わずか2年で消えた幻のアヤメ 大容量ティーカップの贅沢
北欧フィンランドを代表する食器メーカーARABIA社の名作クロッカスのカラー版のティーカップ&ソーサーです。プレートが白黒シリーズのソーサーとなるため、オトクな価格でのご提供です。
シリーズ名のクロッカスとはアヤメ科の植物の一種です。デザインを担当したのはフローラやヴァルムやボタニカなどで知られ、自然の草花をデザインに織り込むのを得意としたエステリ・トムラです。
クロッカスシリーズには白黒版、カラー版、白黒のグレーリム版の3種類がありますが、こちらはティーカップサイズでは珍しいカラー版となります。ソーサーは白黒版と同じものですが、もともと正規品の組み合わせとして販売されたようです。
クロッカスは1978~79年のわずか2年間しか製造されなかった商品です。近年復刻版も販売されていますが、フォルムが甘かったり、オリジナルにはなかったマグカップでの復刻でヴィンテージと一定の違いがあります。
ティーカップ&ソーサーは、ヴィンテージのクロッカスの中でも特に珍しい大きなサイズのもので、生産数がほとんどなかったものです。小ぶりなコーヒーカップに比べると、ティーカップはかなり割合でカップに貫入が見られます。当時のARABIAの製陶技術では大柄なカップほど貫入が生じやすい傾向にあり、大きく薄造りなティーカップは製造工程で貫入が発生しやすかったようです。そのため、貫入が出にくい小ぶりなコーヒーカップが大量に生産され、ティーカップはそもそもの生産数が少なくなったと考えられます。結果的にクロッカスのティーカップは希少なアイテムとなりました。
ARABIA — フィンランドが世界に誇る陶磁器の名窯

1873年、スウェーデンのロールストランド社がヘルシンキに設立した分工場がARABIAの始まりです。当初はロシア帝国向けの陶磁器を生産していましたが、1917年のフィンランド独立後に完全なフィンランド企業となり、20世紀半ばにはフィンランド最大の陶磁器メーカーへと成長しました。

黄金時代を築いたデザイナーたち
カイ・フランク(1911–1989)は「フィンランドデザインの良心」と呼ばれ、キルタ(後のティーマ)やカルティオなど、無駄を削ぎ落とした機能美の名作を生み出しました。1949年にはARABIAのクラウンマーク(王冠のバックスタンプ)もデザインしています。
ウラ・プロコッペ(1921–1968)は、コバルトブルーの手描きが美しいバレンシア(1960–2002年)と、鉄粉を施した独特の土色が魅力のルスカ(1960年代–1999年)を手がけました。ルスカの粗い表面は日本の楽焼に似た風合いで、北欧と日本の美意識の近さを感じさせます。

このほか、ビルガー・カイピアイネン(1915–1988)は「装飾の王」と呼ばれ、名作パラティッシをはじめ華やかな装飾陶芸を制作。エステリ・トムラはフローラシリーズの植物画で知られ、ライヤ・ウオシッキネンも数多くの装飾パターンを手がけました。
ヴィンテージの見分け方 — バックスタンプ(刻印)ガイド

- 1874〜1930年頃:素地への型押し(インプレスト)が主流。1878年以降はフィンランドの紋章入りカラーマークも併用。
- 1932〜1949年:クルト・エクホルムがデザインした「パイプスタンプ」。工場に導入された122mのトンネル窯を表現したデザイン。
- 1949年〜現在:カイ・フランクがデザインしたクラウンマーク(王冠)。月桂樹の輪を逆さにして王冠に見立てた斬新なデザイン。1964年、1971年、1975年、1981年、2014年に更新。
- 生産年の読み方:1940年代以降は月→年の順で数字が刻印。2等品にはローマ数字IIや色付きドットが付されます。
- 2016年以降:ヘルシンキ工場は2016年3月に閉鎖され、現在はタイとルーマニアで生産。ヴィンテージ品はすべてフィンランド製で、「MADE IN FINLAND」の刻印があります。
■詳細スペック
- メーカー:ARABIA / アラビア
- デザイナー:フォルムデザイン:Peter Winquist / ペテル・ウィンクヴィスト
- パターンデザイン:Esteri Tomula / エステリ・トムラ
- シリーズ名:Krokus / クロッカス
- 年代:1978~79年
- サイズ:カップ直径9.3cm 高さ6.5cm ソーサー直径17cm
■コンディション:貫入あり
カップは内部底に光に透かすと一箇所薄い貫入が見られます。貫入とは製造工程の焼成時に釉薬面に走るヒビで使用上のキズや本体そのもののダメージではありません。メーカーの検品を通過したものとなります。全体的には使用感がない美品のコンディションです。ソーサーは光に透かすと中央付近にごく細かなスレが見られます。












