グスタフスベリ ローゼンフェルト(Rosenfält)完全ガイド|スティグ・リンドベリが褐色の線で描いた「バラの野原」
北欧食器タックショミュッケ編集部スウェーデン・フィンランドから北欧ヴィンテージ食器を直接買い付け、1,000点以上を検品してきた当店が、一次情報と実物の観察にもとづいて執筆・編集しています。
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白い器の上に、褐色の細い線でびっしりと描かれたバラ。つぼみから開ききった大輪まで、幾重にも重なりあう花と葉が、皿の中に小さな「バラの野原」をつくりだしています。スウェーデンの名窯グスタフスベリ(Gustavsberg)のローゼンフェルト(Rosenfält)は、スウェーデン語で「バラの野原」を意味する、その名のとおりの意匠をもつ食器シリーズです。
手がけたのは、グスタフスベリの黄金時代を築いたスティグ・リンドベリ(Stig Lindberg)。フリントゴッズ(flintgods)という素材の白い地に、線だけでバラを組み立てた意匠です。ローゼンフェルトは1960年代末に発表されたシリーズです。生産期間の詳細は資料によって記載に差があるため、本記事では実物の刻印と確認できる年代資料をもとに紹介します。
この記事では、意匠の読み解き方から、グスタフスベリという窯とスティグ・リンドベリ、そして裏面のバックスタンプでの見分け方まで、順にたどっていきます。
この記事でわかること
- ローゼンフェルト(Rosenfält)という名前の意味と、意匠の特徴
- 生みの親グスタフスベリという窯と、ストックホルム群島の風景
- スティグ・リンドベリという人と、ローゼンフェルトの位置づけ
- フリントゴッズという素材と、バックスタンプでの見分け方
ローゼンフェルトとは — 皿の中の「バラの野原」
ローゼンフェルト(Rosenfält)は、スウェーデン語の rosen(バラ)と fält(野・野原)を組み合わせた言葉で、そのまま「バラの野原」を意味します。名前のとおり、器の面には一輪の大きなバラではなく、無数のバラが群れをなして咲いています。渦を巻くように描かれた花芯、細い平行線で陰影をつけた葉、つぼみから満開までさまざまな段階の花——それらが白い地の上に重なりあい、視線が花から花へと移っていく、密度のある構図です。
色は、赤茶けた褐色(セピア)の一色。彩色をおさえ、線だけで花と葉を描いているため、華やかというよりは、どこか静かで版画のような趣があります。器種によって、皿の中央に円くまとめたもの、器の側面を帯のように取り巻くもの、面いっぱいを埋めつくすものと、同じモチーフでも見え方が変わります。白と褐色という二色だけの構成は、時代を経ても古びにくく、北欧の食器らしい落ち着きをたたえています。
グスタフスベリは、ベルサの緑の葉、プルーヌスの青いプラムの実、アダム(Adam)のコバルトブルーと、ひとつの明快なモチーフと配色で人々の記憶に残る食器を数多く生みだしてきました。ローゼンフェルトもその系譜にあり、「褐色の線で描いたバラの群れ」というひと目でそれとわかる意匠をもっています。
グスタフスベリには花を主題にした食器がいくつもありますが、ローゼンフェルトが独特なのは、徹底した線描と褐色一色という抑えた配色です。華やかな多色刷りの花柄とは対照的に、絵画というより素描に近い。一枚だけを飾っても主張しすぎず、それでいて確かな存在感がある——そのバランスが持ち味です。
グスタフスベリという窯 — ストックホルム群島の磁器の聖地
ローゼンフェルトを生んだグスタフスベリは、スウェーデンを代表する窯のひとつです。工場が建つのは、首都ストックホルムの東に広がるストックホルム群島、ヴェルムド島のファルスタ湾(Farsta Vik)のほとり。無数の島と入り江、松と白樺の森、赤い木造の家々が点在する、北欧らしい水辺の風景の中にあります。
この地に磁器工場が築かれはじめたのは1825年のこと。以来200年近く、この水辺で器が焼かれてきました。1838年にはイギリスから陶磁器の専門家が招かれ、生産が英国式へ切り替えられます。その翌年の1839年、イギリスの窯にならって錨のマークが採用され、以来この錨が窯のシンボルとして受け継がれてきました。器を確認するときは、錨だけでなく、「GUSTAVSBERG」の社名、シリーズ名、素材表示、デザイナー表示を組み合わせて読み取ります。
1863年にはボーンチャイナ(benporslin)の生産が始まります。原料の陶土はコーンウォールから取り寄せられていました。日用の食器から装飾陶、衛生陶器まで生産の幅を広げ、グスタフスベリはスウェーデンを代表する窯へ成長しました。ローゼンフェルトが焼かれた1970年代前後は、そうした長い歴史のなかでも、デザイン食器がもっとも花開いた時期のひとつにあたります。
工場のまわりには住宅や学校、商店が整えられ、湾を望む一帯にひとつの企業城下町が育ちました。下は、1970年ごろの秋のファルスタ湾を写した一枚。対岸の丘に白い館が建ち、黄葉した木々が水面に映りこんでいます。
水辺に育った企業城下町
グスタフスベリは、単なる工場ではなくひとつの町として育ちました。窯のまわりには集合住宅や一戸建て、学校、商店、集会所が整えられ、湾を望む一帯に暮らしと仕事が寄り添う共同体が形づくられます。産業建築と住宅がまとまって残るこの地区は、スウェーデンの産業史を今に伝える場所として知られています。
ヴェルムド島は、ストックホルムからバスや船で東へ向かう、群島(スカーガーデン)の入口にあたります。
「美しい日用の器を、すべての人に」
1917年に初代アートディレクターとなったヴィルヘルム・コーゲ(Wilhelm Kåge、1889–1960)は、「より美しい日用の器を(vackrare vardagsvara)」という当時のスウェーデンの理念を器づくりに結びつけた人でした。美しいデザインは富裕層のためだけのものではなく、ふつうの人々の暮らしの中にこそあるべきだ——その考えのもと、手の届く価格の食器や、アルジェンタ(Argenta)に代表される緑釉の装飾陶が生まれました。
この「日々の器を美しく」という思想は、次の世代へと引き継がれていきます。量産できるフリントゴッズの食器に、明快で親しみやすい意匠を載せる——ベルサやプルーヌス、そしてローゼンフェルトといった食器は、まさにこの系譜の上に生まれました。やがてスティグ・リンドベリの時代に、グスタフスベリは黄金期を迎えます。
スティグ・リンドベリとローゼンフェルト
スティグ・リンドベリ(Stig Lindberg、1916–1982)は、20世紀のスウェーデンを代表するデザイナーです。1949年にコーゲの後を継いでグスタフスベリのアートディレクターに就き、ベルサ、プルーヌス、スピサ・リブ(Spisa Ribb)、アダムなど、今日まで愛される数々の食器を手がけました。テキスタイル、ガラス、絵本の挿絵、グラフィックへと領域を横断したことから、「千の芸術家(Tusenkonstnären)」とも呼ばれます。
リンドベリは若い頃、コーゲのもとで学びました。下の写真は1938年、グスタフスベリの工房での一枚。左が師のコーゲ、右がまだ二十代のリンドベリです。師から受け継いだ「美しい器を人々の手に」という姿勢は、のちのベルサやローゼンフェルトのような、量産できる食器の意匠へと結実していきました。
ローゼンフェルトがリンドベリの手になることは、器そのものが教えてくれます。裏面のバックスタンプには、錨のマークと「FLINTGODS」「ROSENFALT」の文字に添えて、「Stig L.」というサインが記されています。これはグスタフスベリがリンドベリの意匠に用いたサインです。ベルサの緑、プルーヌスの青のように、一色でモチーフをまとめるのはリンドベリの得意とした手法でした。
リンドベリの仕事は、食器だけにとどまりませんでした。陶の彫刻やアート陶、テキスタイルの図案、絵本の挿絵、ガラス器、さらには企業のためのグラフィックにいたるまで、彼は多くの分野を軽やかに横断しました。「千の芸術家」という愛称は、そうした尽きることのない旺盛な創作を言いあらわしています。ローゼンフェルトの、線だけでバラを組み立てた図案にも、イラストレーターやグラフィックデザイナーとして活動したリンドベリの感覚が表れています。
リンドベリの器は、日本でもとりわけ深く愛されてきました。ベルサをはじめとする明快で親しみやすいデザインは、余白や簡素さを大切にする日本の美意識とも響きあいます。2026年春には、滋賀県立陶芸の森で大規模なリンドベリ展が開催されました。日本でも、その作品をまとまって見直す機会が続いています。(スティグ・リンドベリ完全ガイドもあわせてどうぞ。)
リンドベリのフリントゴッズ食器という系譜
ローゼンフェルトを深く味わうには、リンドベリが手がけたフリントゴッズの食器という大きな流れの中に置いてみるのが近道です。1950年代から70年代にかけて、リンドベリは白いフリントゴッズの地に明快なモチーフを載せた食器を次々と生みだしました。ローゼンフェルトも、その一群の一員です。
スピサ・リブ(Spisa Ribb)
1955年、ストックホルムで開かれた大規模なデザイン展「H55」で発表された縞模様のシリーズです。細い縦縞という単純な意匠を白い地に載せただけの潔さは、日用の器を美しく——という理念を、もっとも簡素なかたちで体現しています。
アダム(Adam)
1959年に発表された、コバルトブルーの円点を規則的に配したシリーズです。フリントゴッズの白い地と深い青のコントラストが、簡潔で明快な表情を生んでいます。ローゼンフェルトとはモチーフが異なりますが、一色の意匠で器全体の印象をつくる点に、リンドベリらしい構成が見られます。
ベルサ(Berså)とプルーヌス(Prunus)
1960年代に単独のシリーズとしてまとめられたベルサは、緑の葉を規則正しく並べた意匠で、今日もっとも広く知られるグスタフスベリの食器のひとつです。プルーヌスは、青いプラムの実を散らしたシリーズ。いずれもフリントゴッズの白い地に、ひとつの植物のモチーフとひとつの色でまとめられています。緑のベルサ、青いプルーヌスとならべたとき、褐色のローゼンフェルトはまた別の落ち着いた表情を見せます。
これらの食器の多くは、1970年代のうちに製造を終えていきました。石油危機によるエネルギー価格の上昇に加え、製造コストや市場環境の変化が北欧の陶磁器産業に影響を与えました。ローゼンフェルトを含む多くのシリーズが生産を終えた背景には、こうした産業構造の変化があります。ローゼンフェルトのようなヴィンテージの器は、そうした黄金期の終わりぎわに焼かれた、時代の証しでもあります。(あわせて石油危機が北欧食器を変えた日もご覧ください。)
「バラの野原」の意匠を読み解く
ローゼンフェルトの魅力は、なんといってもその線にあります。花びらは一本の連続した線で渦を描くようにまとめられ、葉は細かな平行線で葉脈と陰影が表されています。塗りつぶしをほとんど用いず、線の粗密だけで立体感と奥行きをつくりだす——刺繍の下絵やペン画を思わせる、密度のある描き方です。
「バラの野原」という名は、一輪ではなく群れとして咲くバラを主題にした意匠であることを示しています。ローゼンフェルトの着想源を特定する資料は、今回確認した範囲では見つかっていません。ただ、褐色の線で花が広がる意匠は、スウェーデンの夏の庭や野に咲くバラを連想させます。
スウェーデンでは、バラや野の花は夏の象徴として親しまれてきました。夏至祭(ミッドソンマル)では、人々は野の花で冠を編みます。花への愛着は、テキスタイルや壁紙、食器の意匠にも繰り返しあらわれてきました。
褐色という色
ローゼンフェルトの色は、赤みをおびた褐色——セピアに近い、落ち着いた一色です。白い地の上でやわらかく発色し、線描のバラに古書の挿画のような趣を与えています。多くのグスタフスベリの食器が緑や青の寒色でまとめられるなか、褐色という暖色系は、同じ窯の器のなかでも独特の温度感をもっています。
ミッドセンチュリーの線描
ローゼンフェルトを写実的な花柄と分けているのは、その線描です。陰影を描きこむのではなく、輪郭と平行線だけで簡潔にとらえていく——1950〜60年代のグラフィックデザインに通じる感覚です。単純化され、平面的で、リズムのある線。ローゼンフェルトのバラは、写生というよりデザインとしてのバラです。
カップやピッチャーのような立体では、花と葉が側面を帯のように取り巻き、どの角度から見てもバラが続きます。
フリントゴッズという素材
ローゼンフェルトの白い地は、フリントゴッズ(flintgods)と呼ばれる素材でつくられています。スウェーデンの陶磁器資料では、白色の量産食器などに用いられた陶器系の素材区分として扱われています。グスタフスベリでは、ローゼンフェルトのほか、ベルサやプルーヌスなど多くの食器に用いられました。磁器の青みを帯びた白とは異なり、ローゼンフェルトの素地には、やわらかな乳白色の表情があります。
ベルサ、プルーヌス、スピサ・リブといったリンドベリの人気シリーズも、同じフリントゴッズの地に意匠を載せています。ローゼンフェルトの、あたたかみのある白と、褐色の線がにじまず端正に定着した様子は、この素材ならではのものです。裏面には「FLINTGODS」の文字が刻まれ、どの素材でつくられたのかを、器みずからが教えてくれます。
陶器・磁器・フリントゴッズ
陶磁器は、原料、焼成温度、吸水性などによって複数の種類に分かれます。ローゼンフェルトの裏面にある「FLINTGODS」は、スウェーデンで用いられた素材区分の表示です。この記事では、実物の刻印と収蔵資料に従い、ローゼンフェルトをフリントゴッズ製と説明します。
裏面の「FLINTGODS」表記は、この器の素材を確認するための手がかりです。北欧食器の素材については、北欧食器の素材ガイドでも詳しく解説しています。
バックスタンプで見分ける
ローゼンフェルトを見分けるうえで、いちばん確かなのは裏面のバックスタンプです。器をひっくり返すと、グスタフスベリの錨のマークを中心に、いくつかの文字が並んでいます。
読み取れるのは、次の要素です。
錨と「GUSTAVSBERG」
円の中に描かれた錨と、それを囲む「GUSTAVSBERG」の文字。1839年以来の窯のシンボルで、これがグスタフスベリの器である目印になります。
「FLINTGODS」
素材がフリントゴッズであることを示す表示です。復刻された近年のグスタフスベリ製品にはボーンチャイナのものもあり、素材の表記はヴィンテージを見分ける手がかりのひとつになります。
「ROSENFALT」と「Stig L.」
シリーズ名「ROSENFALT」と、デザイナーのサイン「Stig L.」。この「Stig L.」が、ローゼンフェルトがスティグ・リンドベリの意匠であることを、器みずから証しています。あわせて「MADE IN SWEDEN」の表示があり、本国スウェーデンで焼かれたことがわかります。
VDNマークと年代の手がかり
ローゼンフェルトの裏面には、「VDN」の文字とアルファベット・数字の組み合わせも見られます。VDN(Varudeklarationsnämnden)は、スウェーデンの消費者向け品質表示制度で、製品の素材や耐久性を客観的に示すために設けられたものです。陶磁器の表示では、先頭の「F」がフリントゴッズを示し、後続する数字は釉薬や装飾などの性能区分を表します。数字の意味はコードごとに異なるため、実物の表示と当時の基準表を照合して読み取ります。
VDN表示は1973年まで使われたため、製造時期の上限を考える手がかりになります。ただし、表示だけで正確な製造年を確定することはできません。
素材が語る時代
グスタフスベリの旧工場は1993年に閉鎖されました。その後、一部の過去シリーズは新たな生産体制のもとで再製品化されています。オリジナル期と後年品では、素材や刻印が異なる場合があるため、シリーズごとに確認が必要です。ローゼンフェルトの実物には「FLINTGODS」と記されており、この表示から素材を確認できます。
バックスタンプの読み方は、グスタフスベリのほかのシリーズにも共通します。より詳しくは、グスタフスベリの年代の見分け方もあわせてご覧ください。北欧食器全般の裏印については、北欧食器のバックスタンプ総合ガイドにもまとめています。
ローゼンフェルトのかたち
ローゼンフェルトには、皿からカップ、ボウル、ピッチャー、角皿まで、さまざまな器種があります。器種ごとにバラの配し方が異なるのが、このシリーズの見どころです。
皿のいろいろ
もっとも見かけるのが丸い皿です。小ぶりのケーキ皿から24cmほどのディナープレート、縁が立ち上がったスープ皿まで幅があります。中央にバラを円くまとめ、白い余白を広くとった構図は、壁に立てかけて飾るときによく映えます。
角皿(スクエアプレート)
ローゼンフェルトの角皿は、縁がゆるやかに立ち上がったトレイのような形をしています。丸皿とは対照的に、面の隅々までバラを敷きつめた構図が多く、「バラの野原」を切り取ったような密度があります。
カップ・ボウル・ピッチャー
ティーカップとソーサー、大小のボウル、胴のふくらんだピッチャー。皿と立体の器を組み合わせると、白と褐色でまとめられた小さなコレクションになります。
迎えるときに目を向けたいところ
ローゼンフェルトを一点選ぶとき、まず裏面のバックスタンプを確かめると安心です。錨、「GUSTAVSBERG」、「FLINTGODS」、「ROSENFALT」、「Stig L.」、「MADE IN SWEDEN」、VDN表示を一組として読み取ります。次に、器種とサイズ。飾るなら余白の映える丸皿や、存在感のある角皿が選びやすく、立体の器を加えると奥行きが出ます。最後に、欠け、ひび、貫入、スレなどの状態を確認します。貫入と素地まで達したひびは異なるため、写真と状態説明を分けて読み取ることが大切です。
当店では現在、ローゼンフェルトのスープ皿をご紹介しています。中央に円く集まったバラの線描が美しい一枚です。造形と意匠を静かに愛でる観賞用の器として、棚の一枚にお選びいただけます。
コンディションと、飾るという楽しみ
ローゼンフェルトは半世紀ほど前に焼かれた器ですから、一点ずつに時代を経た表情があります。ヴィンテージの器を見るときは、次のような点に目を向けると、状態がつかみやすくなります。
貫入(かんにゅう)
釉薬の表面に見られる、網目状の細かな線を貫入といいます。素地そのものが割れる「ひび」とは別のものです。ヴィンテージ品では状態確認の対象になります。入り方や着色の有無は個体ごとに異なるため、商品写真と説明で確認します。
摩耗・スレ
器の表面には、うっすらとしたスレが見られることがあります。光にかざすと分かる程度のものが多く、線描のバラの静かな風合いとともに、ヴィンテージらしい味わいをつくっています。
欠け・ひび・貫入を見分ける
状態を見るときは、言葉を分けて考えると分かりやすくなります。「欠け」は縁などが物理的に欠けた状態、「ひび」は素地そのものが割れている状態、「貫入」は釉薬の表面にあらわれる網目状の細かな線です。素地まで達しているかどうかで、まったく別のものです。写真と状態説明を分けて読み取ります。
飾るという楽しみ
白と褐色でまとめられたローゼンフェルトは、木の棚やプレートスタンドに立てかけるだけで、静かな絵のように空間になじみます。褐色は木の家具や真鍮、麻や綿といった自然素材と相性がよく、和の空間にもなじみます。丸皿を一枚立てて余白を楽しむのもよく、皿と立体の器を数点まとめて棚に並べ、小さな「バラの野原」をつくるのもよいでしょう。飾り方の実践は、北欧ヴィンテージ皿の飾り方もご参考になります。
お手入れの際は、絵柄の色を守るため、漂白剤の使用は避けるのが安心です。長い時間を経てきた器ですから、強くこすったり、急な温度変化を与えたりせず、やわらかく扱うことで、褐色の線と乳白色の地を美しいまま保てます。
グスタフスベリの器は、ストックホルムの国立美術館(Nationalmuseum)が収蔵する大規模なコレクションでも知られ、スウェーデンのデザイン史を語るうえで欠かせない存在です。ローゼンフェルトのような一枚の食器の背後にも、およそ200年にわたって水辺で器を焼きつづけてきた窯の歴史が横たわっています。
一枚のローゼンフェルトの皿には、ストックホルム群島の水辺で200年近く器を焼いてきた窯の歴史と、「日々の器を美しく」という理念、そしてスティグ・リンドベリの図案が折り重なっています。褐色一色の線で組み立てられたバラの群れは、派手さのないぶん、長く眺めても飽きがきません。
まとめ
要点の整理
- ローゼンフェルト(Rosenfält)は、スウェーデン語で「バラの野原」を意味するグスタフスベリの食器シリーズ。
- 手がけたのはスティグ・リンドベリ。裏面のサイン「Stig L.」が、その仕事であることを示す。
- 白い地に褐色の線だけでバラの群れを描いた、版画のような静かな意匠。
- 素材はフリントゴッズ。ベルサやプルーヌスと同じ、リンドベリの食器の系譜に連なる。
- 生みの親グスタフスベリは、ストックホルム群島ヴェルムド島の水辺で1825年から器を焼いてきた窯。
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参考資料:グスタフスベリ社の沿革(gustavsberg.com)、Gustavsbergs porslinsfabrik の沿革記録(錨マークの採用、1863年のボーンチャイナ生産開始、旧工場の閉鎖)、スウェーデン国立美術館が管理する Gustavsberg Collection、VDN(Varudeklarationsnämnden)の商品表示制度に関する資料、滋賀県立陶芸の森「スティグ・リンドベリ展」(2026年3月20日–5月10日)、実物のバックスタンプ、Wikimedia Commons。
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