ARABIA アリ(Ali)完全ガイド|ライヤ・ウオシッキネンがデザインした青のアラベスクと花——年代・器の種類・裏印
北欧食器タックショミュッケ編集部スウェーデン・フィンランドから北欧ヴィンテージ食器を直接買い付け、1,000点以上を検品してきた当店が、一次情報と実物の観察にもとづいて執筆・編集しています。
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ARABIA(アラビア)の「アリ(Ali)」は、白い器に、濃さの違う青でアラベスクと花の文様を刷ったシリーズです。カップの胴やソーサーの見込み、皿の縁を、つる草の渦と白く抜いた花、小さな水玉の帯がめぐります。装飾をデザインしたのは、ARABIAで40年近く器の装飾に携わったライヤ・ウオシッキネン(Raija Uosikkinen)です。
アリは1964年から1974年まで生産されました。ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)やヘルシンキ市立博物館(Helsingin kaupunginmuseo)にも、アリの皿やコーヒーカップが収められています。
この記事では、博物館に残る器と当店で扱った器を手がかりに、文様の見どころ、器の種類と大きさ、裏印の文字をたどります。あわせて、アリが生まれた頃のヘルシンキの工場や街角、コーヒーの風景を、当時の写真で紹介します。
この記事でわかること
- アリは、ライヤ・ウオシッキネンが装飾をデザインした、白地に青のアラベスクと花の器であること
- 1964〜1974年の生産と、ARABIAがヴァルチラ・グループにあった時代の背景
- トリオ、21.6cmと25cmの皿、27.7cmの大皿、クリーマー、シュガーボウルなど、器の種類と大きさ
- 器の裏に刷られた「Ali」の文字と三つの言語の文言、濃さの違う青が重なる文様の見どころ
目次
当店では、アリのコーヒーカップ・トリオ(カップ・ソーサー・ケーキ皿)を扱っています。→ ARABIA(アラビア)アリ(Ali)コーヒーカップ・トリオの商品ページ
アリ(Ali)とは——白地に濃淡の青で刷ったアラベスクと花
アリは、ARABIAが1960年代から1970年代にかけて生産した、白地に青の文様の器です。カップの胴や皿の縁には、つる草が渦を巻く文様と白く抜いた花が並び、その上下を小さな水玉の帯が縁取ります。皿の中心には、つる草を対称に組み合わせた円いメダリオンが置かれています。

白地に青の「アラベスクと花」
V&Aには、1988年にARABIAから寄贈されたアリの25cmの皿があります。その装飾は、何種類かの青で刷ったアラベスクと花の文様です。アラベスクは、植物のつるや葉を途切れなく連ねていく装飾文様で、イスラーム美術のなかで大きく発展しました。
アリの器を見ると、この組み合わせがよくわかります。濃い紺の線がつる草の渦を描き、そのあいだを明るい青が埋め、白く抜いた花が規則正しく並びます。遠目には青一色に見えますが、近づくと、濃さの違う青が重なっています。
装飾をデザインしたライヤ・ウオシッキネン
ライヤ・ウオシッキネン(1923〜2004年)は、フィンランド南部のホッロラ(Hollola)に生まれました。ヘルシンキの中央工芸学校で学んだのち、1947年にARABIAへ入り、1986年まで器の装飾をデザインしました。黒い線で暮らしの情景を描いたエミリア(Emilia)や、1976年に始まったカレワラの年次プレートも、彼女の仕事です。
人物と主な作品はライヤ・ウオシッキネン完全ガイドに、エミリアはARABIA エミリア完全ガイドにまとめています。
器のかたちと装飾は、別々のデザイナーの仕事
ARABIAでは、器のかたちと、その上にのせる装飾を、別々のデザイナーが手がけることがありました。ウオシッキネンも、カイ・フランク(Kaj Franck)がデザインしたかたちのポットに、リネア(Linnea)の装飾を付けています。
アリの文様も、かたちの違ういくつもの器に刷られました。25cmの皿のかたちはFCと呼ばれ、カーリナ・アホ(Kaarina Aho)がデザインしたものです。
1964年から1974年まで——アリが作られた時代
アリは1964年から1974年まで、およそ10年にわたって生産されました。ヘルシンキ市立博物館には、カップとソーサーに17.3cmの皿を合わせたトリオが、一組として収められています。

ヴァルチラ・グループの時代のARABIA
アリが作られた頃のARABIAは、造船や機械で知られるフィンランドの企業ヴァルチラ(Wärtsilä)の傘下にありました。ヴァルチラがARABIAを所有したのは、1947年から1990年までです。アリの器にも、裏印に「WÄRTSILÄ」の名を刷ったものがあります。
ARABIAの工場は、ヘルシンキの中心部から北東へ延びるハメーンティエ(Hämeentie)通りの先、アラビア地区にありました。1873年、スウェーデンのロールストランドがこの地に子会社を設けたのが、ARABIAの始まりです。工場と地区の歩みは、アラビア工場の歴史——ヘルシンキ・トウコラの150年でたどることができます。

1960〜70年代の工場で
1967年7月には、オランダの写真通信社アネフォ(Anefo)の写真家がARABIAを訪れ、工房を撮影しました。瓶形の器が並ぶ棚を背に、ひとりの女性がろくろで壺を挽いています。

1973年に撮影された工場のなかには、車輪付きの棚が何台も並び、白いカップが段ごとに積まれています。

博物館に残るアリの器は、型に泥漿を流し込む鋳込みで成形し、釉薬をかけて仕上げた工場の製品です。装飾は印刷によるもので、ひとつの文様が、カップから大皿までさまざまな器に展開されました。
アリが生まれた頃のヘルシンキ
アリが生まれた1960年代から70年代のヘルシンキを、ヘルシンキ市立博物館に残る写真で歩いてみましょう。工場のあるアラビア地区から、港の市場、海辺のカフェ、街なかのカフェへと向かいます。
街のはじまりの急流、ヴァンハンカウプンギンコスキ
アラビア地区の北、ヴァンター川(Vantaanjoki)の河口には、ヴァンハンカウプンギンコスキ(Vanhankaupunginkoski)と呼ばれる急流があります。フィンランド語で「旧市街の急流」という意味です。ヘルシンキの街は1550年、この急流のほとりに築かれました。

写真の右手に見えるれんがの建物は、かつての取水場です。
市場のコーヒー
港に面したマーケット広場(Kauppatori)や、その北のハカニエミ(Hakaniemi)の市場には、コーヒーを出す露店やテントが立ちました。屋外のテーブルでカップを手にする人々の姿が、写真に残っています。


海辺と入り江のカフェ
海に面したヘルシンキには、水辺のカフェもありました。南のカイヴォプイスト(Kaivopuisto)公園の海辺にはカフェ・ウルスラ(Ursula)が、西のトーロ(Töölö)地区の入り江には、小さな木造の建物を使ったカフェ・レガッタ(Regatta)がありました。


街なかのカフェと、台所のテーブル
中心部のブレヴァルディ(Bulevardi)通りには、大理石のテーブルを並べたカフェ・エクベリ(Ekberg)がありました。

家のなかのコーヒーの風景としては、1967年に台所の手引きの冊子『Neuvokas keittiö(工夫のある台所)』のためにしつらえられた台所の写真が残っています。北欧のコーヒーの習慣と器の歴史は、北欧のコーヒー文化とフィーカにまとめています。

アリの器の種類と大きさ
アリの文様は、コーヒーの器から食卓の皿まで、さまざまな器に刷られました。博物館に残る器と当店で扱った器から、種類と大きさを紹介します。
コーヒーカップのトリオ
アリには、コーヒーカップとソーサーにケーキ皿を添えたトリオがあります。カップには、かたちの違うものがあります。当店で扱ったカップは、細い脚の上に、口に向かって少し開く胴がのった、高さ6.7cmほどのかたちです。ヘルシンキ市立博物館のトリオのカップには脚がなく、胴が下に向かってすぼまっています。

当店のカップの胴には、上下に水玉の帯がめぐり、そのあいだに白い花とつる草の渦が並びます。取っ手にも、青い文様が入っています。ソーサーは径12cmほどで、見込みに円いメダリオンを置き、そのまわりを花の輪が囲みます。

ケーキ皿は径17cmほどで、縁の花の帯と中心のメダリオンのあいだに、白い余白をとっています。トリオという組み合わせについては、北欧のカップ&ソーサー完全ガイドにくわしくまとめています。

当店では、アリのコーヒーカップ・トリオを扱っています。写真と詳しい大きさは、ARABIA アリ(Ali)コーヒーカップ・トリオのページでご覧いただけます。
プレートと大皿
皿には、21.6cmの深皿と平皿、25cmの皿、27.7cmの大皿があります。27.7cmの大皿は側面がまっすぐに立ち上がり、その外側にも水玉と花の帯がめぐります。料理を盛って食卓に出す器として作られたもので、フィンランド語では「vati」と呼ばれます。

クリーマーとシュガーボウル
コーヒーのためのクリーマーとシュガーボウルも作られました。当店で扱ったクリーマーは高さ7.3cmの円筒形で、注ぎ口と取っ手が付き、胴いっぱいに花とつる草の文様が刷られています。

シュガーボウルは径8cm、高さ5cmほどの小さな鉢で、口縁と裾に水玉の帯がめぐります。

| 器 | 大きさ |
|---|---|
| コーヒーカップ(脚付き) | 高さ約6.7cm・容量約110ml(満水時) |
| コーヒーカップ(脚なし) | 高さ約6.5cm |
| ソーサー | 径約12cm |
| ケーキ皿 | 径約17cm |
| 深皿・平皿 | 径21.6cm |
| 皿(かたちFC) | 径25cm |
| 大皿(vati) | 径27.7cm・高さ3.8cm |
| クリーマー | 高さ約7.3cm |
| シュガーボウル | 径約8cm・高さ約5cm |
裏印——「Ali」の文字が入る器と、入らない器
当店で扱ったトリオの皿の裏には、緑がかった色で、王冠と「ARABIA」「MADE IN FINLAND」の文字が刷られています。その下にフィンランド語・スウェーデン語・英語で「装飾は釉薬で守られている」という意味の文言が並び、最後に筆記体で「Ali」と記されています。

一方、同じトリオのカップの底や、シュガーボウルの裏には、王冠と「ARABIA」「MADE IN FINLAND」、数字だけが刷られ、模様の名前は入っていません。ひとつのトリオのなかでも、名前が入る器と入らない器があります。名前の有無だけで、アリかどうかを判断しないほうが確かです。

V&Aの25cmの皿の裏印は、王冠に続けて「ARABIA WÄRTSILÄ FINLAND」と刷られ、模様の名前「ALI」と、食器洗い機に耐えることを示す三つの言語の文言が入っています。同じアリでも、器によって裏印の文言は異なります。
ARABIAの裏印の移り変わりはアラビアの刻印(バックスタンプ)年代別完全ガイドに、食洗機の表記の読み方は北欧ヴィンテージ食器の食洗機・電子レンジ・オーブンの表記ガイドにまとめています。
文様を近くで見る——重なり合う青
アリの魅力は、離れて見たときの端正な文様と、近づいたときの青の重なりにあります。当店で扱った器の写真で、文様の組み立てを近くから見てみます。

中心のメダリオンと花の輪
ケーキ皿の中心には、四つの花弁を広げた星形が置かれ、そのまわりで濃い紺のつる草が渦を巻いています。さらに外側には、白く縁取った紺の円と、白い点を抱いた三日月形が、四つずつ交互に並びます。それらを囲むのが、小さな白い輪をつないだ帯です。
帯の外では、濃い紺のつる草が向かい合って枠をつくり、そのなかに白く抜いた花が収まっています。花の中心は青く、まわりを淡い青の水玉が取り巻きます。線は濃い紺、地は明るい青、水玉は淡い青と、三つの濃さの青が使い分けられています。
胴をめぐる文様
クリーマーやカップの胴では、同じ要素が帯状に配置されています。口縁と裾に水玉の帯がめぐり、そのあいだで、向かい合うつる草がハートのような枠をつくり、白い花を上下二段に収めます。枠と枠のあいだには、つる草を縦に連ねた柱のような文様が立ちます。
皿では円く、カップやクリーマーの胴では帯状にと、アリの文様は器のかたちに合わせて配置が変わります。どの器にも、つる草の渦、白い花、水玉という三つの要素が共通しています。ARABIAのほかの青い器は、北欧の青い食器ガイドでご覧いただけます。
まとめ
アリは、ライヤ・ウオシッキネンが装飾をデザインし、ARABIAが1964年から1974年まで生産した、白地に青のアラベスクと花の器です。コーヒーカップのトリオから大皿まで、器のかたちに合わせて同じ文様が配置され、近づくと濃さの違う青が重なり合います。器の裏には、筆記体の「Ali」と三つの言語の文言が刷られたものもあります。
要点の整理
- 装飾——ライヤ・ウオシッキネン(1923〜2004年)。器のかたちは器によって異なり、25cmの皿はカーリナ・アホのかたち(FC)
- 年代——1964〜1974年の生産。ARABIAがヴァルチラ・グループにあった時代
- 文様——白地に、濃さの違う青で刷ったアラベスクと花。つる草の渦、白い花、水玉が共通の要素
- 器——トリオ(脚付きと脚のないカップ、ソーサー約12cm、ケーキ皿約17cm)、21.6cmと25cmの皿、27.7cmの大皿、クリーマー、シュガーボウル
- 裏印——筆記体の「Ali」と三つの言語の文言が入る器と、王冠とARABIA、フィンランド製の表記、数字だけの器がある
参考資料
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