拠点としてフィンランドに設立した工場が前身となっています。首都ヘルシンキのアラビア地区に設けられたことが社名の由来です。

20世紀に入ると、カイ・フランクやビルガー・カイピアイネンといった才能あるデザイナーたちが加わり、フィンランドデザインの黄金時代を牽引しました。

1969年に発表されたパラティッシは、カイピアイネンの芸術的なビジョンを日常の食器に落とし込んだ画期的な作品でした。大胆に描かれた果物(ブドウ、リンゴ、カシス)と花のモチーフは、北欧食器の常識を覆すような華やかさで、発表されると大きな反響を呼びました。

パラティッシの年表

  • 1968年 — 試作品が制作される
  • 1969年 — パラティッシ発売(ヴィオラロゴ)
  • 1969〜1974年 — 初期生産期間
  • 1974年 — 前年の石油危機の影響で生産中止
  • 1988年 — 根強い人気を受けてフィンランド国内産として復活
  • 2016年 — ヘルシンキの工場が製造を終え、国外の契約工場での生産に移る
  • 現在 — フィスカースグループ(イッタラ)のもとで生産が続く
アラビア パラティッシ オーバルプレート 25cm 1971年製 フィンランド北欧食器
1971年製パラティッシ・オーバルプレート。アラビアを象徴する名作

1971年製のオーバルプレート(29.5cm・大皿)を当店にご用意しています。


ビルガー・カイピアイネン — 「装飾家の王」

ビルガー・カイピアイネン ポートレート - パラティッシの生みの親 フィンランドの陶芸家
ビルガー・カイピアイネン(Birger Kaipiainen, 1915-1988)

ビルガー・カイピアイネン(Birger Kaipiainen, 1915-1988)は、フィンランド西部ポリ出身の陶芸家です。幼少期にヘルシンキへ移住し、ポリオを患って身体に障害を負いました。

1937年に中央工芸学校(現アアルト大学)を卒業し、アラビアのアート・デパートメントに入所し、以後50年以上にわたりアラビアで活動しました。

「装飾家の王(King of Decoration)」と呼ばれたカイピアイネンは、ミニマリズム全盛の時代にあえて華やかな装飾を追求した異端児でした。ブドウや果物をモチーフにした華やかな作品で知られ、1969年に発表されたパラティッシは彼の代表作にしてアラビア最大のアイコンとなりました。

カイピアイネンの主な受賞歴・経歴

  • 1937年 — アラビアのアート・デパートメントに入所
  • 1960年 — ミラノ・トリエンナーレ受賞
  • 1967年 — モントリオール万博グランプリ受賞
  • 1969年 — パラティッシ発表
  • 1977年 — 名誉教授の称号を授与
  • 1988年 — 逝去

パラティッシの種類

カラーパラティッシ

黄色、紫、青の果物と花が鮮やかに描かれたオリジナルバージョンです。最も人気が高く、ヴィンテージ品は特に価値があります。

ARABIA パラティッシ ティーポット

(パラティッシ カラー — 果物と花の鮮やかな色彩)

ブラックパラティッシ

モノトーンで表現されたシックなバージョンです。カラー版とは異なる魅力があります。

アラビア パラティッシ ブラック 25cmオーバルプレート ヴィンテージ モノトーン

(パラティッシ ブラック オーバルプレート — シックなモノトーン)

パープルパラティッシ

2012年にStockmann百貨店の150周年を記念して発売された、紫を基調としたバリエーションです。現行品として生産されています。


ロゴ(バックスタンプ)の完全ガイド

パラティッシのヴィンテージ品を見分ける最も確実な方法は、裏面のロゴマーク(バックスタンプ)です。パラティッシは時代とともにバックスタンプが変化しており、非常にわかりやすい指標となっています。

パラティッシの2種類のロゴ比較 ヴィオラロゴと葉っぱロゴ

(パラティッシの2つのヴィンテージロゴの比較)

1. 試作品スタンプ(1968年)

1968年に試作品として制作されたパラティッシに押されたスタンプです。現存数はごく限られています。

2. ヴィオラロゴ・年月刻印あり(1969年〜)

1969年の発売当初のロゴです。パンジー(ヴィオラ)の花柄が描かれ、さらに生産年月が刻印されているバージョンです。ARABIA製品は60年代には生産年月がわかるようにバックスタンプに月と年が刻印されていました。

このヴィオラロゴ期の1970年製オーバルプレート(大皿・29.5cm)を当店にご用意しています。

パラティッシ ヴィオラロゴと葉っぱロゴの比較写真

(上がヴィオラロゴ、下が葉っぱロゴ)

3. ヴィオラロゴ・年月刻印なし(〜1971年)

1971年にARABIA製品のバックスタンプへの年月刻印が終了しました。そのため同じヴィオラロゴでも年月が刻印されているバージョンとそうでないものが存在します。

パラティッシ ヴィオラロゴ バックスタンプ ARABIA MADE IN FINLAND

(ヴィオラロゴのバックスタンプ — ARABIA MADE IN FINLAND の刻印入り)

4. 葉っぱロゴ(1971年後半〜1974年)

1971年の下半期頃からはヴィオラの部分がARABIAのロゴにリプレイスされた葉っぱロゴが生産されました。発売から2年を経てロゴが変わったのは生産体制の変化が背景にあります。

パラティッシ ヴィオラロゴ ヴィンテージ カップパラティッシ 葉っぱロゴ ヴィンテージ カップ

(上:ヴィオラロゴのパラティッシ 下:葉っぱロゴのパラティッシ。葉っぱロゴのほうが僅かだが色が濃く輪郭線がはっきりしている)

1974年、前年の石油危機の影響で生産が中止となりました。発売からわずか5年後のことでした。当時は大ヒットしていましたが、燃料価格の高騰によって採算が合わなくなったようです。

5. 王冠ロゴ・カラー(1988年〜)

根強い人気があったため、パラティッシは1988年にフィンランド国内産として復活しました。カラー刷りの王冠ロゴが使用されました。

6. 王冠ロゴ・白黒(〜2014年)

1988年の再開後、カラー刷りの王冠ロゴは白黒の王冠ロゴへと変わりました。

7. 現行ロゴ(2014年12月〜)

2014年12月から現在のロゴに変わりました。2015年1月の時点でも、パラティッシの皿はヘルシンキの工場で作られていました。工場は2016年の春先に製造を終え、その後は国外の契約工場で作られています。

パラティッシのバックスタンプ(ロゴ)の歴史 1969年〜2014年

(パラティッシのロゴ変遷一覧)

パラティッシ バックスタンプ年表

1968年 — 試作品スタンプ
1969年 — ヴィオラロゴ発売(年月刻印あり)
1971年 — ARABIA製品の年号の刻印が終了(ヴィオラロゴ・刻印なし)
1971年後半 — 葉っぱロゴ発売
1974年 — 石油危機で生産中止
1988年 — 王冠ロゴ(カラー)で生産再開
1988〜2014年の間 — 王冠ロゴがカラーから白黒へ移行
2014年 — 現行のロゴ

※ 試作品スタンプ(1968年)を含めると、合計7種類のバックスタンプが存在します。全てを揃えるのは相当の気合が必要です。


ヴィンテージと復刻版の違い

ここからは、北欧食器専門店として数多くのパラティッシを扱ってきた経験に基づく、ヴィンテージと復刻版の本質的な違いについてお話しします。

同じ柄でも、器が違う — 下地・作った工場・裏印

パラティッシの柄は、1969年の発表から変わっていません。変わったのは、柄をのせる器と、それを作る工場です。フィンランドとイギリスの博物館の収蔵記録、フィンランドの報道から、時期ごとの違いを表にまとめました。

1969〜1974年
(ヴィンテージ)
再開後のフィンランド製
(〜2016年春)
2016年春から
下地 陶器(ファイアンス) 陶器より硬い素地。博物館の記録では炻器(せっき)、2000年の品はヴィトロ磁器 ヴィトロ磁器
作った場所 ヘルシンキのアラビア工場 ヘルシンキのアラビア工場。2015年1月の報道では、パラティッシの皿はヘルシンキ製で、アラビアのカップやピッチャーの多くはアジアの工場から届いていた 国外の契約工場(アラビアの製品の大半はタイ)
裏印 ヴィオラロゴ、葉っぱロゴ 王冠ロゴ(カラーから白黒へ)、2014年12月から現行ロゴ 現行ロゴ

絵柄は、ヴィンテージも再開後の品も転写で入っています。タンペレのヴァプリーッキ博物館は、1970年代前半のティーカップ&ソーサーについて「釉の下に転写」と記録しています。

ヘルシンキの工場は、2016年の春先に機械を止めました。最後の数年は、いくつかのシリーズの皿と鉢だけを作っていました。フィンランドの公共放送Yleは2017年に、アラビアの製品の大半はタイの契約工場で作られていると伝えています。

目跡(めあと)

フィンランド製のヴィンテージには「目跡」と呼ばれる支柱跡があって、釉薬がかぶっていない箇所が食器の背面に見られます。今の価値観でみると「雑に見える」部分ですが、これがヴィンテージの証でもあります。

目跡 — 北欧食器特有の窯の支柱跡

(北欧食器特有の目跡)

貫入(かんにゅう)

貫入と呼ばれる釉薬面に走るヒビは、ヴィンテージでは当たり前のように検品を通過していました。当時は完品と同じ値段で店頭で販売されたという話もあります。良くも悪くもおおらかな時代の製作物がいわゆるヴィンテージ食器で、同じ製品でもミリ単位の誤差が生じているのは当たり前です。そのためプレートを重ね置きするときれいに収まらないことがよくあります。

北欧ヴィンテージ食器の貫入(ひびわれ)の例

(縁に見られる貫入)

北欧ヴィンテージ食器の貫入(ひびわれ)の例

(クモの巣状の貫入)

色ツヤの違い — ヴィンテージ最大の魅力

ヴィンテージの最大の魅力は色ツヤにあります。当店で年代の違うパラティッシを並べてみると、違いはまず色に出ます。1970年代前半の品は、乳白色の陶器の上に絵柄があり、その上を釉が覆っています。青は濃い群青から薄紫までの階調があり、色が下地の白に溶け込んで、絵柄が表面から浮いて見えません。

再開後のフィンランド製は、下地が硬く青白くなり、色は表面に載って見えます。2016年以降の品は色がさらに濃く均一で、白もくっきりしています。どちらも美しい器ですが、同じ柄でも見え方ははっきり違います。

陶磁器の色の見え方は、顔料だけでは決まりません。下地の白さ、釉の厚み、絵柄が釉の下にあるか上にあるかでも変わります。陶磁器の青い色をコバルトの顔料で出すのは、1970年代も2020年代もふつうのことです。パラティッシは、上の表のとおり、色をのせる器そのものが変わりました。

個人的な見解 — 葉っぱロゴ期(1971〜1974年)が最も美しい

オリジナルのヴィンテージであるヴィオラロゴのパラティッシは個体差が大きく、ものによって色味の良し悪しがはっきり分かれます。

第二弾のロゴ(葉っぱロゴ)になってからのパラティッシは、より完成度の高い色彩となっています。価格的にはそれほど高いものにはなりませんが、個人的にはこの第二期のパラティッシがもっとも美しく、全盛期のARABIAを感じさせるものだと思います。

青色は清々しく、描画の線は明確で、下地の白はオフホワイトとツヤが共存しています。基本的には第二期のほうが色味が濃く力強くなっており、カップの縁は薄造りになっています。

ヴィンテージは今の価値観では優れて見えるとは限りません。あくまで古いものには古いもの独特の良さがある、ということで美術品を鑑賞するようにヴィンテージを愛していただければと思います。


アイテム一覧

ARABIA パラティッシ ティーポット

(パラティッシのティーポット)

パラティッシは非常に幅広いアイテム展開がされていました。

  • プレート — 14cm、17cm、21cm、26cm、オーバル25cm、オーバル29.5cmなど
  • カップ&ソーサー — コーヒーカップ、ティーカップ、デミタスカップ
  • ボウル — 小ボウル、深皿(スープ皿)17cm、23cm
  • ティーポット — 流通量が少ない
  • スープチューリン — 特大サイズの蓋付きスープ鍋。流通量はごく少ない
  • エッグカップ — 小さいながらもパラティッシの魅力が凝縮

→ パラティッシの在庫一覧を見る

アラビア パラティッシ ヴィオラロゴ 36cm大皿 オーバルプレート ヴィンテージ

(パラティッシ ヴィオラロゴ 36cm大皿)


買い方・選び方

初めての一枚におすすめ

21cmプレートはインテリアとしても映える一枚です。ケーキやサラダを盛り付けるプレートとしてデザインされたサイズでした。

ギフトにおすすめ

コーヒーカップ&ソーサーのセットは贈り物としても人気があった。ヴィンテージのパラティッシは特別感があり、北欧食器好きの方へのプレゼントに喜ばれます。

コレクターの方に

ヴィオラロゴ時代の製品や、ティーポット、スープチューリンは流通量が限られます。在庫は新着商品でご確認いただけます。


ヴィンテージか復刻版・現行品かを見分けるポイント

手元のパラティッシがヴィンテージなのか、復刻版や現行品なのかは、裏面のバックスタンプでほぼ判断できます。ヴィオラロゴ(1969〜1971年)と葉っぱロゴ(1971年後半〜1974年)は生産中止前のフィンランド製ヴィンテージ、カラーの王冠ロゴは1988年に再開されたフィンランド国内生産品です。2014年12月以降は現行ロゴに切り替わりました。ヘルシンキの工場は2016年の春先に製造を終え、その後は国外の契約工場で作られています。バックスタンプは、その一枚がいつ、どこで作られたのかという年代と来歴を読むための手がかりです。

ヴィンテージ品と復刻版・現行品とでは、下地の素材と作った工場が違います(「同じ柄でも、器が違う」の表)。目跡や貫入、下地や釉薬の色ツヤといった特徴は、「ヴィンテージと復刻版の違い」で述べたとおり、フィンランド製ヴィンテージの証といえます。価値を見るうえで押さえたいのは、ロゴの世代(年代)、製造国、1974年に一度生産が終了した初期のものかどうか、そしてコンディションの4点です。

→ アラビア食器全体でのフィンランド製とタイ製の違いや、購入先の見極め方は「アラビア食器のフィンランド製とタイ製の違い・信頼できる購入先の見極め方」をご覧ください。


まとめ

パラティッシは、北欧食器の最高傑作と言っても過言ではありません。50年以上愛され続けるデザインの普遍性は、ビルガー・カイピアイネンの才能の証です。

バックスタンプの変遷を理解すれば、手元のパラティッシがどの時代に作られたものかがわかります。ぜひお手元のコレクションのスタンプを観察してみてください。そして、ヴィンテージならではの色ツヤを、美術品を鑑賞するように楽しんでいただければと思います。

当店北欧食器タックショミュッケでは、フィンランドから直接買い付けた本物のヴィンテージ・パラティッシのみを取り扱っています。

→ パラティッシの全商品を見る | アラビアの全商品を見る | 北欧食器の基礎知識

参考資料

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