アラビア バレンシア(Valencia)完全ガイド|コバルトブルーの手描き、アラビア最後の名作
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アラビア バレンシア(Valencia)完全ガイド — コバルトブルーの手描き、アラビア最後の名作
バレンシア(Valencia)は、フィンランドの名門アラビア(ARABIA)が誇る、コバルトブルーの手描き食器シリーズです。1960年の誕生から2002年の生産終了まで約42年間にわたり製造され、アラビア最後の手描きシリーズとして、北欧食器の歴史に特別な位置を占めています。
この記事では、北欧食器の専門店として数多くのバレンシアを扱ってきた当店の知見をもとに、デザイナーの物語・バレンシアの魅力・全アイテム解説・選び方を詳しくご紹介します。
(アラビア バレンシア 19.5cmプレート — コバルトブルーの手描きが美しい)
デザイナー ウラ・プロコッペの物語
ウラ・プロコッペ(Ulla Procopé, 1921-1968)は、フィンランド・ヘルシンキに生まれた陶磁器デザイナーです。スウェーデン語系フィンランド人の上流家庭に育ちましたが、母親を3歳で亡くし、軍事監視員であった父親の赴任に伴い、フランス南部のスペイン国境近くで少女時代を過ごしました。
この南仏での体験が、のちのバレンシアの誕生に大きな影響を与えます。地中海の陽光、色鮮やかな花、スペイン陶器の素朴な美しさ — それらは若きウラの心に深く刻まれました。
1948年にヘルシンキ産業芸術学院を卒業後、アラビアに入社。手描き部門でオルガ・オソルに師事し、その後モデル・装飾部門、製品デザイン部門へと進みました。カイ・フランク(Kaj Franck)のもとで経験を積みながら、独自のデザイン哲学を確立していきます。
いずれも数十年にわたり生産された名作 アラビア初のマット釉薬による量産食器「ルスカ」を開発し、フィンランドの食器デザインに大きな変革をもたらした 1957年ミラノ・トリエンナーレ名誉賞など国際的評価を獲得 陶磁器工場での粉塵による珪肺症のため、47歳の若さで逝去 目次 ウラ・プロコッペとは 生い立ち——ヘルシンキの名門家庭に生まれて 3歳で母を亡くして 南フランスの修道院学校——バレンシア誕生の原風景 ヘルシンキ工芸学校からアラビアへ カイ・フランク率いるデザインチーム 代表作——素材と釉薬の革新者 リエッキ——「炎」の名を持つ耐火食器 ルスカ——フィンランドの紅葉を映す バレンシア——コバルトブルーの手描き芸術 アネモネ、ロスマリン、コスモス——Sモデルの世界 ミラノ・トリエンナーレと世界への挑戦 珪肺症との闘い——テネリフェ島での最期 ルスカと日本の美意識——侘び寂びとの共鳴 プロコッペが遺したもの ウラ・プロコッペとは ウラ・プロコッペ(1921-1968)。その功績は国際的にも高く評価され、ミラノ・トリエンナーレをはじめ多くの賞を受賞しています。しかし、陶磁器工場での粉塵に起因する珪肺症のため、1968年に47歳の若さでこの世を去りました。家族はフランス南部、ピレネー山脈のふもとの街ペルピニャン(Perpignan)に移り住みました。Photo: Ymblanter / CC BY-SA 4.0 素朴な陶器に盛られた果物やチーズ、明るい陽光が差し込む台所、飾り気のない実用の美——ペルピニャンで過ごした少女時代の記憶は、のちに彼女の代表作「バレンシア」のコバルトブルーの世界として結実することになります。
ウラ・プロコッペの主な作品
- バレンシア(Valencia, 1960-2002) — コバルトブルーの手描き食器。本記事で詳しく紹介
- ルスカ(Ruska, 1960-1999) — アラビア初のマット釉薬の日用食器。茶色のアースカラーが特徴
- フローラ(Flora, 1979-1981) — プロコッペのSモデルフォルムに、エステリ・トムラが草花を描いた食器シリーズ
- コラーリ(Koralli, 1983-1987) — プロコッペのSモデルフォルムに、ライヤ・ウオシッキネンがサンゴ柄を描いた食器シリーズ
- プルプリイェンカ(Purpuri-Jenkka, 1969-1970) — 「紫の踊り」の名を持つ、踊るような花柄の手描き食器。わずか1年で廃盤となった希少シリーズ
- アネモネ(Anemone, 1964-1976) — 花柄の食器シリーズ
※ フローラとコラーリは、プロコッペが1968年に亡くなった後、彼女が考案したSモデルのフォルムをもとに他のデザイナーが装飾を新たに考案して製作されたシリーズです。
プロコッペは1957年のミラノ・トリエンナーレで受賞し、国際的な評価を確立。しかし病に倒れ、晩年はスペイン・カナリア諸島のテネリフェに移り住み、1968年に47歳の若さで亡くなりました。彼女が愛したスペインの地で — バレンシアの名前が示す地中海の風景の中で生涯を終えたのです。
バレンシアの誕生 — 北欧デザインに咲いた地中海の花
バレンシアは1960年に発表されました。「バレンシア」の名前は、スペイン地中海沿岸の港町バレンシアに由来します。
1960年代の北欧デザインは、ミニマリズムと機能美が主流でした。しかしプロコッペのバレンシアは、その流れに反するように華やかで装飾的。コバルトブルーの大胆な筆致で描かれた花や幾何学模様は、地中海の陽光と豊かな自然を表現しています。
北欧の静謐さと地中海の情熱 — この二つの美意識が融合したバレンシアは、フィンランド国内はもちろん世界中で愛される名作となりました。
(バレンシア デミタスカップ&ソーサー — 小さなカップにも職人の筆致が宿る)
「バレンシア」の名は、スペイン東海岸の港町バレンシアに由来しています。地中海に面したこの美しい街の、青い海と白い建物のコントラストが、コバルトブルーの手描き模様のインスピレーションになったといわれています。
バレンシアが特別な理由
1. すべてが手描き — 世界に一つだけの器
バレンシアの最大の特徴は、一点一点がすべて職人の手で描かれていること。1960年当時、アラビアには約175人の手描き職人がおり、一筆一筆に個性が宿ります。色の濃さ、筆のタッチ、にじみ具合 — 同じバレンシアは二つとありません。
2. アラビア最後の手描きシリーズ
2002年、最後のバレンシアが描かれた日、アラビア工場の手描き伝統に幕が下りました。バレンシアはアラビア最後の手描き製品であり、その終了は一つの時代の終わりを意味します。復刻も再生産も行われておらず、ヴィンテージのみが入手可能です。
3. 42年間の製造による豊富なバリエーション
1960年から2002年まで実に42年間にわたり製造されたバレンシアは、時代によって大きく異なる表情を持っています。
- 1960-70年代 — 手描きの個性が際立つ初期の作品
(バレンシア ティーポット — 職人の筆致が器全体を覆う圧巻の存在感)
4. 染付磁器を思わせるコバルトブルー
バレンシアの深いコバルトブルーは、日本の染付磁器に通じる美しさがあります。和食器と同じ「白地に青」の伝統的な配色が、国境を超えた美意識の共通点を感じさせます。
5. 発売前の試作品も現存
バレンシアが1960年に発売される直前に制作されたと思われる試作品も、ごく稀にヴィンテージ市場に出回ることがあります。花柄と格子柄が一枚の中に混在しており、最終的なデザインが確定する前のプロセスを垣間見ることができます。
(花柄と格子柄が混在するバレンシアの試作品)
試作品の背面にはペインターのサインがなく、焼きが甘く貫入も見られるため、正規の販売用ではなかったと考えられます。ただし一部には「UP」のサインのみが入ったものもあり、これはデザイナーであるウラ・プロコッペ本人が関わったことを示しています。通常はUPの後にスラッシュでペインターのイニシャルが添えられますが、UPのみということは、プロコッペ自身が絵筆を執った可能性もあります。
バレンシアの全アイテム解説
バレンシアは42年間の長い製造期間を通じて、非常に幅広いアイテムが展開されました。当店で取り扱いのあるアイテムをご紹介します。
カップ&ソーサー — バレンシアの入門に
(バレンシア ティーカップ&ソーサー)
- ティーカップ&ソーサー — 当店で最も人気のバレンシア。たっぷりとした手描きの青が美しい
- コーヒーカップ&ソーサー — ティーカップより小ぶりなサイズ。コレクションの人気アイテム
- デミタスカップ&ソーサー — エスプレッソ用の小さなカップ。コレクションの逸品
プレート — テーブルの主役
(バレンシア 特大36cmプレート — 圧倒的な存在感のサービングプレート)
- 19.5cmプレート — 当時ケーキ皿や取り皿として親しまれたサイズ
- 26cm大皿 — 食卓の中心を飾るサイズ。手描きの青が映える一枚
- 33cmプレート — 希少な大型サイズ。コレクターに人気の逸品
- 特大36cmプレート — 壁に飾っても映える、圧巻のサイズ
深皿・ボウル
(バレンシア シュガーボウル)
- 23cmスープ皿(深皿) — 当時はスープ料理のためにデザインされた深皿
- 大サイズ ボウル — サラダやフルーツの盛り合わせ用にデザインされた大型ボウル
- エッグカップ — 北欧の朝食文化を象徴するアイテム。小さくても手描きの美しさが凝縮
ポット・ピッチャー・その他
(バレンシア チューリン(大サイズ)— 蓋付きの存在感ある一品)
- ティーポット — 優雅なフォルムに手描きの青が映える
- コーヒーポット — ティーポットより細身。インテリアとしても
- クリーマー — ミルクピッチャー。コーヒーセットの一部としてデザインされたアイテム
- シュガーボウル — 蓋付きの可愛らしいフォルム
- チューリン(大サイズ) — 蓋付きスープ鍋。テーブルの主役になる圧巻の存在感
- チューリン(小サイズ) — 小鉢や蓋付き小物入れとしても
- カッティングボード — チーズやパンのサービング用にデザインされたボード。壁掛けにも
バックスタンプ(裏面)の見方
(バレンシアの裏面 — 手描きのARABIA FINLANDロゴとデザイナー・ペインターのイニシャル)
バレンシアの裏面には、製造年代や品質を示す重要な情報が記されています。
手描きサイン(1960-70年代)
初期のバレンシアには、裏面に手書きで「ARABIA」のロゴと、デザイナーのイニシャル(UP=Ulla Procopé)と絵付け職人のイニシャルがスラッシュで区切って記されています(例:UP/HL)。
スタンプ印(後期)
バレンシアはアラビア初期のハンドペイント食器でありながら、アラビア最後のハンドペイント食器でもあります。2002年まで製作が続けられましたが、後期のものは背面のサインがスタンプの刻印の場合があります。
バレンシアのコンディションと選び方
(バレンシアの手描きコバルトブルー — 繊細な絵付けの状態が重要)
購入時のチェックポイント
- コバルトブルーのスレ — バレンシアの鮮やかな青は繊細で、食器洗い機や重ね置きでスレが生じることがあります。絵柄の状態を確認しましょう
- 裏面のサイン — 手描きサインがあるものは初期生産品で、より価値が高い傾向があります
- 貫入(かんにゅう) — 細かいヒビ模様は劣化ではなく、年月を経た器の味わいです
お手入れのコツ
バレンシアのコバルトブルーは繊細なため、重ねて保管する場合は、器の間にナプキンや布を挟むと、高台(底の縁)による絵柄のスレを防げます。
→ ヴィンテージ食器のコンディション基準について詳しくはこちら
バレンシアのテーブルコーディネート
(バレンシア クリーマー&シュガーボウル)
和の美意識との共鳴
バレンシアの深いコバルトブルーは、日本の染付磁器を思わせる色合い。「白地に青」という配色は洋の東西を問わず愛されてきた伝統であり、バレンシアにも同じ美意識が息づいています。
フルセットの魅力
ティーポット、ティーカップ&ソーサー、ケーキ皿のフルセットは、バレンシアコレクションの醍醐味です。すべてのアイテムに手描きのコバルトブルーが施され、揃えたときの統一感は格別です。
北欧食器との組み合わせ
- ロールストランドのシルビアと — 手描き同士の組み合わせ。シルビアの繊細な花柄とバレンシアの大胆な青のコントラスト
- ロールストランドのモナミと — 同じ青系の食器。モナミのステンシル柄とバレンシアの手描きの対比が楽しい
- アラビアのコラーリと — ピンク×青の華やかなコントラスト。同じアラビアの食器同士で統一感も
当店のバレンシア人気ランキング
実際の販売データに基づく、バレンシアの人気アイテムTOP5です。
- ティーカップ&ソーサー — 不動の1位。大きめのカップにたっぷりの青が映える
- コーヒーカップ&ソーサー — コレクション入門に人気の定番アイテム
- エッグカップ — 小さくて可愛い。セットで揃えたくなるアイテム
- ティーポット — 圧倒的な存在感。入荷するとすぐ売り切れる希少品
- シュガーボウル — 小物入れとしても人気
まとめ — バレンシアのある暮らし
バレンシアは、北欧デザインの中で異彩を放つ食器です。フィンランドの理性的なデザイン哲学と、地中海の情熱的な装飾美が融合した唯一無二の存在。そして、アラビア最後の手描きシリーズとして、もう二度と作られることのない、真に特別な食器です。
当店北欧食器タックショミュッケでは、フィンランドから直接買い付けた本物のヴィンテージ・バレンシアを取り扱っています。一枚一枚異なる手描きの表情を、ぜひお手に取ってご覧ください。
→ アラビアの全商品 | パラティッシ・コレクション | コラーリ・コレクション | 北欧食器の基礎知識
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