北欧のスクエアプレート(角皿)完全ガイド|四角い皿と北欧の食文化・モダンデザイン、ベルサ・シルビア・ヴェクショーの名作
北欧食器タックショミュッケ編集部スウェーデン・フィンランドから北欧ヴィンテージ食器を直接買い付け、1,000点以上を検品してきた当店が、一次情報と実物の観察にもとづいて執筆・編集しています。
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この記事でわかること
- 「スクエアプレート(角皿)」という呼び名とサイズの目安、そして丸皿とは違う四角い皿ならではの見どころ
- 機能主義と「より美しい日常の器を」という理念、スモーガスボードの取り分け文化——四角い皿と響き合う北欧のデザイン思想と食文化
- グスタフスベリのヴェクショーとベルサ、ロールストランドのシルビア、ARABIAのエミリア——各窯を代表する角皿の名作
- サイズと役割での選び方、裏印と状態の見方、そして角皿を飾って愛でるためのヒント
北欧ヴィンテージ食器といえば、まず思い浮かぶのは丸い皿でしょう。けれども棚をよく見ていくと、きりりと角の立った四角い皿——スクエアプレートが、静かな存在感を放っていることに気づきます。丸皿がやわらかく絵柄を包み込むのに対して、四角い皿は絵柄をまっすぐな四辺で切りとり、まるで一枚の絵画のように見せてくれます。数が限られているぶん、コレクションのなかでよいアクセントになる一枚です。
この記事では、北欧のスクエアプレート(角皿)に光を当てます。四角い皿がどのように呼ばれ、どんなサイズで作られてきたのか。そして、なぜ北欧の食卓に四角い皿が生まれたのか。機能主義の思想やスモーガスボードの取り分け文化までさかのぼりながら、グスタフスベリ、ロールストランド、ARABIAが手がけた代表的な角皿を辿っていきます。
ヴェクショーの鳥と花、ベルサの緑の葉、シルビアのパンジー——おなじみのシリーズも、四角い画面で見るとまた違った表情を見せてくれます。読み終えるころには、一枚の角皿の背景に、ストックホルム群島の港町や、ヴェーネルン湖畔の磁器の街が見えてくるはずです。旅をするように、北欧の四角い皿を眺めていきましょう。
目次
北欧のスクエアプレート(角皿)とは
スクエアプレートとは、その名のとおり四角い皿のことです。正方形のものも、長方形のものもあり、日本では英語由来の「スクエアプレート」というカタカナ表記で親しまれています。日本語では「角皿(かくざら)」とも呼ばれます。スウェーデン語では四角い皿を「フィールカンティグ・タルリク(fyrkantig tallrik)」と言い、大ぶりの取り分け皿は「ファート(fat)」と呼び分けられてきました。
北欧の食器のなかで、四角い皿は主役というより名脇役です。個々に食事を取る皿は丸いものが圧倒的に多く、四角い皿はそのなかで少数派でした。だからこそ、四角というかたちには、作り手の意図や時代の空気がくっきりと表れています。この章ではまず、呼び名とサイズ、そして丸皿との違いから、角皿という器の輪郭をつかんでいきましょう。
「スクエアプレート」という呼び名とサイズの目安
北欧のスクエアプレートには、手のひらほどの小さなものから、両手で抱えるような大皿まで、さまざまな大きさがあります。以下に挙げる寸法はいずれも目安で、窯やシリーズによって幅があります。それでも、おおよその区分を知っておくと、手元の一枚がどんな場面のためにデザインされたものかが見えてきます。
小ぶりな角皿は、一辺がおよそ13〜17センチです。取り皿やケーキ皿として、あるいは菓子や前菜を少しずつ盛るためにデザインされました。中サイズは一辺およそ20〜28センチで、料理を取り分ける皿や、飾って主役になる一枚として活躍します。そして大サイズは一辺30センチを超え、長方形では横幅が35センチを超えるものもあります。テーブルの中央に据える、堂々たるセンターディッシュです。
四角い皿は、丸皿と何が違うのか
丸い皿は、中心から外へと視線をやわらかく導きます。絵柄は円に沿ってめぐり、余白も角のない穏やかな広がりを見せます。それに対して四角い皿は、四つの角と直線の辺を持ちます。絵柄は辺で断ち切られ、白い余白は四角い額縁のように図案を囲みます。同じシリーズの絵柄でも、丸皿では流れるように、角皿では一枚の絵のように見えるのは、このかたちの違いによるものです。
四角というかたちは、20世紀なかばの北欧モダンとよく響き合いました。すっきりとした幾何学的な造形は、当時のデザイナーたちが追い求めた合理性と美しさに通じていたからです。次の写真は、スティグ・リンドベリのピンタです。四角い白地に、瓶や魚、レモンやフォークといった小さなモチーフが、まるで食卓の静物画のように配されています。四角い画面だからこそ成り立つ、余白の使い方です。
四角い皿と北欧の食文化・モダンデザイン
四角い皿そのものは19世紀から作られていましたが、20世紀に入ると、スウェーデンで広がった「日常の器を美しくしよう」という思想や、幾何学的な造形を取り入れた北欧モダンともよく響き合うようになります。また、大皿に料理を盛って取り分ける食卓では、角形や横長のファートも活躍しました。この章では、角皿を北欧のデザイン思想と食文化の両面から眺めてみましょう。
「より美しい日常の器を」——機能主義とスウェーデン・モダン
1919年、美術史家グレゴール・パウルソンは『より美しい日常の器を(Vackrare vardagsvara)』と題した冊子を著しました。芸術家が工場と手を組み、質のよいデザインを暮らしのすみずみまで届けようという呼びかけです。この理念はやがてスウェーデンのデザイン運動の合言葉となり、1930年のストックホルム博覧会で花開いた機能主義(フンクショナリズム)へとつながっていきました。機能主義は、装飾を削ぎ落とし、機械生産に適した合理的で幾何学的なかたちを尊びます。まっすぐな辺と直角を持つ四角い皿は、こうした美意識とよく馴染むかたちでした。
そして1955年、南スウェーデンの港町ヘルシンボリで、H55と呼ばれる大きな展覧会が開かれました。スウェーデン工芸協会が主催したこの国際展は、建築や住まい、そして暮らしの器を一堂に集め、「スカンジナビアン・モダン」を世界に知らしめる舞台となりました。スティグ・リンドベリをはじめとする北欧のデザイナーたちが名を連ね、参加した国々のなかには日本も含まれていました。簡素さのなかに美を見いだす感覚は、日本のものづくりとも静かに響き合っています。角皿の余白の美しさは、そんな時代の空気のなかで磨かれていきました。
スモーガスボードと取り分けの食卓
もうひとつ眺めておきたいのが、北欧の食卓の習わしです。スウェーデンには、ニシンの酢漬けやサンドイッチ、菓子などを大皿に並べ、めいめいが取り分けて楽しむスモーガスボードの文化があります。こうした料理を盛るのは、一人ひとりが食べる丸い皿ではなく、横長や四角の「ファート」と呼ばれる取り分け皿でした。ヴィンテージの北欧食器には、取り分けや菓子、サンドイッチを盛るファートとして使われた角形・横長の器も見られます。
次の写真は、グスタフスベリのヴェクショーの深めの角皿です。横幅31.5センチ・縦幅21.5センチという堂々たる大きさで、大ぶりの料理を取り分けるセンターディッシュとして用いられました。四角い皿は、たっぷりと料理を受けとめ、テーブルの中央でまっすぐな四辺をきりりと際立たせます。丸皿が個の器なら、大きな角皿は分かち合いの器といえるでしょう。
グスタフスベリのスクエアプレート
スウェーデンの名窯グスタフスベリは、ストックホルム群島に浮かぶヴェルムドー島の港町に工場を構えていました。1825年に創業し、ロールストランドに次いでスウェーデンで二番目に古い歴史を持つ窯です。19世紀の転写の器から、20世紀のスティグ・リンドベリによる名作まで、グスタフスベリは時代ごとに個性的な角皿を残しました。
ヴェクショー(Wexiö)——19世紀末の鳥と花の角皿
グスタフスベリの角皿のなかでも、もっとも古い時代に属するのがヴェクショー(Wexiö)です。1887年から1939年ごろにかけて作られた、フリントゴッズと呼ばれる陶器のシリーズで、花咲く枝にとまる鳥の絵柄が、銅版転写(koppartryck)によってうつし取られています。緑一色のもの、緑に金彩を添えたもの、藍色のものなど、いくつかの色違いが知られています。「ヴェクショー」とは、スウェーデン南部スモーランド地方の町ヴェクショー(現在の綴りはVäxjö)の古い綴りに由来する名前です。
銅版転写とは、銅版に彫った図案を紙にうつし、それを素地に転写して焼きつける、19世紀に広く用いられた装飾の手法です。同じ絵柄を数多く生み出せるこの方法によって、精緻な鳥と花の文様が食器の上に咲きました。次の写真は、藍色の風景をうつした転写の器の一例です。ヴェクショーの角皿を手にすると、100年以上前のスウェーデンの食卓へ、そっと連れ出されるような心地がします。
ベルサ(Berså)——リンドベリの緑の葉
北欧の緑の葉といえば、多くの人が思い浮かべるのがベルサ(Berså)でしょう。スティグ・リンドベリがデザインし、1961年から製造されたグスタフスベリの代表的なシリーズのひとつです。白い地に、黒い幹から左右へ広がる緑の葉が連なる、いかにも北欧らしい図案です。ベルサには丸皿やカップだけでなく、四角い取り分け皿も作られました。四角い画面に葉が整然と並ぶさまは、丸皿とはまた違った規則正しい美しさを見せてくれます。
プルーヌス・ローゼンフェルト・ピンタ——リンドベリの角皿いろいろ
リンドベリは、ベルサのほかにも数多くの角皿を残しました。プルーヌス(Prunus)は、白地に青い梅の実が並ぶ図案で、1962年ごろから作られたシリーズです。四角い皿の全面に青い実が整列するさまは、爽やかでリズミカルな印象を与えます。
ローゼンフェルト(Rosenfält)は、白い地に褐色の線でバラを描いたシリーズで、1969年から1972年ごろの短い期間に作られました。線だけで表されたバラは、モダンで簡潔な佇まいです。ピンタ(Pynta)は、先に見たとおり食卓の小さな静物を配した1962年の図案です。同じリンドベリの手によるものでも、四角い皿ごとにまったく違う世界が広がっています。
ロールストランドのスクエアプレート
ロールストランドは、1726年にストックホルムで創業した、ヨーロッパでも有数の古い磁器窯です。二世紀にわたって首都で操業したのち、1926年にストックホルムを離れ、いくつかの移転を経て、1930年代にはヴェーネルン湖畔の町リードヒェーピングに落ち着きました。今日この町は「磁器の街」として知られ、旧工場にはロールストランド博物館が置かれています。
シルビア(Sylvia)——250周年を記念した角皿
ロールストランドの角皿を代表するのが、シルビア(Sylvia)です。1976年、ロールストランドが創業250周年を迎えたのを記念して作られた、ジュビリー(記念)シリーズでした。うつわのかたちはマリアンヌ・ウェストマンが手がけ、青いパンジー(三色すみれ)の絵柄は、同社で長く花を描いてきたシルビア・レウショヴィウスがデザインしています。シリーズ名は、この絵付けを担ったデザイナーの名前にちなみます。
シルビアの角皿には、20センチ・28センチ・30センチ・36センチと複数のサイズがあります。縁をぐるりとパンジーが囲み、中央は白く広く空くため、料理を盛っても、そのまま飾っても絵になります。次の写真は、もっとも大きな36センチの一枚です。横広の堂々たる大きさで、オードブルを並べる皿として、あるいは壁の主役として、四角い画面いっぱいに花が咲きます。
モナミ(Mon Amie)——ウェストマンの青い花
シルビアのかたちを手がけたマリアンヌ・ウェストマンは、「磁器の母」とも呼ばれた、スウェーデンを代表するデザイナーです。彼女が1952年に発表したモナミ(Mon Amie)は、コバルトブルーの四弁の花が連なる、ロールストランドの看板シリーズでした。モナミにも長方形の角皿があり、青い花が横長の画面いっぱいに広がります。同じ青でも、シルビアのパンジーが縁を飾るのに対し、モナミは花が全面を埋めつくす——この対比もまた、四角い皿を見比べる楽しみのひとつです。
ARABIAのスクエアプレート——フィンランドの物語を四角い画面に
スウェーデンの二窯に対して、フィンランドを代表するのがARABIAです。ヘルシンキに工場を構えたこの窯もまた、四角い皿に印象的な絵柄を残しました。なかでもエミリア(Emilia)は、ARABIAの絵付けを支えたライヤ・ウオシッキネンが手がけたシリーズです。黒い線だけで、帽子をかぶった三人の女性が卓を囲む情景が描かれ、四角い画面が一枚の物語の挿絵のように仕上がっています。
もうひとつ、クロッカス(Krokus)は、春を告げるクロッカスの花を主題にした長方形の皿です。黒い線でのびやかに描かれた花と葉が、四角い白地に涼やかに広がります。フィンランドの窯もまた、四角い皿という画面を、それぞれの物語を語る舞台として使いこなしていました。同じ角皿でも、スウェーデンの窯とはまた異なる、北の国らしい静けさが漂います。
スクエアプレートを選ぶ・飾る
最後に、北欧のスクエアプレートを手元に迎えるときの目のつけどころを整理しておきましょう。北欧のヴィンテージプレート全般にも通じる見方ですが、四角い皿ならではのポイントもあります。
サイズと役割で選ぶ
まず、どのように使い、飾りたいかでサイズを考えます。棚に立てて楽しむなら、一辺15〜20センチほどの小ぶりな角皿が扱いやすく、収まりよく並びます。壁に掛けて主役にしたいなら、30センチを超える大皿や横長の角皿が、四角い輪郭を空間にきりりと効かせてくれます。四角い皿は、丸皿の間に一枚まぜるだけで、棚全体のリズムが引き締まります。数がそう多くないぶん、集めていくと自分だけのアクセントになる存在です。
裏印と状態を見る
ヴィンテージの角皿を選ぶときは、裏面のバックスタンプを確かめると、窯やおおよその年代の手がかりになります。状態については、四辺と四つの角を丁寧に見るのが角皿ならではのコツです。角は皿のなかでもぶつかりやすい場所で、小さな欠けや擦れが出やすいからです。あわせて、釉薬表面の細かな網目状の亀裂である貫入や、金彩の擦れ、絵柄のかすれも確認します。こうした表情は、時代を経た器ならではのもので、欠陥として一律に捉える必要はありません。ヴェクショーのように100年以上を経た器であればなおのこと、経年の風合いも味わいのうちです。
飾り方・組み合わせ
四角い皿は、飾るときにその輪郭が生きてきます。丸皿ばかりの棚に一枚だけ角皿をまぜると、直線と曲線の対比が生まれ、並びに変化がつきます。皿を飾るときは、光の入る窓辺や明るい棚を選ぶのがおすすめです。釉薬の艶や絵柄の青、金彩のきらめきが、時間によって表情を変えていきます。四角い皿を立てて飾れば、まっすぐな辺が額縁のように絵柄を引き立て、一枚の小さな絵画のように空間を彩ってくれます。
まとめ
要点の整理
- スクエアプレート(角皿)は北欧食器のなかでは少数派で、丸皿とは違い、四つの角と直線の辺が絵柄を額縁のように切りとる
- 四角いかたちは、20世紀には機能主義やスウェーデン・モダンの美意識とも響き合い、取り分け用のファートなどさまざまな用途で北欧の食卓を彩った
- グスタフスベリは19世紀のヴェクショーからリンドベリのベルサ・プルーヌス・ピンタへ、四角い皿に多彩な絵柄を残した
- ロールストランドは250周年記念のシルビアやウェストマンのモナミで、ARABIAはウオシッキネンのエミリアで、それぞれ角皿を物語の画面に変えた
- 選ぶときはサイズと役割、裏印と四辺・四角の状態を確かめ、丸皿の間にまぜて飾るとコレクションのよいアクセントになる
一枚の四角い皿は、まっすぐな四辺のなかに、北欧のものづくりの歩みを映しています。日常の器を美しくしようという理念も、大勢で食卓を囲む取り分けの習わしも、19世紀の転写から20世紀のモダンデザインへと続く歴史も、この四角い画面を通して眺めることができます。手元の角皿を眺めながら、ヴェルムドー島の港や、ヴェーネルン湖畔のリードヒェーピングへと思いを巡らせていただけたなら、これほど嬉しいことはありません。四角い一枚を通して、北欧への小さな旅を続けていただければと思います。
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