
地中海の青を食卓へ プロコッペの不朽の名作バレンシア
アラビア社の代名詞的なハンドペイント食器バレンシアのカッティングボードです。バレンシアシリーズではティーカップ、スープチューリン、ジューサー、ピッチャー、ティーポットなど食卓を彩るためにデザインされた器が一通り網羅されていました。こちらは比較的珍しい丸形のカッティングボードとなります。
シリーズ名のバレンシアとはスペイン南東部の港町の名前で、濃いコバルトブルーの青色が地中海の鈍色の海と強い太陽の日差しを表現しています。バレンシアは1960年にウラ・プロコッペによりデザインされ、ARABIA製品のなかで最もアンティークファンが多い不朽の名作となりました。プロコッペはロングラン製品のルスカ(Ruska)や希少性の高いフローラ(Flora)のデザインも担当した伝説のデザイナーです。彼女は1968年に47歳の若さで病気で亡くなりますが、療養先はスペインのカナリア諸島であり、プロコッペが終生にわたりスペインの海辺を愛していたことが伝わります。バレンシアは彼女の死後、他のシリーズと同様にロングラン生産がされ、2002年までの40年以上に渡ってフィンランド国内で製造されました。その後は復刻がされておらず、現在入手可能なものはヴィンテージ市場に出回っているもののみとなります。
こちらは背面のハンドサインが手書きのため、生産が開始した1960年から1970年代の間に制作されたものです。バレンシアは80年代に一時生産が途絶しますが、復活後は活字スタンプでARABIAと刻印されています。つまり、手書きのサインが描かれているバレンシアがヴィンテージ品の中で最も古いものとなります。UPとはウラ・プロコッペのイニシャルサインであり、絵付師のイニシャルがスラッシュで区切られてサインされています。なお、カッティングボードは80年代以降は復刻されなかったため、その分希少性が高くなっています。本来の用途はまな板や鍋敷きですが、壁掛けにも利用できインテリアとしても見栄えがするものです。
ARABIA — フィンランドが世界に誇る陶磁器の名窯

1873年、スウェーデンのロールストランド社がヘルシンキに設立した分工場がARABIAの始まりです。当初はロシア帝国向けの陶磁器を生産していましたが、1917年のフィンランド独立後に完全なフィンランド企業となり、20世紀半ばにはフィンランド最大の陶磁器メーカーへと成長しました。

黄金時代を築いたデザイナーたち
カイ・フランク(1911–1989)は「フィンランドデザインの良心」と呼ばれ、キルタ(後のティーマ)やカルティオなど、無駄を削ぎ落とした機能美の名作を生み出しました。1949年にはARABIAのクラウンマーク(王冠のバックスタンプ)もデザインしています。
ウラ・プロコッペ(1921–1968)は、コバルトブルーの手描きが美しいバレンシア(1960–2002年)と、鉄粉を施した独特の土色が魅力のルスカ(1960年代–1999年)を手がけました。ルスカの粗い表面は日本の楽焼に似た風合いで、北欧と日本の美意識の近さを感じさせます。

このほか、ビルガー・カイピアイネン(1915–1988)は「装飾の王」と呼ばれ、名作パラティッシをはじめ華やかな装飾陶芸を制作。エステリ・トムラはフローラシリーズの植物画で知られ、ライヤ・ウオシッキネンも数多くの装飾パターンを手がけました。
ヴィンテージの見分け方 — バックスタンプ(刻印)ガイド

- 1874〜1930年頃:素地への型押し(インプレスト)が主流。1878年以降はフィンランドの紋章入りカラーマークも併用。
- 1932〜1949年:クルト・エクホルムがデザインした「パイプスタンプ」。工場に導入された122mのトンネル窯を表現したデザイン。
- 1949年〜現在:カイ・フランクがデザインしたクラウンマーク(王冠)。月桂樹の輪を逆さにして王冠に見立てた斬新なデザイン。1964年、1971年、1975年、1981年、2014年に更新。
- 生産年の読み方:1940年代以降は月→年の順で数字が刻印。2等品にはローマ数字IIや色付きドットが付されます。
- 2016年以降:ヘルシンキ工場は2016年3月に閉鎖され、現在はタイとルーマニアで生産。ヴィンテージ品はすべてフィンランド製で、「MADE IN FINLAND」の刻印があります。
■詳細スペック
- メーカー:ARABIA / アラビア
- デザイナー:Ulla Procope / ウラ・プロコッペ
- シリーズ名:Valencia / バレンシア
- 年代:1960年〜1970年代
- 生産国:フィンランド
■コンディション:★★★★☆(4.5:極美品)
オリジナルの姿を留めた極めて良好なコンディションのデッドストック品です。本体に青いペイント飛びが見られますが製造工程によるとなります。カトラリー跡はなくカッティングボードとしての使用歴は認められません。