フィンランドの名窯が生んだ 手仕事の温もりが宿るカップ
ARABIA社の大型のハンドペイント食器フィエスタです。デザイナーは名作バレンシアで有名なウラ・プロコッペです。プロコッペは1960年にバレンシアをデザインしますが、こちらのフィエスタは前年の1960年にデザインされました。双方ともコバルトブルーを基調とするハンドペイント食器であり、フィエスタは大ヒットしたバレンシアのプロトタイプ的なモデルとなります。ウラ・プロコッペはロングラン製品となったルスカ(Ruska)や今では希少となったフローラ(Flora)のデザインも行ったARABIA社の伝説的なデザイナーです。
シリーズ名のフィエスタとはスペイン語で「お祭り」や「祝祭」の意味です。全面に車輪状に円環が大小の線で踊るように描かれており、情熱の国スペインの祝祭を赤や黄色ではなくコバルトブルーで描いた点に面白みがあります。バレンシアと同様に鈍色の青は地中海に指す強い日差しを表現しています。プロコッペは具象的なモチーフをデザインに取り入れることはほとんどありませんでした。バレンシア、ルイヤ、プルップリイエンカなど彼女の代表作はなにが描かれているかの解釈は見る側に委ねられている、という印象派の絵画的な特徴があります。
プロコッペは1968年に47歳の若さで病気で亡くなります。療養先はスペインのカナリア諸島であり、彼女が生涯にわたりスペインや地中海の海辺を愛していたことが伝わります。カップの底面にあるUPとはウラ・プロコッペのイニシャルサインであり、絵付師(ペインター)のイニシャルがスラッシュで区切られて右横にサインされています。
ARABIA — フィンランドが世界に誇る陶磁器の名窯

1873年、スウェーデンのロールストランド社がヘルシンキに設立した分工場がARABIAの始まりです。当初はロシア帝国向けの陶磁器を生産していましたが、1917年のフィンランド独立後に完全なフィンランド企業となり、20世紀半ばにはフィンランド最大の陶磁器メーカーへと成長しました。

黄金時代を築いたデザイナーたち
カイ・フランク(1911–1989)は「フィンランドデザインの良心」と呼ばれ、キルタ(後のティーマ)やカルティオなど、無駄を削ぎ落とした機能美の名作を生み出しました。1949年にはARABIAのクラウンマーク(王冠のバックスタンプ)もデザインしています。
ウラ・プロコッペ(1921–1968)は、コバルトブルーの手描きが美しいバレンシア(1960–2002年)と、鉄粉を施した独特の土色が魅力のルスカ(1960年代–1999年)を手がけました。ルスカの粗い表面は日本の楽焼に似た風合いで、北欧と日本の美意識の近さを感じさせます。

このほか、ビルガー・カイピアイネン(1915–1988)は「装飾の王」と呼ばれ、名作パラティッシをはじめ華やかな装飾陶芸を制作。エステリ・トムラはフローラシリーズの植物画で知られ、ライヤ・ウオシッキネンも数多くの装飾パターンを手がけました。
ヴィンテージの見分け方 — バックスタンプ(刻印)ガイド

- 1874〜1930年頃:素地への型押し(インプレスト)が主流。1878年以降はフィンランドの紋章入りカラーマークも併用。
- 1932〜1949年:クルト・エクホルムがデザインした「パイプスタンプ」。工場に導入された122mのトンネル窯を表現したデザイン。
- 1949年〜現在:カイ・フランクがデザインしたクラウンマーク(王冠)。月桂樹の輪を逆さにして王冠に見立てた斬新なデザイン。1964年、1971年、1975年、1981年、2014年に更新。
- 生産年の読み方:1940年代以降は月→年の順で数字が刻印。2等品にはローマ数字IIや色付きドットが付されます。
- 2016年以降:ヘルシンキ工場は2016年3月に閉鎖され、現在はタイとルーマニアで生産。ヴィンテージ品はすべてフィンランド製で、「MADE IN FINLAND」の刻印があります。
■詳細スペック
- メーカー:ARABIA / アラビア
- デザイナー:Ulla Procope / ウラ・プロコッペ
- 年代:1960年〜1974年
- 製造国:フィンランド
- サイズ:直径11cm 高さ9cm ソーサー直径17cm
■コンディション:貫入あり
カップ取手とソーサー背面に貫入が見られます。貫入とは窯で焼成する過程で釉薬面に入るヒビでメーカーの検品を通ったものとなります。ソーサーの高台が当たる部分やカップ側面にはカトラリー跡が見られます。使用上問題となるダメージはありませんが、貫入やカトラリー跡を考慮してお値打ち価格でのご提供となります。








