リサ・ラーソン ストラ・ズーのシマウマ(Sebra)。縞を線刻したシャモット炻器の陶製フィギュア

リサ・ラーソンの動物たち完全ガイド|リッラ・ズー/ストラ・ズー/メナジェリ/アフリカ/スカンセンの見分け方

北欧食器タックショミュッケ編集部

リサ・ラーソンの動物たち完全ガイド|リッラ・ズー/ストラ・ズー/メナジェリ/アフリカ/スカンセンの見分け方

リサ・ラーソン グスタフスベリ ストラ・ズーのシマウマ
リサ・ラーソンがグスタフスベリで手がけた炻器(せっき)のシマウマ。彫られた縞と控えめな釉が、動物を数本の線に還元する。

ぽってりとした胴に、数本の線で描かれた顔があります。スウェーデンの陶芸家リサ・ラーソン(Lisa Larson, 1931–2024)がグスタフスベリ(Gustavsberg)で生み出した動物たちは、六十年を経てなお世界中で愛されています。猫、ライオン、キリン、シマウマ、クマ——モチーフは動物園そのものですが、写実ではありません。土のざらつきを残した炻器の肌に、必要なだけの線を刻む。その簡潔さが、かえって動物の愛らしさとおおらかさを引き出しています。

リサ・ラーソンの動物は、ひとつの大きな塊ではなく、いくつもの「シリーズ」として発表されてきました。小さな動物園「リッラ・ズー(Lilla Zoo)」、大きな動物園「ストラ・ズー(Stora Zoo)」、風変わりな「メナジェリ(Menageri)」、サバンナの「アフリカ(Afrika)」、北欧の森の「スカンセン(Skansen)」。名前を知ると、手のひらの一体がどの群れに属し、いつごろ生まれたのかが見えてきます。

この記事では、当店の在庫写真とスウェーデン国立美術館・グスタフスベリ陶磁器美術館の記録をもとに、リサ・ラーソンの主要な動物シリーズを一つずつたどります。スウェーデン語の動物名の一覧や、ヴィンテージの工場期と後年の工房製を見分ける手がかりまで、コレクションの地図になるようまとめました。

この記事でわかること

  • リサ・ラーソンとグスタフスベリの歩み、動物たちが生まれた背景
  • リッラ・ズー/ストラ・ズー/メナジェリ/アフリカ/スカンセンなど主要シリーズの特徴と発表年
  • スウェーデン語の動物名(Katt、Lejon、Igelkott…)の読み方一覧
  • ヴィンテージの工場期と、ケラミークスタジオ以降の工房製を見分ける手がかり

目次

  1. リサ・ラーソンとグスタフスベリ
  2. 素材——シャモット炻器という肌ざわり
  3. リッラ・ズー(Lilla Zoo)——1955年、はじまりの小さな動物園
  4. ストラ・ズー(Stora Zoo)——1957年、大きな動物園
  5. メナジェリ(Menageri)——五匹の風変わりな仲間
  6. アフリカ(Afrika)——1964年、サバンナの動物たち
  7. スカンセン(Skansen)——北欧の森へ
  8. ノアの箱舟・犬・カメ——そのほかの動物たち
  9. 動物の名前——スウェーデン語の呼び名一覧
  10. 見分け方——工場期とケラミークスタジオ
  11. リサ・ラーソンと日本
  12. まとめ

リサ・ラーソンとグスタフスベリ

リサ・ラーソンは1931年9月9日、スウェーデン南部スモーランド地方のヘルルンダ(Härlunda)に生まれました。深い森と湖、赤い木造の農家が点在する、静かな田園地帯です。少女時代を過ごしたこの風景の記憶は、のちに彼女がつくる動物やこどもの造形に、どこかおおらかな素朴さとして流れ込んでいきます。

スウェーデン スモーランド地方の田園風景
リサ・ラーソンが生まれ育ったスモーランド地方の田園。木の柵と針葉樹、なだらかな畑がつづく。(写真: Wikimedia Commons)

1949年から1954年にかけて、彼女はヨーテボリの工芸学校(Slöjdföreningens skola、のちのHDK)で陶芸を学びました。同じ学校は時代によって名前を変えており、今日のHDK(デザイン・工芸大学)につながります。赤煉瓦の重厚な校舎は、北欧の工芸教育の一つの拠点として知られてきました。

ヨーテボリのHDK(旧・工芸学校)の校舎
ヨーテボリのHDK。リサ・ラーソンが陶芸を学んだ工芸学校の流れをくむ、赤煉瓦の校舎。(写真: Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)

卒業後の1954年、彼女はストックホルム近郊のグスタフスベリ窯に入社します。北欧の工芸コンペで頭角を現した若い陶芸家を見出したのは、当時の芸術監督スティグ・リンドベリ(Stig Lindberg)でした。リサ・ラーソンは、若手デザイナーたちが自由に試作を重ねた工房「レークストゥーガン(lekstugan、遊びの小屋)」で仕事を始めます。以後1980年までのおよそ26年間、グスタフスベリは彼女の創作の舞台となりました。

1946年のグスタフスベリ窯の全景
1946年のグスタフスベリ窯。入り江に面した工場群。リサ・ラーソンが入社する数年前の姿。(写真: Sune Sundahl / Wikimedia Commons, CC0)

グスタフスベリは、ストックホルムの東、ヴェルムドー島の入り江に開けた工場町です。18世紀に築かれた窯を核として、労働者の住宅や学校、港が一体となった共同体が育ちました。桟橋に船が着き、対岸に森が迫るこの土地の穏やかな空気は、リサ・ラーソンの動物たちの、どこか肩の力が抜けた表情と無縁ではないように思えます。

グスタフスベリの港と町並み
グスタフスベリの港。窯を中心に住宅や学校が集まった工場町として発展した。(写真: Holger Ellgaard / Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)

1980年にグスタフスベリを離れたのちも、リサ・ラーソンの活動は続きました。1992年には、フランコ・ニコロシ(Franco Nicolosi)、シヴ・ソリン(Siv Solin)とともにグスタフスベリで工房「ケラミークスタジオ(Keramikstudion)」を共同で立ち上げ、代表作のフィギュアを少量ずつ手がける体制を整えます。2022年にはスウェーデン政府から芸術への貢献をたたえるイリス・クオルム(Illis quorum)メダルを受けました。2024年3月11日、ナッカで92年の生涯を閉じています。

素材——シャモット炻器という肌ざわり

リサ・ラーソンの動物を手に取ると、多くの人がまず表面のざらつきに気づきます。この独特の肌をつくっているのが「シャモット炻器(chamotte stoneware)」です。

リサ・ラーソン メナジェリのサイの頭部
メナジェリのサイ(Noshörning)。オリーブ色の釉がかかった顔と、彫られた渦巻きの目。素地のざらつきが縞の陰影を受けとめる。

炻器(せっき)とは、高い温度で焼き締められ、緻密で丈夫になった陶質を指します。そこへ「シャモット」——一度焼いた陶土を細かく砕いた骨材——を混ぜると、素地に細かな粒が散り、焼き上がりの表面にざらりとした素朴な質感が生まれます。つるりとした磁器とは対照的な、土そのものの手ざわりです。リサ・ラーソンの動物が、工業製品でありながら手仕事の温もりを感じさせるのは、この素地に多くを負っています。

装飾は、素地への絵付けと、部分的な施釉で組み立てられています。スウェーデン国立美術館の記録でも、彼女の動物は「絵付け(bemålad)」と「施釉(glaserad)」と説明されています。顔の輪郭や縞は素地に刻まれた線として表され、背やたてがみに色釉が差される。全身を塗り込めず、素地の色をあえて残すことで、動物はいっそう軽やかに見えます。量産にあたっては型による鋳込み(gjutet stengods)でかたちを起こした個体もあり、国立美術館所蔵のスカンセンのヤマウサギは「鋳込み炻器、黄と濃茶の絵付け」と記録されています。

リッラ・ズー(Lilla Zoo)——1955年、はじまりの小さな動物園

リサ・ラーソンの動物シリーズの出発点が、1955年に発表された「リッラ・ズー(Lilla Zoo、小さな動物園)」です。しっぽをぴんと立てた一匹の猫をつくったところ、芸術監督のスティグ・リンドベリがそれを気に入り、シリーズ化を勧めたと伝えられています。入社の翌年、二十代半ばの仕事でした。

リサ・ラーソン リッラ・ズーの猫
リッラ・ズーの猫(Katt)。立てたしっぽと細い脚、素地に刻まれた縞。手のひらにおさまる小ささ。

リッラ・ズーは、名前のとおり小ぶりな動物たちの群れです。おおむね4.5〜14センチほどで、スウェーデン国立美術館が所蔵する猫(Katt)は10×11.5×4センチ、馬(Häst)は10×13×4センチと記録されています。素材は炻器で、絵付けと部分的な施釉がほどこされています。掌にのる大きさと、線だけで表された顔立ちは、以後のリサ・ラーソンの動物の原型となりました。

ストラ・ズー(Stora Zoo)——1957年、大きな動物園

小さな動物園に続いて、1957年には「ストラ・ズー(Stora Zoo、大きな動物園)」が生まれます。名前が示すとおり、リッラ・ズーよりもずっと大ぶりで、存在感のある動物たちです。英語版の資料では、このシリーズは13点の動物からなり、モダンな造形の猫から堂々としたキリンまでが含まれると説明されています。

リサ・ラーソン ストラ・ズーの猫の顔
ストラ・ズーの猫(Katt)。青みを帯びた釉と、掻き込まれた口ひげ。リッラ・ズーの猫よりも量感がある。

ストラ・ズーの魅力は、大きな塊としての造形にあります。動物の輪郭は思いきって単純化され、細部よりも全体のシルエットが優先されています。冒頭に掲げたシマウマ(Zebra)は、その好例です。彫られた縞が胴の丸みに沿って流れ、控えめな灰みの釉が全体を落ち着かせています。

リサ・ラーソン ストラ・ズーのカバと小鳥
ストラ・ズーのカバ(Flodhäst)。背に二羽の白い小鳥がとまる、物語のある一体。

スウェーデン国立美術館のコレクションには、ストラ・ズーのキリン、シマウマ、ホッキョクグマ(Isbjörn)、そして牛(Ko)が収められています。サバンナの動物と北欧の牛が同じ群れに並ぶあたりに、リサ・ラーソンらしい大らかさがあります。背中に小鳥を乗せたカバのように、動物どうしの関係を小さな物語として添える工夫も、このシリーズから豊かになっていきました。

メナジェリ(Menageri)——五匹の風変わりな仲間

「メナジェリ(Menageri)」は、五匹からなる少し風変わりな動物の群れです。サイ(Noshörning)、猫(Katt)、お化けネズミ(Spökmus)、ヒトコブラクダ(Dromedar)、カバ(Flodhäst)という顔ぶれで、英語版の資料では1965年の作とされています。年については資料により幅があるため、ここでは「1960年代半ば」として押さえておきます。

リサ・ラーソン メナジェリのヒトコブラクダ
メナジェリのヒトコブラクダ(Dromedar)。飴色の釉のこぶと、素地のまま残された頭部の対比。

メナジェリの面白さは、動物どうしの大きさが実際の縮尺と関係なく決められているところにあります。ラクダとサイと猫が、それぞれの物語の都合で伸び縮みしている。シャモット炻器の素地に、控えめな色の釉が部分的に差されるのは他のシリーズと同じですが、造形はより自由で、ユーモラスです。なお、ライオン(Lejon)やリス(Ekorre)はメナジェリではなく、後述するノアの箱舟の仲間にあたります。名前の似た群れが多いので、ここは取り違えやすい点です。

アフリカ(Afrika)——1964年、サバンナの動物たち

1964年に発表された「アフリカ(Afrika)」は、その名のとおりサバンナの動物を主題としたシリーズです。英語版の資料では6点の動物からなるとされ、ライオン(Lejon)、象(Elefant)、トラ(Tiger)などが確認できます。

リサ・ラーソン アフリカのライオン
アフリカのライオン。丸い塊にまとめられた体と、放射状に刻まれたたてがみ。正面から見ると太陽のよう。

アフリカのライオンは、リサ・ラーソンの動物のなかでもとりわけ愛されているモチーフです。体はほとんど球に近い塊にまとめられ、たてがみは放射状の線として彫り込まれています。まっすぐこちらを見る顔は、威嚇ではなく、どこか瞑想的です。強い動物を、力ではなく静けさで表す——ここにも彼女の視点があらわれています。

スカンセン(Skansen)——北欧の森へ

サバンナから一転、北欧の森の動物を集めたのが「スカンセン(Skansen)」です。1970年代後半の仕事で、スウェーデン国立美術館所蔵のヤマウサギ(Fjällhare)は「スカンセンシリーズ、1977〜1979年製」と記録されています。

ストックホルムの野外博物館スカンセン
ストックホルムの野外博物館スカンセン。草屋根の古い木造家屋が移築され、園内には北欧の動物を集めた動物園がある。(写真: Pudelek / Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)

シリーズ名は、ストックホルムのユールゴーデン島にある野外博物館スカンセンにちなみます。1891年に開かれたスカンセンは、スウェーデン各地の古い建物を移築した野外博物館であると同時に、クマやオオカミ、ヘラジカなど北欧の動物を集めた動物園でもあります。園内の子ども動物園は「リルスカンセン(Lillskansen)」と呼ばれ、世代を超えて親しまれてきました。リサ・ラーソンは、この身近な動物園の住人たちを、キツネ、ノウサギ、ヘラジカ、クマ、クズリ、ポニーといった北欧の顔ぶれとして陶に写しています。

スカンセンのヒグマ
スカンセンで暮らすヒグマ。スウェーデンの森を代表する動物。(写真: Wikimedia Commons, CC BY-SA 2.0)
リサ・ラーソン スカンセンのクマ
スカンセンのクマ(Björn)。濃い飴色の釉に、毛並みを思わせる細かな線が刻まれる。

スカンセンの動物は、アフリカやズーの動物にくらべて、より丸みを帯び、静かです。眠るように背を丸めたキツネ、角を掲げたトナカイ——冬の長い北欧の、寡黙な生きものたちの気配が宿っています。下の眠るキツネは、釉薬の名手ベルント・フリーベリ(Berndt Friberg)との協働によるもので、フリーベリらしい深みのある釉が全身を包んでいます。

リサ・ラーソン スカンセンの眠るキツネ
スカンセンの眠るキツネ。リサ・ラーソンとベルント・フリーベリの協働による一体で、釉のうつくしさが際立つ。
リサ・ラーソン スカンセンのトナカイ
スカンセンのトナカイ(Ren)。灰みの釉に刻まれた縦の線と、素地のまま残された角。

ノアの箱舟・犬・カメ——そのほかの動物たち

五つの主要シリーズのほかにも、リサ・ラーソンは数多くの動物を手がけました。ここでは当店でよく出会う三つの群れを紹介します。いずれも一次資料での発表年の確定にはいたっていないため、ここでは造形の特徴を中心に見ていきます。

ノアの箱舟(Noaks Ark)

「ノアの箱舟(Noaks Ark)」と呼ばれる群れは、ヒトコブラクダ、キリン、アシカ(Sjölejon)、リス(Ekorre)、ペンギン、ライオン、象などからなるとされています。旧約聖書の物語にちなみ、動物がつがいで表されることが多いのが特徴です。

リサ・ラーソン ノアの箱舟のライオン
ノアの箱舟のライオン。たてがみのある雄と、そばに寄り添う雌が一対で表される。
リサ・ラーソン ノアの箱舟のキリン
ノアの箱舟のキリン。首を寄せ合う二頭。斑点はクローバーのような形で置かれる。

犬たち(Kennel)

犬の群れ「ケンネル(Kennel)」は、犬種そのものを主題にしています。アフガンハウンド(Afghan)、バセット、ブルドッグ、ブルテリア、プードル(Pudel)、シェパード、スパニエル、ダックスフント(Tax)など、フルサイズのラインに加え、より小ぶりなミニラインも展開されました。犬たちには固有の名前はなく、犬種名で呼ばれます。

リサ・ラーソン ケンネルのアフガンハウンド
ケンネルのアフガンハウンド。長い被毛が波打つ縦の線として表される。
リサ・ラーソン ケンネルのダックスフント
ケンネルのダックスフント(Tax)。低く長い胴に、青い釉の斑が置かれる。

カメ(Sköldpadda)

カメ(Sköldpadda)も、リサ・ラーソンが繰り返し手がけたモチーフです。英語版の資料では、カメは「ジュラ(Jura)」シリーズの一つとして1971年に位置づけられています。まるい甲羅に、花やドットの文様が置かれた、愛嬌のある姿です。

リサ・ラーソン ジュラのカメ
ジュラのカメ(Sköldpadda)。素地の甲羅に、花とドットの文様が絵付けされる。

動物の名前——スウェーデン語の呼び名一覧

リサ・ラーソンの動物を調べていると、底面のシールや資料でスウェーデン語の名前に出会います。ここで大切なのは、彼女の動物には基本的に固有の名前(ペットネーム)がなく、多くが動物の「種名」で呼ばれるという点です。「ハリネズミの名前は?」と探しても、答えはスウェーデン語で「ハリネズミ(Igelkott)」そのもの、というわけです。主な呼び名を一覧にまとめました。

スウェーデン語 日本語
Katt 猫
Lejon ライオン
Giraff キリン
Zebra シマウマ
Isbjörn ホッキョクグマ
Björn クマ
Flodhäst カバ
Noshörning サイ
Dromedar ヒトコブラクダ
Elefant 象
Älg ヘラジカ
Ren トナカイ
Räv キツネ
Fjällhare ヤマウサギ
Järv クズリ
Igelkott ハリネズミ
Ekorre リス
Sjölejon アシカ
Pingvin ペンギン
Sköldpadda カメ
Tax ダックスフント
Spökmus お化けネズミ

固有の名前を持つのは、動物ではなく人物やこどもの像です。1958年の「ABCの少女たち(ABC-flickorna)」には、アマリア、ベアタ、シャルロッタ、ドラ、エンマという五人の名がつけられています。また、日本では猫のキャラクター「マイキー(Mikey)」がよく知られています。動物のフィギュアを探すときは種名で、名前のあるキャラクターを探すときは人物・こどもの像で——と切り分けると、目当ての一体にたどり着きやすくなります。少女たちについてはリサ・ラーソン ABCの少女たち完全ガイドで、猫の作品についてはリサ・ラーソンと猫の完全ガイドでくわしく紹介しています。

見分け方——工場期とケラミークスタジオ

リサ・ラーソンの動物は、六十年以上にわたって作られてきました。そのため一体を手にしたとき、いつ頃のものかを読み解く手がかりを知っておくと、コレクションがぐっと立体的になります。もっとも信頼できる目印は、底面の刻印に「K-studion」の文字があるかどうかです。

彼女がグスタフスベリ窯に在籍したのは1954年から1980年までです。工房ケラミークスタジオ(Keramikstudion)を設立したのは1992年です。この二つの年をものさしにすると、次のように整理できます。

  • 「K-studion」の表記がない「GUSTAVSBERG」の刻印——1954〜1980年の工場期のヴィンテージにあたる可能性があります。
  • 「K-studion Gustavsberg」を含む刻印(例:Lisa L. K-Studion Gustavsberg Sweden)——1992年以降に工房で作られたものです。

ここで大切なのは、後年のケラミークスタジオ製もまた、リサ・ラーソン自身の工房による正規の生産だということです。二つを分けるのは価値の上下ではなく、あくまで「1954〜1980年の工場期のヴィンテージ」と「1992年以降の工房製」という、作られた時期の違いにすぎません。当店では、この二つを混同せず、それぞれの背景がわかるように扱っています。なお、底面に貼られた紙のシールや現行の販売ラベルは、比較的新しい生産であることを示す手がかりになります。

いっぽうで、年号を示すアルファベットや型番号から製造年を細かく特定する方法が語られることもありますが、リサ・ラーソンの量産フィギュアについては一次資料での裏づけが乏しく、当店では断定を避けています。まずは「K-studionの有無」という確かな目印から入るのが安心です。

リサ・ラーソンと日本

リサ・ラーソンの動物たちは、故郷スウェーデンと同じくらい、日本で深く愛されてきました。数々の展覧会や出版、コラボレーションを通じて、その素朴であたたかい造形は、日本の暮らしの美意識と静かに響き合ってきました。線を削ぎ落とした簡潔さ、土の質感を尊ぶ姿勢、生きものへのやさしいまなざし——用の美を尊ぶ日本の感覚と通じるものがあります。

スウェーデンの夏の自然
スウェーデンの夏の森と川。リサ・ラーソンの動物たちが生まれた、北欧の自然。(写真: Wikimedia Commons, CC BY 4.0)

2008年以降は、娘のヨハンナ(Johanna)との協働により、テキスタイルの柄やイラストへと表現が広がりました。ライセンスの展開先には、日本や台湾、韓国、スウェーデンが名を連ねています。そして2015年、滋賀県立陶芸の森(信楽)には、リサ・ラーソンがこの地のためにデザインし寄贈したモニュメント「生命の樹(Tree of Life)」が設けられました。やきものの里である信楽と、北欧の窯で育った陶芸家とが出会った、記念すべき仕事です。

まとめ

リサ・ラーソンの動物たちは、動物園を陶に写した群れでありながら、写実の再現ではなく、線と塊による大胆な省略の造形です。小さな動物園リッラ・ズーに始まり、大きな動物園ストラ・ズー、風変わりなメナジェリ、サバンナのアフリカ、北欧の森のスカンセンへと広がります。シリーズの名前を手がかりにすると、手のひらの一体がどの群れの、いつ頃の生まれかが見えてきます。

要点の整理

  • リサ・ラーソンは1931年スモーランド生まれ。1954〜1980年にグスタフスベリで活動し、1992年に工房ケラミークスタジオを設立
  • 主要な動物シリーズは、リッラ・ズー(1955)、ストラ・ズー(1957)、アフリカ(1964)、メナジェリ(1960年代半ば)、スカンセン(1970年代後半)
  • 素材はシャモット炻器。ざらついた素地に絵付けと部分施釉をほどこす
  • 動物は種名で呼ばれ、固有の名前はない。名前を持つのはABCの少女たちなど人物・こどもの像
  • 見分けの要は「K-studion」表記の有無。工場期のヴィンテージと1992年以降の工房製は、時期の違いとして区別する

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参考資料:グスタフスベリ陶磁器美術館、スウェーデン国立美術館コレクション、公式サイトlisalarson.se/lisalarson.jp、Wikipedia(Lisa Larson)。

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