陶芸家がガラスに挑んだ理由|リサ・ラーソンとローヤルクローナ
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この記事の要点
- リサ・ラーソンは陶芸家でありながら、1970年代にガラスデザインに挑戦した
- スモーランド地方のローヤルクローナ(Royal Krona)で「自由な動物たち(Djur i frihet)」シリーズを制作
- 夫グンナルとともに、陶器とは異なる透明な素材で温かみのあるフォルムを追求
- ローヤルクローナは1977年に破産するも、作品はスクルーフに引き継がれた
- 当時の鉛クリスタル作品は現在希少なヴィンテージとして評価されている
目次
陶芸家がガラスに挑んだ理由
リサ・ラーソンは1954年から1980年までの26年間、グスタフスベリで一貫して陶器の制作に携わっていました。粘土を自らの手でこねて形を与え、釉薬をかけて窯に入れる — それがリサの創作の原点です。
ところが1970年代、リサはスモーランド地方の「ガラスの王国(Glasriket)」に拠点を置くローヤルクローナ(Royal Krona)からの依頼を受け、初めてガラスという素材に挑みます。ローヤルクローナは1975年にスクルーフ(Skruf)、グラスクルーフ(Gullaskruf)、オーセダ(Åseda)、ビョルクシュルト(Björkshult)、モーレロース(Målerås)の5つのガラス工場が統合して誕生したブランドです。夫のグンナル・ラーソンもまた同社でガラスデザインを手がけており、夫婦でガラスの世界に足を踏み入れました。
ガラスの王国——スモーランドとローヤルクローナ
スウェーデン南部のスモーランド地方は、17世紀からガラス産業が栄えた地域です。豊かな森林資源(燃料となる薪)と良質な砂が揃うこの一帯には、最盛期に100を超えるガラス工場が集中し、「ガラスの王国(Glasriket)」と呼ばれるようになりました。イッタラのウルティマツーレがフィンランドのガラス文化を代表するように、スモーランドはスウェーデンにおけるガラス工芸の中心地でした。
5つのガラス工場の統合
ローヤルクローナは、1975年にスモーランド地方の5つのガラス工場が経営統合して誕生しました。スクルーフ(Skruf)、グラスクルーフ(Gullaskruf)、オーセダ(Åseda)、ビョルクシュルト(Björkshult)、モーレロース(Målerås)——いずれも長い歴史を持つ工場です。統合の目的は、当時のスウェーデンガラス産業を取り巻く経営環境の厳しさに対抗することでした。
新ブランド「ローヤルクローナ」は、各工場の技術と伝統を集約し、著名なデザイナーを起用して付加価値の高い製品を生み出そうとしました。リサ・ラーソンとグンナル・ラーソン夫妻への依頼も、その戦略の一環です。
1975〜1977年——短くも濃密な歴史
しかし、ローヤルクローナの歴史はわずか2年で幕を閉じます。1977年に経営破綻し、ブランドは消滅しました。統合による経営合理化は期待された成果を上げることができなかったのです。
それでも、ローヤルクローナが残した作品——とりわけリサ・ラーソンのガラス作品——は、その短い歴史を超えて高く評価されています。破産後、リサの作品の生産は構成工場のひとつであるスクルーフ(Skruf)に引き継がれ、1980年代まで制作が続けられました。
「自由な動物たち」——クリスタルに宿る温かみ
陶芸家にとってガラスは未知の素材です。粘土であれば自らの手で自在に形を変えられますが、ガラスは1000度を超える溶融状態でしか成形できず、専門の吹きガラス職人や型職人との協業が不可欠です。冷えてしまえば修正もできません。しかしリサの丸みを帯びた造形はガラスの鋳造技法と相性が良く、「自由な動物たち(Djur i frihet)」と名付けられた動物シリーズでは、陶器とは異なる透明な質感のなかにリサらしい温かみのあるフォルムが見事に再現されました。サイ、シロクマ、フクロウ、ライオン、猫など、陶器で培ったモチーフがクリスタルガラスのなかに新たな命を得ています。
「スザンナの入浴」——聖書の画題をガラスに
ローヤルクローナは1977年に破産しますが、リサのガラス作品はスクルーフ(Skruf)に引き継がれ、1980年代まで制作が続けられました。本作「スザンナの入浴」は、陶芸家として四半世紀のキャリアを積んだリサが、ガラスという異なる素材で聖書の古典的画題に挑んだ意欲作です。約3kgの鉛クリスタルガラスで鋳造された重厚な作品で、光の角度によって表情が微妙に変化する、陶器では得られない透明感が最大の魅力です。
まとめ
この記事のまとめ
- リサ・ラーソンはグスタフスベリで26年間陶器を制作した後、1970年代にガラスデザインに挑戦した
- ローヤルクローナはスモーランド地方の5つのガラス工場が1975年に統合して誕生したブランド
- 「自由な動物たち(Djur i frihet)」シリーズでは、陶器で培った温かみのあるフォルムがクリスタルガラスで再現された
- ローヤルクローナは1977年に破産したが、作品はスクルーフに引き継がれ1980年代まで制作が続いた
- 鉛クリスタルによるリサのガラス作品は、陶器作品とは異なる希少なヴィンテージとして高く評価されている
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