スウェーデンの名窯グスタフスベリのボロという希少なシリーズのコーヒーカップです。ボロは1970年代にスウェーデンの住宅メーカーであるBorohus社がノベルティとして頒布した限定モデルです。一般に流通したものではなく非売品としてBorohus社の顧客に配布されたものとなります。
ボロの食器シリーズはコーヒーカップ、ティーカップ、ボウル、複数サイズのプレートが製作されました。カップとソーサーのフォルムは同時期のグスタフスベリのフォルムを踏襲しており、表面のデザインのみ新たに書き下ろされています。こちらのカップは同じく70年代に製作されたエマ（Emma）シリーズと同じフォルムになります。
グスタフスベリのロゴは1970年から縄のない錨マークとなりました。ボロは正確な製造年代が分かりませんが、バックスタンプから判断すると「縄なしロゴ」のため1970年以降に作られたものであると考えられます。（ロゴの詳細についてはこちらのブログ記事をご覧ください→『グスタフスベリのロゴの歴史』）
デザインを担当したのは同社の伝説的なデザイナーであるスティグ・リンドベリです。リンドベリは写実的なデザインから、ベルサシリーズのようなシンプルモダンな柄、そしてエロスシリーズのような緻密でシュールなものまで、非常に表現に幅があるデザイナーです。共通しているリンドベリ作品の特徴は、同じデザインパターンの転写紙をサイズに応じて拡大縮小し、貼り付けている点です。
一方、このボロシリーズでは食器ごとに異なる転写紙のデザインが描き下ろされているのが大きな特徴です。プレートは家に住む家族の風景、ボウルは人物描写がなく風光明媚な家のデザイン、ティーカップには仲睦まじい夫婦など、食器ごとに様々な風景が描き分けされています。ボロシリーズは非売品ではありながら非常に製作に手間がかけられたことが伺えます。
こちらのコーヒーカップはハート型のリース状に彩られた植物と、おそらくユリの花が描かれたものです。サイズ感について北欧ヴィンテージ食器では日本でコーヒーカップとして使われるものより小ぶりなものが多く見られます。こちらのカップは容量100ml程度のもので北欧の濃いコーヒーを飲む器として最適なものです。
■詳細スペック
メーカー：Gustavsberg / グスタフスベリ
デザイナー：Stig Lindberg / スティグ・リンドベリ
シリーズ名：Boro / ボロ
年代：1970年代
生産国：スウェーデン
コンディション：★★★★☆（4：美品）
ソーサー表面は光に透かすとわずかに薄くカトラリー跡が見られますが、割れや欠けや貫入がなく製造時の姿を留めた美品のコンディションとなります。本品は複数在庫品となります。在庫はすべて写真と同等のコンディションとなります。個別のコンディションをご確認の場合はチャットまたはメールにてお問い合わせください。
■サイズ
カップ幅8.5cm（取手含む）高さ6.5cm ソーサー直径13.8cm
グスタフスベリ
グスタフスベリは1825年に創業したスウェーデンの老舗陶器メーカーです。同社の歴史についてはこちらの記事をどうぞ♪ 同社はバスタブなどの住宅設備などを制作していましたが、19世紀後半から芸術的な陶磁器製作に力を入れ、その名が広く知られるようになりました。自然や民間伝承をモチーフにした素朴で美しいデザインでも知られ、20世紀の北欧デザインを牽引したメーカーです。
リサ・ラーソンやスティグ・リンドベリなどの優れたアーティストも数多く輩出し、北欧の20世紀中期の芸術運動の「ミッドセンチュリー」の中心的な存在でした。現在でも高い芸術性と技術力、そして北欧の風土を感じさせる独特なデザインが高く評価されています。
スティグ・リンドベリ（Stig Lindberg）
スティグ・リンドベリ（Stig Lindberg，1916〜1982年）
北部スウェーデンの中心都市ウーメオー（Umeå）の生まれ。はじめストックホルムの美術大学コンストファック（Konstfack）で絵画を学ぶ。1937年にグスタフスベリ社に入社し、師であるウィルヘルム・コーゲの薫陶を受け徐々に頭角を現していく。12年後の1949年にはコーゲの跡を継いで同社のデザインを統括するアートディレクターとなる。
以降リンドベリは20世紀中葉のスウェーデンのモダニズムの旗手として数々の作品を発表していく。リンドベリが活躍した時代のグスタフスベリ工房は全盛期を迎え、当時の作品は「ミッドセンチュリー」と呼ばれる黄金期の作として認知され、高い価値を持っている。リンドベリの工房はG-Studion（Gスタジオ）と呼ばれ、若手のデザイナーたちが大いに腕をふるい、リサ・ラーソンなどの著名なアーティストを輩出している。