ARABIAのアートデパートメントが生んだ 一点ものの手描き芸術
フィンランドを代表する陶器メーカーARABIA社のアートデパートメントで作成されたティーカップです。デザイナーのヒルッカ・リーサ・アホラはARABIA社で大量生産品の生産ラインとは別に、自らのアトリエを社内工房という形でもち、絵付け師と共作でハンドメイド作品の制作をおこなっていました。ヒルッカ・リーサ・アホラはクータモというシリーズのプレートをデザインしていますが、こちらは姉妹品のような装飾です。鱗文様のような青と暗い黄色の色が全面を取り巻いています。内部はブルーの厚めの釉薬がたっぷりとかかっており、ソーサーも厚く青い釉薬をまとっています。
カップの形はまっすぐな寸胴型で口の部分が外側に沿っています。デミタスカップのような形ですが比較的大容量のカップで250ml程度入ります。フォルムはバレンシアで知られるウラ・プロコッペが考案したSモデルを踏襲しています。
■詳細スペック
メーカー:ARABIA / アラビア
フォルムデザイン:Ulla Procope / ウラ・プロコッペ
パターンデザイン:Hilkka-Liisa Ahola / ヒルッカ・リーサ・アホラ
生産国:フィンランド
年代:1960年代
コンディション:貫入あり
カップ・ソーサーともに使用歴のない完品となりますが、カップの取っ手の付近に写真のように貫入が見られます。貫入とは製造工程の焼成時に釉薬面に走るヒビで使用上のキズや本体そのもののダメージではありません。メーカーの検品を通過したものとなります。ソーサーの高台に見られる凹みは糸底というろくろから切り離した際のザラつきとなります。
■サイズ
カップ直径10cm 高さ5.3cm ソーサー直径16.2cm
■関連コレクション
ARABIA — フィンランドが世界に誇る陶磁器の名窯

1873年、スウェーデンのロールストランド社がヘルシンキに設立した分工場がARABIAの始まりです。当初はロシア帝国向けの陶磁器を生産していましたが、1917年のフィンランド独立後に完全なフィンランド企業となり、20世紀半ばにはフィンランド最大の陶磁器メーカーへと成長しました。

黄金時代を築いたデザイナーたち
カイ・フランク(1911–1989)は「フィンランドデザインの良心」と呼ばれ、キルタ(後のティーマ)やカルティオなど、無駄を削ぎ落とした機能美の名作を生み出しました。1949年にはARABIAのクラウンマーク(王冠のバックスタンプ)もデザインしています。
ウラ・プロコッペ(1921–1968)は、コバルトブルーの手描きが美しいバレンシア(1960–2002年)と、鉄粉を施した独特の土色が魅力のルスカ(1960年代–1999年)を手がけました。ルスカの粗い表面は日本の楽焼に似た風合いで、北欧と日本の美意識の近さを感じさせます。

このほか、ビルガー・カイピアイネン(1915–1988)は「装飾の王」と呼ばれ、名作パラティッシをはじめ華やかな装飾陶芸を制作。エステリ・トムラはフローラシリーズの植物画で知られ、ライヤ・ウオシッキネンも数多くの装飾パターンを手がけました。
ヴィンテージの見分け方 — バックスタンプ(刻印)ガイド

- 1874〜1930年頃:素地への型押し(インプレスト)が主流。1878年以降はフィンランドの紋章入りカラーマークも併用。
- 1932〜1949年:クルト・エクホルムがデザインした「パイプスタンプ」。工場に導入された122mのトンネル窯を表現したデザイン。
- 1949年〜現在:カイ・フランクがデザインしたクラウンマーク(王冠)。月桂樹の輪を逆さにして王冠に見立てた斬新なデザイン。1964年、1971年、1975年、1981年、2014年に更新。
- 生産年の読み方:1940年代以降は月→年の順で数字が刻印。2等品にはローマ数字IIや色付きドットが付されます。
- 2016年以降:ヘルシンキ工場は2016年3月に閉鎖され、現在はタイとルーマニアで生産。ヴィンテージ品はすべてフィンランド製で、「MADE IN FINLAND」の刻印があります。










