
スウェーデンの国民的作家が生んだ 手のひらに宿る北欧の物語
リサ・ラーソンがグスタフスベリ社で1966年にデザインしたVäggplattor(壁掛け陶板)というシリーズの鳥の陶板です。グスタフスベリには量販品を生産するラインとは別にGスタジオ(G-Studion)と呼ばれるスティグ・リンドベリやリサ・ラーソンなど著名なデザイナーがアート作品を制作した部門がありました。こちらはそのアトリエで作られた作品となります。一点一点が手作りによるもので、背面にはリサ・ラーソンの名前を冠したバックスタンプが刻印されています。
真紅の釉薬が非常に鮮やかな陶板で、リサ・ラーソンのデザインの特徴であるモチーフの抽象化と大胆な色使いが両立した一品です。Drillsnäppaという作品名はイソシギという水鳥のことです。イソシギは日本では留鳥として一年を通じて観測できる鳥ですが、ヨーロッパでは冬場になると赤道に近い国に渡って越冬をします。陶板で描かれているのはおそらくメスで上に2つの卵が描かれています。イソシギの繁殖期は4〜7月にかけてであるため、季節の合間に北欧に舞い戻り巣作りをして卵を産む姿ではないかと思います。尾羽根のあたりに見える緑色の車輪は巣の表現で、まさにいま産み落とされた二つの卵を見つめる親鳥の姿が描かれているようです。
陶板は全体的に厚みがある非常に重厚な作りで重さも3キロ弱あります。グスタフスベリのリサ・ラーソンの陶板は薄造りのものが多いですが、こちらは3cmほどの厚みがあり側面にも取り囲むように真紅の釉薬がかけられています。
Väggplattorシリーズには6種類の鳥があり、左向きの鳥、振り向いた姿の鳥、キジ、カッコウ、青い鳥、そしてこのイソシギの陶板が製作されました。10年ほどの製作期間があるはずですがイソシギは6つの中で製作された数が一番少なかったようで見かけることが非常に珍しいものです。半世紀ほど前の希少なヴィンテージ陶板をこの機会にぜひご覧ください。
グスタフスベリ — 200年の歴史を持つスウェーデン陶磁器の聖地

1825年、ストックホルム群島のヴェルムド島に創設されたグスタフスベリ磁器工場。当初はイギリス式の製法を導入し、1839年に現在も知られる錨(アンカー)のマークを採用しました。1863年にはコーンウォールから粘土を輸入し、ボーンチャイナの生産を開始。やがてスウェーデンを代表する磁器ブランドへと成長しました。

黄金時代を築いた巨匠たち
1917年に初代アートディレクターに就任したヴィルヘルム・コーゲ(1889–1960)は、「美しい日用品をすべての人に」という理念のもと、労働者向けの食器「リリエブロー」を発表。さらにアルジェンタ、ファルスタなどの名シリーズを生み出しました。
1949年にコーゲの後任となったスティグ・リンドベリ(1916–1982)は、ベルサ、スピサリブ、プルーヌス、アダムなど数々の名作を手がけ、グスタフスベリの黄金時代を築きました。「千の芸術家(Tusenkonstnären)」と呼ばれた彼は、陶磁器だけでなくテキスタイル、ガラス、グラフィックデザインなど多岐にわたる分野で活躍しました。

このほか、ベルント・フリーベリ(1899–1981)は中国宋代の青磁に影響を受けた独自の釉薬技法で世界的な評価を得、リサ・ラーソン(1931–2024)はシャモット粘土を用いた愛らしい動物フィギュアで日本でも絶大な人気を誇りました。
ヴィンテージの見分け方 — バックスタンプ(刻印)ガイド

グスタフスベリの食器には裏面にバックスタンプ(刻印)が施されています。このスタンプのデザインは時代とともに変化しており、製造年代を特定する重要な手がかりとなります。1839年に採用された錨(アンカー)マークは現在まで同社のシンボルとして受け継がれています。1993年にオリジナルの食器生産が終了し、現在はHPF社が復刻版を製造しています。ヴィンテージ品はフリント陶器やフェルトスパット磁器で、復刻版のボーンチャイナとは素材が異なります。
■詳細スペック
- メーカー:Gustavsberg / グスタフスベリ
- デザイナー:Lisa Larson / リサ・ラーソン
- シリーズ名:Väggplattor / 壁掛け陶板
- 作品名:Drillsnäppa / イソシギ
- 年代:1966〜1975年
- サイズ:縦27cm 横25cm 厚み3cm
■コンディション:★★★★☆(4.5:極美品)
表面に光に透かすとわずかなスレがあり背面には経年の汚れや欠け、製造工程による貫入や凹凸が見られますが、オリジナルの色ツヤを留めた極美品です。背面には製造時の針金がそのまま残っています。