クローバーが全面に咲き誇る 復刻されなかった幻のチューリン
フィンランドを代表する食器メーカーARABIAが1970年に発売した珍しいスープチューリンです。アピラとはフィンランド語でクローバーの意味で、全面にシロツメクサと三つ葉が散りばめられたデザインとなっています。ARABIAで製造された食器は70年代初頭まで、製造年と月が刻印されていました。こちらの底部のバックスタンプにも8−71(1971年8月)という刻印が打たれており、アピラの生産が終了する直前の作品であることがわかります。
アピラは2006〜2010年にかけて復刻版のカップが製造されていますが、スープチューリンは再販されておらずヴィンテージ品でしか入手ができないものです。また世界的に見ても流通が少なく、極めて希少性の高いアイテムです。なおARABIAの特徴ですが、復刻版は色味が濃くはっきりとした白地に絵が転写されています。ヴィンテージの特徴は色が淡く優しい色彩を持っている点にあります。
ARABIA — フィンランドが世界に誇る陶磁器の名窯

1873年、スウェーデンのロールストランド社がヘルシンキに設立した分工場がARABIAの始まりです。当初はロシア帝国向けの陶磁器を生産していましたが、1917年のフィンランド独立後に完全なフィンランド企業となり、20世紀半ばにはフィンランド最大の陶磁器メーカーへと成長しました。

黄金時代を築いたデザイナーたち
カイ・フランク(1911–1989)は「フィンランドデザインの良心」と呼ばれ、キルタ(後のティーマ)やカルティオなど、無駄を削ぎ落とした機能美の名作を生み出しました。1949年にはARABIAのクラウンマーク(王冠のバックスタンプ)もデザインしています。
ウラ・プロコッペ(1921–1968)は、コバルトブルーの手描きが美しいバレンシア(1960–2002年)と、鉄粉を施した独特の土色が魅力のルスカ(1960年代–1999年)を手がけました。ルスカの粗い表面は日本の楽焼に似た風合いで、北欧と日本の美意識の近さを感じさせます。

このほか、ビルガー・カイピアイネン(1915–1988)は「装飾の王」と呼ばれ、名作パラティッシをはじめ華やかな装飾陶芸を制作。エステリ・トムラはフローラシリーズの植物画で知られ、ライヤ・ウオシッキネンも数多くの装飾パターンを手がけました。
ヴィンテージの見分け方 — バックスタンプ(刻印)ガイド

- 1874〜1930年頃:素地への型押し(インプレスト)が主流。1878年以降はフィンランドの紋章入りカラーマークも併用。
- 1932〜1949年:クルト・エクホルムがデザインした「パイプスタンプ」。工場に導入された122mのトンネル窯を表現したデザイン。
- 1949年〜現在:カイ・フランクがデザインしたクラウンマーク(王冠)。月桂樹の輪を逆さにして王冠に見立てた斬新なデザイン。1964年、1971年、1975年、1981年、2014年に更新。
- 生産年の読み方:1940年代以降は月→年の順で数字が刻印。2等品にはローマ数字IIや色付きドットが付されます。
- 2016年以降:ヘルシンキ工場は2016年3月に閉鎖され、現在はタイとルーマニアで生産。ヴィンテージ品はすべてフィンランド製で、「MADE IN FINLAND」の刻印があります。
■詳細スペック
- メーカー:ARABIA / アラビア
- デザイナー:Birger Kaipiainen / ビルガー・カイピアイネン
- シリーズ名:Apila / アピラ
- 年代:1970〜1971年
- 製造国:フィンランド
- 容量:2,500ml
- サイズ:本体横幅23.5cm(持ち手含む)縦幅18.5cm 高さ21.5cm(フタ含む)
■コンディション:★★★☆☆(3.5:美品)
取手に一箇所1mm弱の欠けが見られます。本体内部に使用跡が見られないため保存される過程でついたものです。底部高台には製造時の支柱跡が三箇所あります。また高台縁に製造工程による黒点やスレ、一箇所釉薬の下のヒビがありますが、メーカーの検品を通ったものです。取手の欠けを除くと製造時の姿をそのまま留めた未使用のコンディションとなります。 フタの丸いツマミ部分と本体取手の根本には釉薬の下にヘアラインがありますが、これらはヒビではなく製作工程でパーツを後付けで接着するため生じるものです。








