リンドベリが描いた青いすもも ヴィンテージだけの鮮やかな発色
スウェーデンの名窯グスタフスベリのプルーヌスシリーズのヴィンテージのチョコレートカップです。プルーヌスシリーズのカップは円錐形のコーヒーカップ、ティーカップの2種類が製作されました。一般的には2サイズのみの販売でしたが、試作的にこちらの寸胴型の大きなチョコレートカップも製作されました。チョコレートカップはほとんど製造されなかった幻の作品と言われています。
シリーズ名のプルーヌスとはプラムのことで日本語では「すもも」の意味です。円形に青い実をつける種類のすももが描かれています。Prunusシリーズは今なお復刻版でカップとプレートが販売されていますが、現行品との違いは、ヴィンテージのバックスタンプには大きなプラムが描かれている点です。復刻版のバックスタンプは同社のエンブレムである錨マークとなっており、ヴィンテージの魅力は背面のプラムマークにあります。
プルーヌスのチョコレートカップに関しては、カップにヒビや割れや貫入があるものが多く見られます。おそらく製造工程でヒビ割れや貫入が生じやすかったため量産されなかったものと思われます。こちらのカップも縁に凹みと汚れの侵入が見られます。本体そのものはペイントロスが見られず、ほとんど使用歴がないため、そもそも製造の過程で何かしら瑕疵があったのではないかと考えられます。
プルーヌスの制作期間は1962年から1974年にかけての12年間です。こちらのチョコレートカップに関しては、1970年に刷新されたグスタフスベリのロゴが刻印されているため1970年以降に製作されたものとなります。
本品の詳細についてはブログ記事をご覧ください→『グスタフスベリのプルーヌスのチョコレートカップ』
グスタフスベリ — 200年の歴史を持つスウェーデン陶磁器の聖地

1825年、ストックホルム群島のヴェルムド島に創設されたグスタフスベリ磁器工場。当初はイギリス式の製法を導入し、1839年に現在も知られる錨(アンカー)のマークを採用しました。1863年にはコーンウォールから粘土を輸入し、ボーンチャイナの生産を開始。やがてスウェーデンを代表する磁器ブランドへと成長しました。

黄金時代を築いた巨匠たち
1917年に初代アートディレクターに就任したヴィルヘルム・コーゲ(1889–1960)は、「美しい日用品をすべての人に」という理念のもと、労働者向けの食器「リリエブロー」を発表。さらにアルジェンタ、ファルスタなどの名シリーズを生み出しました。
1949年にコーゲの後任となったスティグ・リンドベリ(1916–1982)は、ベルサ、スピサリブ、プルーヌス、アダムなど数々の名作を手がけ、グスタフスベリの黄金時代を築きました。「千の芸術家(Tusenkonstnären)」と呼ばれた彼は、陶磁器だけでなくテキスタイル、ガラス、グラフィックデザインなど多岐にわたる分野で活躍しました。

このほか、ベルント・フリーベリ(1899–1981)は中国宋代の青磁に影響を受けた独自の釉薬技法で世界的な評価を得、リサ・ラーソン(1931–2024)はシャモット粘土を用いた愛らしい動物フィギュアで日本でも絶大な人気を誇りました。
ヴィンテージの見分け方 — バックスタンプ(刻印)ガイド

グスタフスベリの食器には裏面にバックスタンプ(刻印)が施されています。このスタンプのデザインは時代とともに変化しており、製造年代を特定する重要な手がかりとなります。1839年に採用された錨(アンカー)マークは現在まで同社のシンボルとして受け継がれています。1993年にオリジナルの食器生産が終了し、現在はHPF社が復刻版を製造しています。ヴィンテージ品はフリント陶器やフェルトスパット磁器で、復刻版のボーンチャイナとは素材が異なります。
クロモトリック — プルーヌスの転写印刷技法

プルーヌスの模様はクロモトリック(kromotryck)と呼ばれる多色転写印刷で施されています。あらかじめ模様が印刷された転写紙(デカール)を水に浸して台紙から剥がし、素地に一枚ずつ手作業で貼り付けたあと焼成して定着させる技法です。プルーヌスでは青・緑・黒の3色が用いられています。

素材はフリント陶器(flintgods)です。フリント陶器とは火打ち石(フリント)を混ぜた多孔質の陶器で、グスタフスベリが日用食器の量産に用いた素材です。焼結しないため液体を吸収する性質があり、表面を釉薬で覆うことで防水性を確保しています。2009年から始まった復刻版はすべてボーンチャイナ(benporslin)で製造されており、素地の質感や重さがオリジナルとは異なります。
■詳細スペック
- メーカー:Gustavsberg / グスタフスベリ
- フォルムデザイン:Stig Lindberg / スティグ・リンドベリ
- シリーズ名:Prunus / プルーヌス
- 年代:1970年代
- 製造国:スウェーデン
- サイズ:カップ直径10.2cm 高さ6.6cm 横幅13.2cm(取っ手含む)ソーサー直径18.5cm
■コンディション:★★★☆☆(3.5:良品)
ペイントロスのない並品のコンディションです。カップ縁に一箇所釉薬下の凹みがあります。また縁、取っ手上部、および底部に見られる茶けは焼成時の焼け色の移りとなります。ソーサーの裏縁には釉薬がかかっていない凹み箇所がありますが、こちらも製造工程によるものとなります。ソーサー表面とカップ内部底は光に透かすとスレが見られますが、プルーヌスのチョコレートカップのなかではかなり状態の良いコンディションとなります。










