リサ・ラーソン トリップ・トラップ・トルル(Tripp Trapp Trull)完全ガイド|大・中・小3匹の猫の見分け方・名前の意味・底のしるし
北欧食器タックショミュッケ編集部スウェーデン・フィンランドから北欧ヴィンテージ食器を直接買い付け、1,000点以上を検品してきた当店が、一次情報と実物の観察にもとづいて執筆・編集しています。
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トリップ・トラップ・トルル(Tripp Trapp Trull)は、スウェーデンの陶芸家リサ・ラーソン(Lisa Larson, 1931–2024)が、ストックホルム近郊の窯グスタフスベリ(Gustavsberg)で手がけた猫の像のシリーズです。同じ形の猫が大・中・小の3つの大きさで作られていて、いちばん大きな猫がトルル、中くらいの猫がトラップ、いちばん小さな猫が、名前の並びからトリップと呼ばれています。
トルルは1968年にデザインされ、中くらいのトラップは1972年から1974年まで作られました。胴には太い縞がめぐり、三角の耳をぴんと立てて、前足をそろえて立っています。
この記事では、スウェーデン国立美術館(Nationalmuseum)の所蔵記録と、当店に届いた3匹の写真をもとに、3匹の見分け方と底のしるし、そしてスウェーデン語の「tripp, trapp, trull」という言葉の意味を紹介します。1970年代初めのストックホルムやグスタフスベリの写真もあわせてご覧ください。
この記事でわかること
- トルルは1968年にデザインされ、中くらいのトラップは1972〜1974年に作られたこと
- 「tripp, trapp, trull」は大きさの順に並ぶ3つを表すスウェーデン語の言い回しで、もとは三目並べに似た遊びの名前だったこと。トロル(troll)の意味ではないこと
- 3匹は高さでまず見分けられ、縞の色だけでは名前を決められないこと
- 底には、名前とサインのあるもの、押し印のあるもの、何のしるしもないものがあること
目次
当店では、トリップ・トラップ・トルルのうち、いちばん小さなトリップと、いちばん大きなトルルを扱っています。→ トリップの商品ページ/トルルの商品ページ
トリップ・トラップ・トルル(Tripp Trapp Trull)とは
同じ形の猫を、3つの大きさで
トリップ・トラップ・トルルは、炻器(せっき)でできた猫の像です。3匹は同じ形をしていて、違うのは大きさです。当店に届いた3匹の高さは、トリップが11.5cm、トラップが17cm、トルルが26cmでした。

いちばん小さなトリップは手のひらにのるほどの大きさで、いちばん大きなトルルは、その2倍を超える高さがあります。

スウェーデン国立美術館に残る2匹
2000年、当時の持ち主だったスウェーデン協同組合連合会(KF)は、グスタフスベリの工場で作られた品々のコレクションを、国と国立美術館に寄贈しました。以来、このコレクションは同館が管理しています。
同館の所蔵品のなかに、このシリーズの猫が2匹あります。1匹はトルルで、デザインは1968年です。高さ26cm、幅13.3cm、奥行き12.3cmの炻器で、青と黄の絵付けと、レリーフの装飾があります。
もう1匹は、同じシリーズの「中くらいの猫」として登録された像です。製造は1972年から1974年までで、高さは16.8cmです。黒・黄褐色・緑の絵付けと、線を刻んだ装飾があり、底に「TRAPP.」と書かれています。トラップの製造期間は、3年ほどでした。
いちばん小さな猫の記録は、同館にはありません。記録と底の文字で名前が確かめられるのは、大きなトルルと中くらいのトラップです。当店では、いちばん小さな猫を、名前の並びにしたがってトリップとしています。
名前の意味——大きさの順に並ぶ3つを呼ぶ言葉
もとは三目並べに似た遊びの名前
「tripp, trapp, trull」は、スウェーデン語の古い言い回しです。もとは、二人がそれぞれ3つの駒を持ち、決まった規則で一列に並べる盤上の遊びの名前でした。紙に書いて遊ぶ三目並べ(〇×遊び)を指して使われることもありました。1750年ごろの文章には、すでにこの遊びの名前が出てきます。
この言葉は、低地ドイツ語から来ています。遊びに勝ったときの唱え言葉「tripp trapp trull, min möl is vull(わたしの粉ひき臼はいっぱいだ)」の出だしの部分です。「trull」は、前の2語の頭の「tr」に「ull」をつけ、「vull(いっぱい)」と韻を踏むように作られた語です。
大・中・小の3つを表す言い回し
この言葉は、大きさが順に増していく3人や3つの物、それも大きさの差がほぼそろったものを指す言い回しとしても使われてきました。
ノルディスカ博物館(Nordiska museet)には、この名で呼ばれた子ども用のベッドが収められています。1940年代の前半にシグルン・ビューロウ=ヒューベ(Sigrun Bülow-Hübe)がデザインし、KFが製造したもので、大きなベッドの下に小さな2台を差し込んでしまえるつくりです。

南部の港町カルマル(Kalmar)では、高さの違う3軒の小さな木造の家が「トリップ・トラップ・トルル」と呼ばれてきました。名前は、家の高さの違いから付いたものです。グスタフスベリは1981年に、この3軒を描いた絵皿も作っています。
リサ・ラーソンの猫も、この言い回しのとおり、大きさの順に並ぶ3匹です。
トルルとトロルは別の語
この言い回しのトルル(trull)は、トロル(troll)とは別の語です。先に見たとおり、「trull」は「vull」と韻を踏むために作られた語で、3匹は大きさの違う猫の像です。
ストッケの椅子「トリップトラップ」とは別のもの
日本では「トリップトラップ」というと、ノルウェーのストッケ(Stokke)の子ども用の椅子がよく知られています。この椅子はピーター・オプスヴィック(Peter Opsvik)のデザインで、1972年に発売されました。
リサ・ラーソンのトルルがデザインされた1968年は、この椅子の発売の4年前にあたります。名前は似ていますが、別々の作品です。
3匹の見分け方——まず高さを見る
3匹に共通する形
3匹は、丸い頭が細い首で胴につながり、すそに向かって広がる釣り鐘のような形をしています。三角の耳を立て、胴のすそには2つの前足がそろっています。

胸のあたりには体をひとまわりする縞が3本あり、その下では、おなかの前で縞がとぎれて左右に短い縞が並びます。背中には7本ほどの縞が入っています。
見分けるときに、まず手がかりになるのは高さです。当店の3匹では、トリップとトラップ、トラップとトルルのあいだに、それぞれ5cm以上の差がありました。
トリップ——クリーム色の地に黒い縞
当店のトリップは、クリーム色の地に黒い縞が入り、目はオレンジ色です。前足は艶のある黒で、耳の内側も黒く塗られています。

顔は、黒い輪郭のアーモンド形の目と、黒い逆三角の鼻、左右に4本ずつの細いひげで表されています。
トラップ——白い地にオレンジの縞
当店で扱ったトラップは、白い地にオレンジ色の縞が入っていました。縞の部分は表面が細かくざらつき、艶のある白い地とは見た目の質感が違います。耳の内側と前足は、金属のように光る緑がかった黒です。

国立美術館のトラップは、黒・黄褐色・緑の絵付けと記録されていて、白っぽい地に黄褐色の縞が入っています。写真で見ると、当店のトラップとは縞の色合いが違います。
トルル——青灰色の地に濃い青の縞
当店のトルルは、淡い青灰色の地に濃い青の縞が入り、目は黄色です。目には斜めに入った青い瞳とまぶたの線があり、半分閉じたような目つきをしています。

顔を近くで見ると、ひげや口もとの線は表面に刻まれた溝に色が入っていて、鼻は丸く盛り上がっています。

縞の色と名前
当店の3匹は、黒、オレンジ、青と、縞の色がそれぞれ違いました。同館のトルルは当店のトルルと同じ青の縞で、トラップは黄褐色の縞です。大きさごとに色が決まっていたことを示す記録はなく、縞の色だけで名前を決めることはできません。
名前を確かめるときは、まず高さを見て、次に底のしるしを見ると判断しやすくなります。
底のしるしを読む
名前とサインのある底
当店で扱ったトラップの底には、黒っぽい文字で「TRAPP.」と書かれ、その下に「Lisa.L.」、左から斜めに「Gustavsberg」の文字が並んでいました。右下には、「GUSTAVSBERG」と「SWEDEN」の文字が入った楕円の紙ラベルが貼られていました。同館のトラップの底にも、同じ3つの言葉と紙ラベルがあります。

当店のトルルの底には、「LISA L.」の押し印と、上に「GUSTAVSBERG」、中央に錨、下に「SWEDEN」と入った丸い印があり、「TRULL.」の名前が書き添えられています。底の外まわりには釉薬がかかっておらず、ベージュの素地がのぞいています。

同館のトルルの底には、筆で書いたものではない「TRULL」「LISA.L」「GUSTAVSBERG」の文字が入り、楕円の紙ラベルが貼られています。錨の丸い印は見られません。同じトルルでも、底のしるしの入れ方は一つではありませんでした。
しるしのない底
一方、当店のトリップの底には、名前もサインもラベルもありません。くぼんだ底の中央に、小さな穴がひとつあるだけです。この猫をトリップとしている根拠は、大きさと形です。

しるしの有無だけで、年代を決めることはできません。グスタフスベリの錨の印と年代の関係はグスタフスベリの年代の見分け方で、リサ・ラーソンのサインについてはリサ・ラーソン完全ガイドで解説しています。
1968年から1970年代へ——同じころのリサ・ラーソン
1968年のリサ・ラーソン
リサ・ラーソンは1954年にグスタフスベリに入り、1980年まで在籍しました。トルルがデザインされた1968年には、入社から14年がたっていました。

同じ1968年には、結婚の贈り物として構想された像「社会の議論(Samhällsdebatten)」もデザインされています。花婿が花嫁を抱いて敷居をまたぐ姿にする予定でしたが、陶製の花婿の脚が重さに耐えられず、花嫁のドレスが像を支える形に変わりました。
1972年——トラップの製造が始まった年
トラップの製造が始まった1972年には、犬のシリーズ「ケンネル(Kennel)」の製造も始まりました。財務大臣グンナル・ストレング(Gunnar Sträng)をかたどった貯金箱も、この年にデザインされ、同じ年に作られています。
トラップが作られていたころのグスタフスベリとストックホルム
グスタフスベリは、ストックホルムの東、ヴェルムドー(Värmdö)にある窯の町です。次の2枚は、トラップが作られていた1973年の春に撮られました。


同じころのストックホルムの街も、写真でたどってみます。都心の広場には青空市場が立ち、通りにはフォルクスワーゲンのビートルが走っていました。


スウェーデンでは1965年から1974年にかけて、100万戸の住宅を建てる「ミリオン・プログラム(miljonprogrammet)」が進められ、ストックホルムの郊外にも大きな集合住宅が建ちました。冬には、広い原っぱに張った氷の上でスケートをする人の姿も見られました。


リサ・ラーソンの猫たちのなかで
リサ・ラーソンは、生涯にわたってたくさんの猫をつくりました。1955年のリッラ・ズー(Lilla Zoo)の猫、ストラ・ズー(Stora Zoo)の猫、のちのKスタジオ(Keramikstudion)のキャットマンズ(Måns)まで、猫の姿はさまざまです。

そのなかでトリップ・トラップ・トルルは、同じ形の猫を大・中・小の3つの大きさでそろえたシリーズです。

猫の作品の歩みはリサ・ラーソンと猫で、ほかの動物のシリーズはリサ・ラーソンの動物たち完全ガイドで紹介しています。当店では、キャットマンズの黒猫と白茶の猫も扱っています。

まとめ
トリップ・トラップ・トルルは、リサ・ラーソンがグスタフスベリで手がけた、大・中・小3匹の猫のシリーズです。トルルのデザインは1968年、中くらいのトラップの製造は1972年から1974年まででした。
名前の「tripp, trapp, trull」は、大きさの順に並ぶ3つを表すスウェーデン語の言い回しで、もとは三目並べに似た遊びの名前でした。3匹を見分けるときは、まず高さを確かめ、底のしるしをあわせて見ると判断しやすくなります。
要点の整理
- 名前——大きいほうからトルル、トラップ。いちばん小さな猫は名前の並びからトリップ。大きさの順に並ぶ3つを表すスウェーデン語で、トロルの意味ではない
- 年代——トルルは1968年デザイン、トラップは1972〜1974年製造
- 大きさ——当店の3匹で高さ11.5cm・17cm・26cm。国立美術館のトルルは26cm、トラップは16.8cm
- 色——当店の3匹は黒・オレンジ・青。色だけでは名前を決められない
- 底——名前とサインを書いたもの、押し印のあるもの、しるしのないものがある
参考資料
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