ARABIA アピラ 大型チューリン|緑のクローバー柄の北欧ヴィンテージ食器

アラビア アピラ(Apila)完全ガイド|カイピアイネンの四つ葉のクローバー、1971年の誕生と2026年の日本先行復刻

北欧食器タックショミュッケ編集部

フィンランドの名窯ARABIA(アラビア)に、四つ葉のクローバーを描いたシリーズがあります。その名を「アピラ(Apila)」といいます。フィンランド語で「クローバー」を意味する言葉です。緑の濃淡だけで葉と花を描いたこの器は、色彩豊かな装飾で知られるビルガー・カイピアイネン(Birger Kaipiainen)の作品のなかでも、静かで清々しい表情をもっています。

アピラが生まれたのは1971年。初期の生産は1973年に終了し、2006年には一度復刻されています。そして2026年9月16日、日本先行で再び発売されました。この記事では、緑のクローバーの意匠やパラティッシと共通する器形、初期品から今回の復刻までの歩みを、写真とともに紹介します。

ARABIA アピラのカップとソーサー|緑のクローバーの葉と白い花が描かれた北欧ヴィンテージ食器
アピラのカップ&ソーサー。緑の濃淡で描かれたクローバーの葉と、白く抜いた花。

この記事でわかること

  • アピラという名前と、四つ葉のクローバーの意匠の意味
  • デザイナー、ビルガー・カイピアイネンの仕事のなかでのアピラの位置
  • アピラの器の形が、パラティッシと同じ理由
  • 1971年の誕生から2006年、そして2026年日本先行復刻までの歩み

目次

  1. アピラ(Apila)とは — 四つ葉のクローバーの器
  2. 緑の濃淡で描かれたクローバーの意匠
  3. デザイナー、ビルガー・カイピアイネン — 「装飾家の王」
  4. パラティッシから生まれた白い器
  5. 1971年の誕生と、生産の歩み
  6. 2026年、日本先行での復刻
  7. ヴィンテージのアピラを楽しむ
  8. カイピアイネンのほかの名作

アピラ(Apila)とは — 四つ葉のクローバーの器

アピラ(Apila)は、1971年にARABIAが発表したシリーズです。デザインを手がけたのは、20世紀フィンランドを代表する陶芸家、ビルガー・カイピアイネン(Birger Kaipiainen、1915〜1988)でした。「Apila」はフィンランド語でクローバー(マメ科のシャジクソウ属)を指す言葉で、器の面いっぱいに、葉と花が伸びやかに広がります。

カイピアイネンといえば、青やすみれ色、金彩をふんだんに用いた華やかな装飾で知られています。そのなかでアピラは、緑の濃淡を基調とした、いわば単色に近い構成をとります。色数を抑えたぶん、葉脈の一本一本や、丸くほどけた花の輪郭がくっきりと立ち上がり、植物そのものの気配が前に出てきます。カイピアイネンの仕事のなかでは、めずらしく涼やかな一面をのぞかせる器といえます。

ARABIA アピラの大型スープチューリン|緑のクローバー柄の蓋物
アピラの大型チューリン(底面の刻印は1971年8月)。蓋にも本体にも、クローバーの葉と花が途切れなくめぐる。

緑の濃淡で描かれたクローバーの意匠

アピラの絵柄をよく見ると、四つ葉と三つ葉のクローバーの葉、そして白く抜かれた丸い花が、蔓(つる)でつながって広がっているのがわかります。葉は黄緑から深い緑まで、いくつかの緑を重ねて描かれ、平面的でありながら奥行きを感じさせます。花は塗りつぶさず、線だけで輪郭を取っているため、白い器の地色がそのまま花の色になります。

四つ葉のクローバーは、ヨーロッパでは古くから幸運の象徴として親しまれてきました。三つ葉のなかにまれに生まれる四枚目の葉は、見つけた人に幸せをもたらすといわれます。アピラの器には、その四つ葉が惜しみなく散りばめられています。北欧の短い夏に、足もとで揺れるありふれた野の草があります。その草をそのまま器の意匠に選んだところに、身のまわりの自然に目を向けるフィンランドらしさがにじみます。

草の間の四つ葉のクローバーと白いクローバーの花のクローズアップ
草の間に見つけた四つ葉のクローバー。右上には白い花も。(写真: KEBman / Wikimedia Commons, PD)
クローバーやマメ科の花が咲く北欧の夏を思わせる野原
クローバーやマメ科の花が咲く、北ヨーロッパの夏を思わせる野の草はら。(写真: Per Ola Wiberg / Wikimedia Commons, CC BY 2.0)

デザイナー、ビルガー・カイピアイネン — 「装飾家の王」

ビルガー・カイピアイネンは、1915年、フィンランド西岸の町ポリに生まれました。ポリオの影響で右足が不自由でしたが、ヘルシンキの中央工芸学校で学んだのち、青年期にARABIAのアート・デパートメント(美術部門)に加わります。以後、約50年にわたってこの窯に在籍し、数多くの作品を生み出しました。

その装飾のゆたかさから、カイピアイネンは「装飾家の王(ヘルシンキの装飾王)」とも呼ばれます。ビザンティンのモザイクや中世の写本を思わせる、金や青を敷きつめた華麗な陶板やビーズの鳥は、世界の万国博覧会やトリエンナーレでも高く評価されました。彼の詳しい生涯と作品については、ビルガー・カイピアイネン完全ガイドで紹介しています。

作品を背にしたビルガー・カイピアイネンの肖像
作品を背にしたビルガー・カイピアイネン(1953年)。(写真: Aarne Pietinen Oy / Wikimedia Commons, CC BY 4.0)

アピラは、そうした絢爛な作品群のなかでは、静かな位置にある器です。とはいえ、植物を平面に写し取り、線でリズムをつくる手つきには、カイピアイネンらしい装飾の呼吸がしっかりと息づいています。下は、鳥の形をしたカイピアイネンの陶板です。長く伸びたくちばしと、黒い胴に並ぶ明るい装飾が目を引きます。

ビルガー・カイピアイネンによる黒い鳥形の陶板
カイピアイネンによる鳥形の陶板。ヴィクトリア&アルバート博物館所蔵。(写真: 14GTR / Wikimedia Commons, CC0)

下の陶板は、彼の華やかな一面を伝えるもう一枚です。青い花と、真珠のような光沢の釉薬が広がります。

ビルガー・カイピアイネンの装飾的なアートプレート|青い花と真珠光沢の釉薬
カイピアイネンの装飾陶板。青い花と真珠のような光沢の釉薬。アピラとは対照的な華やかさ。

パラティッシから生まれた白い器

アピラの器を手に取ると、その形に見おぼえのある方もいるかもしれません。プレートやボウル、カップの形は、カイピアイネンのもうひとつの代表作パラティッシ(Paratiisi、=楽園)と共通しています。じつはアピラは、パラティッシの無地の白い器を土台にして生まれたシリーズです。装飾を載せる前の白いボディに、クローバーの絵柄をあしらう。そうすることで、既存の型を生かしながら、まったく表情の異なる器がつくられました。

パラティッシが黄色い果実や青いすみれ、黒い実を大胆に配した「楽園」の器だとすれば、アピラは同じ形の器を緑一色の野原に変えたようなものです。二つを並べると、同じ骨格から生まれた対照的な兄弟のように見えます。パラティッシの成り立ちについては、パラティッシ完全ガイドで詳しく解説しています。

カイピアイネンのパラティッシ柄のピッチャー|黄色い果実と青い花
カイピアイネンのパラティッシ柄のピッチャー。黄色い果実と青い花。(写真: Holger.Ellgaard / Wikimedia Commons, CC BY 3.0)
ARABIA パラティッシ オーバルプレート 1971年製|黄色い果実と青いすみれの北欧ヴィンテージ食器
パラティッシのオーバルプレート(1971年製)。アピラと同じ形の器に、色彩ゆたかな「楽園」の絵柄。

当店では、アピラと同じ器形をもつパラティッシのヴィンテージも扱っています。1971年製のオーバルプレートは、初期のパラティッシならではの深い発色が魅力です。緑一色のアピラと多彩なパラティッシを見くらべると、カイピアイネンが同じ形にどれだけ違う世界を描き分けたかがよくわかります。下は特大サイズの36cmオーバルプレートです。

ARABIA パラティッシ 特大オーバルプレート36cm|ヴィオラロゴの北欧ヴィンテージ食器
パラティッシの特大オーバルプレート36cm。飾ると絵柄の伸びやかさがよくわかる一枚。

1971年の誕生と、生産の歩み

アピラが発表されたのは1971年でした。ところが、原料の関係で1973年には生産が終わってしまいます。市場に出回った期間が短かったぶん、ヴィンテージのアピラは、パラティッシほど数多くは残されていません。緑のクローバーの器を探している人にとって、出会いがやや限られるのはそのためです。

アピラは2006年に復刻され、2010年に再び生産を終えました。そして2026年9月16日、日本先行で新たな復刻版が発売されています。1971〜1973年の初期品、2006〜2010年の復刻品、2026年に登場した復刻品を分けて見ると、アピラの生産の歩みがわかります。

ヘルシンキのARABIA工場の建物|壁面のARABIAの文字と煙突
ヘルシンキのARABIA工場。壁面に「ARABIA」の文字と、高い煙突。(写真: Markus Koljonen / Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0)

2026年、日本先行での復刻

2026年9月16日、ARABIAはアピラを日本先行の復刻シリーズとして発売しました。数量をしぼった特別販売ではなく、定番のコレクションとしての登場です。今回の復刻では、マグ0.35Lとボウル13cmが新たに加わりました。

公式オンラインストアのラインナップは次の8商品です。価格は2026年9月27日確認時点の税込価格です。

  • マグ 0.35L(新アイテム)/5,830円
  • ボウル 13cm(新アイテム)/6,380円
  • ボウル 17cm/8,140円
  • カップ&ソーサー/9,900円
  • プレート/ソーサー 16.5cm/4,400円
  • プレート 21cm/6,600円
  • プレート 26cm/8,800円
  • ボウル 23cm/16,500円(公式オンラインストア先行販売)
冬のヘルシンキの港|氷の張った海とフェリー
冬のヘルシンキの港。氷の張った海と、行き交うフェリー。アピラが生まれた街。(写真: Gian Luca Sgaggero / Wikimedia Commons, CC BY 2.0)

ヴィンテージのアピラを楽しむ

ヴィンテージのアピラを見る楽しみのひとつは、器の形に沿って広がるクローバーの模様です。この記事のチューリンの写真では、丸みのある蓋と胴の両方に葉と花が描かれています。カップ&ソーサーでは、同じ模様が小さな器の側面や縁をめぐります。

古いアピラを選ぶ際は、初期品か過去の復刻品かという年代と、個々の状態を確認しましょう。底面の刻印写真や商品説明に加え、欠け、ひび、貫入、使用による擦れの有無を確認すると、その一品を具体的に把握できます。ARABIAの刻印については、北欧食器のバックスタンプ完全ガイドで紹介しています。

白いクローバーの花が一面に咲く夏の野原
白いクローバーの花が一面に咲く夏の野原。アピラの意匠が写し取った、足もとの風景。(写真: Lukas Beck / Wikimedia Commons, CC BY 4.0)

カイピアイネンのほかの名作

アピラの背景を知ると、カイピアイネンが手がけたほかのシリーズにも目が向きます。同じ1971年に発表されたスンヌンタイ(Sunnuntai、=日曜日)は、大きな花の意匠を大胆に配したシリーズで、アピラと同じくパラティッシの器形を土台にしています。緑のアピラとならべると、色づかいの対照が際立ちます。詳しくはスンヌンタイ完全ガイドで紹介しています。

ARABIA スンヌンタイのチューリン|赤い大きな花の意匠の北欧ヴィンテージ食器
スンヌンタイのチューリン。白地に赤い大きな花弁がめぐる、アピラと同じ器形のシリーズ。

カイピアイネンのヴィオラ(Viola)は、すみれの花をかたどった小さな器です。下の写真では、丸みのある花弁に青紫の光沢が広がっています。白い器に緑の模様を描いたアピラと見くらべると、植物を表現する方法の違いがよくわかります。

ARABIA ビルガー・カイピアイネン ヴィオラ|花の形をした濃青の小皿
カイピアイネンのヴィオラ。花の形にかたどられ、濃い青の釉薬が沈む小さな器。

まとめ

要点の整理

  • アピラ(Apila)はフィンランド語で「クローバー」。1971年、カイピアイネンがARABIAで手がけたシリーズ。
  • 緑の濃淡だけで四つ葉のクローバーを描く、カイピアイネンには珍しく静かな意匠。
  • 器の形はパラティッシと共通で、装飾のない白いボディを土台に生まれた。
  • 1973年に生産終了、2006年に一度復刻、そして2026年9月16日に日本先行で再び復刻。

緑のクローバーが伝えるのは、北欧の短い夏に足もとで揺れる、ありふれた野の草の記憶です。ヴィンテージのアピラも、よみがえった復刻のアピラも、その静かな野原を、日本の部屋のなかにそっと運んでくれます。

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