フィンランドの名窯が生んだ 手仕事の温もりが宿るカップ
フィンランドを代表する食器メーカーARABIAのユハンヌスというシリーズのコーヒーカップ、ソーサー、ケーキ皿のトリオです。コーヒーカップはエスプレッソカップほどの小ぶりなものとなります。ユハンヌスとはフィンランド語で「夏至の時期」を意味する言葉で、北欧でミッドサマーと呼ばれる季節のことです。北欧では冬場の日照時間が数時間ほどですが、反面ミッドサマーのシーズンには一日20時間ほど太陽が出ています。暑さも厳しくなく涼しげで北欧の一年を通じて最も良い季節です。
シルクスクリーン印刷で丁寧に刷りつけられた細かい装飾で、ミッドサマーローズという夏至の時期に咲くバラが描かれています。通常ロサスピノシシマ(Rosa spinosissima)と呼ばれる品種です。本来は黒褐色の茨をつけるため多少誇張された色使いですが、赤い茨も描かれておりこの白い花がバラであることを強調しています。デザイナーはエミリア、カレワラ、アリなどで知られるARABIAの伝説的なデザイナーの一人ライヤ・ウオシッキネンです。彼女のデザインはデフォルメされた点描や幾何学模様が多いため、こうした写実性の高い装飾は比較的珍しいものです。ユハンヌスというシリーズ自体が4年間という短い製造期間であったため、希少性も高くヴィンテージではあまり手に入らないものです。
ARABIA — フィンランドが世界に誇る陶磁器の名窯

1873年、スウェーデンのロールストランド社がヘルシンキに設立した分工場がARABIAの始まりです。当初はロシア帝国向けの陶磁器を生産していましたが、1917年のフィンランド独立後に完全なフィンランド企業となり、20世紀半ばにはフィンランド最大の陶磁器メーカーへと成長しました。

黄金時代を築いたデザイナーたち
カイ・フランク(1911–1989)は「フィンランドデザインの良心」と呼ばれ、キルタ(後のティーマ)やカルティオなど、無駄を削ぎ落とした機能美の名作を生み出しました。1949年にはARABIAのクラウンマーク(王冠のバックスタンプ)もデザインしています。
ウラ・プロコッペ(1921–1968)は、コバルトブルーの手描きが美しいバレンシア(1960–2002年)と、鉄粉を施した独特の土色が魅力のルスカ(1960年代–1999年)を手がけました。ルスカの粗い表面は日本の楽焼に似た風合いで、北欧と日本の美意識の近さを感じさせます。

このほか、ビルガー・カイピアイネン(1915–1988)は「装飾の王」と呼ばれ、名作パラティッシをはじめ華やかな装飾陶芸を制作。エステリ・トムラはフローラシリーズの植物画で知られ、ライヤ・ウオシッキネンも数多くの装飾パターンを手がけました。
ヴィンテージの見分け方 — バックスタンプ(刻印)ガイド

- 1874〜1930年頃:素地への型押し(インプレスト)が主流。1878年以降はフィンランドの紋章入りカラーマークも併用。
- 1932〜1949年:クルト・エクホルムがデザインした「パイプスタンプ」。工場に導入された122mのトンネル窯を表現したデザイン。
- 1949年〜現在:カイ・フランクがデザインしたクラウンマーク(王冠)。月桂樹の輪を逆さにして王冠に見立てた斬新なデザイン。1964年、1971年、1975年、1981年、2014年に更新。
- 生産年の読み方:1940年代以降は月→年の順で数字が刻印。2等品にはローマ数字IIや色付きドットが付されます。
- 2016年以降:ヘルシンキ工場は2016年3月に閉鎖され、現在はタイとルーマニアで生産。ヴィンテージ品はすべてフィンランド製で、「MADE IN FINLAND」の刻印があります。
■詳細スペック
- メーカー:ARABIA / アラビア
- デザイナー:Raija Uosikkinen / ライヤ・ウオシッキネン
- シリーズ名:Juhannus / ユハンヌス
- 年代:1966〜1970年
- 製造国:フィンランド
■コンディション:★★★★☆(4:美品)
三点とも割れ欠け貫入のない良好なコンディションの美品です。








