リサ・ラーソン 大きな動物園の猫(Stora Zoo Katt)|素地に縞を掻き込んだ横長の北欧ヴィンテージの置物

リサ・ラーソン ストラ・ズー(Stora Zoo/大きな動物園)完全ガイド|1957年に生まれた陶の動物たちと、リッラ・ズーとの見分け方

北欧食器タックショミュッケ編集部
リサ・ラーソン 大きな動物園の猫(Stora Zoo Katt)|縞模様の釉がかかった横長の猫のストーンウェア
リサ・ラーソンの大きな動物園(Stora Zoo)の猫(Katt)。横に長い胴と、素地に掻き込まれた縞

この記事の要点

  • ストラ・ズー(Stora Zoo=大きな動物園)は、リサ・ラーソン(Lisa Larson)がグスタフスベリ(Gustavsberg)で手がけた陶の動物シリーズです。1957年に生まれました
  • 先に生まれた小さな動物園「リッラ・ズー(Lilla Zoo, 1955年)」に続くシリーズで、より大ぶりな動物像が中心です。ただしリッラ・ズーの各作品をそのまま大型化したものではなく、猫・カバ・シマウマ・キリン・ホッキョクグマ・牛・ロバなど、サバンナの動物と北欧の家畜が同じ群れに並ぶ独自のラインナップを持ちます
  • デザインは1957年に始まり、1959年・1965年にも新しい動物が加えられていきました
  • 素材は炻器(ストーンウェア)。輪郭は大胆に省略され、胴に線を掻き込んで表情を添える造形が特徴です
  • リッラ・ズーとの見分け方は、大きさだけでなく、モチーフ・造形・シリーズ構成もあわせて見ます。裏面のサインやシールの読み方も解説します

ストラ・ズー(Stora Zoo)とは

ストラ・ズー(Stora Zoo)は、スウェーデンの陶芸家リサ・ラーソン(Lisa Larson, 1931–2024)が、名窯グスタフスベリ(Gustavsberg)のために手がけた陶の動物シリーズです。スウェーデン語で「stora」は「大きな」、「zoo」は「動物園」を指します。その名のとおり、手のひらにおさまる小さな動物園「リッラ・ズー(Lilla Zoo)」に続いて、1957年に生まれた、ひとまわり大きな動物たちの群れです。

猫やカバ、シマウマ、キリン、ホッキョクグマ、牛、ロバ——サバンナの動物と、北欧の牧場にいそうな家畜が、同じひとつの「動物園」に並びます。写実の再現ではなく、輪郭を大きく省き、胴に線を掻き込んで表情を添える。リサ・ラーソンらしいおおらかな造形が、このシリーズでのびやかに花開きました。

リサ・ラーソン 大きな動物園のカバ(Flodhäst)|緑の地に黒い市松模様が背を覆うストーンウェア
大きな動物園のカバ(Flodhäst)。緑がかった地に、黒い市松模様が背をおおう

ストラ・ズーの動物たちは、置物(オブジェ)として作られました。棚や窓辺に据えると、どっしりとした塊が静かな存在感を放ちます。グスタフスベリの黄金期を支えたリサ・ラーソンの出発点のひとつであり、世界中にファンをもつ動物シリーズの、その「大きい方」がストラ・ズーです。

グスタフスベリの港とヨットハーバー|給水塔と教会の尖塔が見えるスウェーデンの街
グスタフスベリの港。給水塔と教会の尖塔が見える、ストックホルム近郊の窯の街(画像:Wikimedia Commons, Holger.Ellgaard, CC BY-SA 4.0)

ストラ・ズーが生まれたグスタフスベリは、ストックホルムに近い入り江の町です。18世紀から続く窯を中心に発展した「焼きものの町」で、港や給水塔、古い工場の建物が、町の輪郭を静かに形づくっています。リサ・ラーソンの動物シリーズ全体の見取り図は、リサ・ラーソンの動物たち完全ガイドでもたどっています。

どんな動物がいるのか——大きな動物園のラインナップ

ストラ・ズーの魅力は、なんといっても動物の顔ぶれの豊かさにあります。アフリカのサバンナにいる大型獣から、北欧の身近な家畜まで、種類を越えた動物たちが一堂に会します。猫、カバ、シマウマ、キリン、ホッキョクグマ(Isbjörn)、牛(Ko)、ロバ(Åsna)、ブルドッグ、さらにヘラジカ(Älg)やカンガルー(Känguru)まで、顔ぶれはにぎやかです。ここでは、当店で扱ってきた個体を手がかりに、代表的な動物たちを紹介します。

猫(Katt)

シリーズの顔ともいえるのが猫です。横に長く寝そべったような胴に、三角の耳と大きな目がつきます。素地に掻き込まれた縞と、青や茶の釉のにじみが、一体ごとに違う表情を生みます。リサ・ラーソンは生涯にわたって数多くの猫を作りましたが、その原型のひとつが、この大きな動物園の猫にあります。当店でも、横に長く寝そべった大きな動物園の猫(Stora Zoo Katt)をご紹介しています。猫だけをたどる物語は、リサ・ラーソンと猫で詳しく紹介しています。

カバ(Flodhäst)

ストラ・ズーを象徴する一体が、カバ(Flodhäst)です。丸くふくらんだ胴に、短い四本の脚がつきます。背に小鳥をとまらせた個体もあり、動物どうしの小さな物語が添えられています。市松模様をまとったものや、落ち着いた茶色の釉のものなど、同じカバでも装いはさまざまです。大きな塊としてのシルエットが美しく、置いたときの存在感はシリーズでも随一です。当店では、冒頭に掲げた市松模様の大きな動物園のカバ(Flodhäst)を扱っています。

大きな動物園のカバと小鳥(Flodhäst med Fåglar)|茶色のカバの背に白い小鳥が二羽とまる置物
カバと小鳥(Flodhäst med Fåglar)。茶の釉をまとったカバの背に、白い小鳥が二羽とまる

シマウマ(Sebra)・キリン・ホッキョクグマ・牛

サバンナの動物たちも、大きな動物園のにぎわいを支えます。シマウマ(Sebra)は、胴の丸みに沿って黒い縞を掻き込み、堂々とした四つ脚で立ちます。ほかにも、首を高くのばしたキリン、まるい背のホッキョクグマ、北欧の牧場を思わせる牛も加わります。アフリカの動物と北欧の牛が同じ群れに並ぶあたりに、リサ・ラーソンの大らかさがにじみます。

大きな動物園のシマウマ(Sebra)|素地に黒い縞を掻き込んだ四つ脚のストーンウェア
大きな動物園のシマウマ(Sebra)。胴の丸みに沿って、黒い縞が流れるように掻き込まれている

ロバ(Åsna)・ブルドッグ

大きな耳を立てたロバ(Åsna)や、むっちりとしたブルドッグも、大きな動物園の仲間です。ブルドッグは、しわの寄った顔を正面から見せる愛嬌のある一体で、濃い茶の釉と掻き込みの輪郭が、犬種らしい重みを伝えます。サバンナの大型獣から身近な犬まで、スケールも性格もまちまちな動物が、ひとつの「動物園」のなかで同居しているのが、このシリーズの楽しさです。

大きな動物園のロバ(Åsna)|黄土色の釉をまとい大きな耳を立てた四つ脚の置物 DESIGN LISA LARSONのシール
大きな動物園のロバ(Åsna)。黄土色の釉と、ぴんと立った大きな耳。脚には「DESIGN LISA LARSON」の青いシール
大きな動物園のブルドッグ(Bulldog)|しわの寄った顔を正面に見せる濃い茶色の犬の置物
大きな動物園のブルドッグ。しわの寄った顔を正面に見せ、濃い茶の釉をまとう

リッラ・ズー(小さな動物園)との違いと見分け方

ストラ・ズーを語るうえで欠かせないのが、ひと足先に生まれた「リッラ・ズー(Lilla Zoo=小さな動物園)」との関係です。順番を間違えやすいのですが、先に生まれたのは小さな方でした。1955年、リサ・ラーソンがしっぽをぴんと立てた一匹の猫を作ったところ、芸術監督のスティグ・リンドベリ(Stig Lindberg)がそれを気に入り、シリーズ化を勧めたと伝えられています。こうして生まれた動物の群れが、リッラ・ズーでした。その2年後の1957年に、リッラ・ズーに続いて生まれたのがストラ・ズーです。より大ぶりな動物像を中心とするシリーズですが、リッラ・ズーの各作品をそのまま大型化したものではなく、動物のラインナップも異なります。

小さな動物園のネコ(Lilla Zoo Katt)|立ったしっぽと細い脚、素地に掻き込まれた縞の小さな猫
小さな動物園(Lilla Zoo)のネコ。立てたしっぽと細い脚、掌におさまる小ささ

大きさだけでなく、モチーフ・造形・シリーズ構成を見る

シリーズ名のとおり、全体としてはストラ・ズーの方が大ぶりです。リッラ・ズーは名前のとおり小ぶりで、掌にのるサイズです。立てたしっぽや細い脚も、小さな体ならではの軽やかさを見せます。これに対してストラ・ズーは、量感のある塊として作られています。どちらにもいる猫で比べても、手にのる小さな一匹と、どっしり寝そべる大きな一体とでは、受ける印象がまるで違います。ただし、大きさだけでシリーズを判定するのではなく、モチーフ、造形、シリーズ構成もあわせて見ます。

動物のラインナップそのものが異なります。リッラ・ズーには、猫(3種)のほか、キツネ、馬、バイソン、ダックスフントなどがいます。ストラ・ズーは、1957年のキリン、シマウマ、ホッキョクグマ、カバ、猫、ヘラジカに始まり、1959年にブルドッグ、牛、ロバが、1965年にカンガルーや鳥をのせたカバ、大型の猫などが加わりました。キリンやシマウマはストラ・ズーにしかおらず、キツネや馬はリッラ・ズーの動物です。

造形の密度にも差があります。リッラ・ズーは線だけで顔立ちを表した簡潔なつくりが身上です。ストラ・ズーは、胴の面積が広いぶん、掻き込みや釉のにじみでより豊かに表情をつけています。

造形と素材——炻器と「線と塊」

ストラ・ズーの質感を決めているのが、素材です。用いられているのは、高温で焼き締めた炻器(ストーンウェア)です。初期の動物たちには、シャモット(粗い陶土の粒)を含んだ素地が使われ、ざらりとした手ざわりと、土そのものの温かみをもちます。つるりと均質な磁器とは対照的に、焼きものらしい景色が一体ごとに宿るのが、炻器の魅力です。

小さな動物園の座った猫(Lilla Zoo Sittande Katt)|青と白の釉に掻き込みの縞を持つ小さな猫
小さな動物園の座った猫(Sittande Katt)。青みを帯びた釉と、素地に掻き込まれた線

造形の言葉は、「線と塊」と言い表せます。動物の輪郭は思いきって単純化され、細部よりも全体のシルエットが優先されます。そのうえで、胴には縞や点が線で掻き込まれ、青・茶・緑といった落ち着いた釉が、部分的に施されます。省略された大きな塊と、そこに添えられた繊細な線——この対比が、ストラ・ズーの動物たちに、素朴でありながら品のある表情を与えています。

グスタフスベリの陶芸工房で器を手にするスティグ・リンドベリとヴィルヘルム・コーゲ 1938年の古写真
グスタフスベリの陶芸工房(1938年)。右がのちに芸術監督としてリサ・ラーソンを招くスティグ・リンドベリ、左はヴィルヘルム・コーゲ(画像:Wikimedia Commons, パブリックドメイン)

こうした造形が生まれたのは、グスタフスベリの工房です。試作の器を囲み、釉薬を試し、手の跡を残しながら一体ずつ仕上げていく——その積み重ねのなかから、省略された動物たちのかたちが練り上げられていきました。

年代とサイン・シールの見方

ストラ・ズーは1957年に生まれ、その後1959年、1965年と、幾度かに分けて新しい動物が加えられていきました。同じ動物でも製造時期や個体によって、釉薬の色調や掻き込み、仕上がりには違いが見られます。来歴を確認する手がかりになるのは、裏面の錨マークやサイン、残っているシールです。

大きな動物園の猫の顔|素地に掻き込まれた目と口ひげ、青みがかった釉のクローズアップ
大きな動物園の猫の顔。掻き込まれた目と口ひげ、素地にのこる手の痕跡

裏面には、グスタフスベリの錨(いかり)のマークや、リサ・ラーソンのサインが見つかることがあります。「DESIGN LISA LARSON」と記された青いシールが貼られた個体もあります。グスタフスベリの裏印と年代の読み方は、グスタフスベリの年代の見分け方で詳しく解説しています。

なお、リサ・ラーソンの動物は人気が高く、のちにケラミクストゥディオン(Keramikstudion)などで作られた型もあります。ヴィンテージと後年のものとで、どちらに惹かれるかは好みですが、素地の質感や釉の調子、裏面の印を照らし合わせると、作られた時期の手がかりがつかめます。北欧ヴィンテージと復刻版の考え方は、北欧ヴィンテージと復刻版(再発売)の見分け方もあわせてご覧ください。

リサ・ラーソンとグスタフスベリ

ストラ・ズーを生んだリサ・ラーソン(Lisa Larson, 1931–2024)は、スウェーデン南部スモーランド地方のヘルランダ(Härlunda)に生まれました。ヨーテボリで陶芸を学んだのち、1954年にグスタフスベリへ入ります。芸術監督スティグ・リンドベリに招かれての入所でした。以来26年間、動物や人物をモチーフにした親しみやすい造形を次々と生み出し、戦後スウェーデンを代表する陶芸家のひとりになっていきます。グスタフスベリを離れたのは1980年のことでした。

ヘルランダ教会|リサ・ラーソンの生まれたスモーランド地方の白い木造教会と墓地
リサ・ラーソンの生まれたヘルランダ(Härlunda)の教会。スモーランドの森に囲まれた白い木造の教会(画像:Wikimedia Commons, Boatbuilder, CC BY-SA 3.0)

グスタフスベリの製品を集めた大きなコレクションは、2000年にスウェーデン国立美術館(Nationalmuseum)へ託されました。そのなかには、リサ・ラーソンの作品も数多く含まれています。日々の暮らしのために作られた器や動物たちが、国を代表する美術館に収められている——北欧デザインが「生活の芸術」として大切にされてきたことが、ここにもあらわれています。

ストックホルムのスウェーデン国立美術館|水辺に建つ砂岩の建物の空撮
ストックホルムの水辺に建つスウェーデン国立美術館。グスタフスベリのコレクションを収める(画像:Wikimedia Commons, Arild Vågen, CC BY-SA 4.0)

動物をめぐる仕事は、リッラ・ズーとストラ・ズーののちも、風変わりなメナジェリ(Menageri)、サバンナのアフリカ(Afrika)、北欧の森のスカンセン(Skansen)へと広がっていきました。シリーズの名前を知ると、手のひらの一体がどの群れの、いつごろ生まれかが見えてきます。

スカンセン(Skansen)シリーズのきつねの置物|リサ・ラーソンとベルント・フリーベリの合作 ミディアムサイズ
のちのスカンセン(Skansen)シリーズのきつね。リサ・ラーソンとベルント・フリーベリの合作

当店では、ストラ・ズーと同じく動物を主題にした、メナジェリ(Menageri)のひとこぶラクダ(Dromedar)なども扱っています。メナジェリのひとこぶラクダ(Dromedar)のように、群れごとの作風の違いを見くらべるのも、リサ・ラーソンの動物を集める楽しみのひとつです。リサ・ラーソンの生涯と全体像はリサ・ラーソン完全ガイドで、グスタフスベリという窯の歩みはグスタフスベリはなぜ高い?でたどっています。

リサ・ラーソン メナジェリ ひとこぶラクダ(Dromedar)|茶色のストーンウェアの置物 木製台付き
メナジェリ(Menageri)のひとこぶラクダ(Dromedar)。ストラ・ズーより小ぶりな、風変わりな動物たちの群れ

大きな動物園を暮らしの風景として

ストラ・ズーの動物たちは、どっしりとした塊として作られています。棚の一角や窓辺に一体を据えるだけで、部屋に静かなユーモアと、北欧の土の温かみが生まれます。サバンナの動物も北欧の家畜も、おなじ省略された造形でまとめられているから、種類を越えて並べても不思議と調和します。

スモーランド地方の霧がかかったブナの森|苔むした岩と落ち葉の積もる北欧の森
リサ・ラーソンが生まれたスモーランド地方の森。苔むした岩と、霧にけむるブナの木立(画像:Wikimedia Commons, Jacek Lesniowski, CC BY-SA 3.0)

一匹の猫、一頭のカバから、1950年代スウェーデンの工房に流れていた、おおらかな空気が立ちのぼってきます。リサ・ラーソンが土に託したのは、かわいらしさだけではなく、動物という存在への静かなまなざしでした。大きな動物園の一体を手元に置くことは、その視線を、日本の暮らしのなかに小さく招き入れることでもあります。

リサ・ラーソンの動物シリーズ全体の見分け方はリサ・ラーソンの動物たち完全ガイドで、猫の作品だけを深くたどるならリサ・ラーソンと猫で、それぞれ続きをお楽しみいただけます。

要点の整理

  • ストラ・ズー(Stora Zoo=大きな動物園)は、リサ・ラーソンがグスタフスベリで手がけ、1957年に生まれた陶の動物シリーズです
  • 先に生まれた小さな動物園「リッラ・ズー(1955年)」に続くシリーズで、より大ぶりな動物像が中心です。ただしリッラ・ズーの各作品をそのまま大型化したものではなく、猫・カバ・シマウマ・キリン・ホッキョクグマ・牛・ロバなど、ラインナップも異なります
  • デザインは1957年に始まり、1959年・1965年にも新しい動物が加えられていきました
  • 素材は炻器。輪郭を省いた「塊」に、線を掻き込んで表情を添える造形が特徴です
  • リッラ・ズーとの見分けは、大きさだけでなく、モチーフ・造形・シリーズ構成もあわせて見ます。裏面のサイン・シールが来歴の手がかりになります

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参考資料:Lisa Larson 公式サイト(経歴)/Gustavsbergs Porslinsmuseum(Lisa Larson)/Nationalmuseum, Sweden(グスタフスベリ・コレクション)

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