膝に小さな本をのせ、まぶたを閉じて座る少女——ABCの少女たちのエンマ リサ・ラーソン 1958〜1973年 グスタフスベリ製
■詳細スペック
- メーカー:Gustavsberg / グスタフスベリ
- デザイナー:Lisa Larson / リサ・ラーソン
- シリーズ名:ABC-flickor
- 作品名:Emma / エンマ
- 年代:1958〜1973年
- 素材:炻器
- 製造国:スウェーデン
- サイズ:高さ約16cm 幅約10.5cm 奥行き約12cm
■コンディション:訳アリ品
右足の先に小さな欠けが見られるため、訳アリ品としてお得な価格でのご提供です。また、像を振ると鈴玉と呼ばれるカラカラという音がしますが、ダメージではありません。
■商品解説
ABCの少女たち(ABC-flickor)は、リサ・ラーソン(Lisa Larson)が1958年にグスタフスベリ(Gustavsberg)のためにデザインした少女像のシリーズです。アマリア(Amalia)、ベアタ(Beata)、シャルロッタ(Charlotta)、ドラ(Dora)、エンマ(Emma)と、頭文字がアルファベット順に並ぶ古典的なスウェーデンの女性名が一体ずつに与えられ、名前の付け方そのものが文字の手ほどきになっています。少女たちの多くは本を手にしており、「文字を学ぶ少女」という主題が、名前と姿の両方に重ねられました。
このシリーズは、もともと本立て(ブックエンド)として構想されました。本を読む少女という主題も、その用途から導かれたものです。ところが焼き上がってみると内部は中空で、本を押さえるだけの重みがありませんでした。砂を詰めて重しにするといった工夫も語られていますが、道具としての役目は果たせず、代わりに「本を読む少女」という姿そのものが人々の心をつかみ、スウェーデンの家庭に置物として迎えられていきました。役に立たない本立てが愛される像になった——その出発点が、この少女たちの性格をよく表しています。
本品のエンマは膝を立てて座り、両手を頭の後ろへ回して髪に添え、膝の上に小さな本をのせた姿で、まぶたは静かに閉じられています。髪は頭頂で結い上げられて黄褐色がかった釉をまとい、ワンピースは淡い水色の地に濃紺の花とも星とも見える模様が置かれています。腕を上げてくつろいだ姿勢と、うつむいた顔の静けさが同じ一体に収まっているのが、エンマの見どころです。
ABCの少女たちは型に流し込んで成形されるため、胴の側面などに型の継ぎ目がうっすらと残ることがあります。これは傷みではなく、この作り方につきものの正常な痕跡です。顔や手足の素肌の部分は無釉のまま残され、ワンピースの側に色が差されます。素肌の土の質感と、色をまとった衣の対比が、小さな像に彫刻としての手ざわりを与えています。
リサ・ラーソンのフィギュア作品をたどると、リッラ・ズー(Lilla Zoo、小さな動物園/1955年)、ストラ・ズー(Stora Zoo、大きな動物園/1957年)に続いて、1958年のABCの少女たちが生まれています。動物たちが猫やライオンといった種の名で呼ばれるのに対し、固有の名を与えられたのは人物や子どもの像でした。エンマは、立つドラ、横たわるベアタ、座るアマリアとシャルロッタと並んで、五人の名の最後を担う一体です。姿勢と彩色の違いが五人のあいだに静かなリズムをつくり、やがて「世界の子どもたち(Världens barn、1974〜75年)」へと広がっていく人物像の仕事の、その出発点にあたります。
リサ・ラーソン — 北欧の愛すべき陶芸家
師匠スティグ・リンドベリとリサ・ラーソン。1年の試用期間が26年に。
リサ・ラーソン(1931-2024)。スウェーデン南部スモーランド地方エルムフルトに生まれ、ヨーテボリの工芸学校で陶芸を学ぶ。1954年、学生コンペの審査員を務めたグスタフスベリの巨匠スティグ・リンドベリに才能を見出され、「1年の試用期間」で工場に招かれました。その1年は、やがて26年間の創作活動へと続いていきます。
「レクストゥーガ(遊び小屋)」と呼ばれた工房で、リサは「リッラ・ズー(小さな動物園)」「ABCガールズ」「アフリカ」など数々の名作を生み出しました。
日本とリサ・ラーソン
ABCガールズの「ドーラ」に命を吹き込むリサ。1950年代の痩身美の風潮に対し、古代の豊穣の女神に着想を得たふくよかな女性像を創りました。
一つひとつ手描きで絵付けされるリサ・ラーソンの陶器。職人の手仕事ゆえの個体差が、ヴィンテージ品の魅力です。
1970年、リサは大阪万博を訪れ、益子焼の人間国宝濱田庄司と出会います。民藝運動に触れたこの体験が、彼女の手仕事への信念をさらに深めました。2010年には日本の絵本のために赤い縞模様の猫「マイキー」を描き、やがてこの猫は日本中で愛されるキャラクターに。2014-15年の日本巡回展には21万人以上が来場しました。
グスタフスベリ — 200年の歴史を持つスウェーデン陶磁器の聖地

1825年、ストックホルム群島のヴェルムド島に創設されたグスタフスベリ磁器工場。当初はイギリス式の製法を導入し、1839年に現在も知られる錨(アンカー)のマークを採用しました。1863年にはコーンウォールから粘土を輸入し、ボーンチャイナの生産を開始。やがてスウェーデンを代表する磁器ブランドへと成長しました。

黄金時代を築いた巨匠たち
1917年に初代アートディレクターに就任したヴィルヘルム・コーゲ(1889–1960)は、「美しい日用品をすべての人に」という理念のもと、労働者向けの食器「リリエブロー」を発表。さらにアルジェンタ、ファルスタなどの名シリーズを生み出しました。
1949年にコーゲの後任となったスティグ・リンドベリ(1916–1982)は、ベルサ、スピサリブ、プルーヌス、アダムなど数々の名作を手がけ、グスタフスベリの黄金時代を築きました。「千の芸術家(Tusenkonstnären)」と呼ばれた彼は、陶磁器だけでなくテキスタイル、ガラス、グラフィックデザインなど多岐にわたる分野で活躍しました。

このほか、ベルント・フリーベリ(1899–1981)は中国宋代の青磁に影響を受けた独自の釉薬技法で世界的な評価を得、リサ・ラーソン(1931–2024)はシャモット粘土を用いた愛らしい動物フィギュアで日本でも絶大な人気を誇りました。
ヴィンテージと復刻版の見分け方
リサ・ラーソン作品の制作時期は、バックスタンプで判別できます。
- グスタフスベリ工場時代(1954-1980) — 錨マークに「GUSTAVSBERG」「LISA L.」「SWEDEN」の刻印。最もコレクター価値が高いヴィンテージ品。
- フリーランス時代(1980-1992) — ロールストランド、イエ・ガントフタなど各メーカーの刻印。
- Kスタジオ(Keramikstudion:Kスタジオ)時代(1992年〜) — 「K-Studion」の刻印。リサが共同設立した工房で、ヴィンテージの名作を手作りで復刻。高品質ですがオリジナルとは異なります。
当店で取り扱うリサ・ラーソン作品は、スウェーデンから直接買い付けたヴィンテージのオリジナル品です。































