北欧の陶板(壁飾りプレート)の飾り方|壁を傷つけない掛け方・立てて飾るアイデア・複数枚のレイアウト
北欧食器タックショミュッケ編集部スウェーデン・フィンランドから北欧ヴィンテージ食器を直接買い付け、1,000点以上を検品してきた当店が、一次情報と実物の観察にもとづいて執筆・編集しています。
Share
この記事の要点
- 北欧の陶板(スウェーデン語でväggplatta=壁のプレート)は、壁に掛けて眺めるためにデザインされた装飾のうつわです。飾る前に、まず裏側の吊り具を確かめるところから始まります
- 日本の住まいに多い石膏ボードの壁では、表面の壁紙や仕上げを確認したうえで、ピンフック・ホッチキス固定式フック・下地へのビス留め・ピクチャーレールなどを使い分けます。粘着フックは、製品が対応する壁面と重量に限って使用します
- 陶は見た目より重いので、実際の重さを基準に金具を選び、余裕をもたせるのが安全です。大きく重い一枚は、下地へのビス留めやレール吊りが確実です
- 掛けずに、プレートスタンドや棚で「立てて飾る」方法もあります。壁に穴を空けたくないときの第一の選択肢になります
- グスタフスベリのリサ・ラーソン、ロールストランドのシルヴィア・レウショヴィウス、ARABIAのルート・ブリュックなど、名窯の作り手が壁面のための陶板やレリーフを残しています
壁を飾る一枚——北欧の陶板(väggplatta)という文化
絵皿とも絵画とも、少し違います。北欧の窯は、壁に掛けて眺めるための一枚を数多く残してきました。スウェーデン語ではväggplatta(ヴェッグプラッタ=壁のプレート)、またväggrelief(壁のレリーフ)と呼ばれ、スウェーデン国立美術館の収蔵目録にもこの言葉が並びます。英語では wall plaque、あるいは ceramic relief と呼ばれています。
グスタフスベリ(Gustavsberg)、ロールストランド(Rörstrand)、フィンランドのARABIAといった名窯は、食卓のうつわと並行して、壁面のための陶板やレリーフを手がけてきました。土の面に色をのせ、彫りを入れ、時には小さな土のかけらを寄せて立体的な画面をつくる——それは、量産の食器とはまた別の、作り手の手仕事がそのまま残る仕事でした。飾るためにデザインされた一枚だからこそ、多くの陶板は裏側に吊るための金具や穴を最初から備えています。
本記事では、その北欧の陶板を「どう飾るか」に絞ってご案内します。裏側の確かめ方から、日本の壁に合わせた掛け方、立てて飾る方法、複数枚のレイアウトまで、順にたどっていきます。陶板そのものの歴史や作り手、見分け方については、北欧の壁飾りプレート(陶板)完全ガイドで詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
飾る前に——陶板の「裏側」を確かめる
飾り方を考えるとき、まず表の絵柄ではなく裏側を見ます。どうやって壁に留めるかは、裏に付いた吊り具の形で決まるからです。北欧ヴィンテージの陶板には、おおむね次のような吊り具が見られます。
吊り具の主な種類
ひとつは、裏の上部に開けられた吊り穴です。焼成のときにあらかじめ穴を作ってあるタイプで、そのまま釘やフックに掛けられます。鍵穴(キーホール)状に加工され、ビスの頭に引っ掛けて固定できるものもあります。
もうひとつは、上の写真のように裏面に取り付けられた金具です。銅や真鍮のループ、あるいは金属板を接着や埋め込みで留めてあり、その輪にフックを通します。三つ目は、裏に小さな紐通しの穴があり、そこに紐やワイヤーを渡して吊るタイプです。
裏面に吊り具がまったくない一枚もあります。その場合は、皿掛け金具(ばね式のワイヤーフック)で縁を挟むか、後述するスタンドで立てて飾ります。まずは手元の陶板がどのタイプかを確かめ、重さも手に取っておきます。ここで測った重さが、次の金具選びの基準になります。
壁を傷つけにくい掛け方——賃貸でもできる方法
日本の住まいの壁は、多くが石膏ボードでできています。画鋲は挿さっても、重いものを掛けると抜けやすい素材です。賃貸では、退去時の原状回復も気になります。そこで、壁への傷をできるだけ小さく抑えながら掛ける方法を、軽いものから順に整理します。いずれも各製品に表示された耐荷重を必ず守り、余裕をもって選ぶことが前提になります。
掛け方を選ぶ前に、まず自分の壁の種類を知っておくと安心です。押しピンがすっと入り、少し粉が出るようなら石膏ボードです。硬くてピンが入らない壁は、コンクリートやモルタル、あるいは合板の下地かもしれません。石膏ボードの裏には、ところどころに柱(間柱)が通っていて、そこにビスが効けば重いものも安定して掛けられます。まずは、掛けたい場所がどんな壁かを確かめるところから始めます。
粘着フック——ごく軽い一枚に
貼って剥がせる粘着フックは、対応する壁面であれば穴を空けずに済む方法です。ただし、一般的な製品には壁紙へ使用できないものもあります。必ず壁面の材質と製品の適合表示を確認し、陶板では耐荷重にも十分な余裕をもたせます。
ピンフック——小さな穴で軽〜中量に
細いピンを数本、斜めに挿して固定するピンフックは、石膏ボードに小さな穴を残すだけで軽〜中くらいの重さを支えられます。穴が目立ちにくく、賃貸でも使いやすい方法です。ピンの本数が多いものほど、支えられる重さが増えます。
ホッチキス固定式フック——原状回復しやすい
石膏ボード専用の、ホッチキス(ステープル)の針で留めるタイプのフックもあります。針穴が細かいため跡が残りにくく、退去時にも目立ちません。製品ごとに耐荷重が明記され、複数のフックで荷重を分けて支える設計のものもあります。中量までの陶板を、比較的しっかり掛けたいときに向いています。
石膏ボードアンカー・下地ビス——重い一枚に
大きく重い陶板には、石膏ボード用のアンカー(トグル式・ねじ込み式)や、壁の下地(間柱)を探してのビス留めが確実です。穴は大きくなるため、賃貸では位置と数をよく検討します。壁裏の間柱にビスが効けば、もっとも安定した掛け方になります。下地の位置は、市販の下地センサーで探せます。
ピクチャーレール——既設なら穴を増やさず複数枚を
すでにピクチャーレールが設置されている住まいなら、レールからワイヤーとフックで吊ることで、壁面に新しい穴を増やさず複数枚を掛けられます。位置や高さの調整もしやすく、陶板を入れ替えて楽しむのにも向いています。新たにレールを設置する場合は、レール自体の固定が必要です。
重さと落下に備える——長く安全に飾るために
陶板を安心して飾るために、いちばん大切なのは重さと落下への備えです。陶は見た目よりずっと重く、フックの表示ギリギリで使うと、時間の経過や温度・湿度の変化で外れることがあります。実際の重さを量り、表示耐荷重に十分な余裕をもたせて金具を選びます。
陶板側の吊り構造が対応している場合は、二点で支えて荷重を分けると安定します。壁の下地にビスを効かせるか、トグル式のアンカーを併用します。地震の多い日本では、掛けるだけでなく、下端を耐震ジェルで軽く留めるなど、落下を防ぐ副次的な固定を加えると安心です。頭上や寝る場所の真上、通り道の上を避けて配置するのも、基本の心がけになります。
掛けたあとも、ときどきフックや吊り具のゆるみを見ておきます。ヴィンテージの陶板は、裏の金具の接着が経年でゆるんでいることもあります。少しでも不安があれば、無理に元の金具を使わず、皿掛け金具やスタンドに切り替えるのが賢明です。
一枚を美しく見せる——飾る高さと位置
掛ける高さは、絵を飾るときと同じ考え方が使えます。目安は、陶板の中心が床から約145〜150cmの高さにくる位置です。立ったときの視線がちょうど中心に落ち、一枚がもっとも自然に見えます。ソファや棚の上に掛けるときは、家具の上端との間隔を意識し、間を空けすぎないほうが、まとまって見えます。
一枚を主役として見せたいときは、まわりに余白をたっぷり取ります。北欧の陶板は、色数を抑えた静かな絵柄のものが多く、白い壁の広い余白のなかに置くほど、その色や彫りの陰影が引き立ちます。冒頭の写真のように、淡い塗り壁にひとつだけ掛けるだけで、壁面がひとつの小さな風景に変わります。
複数枚を組み合わせる——壁一面のレイアウト
陶板が数枚そろったら、壁一面にまとめて飾るのも楽しい方法です。いきなり壁に掛け始めず、まずは床に並べるか、陶板の外形をなぞった紙を壁に貼って、配置を決めてから移すと失敗が少なくなります。
整って見せるこつは、陶板どうしの間隔をそろえることです。おおむね5〜8cmほどの一定の隙間を保つと、大きさの違う陶板を並べても散らかりません。中心になる一枚を決め、その視線の高さを基準に上下左右へ広げていくと、全体のバランスが取りやすくなります。
色調や作り手、モチーフでゆるくグループを作るのも、まとまりを生むこつです。青の陶板どうし、花のモチーフどうしを寄せると、壁面にひとつのテーマが生まれます。額装の絵や写真と混ぜて飾っても、陶の立体感がよいアクセントになります。
掛けずに「立てて飾る」——スタンドと棚という選択
壁に穴を空けたくないとき、あるいは吊り具のない一枚を飾りたいときは、立てて飾るという方法があります。もっとも手軽なのは、金属やアクリルのプレートスタンド(皿立て・イーゼル型のスタンド)です。棚やキャビネットの上、窓辺に置くだけで、陶板を自立させて見せられます。
木製のイーゼルや、溝の付いたプレートレール(皿を立てかける棚)に立てかけるのも、あたたかみのある見せ方です。棚の上なら、ほかの小さなオブジェや植物と組み合わせて、小さな一角を作ることもできます。立て置きのときは、転倒と滑りに注意し、滑り止めや耐震ジェルを敷いておくと安心です。壁掛けと立て置きを気分で入れ替えられるのも、スタンドの利点です。
陶板が映える壁と光
同じ一枚でも、掛ける壁と光で表情が変わります。北欧の陶板は、白やアイボリー、淡いグレーなど、色を抑えた壁によく映えます。背景が静かなほど、釉薬の深い色や、彫りが生む陰影がくっきりと立ち上がります。濃い色の壁に掛けるなら、明るい色の陶板を選ぶと、互いの色が引き立ちます。
光は、真正面から均一に当てるより、少し斜めから当てると、彫りやレリーフの凹凸に陰影が生まれ、立体感が増します。窓辺に近い壁なら、時間とともに移ろう自然光が、一枚の表情を静かに変えていきます。ただし、直射日光が長時間当たる場所や、湿気・調理の油煙がこもる場所は、彩色や釉薬のためにも避けるのが無難です。
作り手から選ぶ——名窯の陶板
飾る一枚を選ぶとき、作り手をたどるのもひとつの入口です。北欧の名窯には、壁面のための陶板やレリーフを残した作り手がいます。当店の在庫から、代表的な三つの窯をご紹介します。
グスタフスベリ——リサ・ラーソンの陶板
スウェーデンのグスタフスベリで、リサ・ラーソン(Lisa Larson、1931〜2024)は1954年から約26年間、数多くの作品を手がけました。動物や人物、花をモチーフにした親しみやすい造形で知られ、壁掛けのレリーフも残しています。ヨーテボリのレースカ美術館は、彼女の「檻の中のライオン(Lion in a Cage)」のレリーフ(グスタフスベリ、1971年)を収蔵作品として紹介しています。
丸型のレリーフ「ルンデル(Rundel)」や、ひまわり(Solros)を彫った一枚など、彼女の陶板は一点ずつ表情が異なります。当店では、鳥のルンデル、金彩の顔のルンデル、ひまわりのソルロス、女子サッカー(Damfotboll)、大型の金婚式(Jubileum)など、リサ・ラーソンの陶板をご用意しています。
ロールストランド——シルヴィア・レウショヴィウスの陶板
ロールストランドでは、シルヴィア・レウショヴィウス(Sylvia Leuchovius、1915〜2003)が1949年から工場に在籍し、独自の壁掛け陶板(väggplatta)や人物像で知られました。魚や植物、鳥、子どもをモチーフにした装飾的な画面が特徴で、スウェーデン国立美術館も彼女の陶板を収蔵しています。当店のヴィオラに集う白い小鳥の大サイズ陶板も、その系譜に連なる一枚です。
ARABIA——ルート・ブリュックのレリーフ
フィンランドのARABIAでは、ルート・ブリュック(Rut Bryk、1916〜1999)が1942年から工場の美術部門に加わり、無数の小さなタイル片を組み合わせた壁面のレリーフで、粘土を芸術の域へと高めました。ヘルシンキ市庁舎や大統領公邸の大きな壁面作品でも知られています。当店では、小サイズの陶板をご紹介しています。作り手それぞれの背景は、ルート・ブリュック完全ガイドやリサ・ラーソン完全ガイドでも読むことができます。
要点の整理
- 飾る前に、まず陶板の裏側を確かめます。吊り穴・金具・紐通し穴のどれかを見て、重さも量っておきます
- 石膏ボードの壁では、表面の仕上げを確認したうえで、ピンフック・ホッチキス固定式フック・アンカー・ピクチャーレールを重さに合わせて使い分ければ、傷を抑えて掛けられます。粘着フックは対応する壁面と重量に限ります
- 陶は重いので、表示耐荷重に余裕をもたせ、大きい一枚は二点支持や下地ビスで支えます。地震に備えた副次固定も安心です
- 掛けるほかに、プレートスタンドや棚で立てて飾る方法もあります。壁に穴を空けたくないときの選択肢になります
- グスタフスベリ・ロールストランド・ARABIAの名窯には、壁面のための陶板やレリーフを残した作り手がいます
あわせて読みたい関連記事
参考資料:Nationalmuseum, Sweden(Sylvia Leuchovius 収蔵作品)/Svenskt kvinnobiografiskt lexikon(Sylvia Leuchovius)/EMMA – Espoo Museum of Modern Art(Rut Bryk)/Röhsska museet(Lisa Larson)
当店の北欧ヴィンテージ食器
北欧から直輸入したヴィンテージ食器や北欧雑貨を、状態を確認したうえでご紹介しています。1万円以上送料無料。