アール・デコの薫りを北欧に伝えた 40年以上愛されたデミタスカップ
フィンランドを代表する陶器メーカーARABIA社で20世紀初頭から中葉にかけてロングラン生産をしたShe-Foというシリーズのデミタスカップです。デミタスカップはエスプレッソなどを淹れる小さなサイズのカップです。デザインを担当したのはグレタ・リサ・ヤーデルホルム・スネルマンという人物で、フィンランドの女性陶芸家の草分け的存在です。首都ヘルシンキのアールト芸術大学で学んだ後は2年間フランスのパリの陶芸工房で修行を積んでいます。このことがキッカケとなりスネルマン作品にはアール・デコの雰囲気が多分に感じられます。シンプルな機能美を基調とする北欧デザインのなかで装飾性に富む作品の多く見られます。1921年から1937年までARABIAに務めた後は再びパリを拠点として創作活動をおこなっています。後にイッタラにもデザインを提供し、陶器のみならずガラス製品のデザインもこなした幅広いアーティストです。
She-foは1926年にデザインされ1969年まで製造されました。基本的に同一のデザインですが、バックスタンプの違いにより時代を分けることが出来ます。こちらのカップはいわゆるARABIAの王冠ロゴのため生産が終了する1960年代終盤に製造されたものとなります。
ARABIA — フィンランドが世界に誇る陶磁器の名窯

1873年、スウェーデンのロールストランド社がヘルシンキに設立した分工場がARABIAの始まりです。当初はロシア帝国向けの陶磁器を生産していましたが、1917年のフィンランド独立後に完全なフィンランド企業となり、20世紀半ばにはフィンランド最大の陶磁器メーカーへと成長しました。

黄金時代を築いたデザイナーたち
カイ・フランク(1911–1989)は「フィンランドデザインの良心」と呼ばれ、キルタ(後のティーマ)やカルティオなど、無駄を削ぎ落とした機能美の名作を生み出しました。1949年にはARABIAのクラウンマーク(王冠のバックスタンプ)もデザインしています。
ウラ・プロコッペ(1921–1968)は、コバルトブルーの手描きが美しいバレンシア(1960–2002年)と、鉄粉を施した独特の土色が魅力のルスカ(1960年代–1999年)を手がけました。ルスカの粗い表面は日本の楽焼に似た風合いで、北欧と日本の美意識の近さを感じさせます。

このほか、ビルガー・カイピアイネン(1915–1988)は「装飾の王」と呼ばれ、名作パラティッシをはじめ華やかな装飾陶芸を制作。エステリ・トムラはフローラシリーズの植物画で知られ、ライヤ・ウオシッキネンも数多くの装飾パターンを手がけました。
ヴィンテージの見分け方 — バックスタンプ(刻印)ガイド

- 1874〜1930年頃:素地への型押し(インプレスト)が主流。1878年以降はフィンランドの紋章入りカラーマークも併用。
- 1932〜1949年:クルト・エクホルムがデザインした「パイプスタンプ」。工場に導入された122mのトンネル窯を表現したデザイン。
- 1949年〜現在:カイ・フランクがデザインしたクラウンマーク(王冠)。月桂樹の輪を逆さにして王冠に見立てた斬新なデザイン。1964年、1971年、1975年、1981年、2014年に更新。
- 生産年の読み方:1940年代以降は月→年の順で数字が刻印。2等品にはローマ数字IIや色付きドットが付されます。
- 2016年以降:ヘルシンキ工場は2016年3月に閉鎖され、現在はタイとルーマニアで生産。ヴィンテージ品はすべてフィンランド製で、「MADE IN FINLAND」の刻印があります。
■詳細スペック
- メーカー:ARABIA / アラビア
- デザイナー:Greta-Lisa Jäderholm-Snellman / グレタ・リサ・ヤーデルホルム・スネルマン
- シリーズ名:She-Fo / シーフォ
- 年代:1926~1969年
- 製造国:フィンランド
■コンディション:★★★★☆(4:美品)
カップ内部のメッキ部分に光に透かすとカトラリー跡が見られますが割れ欠けのない美品です。








