
スウェーデンの名窯が生んだ 北欧ヴィンテージの逸品
スウェーデンの老舗食器メーカー、グスタフスベリの黄金時代最後の名作エロスです。生産されたのは1972年から1974年のわずか3年間。1950年代〜70年代まで続いた北欧デザインの絶頂期「ミッドセンチュリー」の最終盤にデザインされた、短命ゆえに希少なシリーズです。
エロスは独特な世界観を淡いブラウンという一色のタッチだけで描いた、非常に作り込みが緻密なプレートです。エロスにはケーキ皿、21cmの中サイズの皿、最大サイズの25cmの大皿があります。こちらは21cm皿となります。
デザイナーのスティグ・リンドベリは名作ベルサ(Berså)のようにデフォルメした連続パターンを配置する作風が知られています。しかしエロスでは、一つひとつのモチーフが非常に精緻で絵画的に描かれています。
愛し合う男女の絵や、鳥カゴの中を泳ぐ魚やそれを狙う鳥、背景にある三日月や草花は毒々しく、シュールレアリスム的な世界観で表現されています。男女はアダムとイヴで、男は服を着て、女性はネックレスを着用しています。旧約聖書では知恵の実を食べる以前のアダムとイヴは全裸だったとされているため、おそらく知恵の実を食べた後の姿が描かれています。ふたりとも恥を知り、身を着飾ることを覚え、快楽を求めて退廃的な世界を追求する、というストーリーが感じられます。
シリーズ名の「エロス」は、ギリシャ神話における愛と生命の神の名前。装飾はホワイトの素地にブラウン一色のスクリーン印刷によるものですが、インクの濃淡と滲みが手描きのような奥行きと温かみを生み出しています。
リンドベリがエロスをデザインした1972年は、13年間コンストファック(スウェーデン国立芸術工芸大学)で主任教授を務めた後、グスタフスベリへ復帰した直後の時期でした。教育者として理論を深めた後に制作された、晩年期のリンドベリが官能と神話に向けた自由な眼差しが感じられる作品です。
小さなプレートに緻密な世界観が詰め込まれたヴィンテージの傑作です。
グスタフスベリ — 200年の歴史を持つスウェーデン陶磁器の聖地
1825年、ストックホルム群島のヴェルムド島に創設されたグスタフスベリ磁器工場。当初はイギリス式の製法を導入し、1839年に現在も知られる錨(アンカー)のマークを採用しました。1863年にはコーンウォールから粘土を輸入し、ボーンチャイナの生産を開始。やがてスウェーデンを代表する磁器ブランドへと成長しました。
黄金時代を築いた巨匠たち
1917年に初代アートディレクターに就任したヴィルヘルム・コーゲ(1889–1960)は、「美しい日用品をすべての人に」という理念のもと、労働者向けの食器「リリエブロー」を発表。さらにアルジェンタ、ファルスタなどの名シリーズを生み出しました。
1949年にコーゲの後任となったスティグ・リンドベリ(1916–1982)は、ベルサ、スピサリブ、プルーヌス、アダムなど数々の名作を手がけ、グスタフスベリの黄金時代を築きました。「千の芸術家(Tusenkonstnären)」と呼ばれた彼は、陶磁器だけでなくテキスタイル、ガラス、グラフィックデザインなど多岐にわたる分野で活躍しました。
このほか、ベルント・フリーベリ(1899–1981)は中国宋代の青磁に影響を受けた独自の釉薬技法で世界的な評価を得、リサ・ラーソン(1931–2024)はシャモット粘土を用いた愛らしい動物フィギュアで日本でも絶大な人気を誇りました。
ヴィンテージの見分け方 — バックスタンプ(刻印)ガイド
グスタフスベリの食器には裏面にバックスタンプ(刻印)が施されています。このスタンプのデザインは時代とともに変化しており、製造年代を特定する重要な手がかりとなります。1839年に採用された錨(アンカー)マークは現在まで同社のシンボルとして受け継がれています。1993年にオリジナルの食器生産が終了し、現在はHPF社が復刻版を製造しています。ヴィンテージ品はフリント陶器やフェルトスパット磁器で、復刻版のボーンチャイナとは素材が異なります。
■詳細スペック
- メーカー:Gustavsberg / グスタフスベリ
- デザイナー:Stig Lindberg / スティグ・リンドベリ
- シリーズ名:Eros / エロス
- 年代:1972年〜1974年
- 生産国:スウェーデン
- サイズ:約直径16.5cm 高さ1.8cm
■コンディション:★★★★★(5:完品)
割れや欠けや貫入がなく仕様歴もない保存状態も極めて良好な完品のコンディションです。市場で入手可能なトップコンディションのヴィンテージとなります。エロスシリーズは製造数が比較的少なく使い込まれたものが多いため、希少なミントコンディションのプレートとなります。









