イスラム芸術にあやかった青い花冠 ウオシッキネンの若き日の一皿
フィンランドを代表する陶器メーカーのARABIAが1960年代末から70年代初めにかけて制作したアーメットというシリーズの深皿です。ミッドセンチュリーと呼ばれる20世紀中葉の北欧デザインの最盛期に製作された作品です。パターンデザインは同社の主力デザイナーであったライヤ・ウオシッキネンです。全体に青い花が王冠状に彩られ、のちのマリメッコのUnikkoデザインを想起させるようなシンプルかつ機能的な北欧モダンを象徴するデザインとなっています。
シリーズ名のアーメットはイスラム圏でよく名付けられる男性の名前です。おそらくアラベスク模様(イスラム風の幾何学模様)で使用される唐草紋様にヒントを得たためで、青い落ち着いた色調もイスラム芸術にあやかったデザインといえます。
ウオシッキネンはカレワラや絶大な人気を誇ったエミリア、毎年のクリスマスプレートのデザインなども担当しました。彼女のデザインの特徴は点描やデフォルメした絵柄を用いる点です。アーメットは比較的若い時期の作品になりますが、彼女の特徴がよく現れておりデザインを上手に抽象化しています。
ARABIA — フィンランドが世界に誇る陶磁器の名窯

1873年、スウェーデンのロールストランド社がヘルシンキに設立した分工場がARABIAの始まりです。当初はロシア帝国向けの陶磁器を生産していましたが、1917年のフィンランド独立後に完全なフィンランド企業となり、20世紀半ばにはフィンランド最大の陶磁器メーカーへと成長しました。

黄金時代を築いたデザイナーたち
カイ・フランク(1911–1989)は「フィンランドデザインの良心」と呼ばれ、キルタ(後のティーマ)やカルティオなど、無駄を削ぎ落とした機能美の名作を生み出しました。1949年にはARABIAのクラウンマーク(王冠のバックスタンプ)もデザインしています。
ウラ・プロコッペ(1921–1968)は、コバルトブルーの手描きが美しいバレンシア(1960–2002年)と、鉄粉を施した独特の土色が魅力のルスカ(1960年代–1999年)を手がけました。ルスカの粗い表面は日本の楽焼に似た風合いで、北欧と日本の美意識の近さを感じさせます。

このほか、ビルガー・カイピアイネン(1915–1988)は「装飾の王」と呼ばれ、名作パラティッシをはじめ華やかな装飾陶芸を制作。エステリ・トムラはフローラシリーズの植物画で知られ、ライヤ・ウオシッキネンも数多くの装飾パターンを手がけました。
ヴィンテージの見分け方 — バックスタンプ(刻印)ガイド

- 1874〜1930年頃:素地への型押し(インプレスト)が主流。1878年以降はフィンランドの紋章入りカラーマークも併用。
- 1932〜1949年:クルト・エクホルムがデザインした「パイプスタンプ」。工場に導入された122mのトンネル窯を表現したデザイン。
- 1949年〜現在:カイ・フランクがデザインしたクラウンマーク(王冠)。月桂樹の輪を逆さにして王冠に見立てた斬新なデザイン。1964年、1971年、1975年、1981年、2014年に更新。
- 生産年の読み方:1940年代以降は月→年の順で数字が刻印。2等品にはローマ数字IIや色付きドットが付されます。
- 2016年以降:ヘルシンキ工場は2016年3月に閉鎖され、現在はタイとルーマニアで生産。ヴィンテージ品はすべてフィンランド製で、「MADE IN FINLAND」の刻印があります。
■詳細スペック
- メーカー:ARABIA / アラビア
- フォルムデザイン:Goran Back / ヨーラン・バック
- パターンデザイン:Raija Uosikkinen / ライヤ・ウオシッキネン
- シリーズ名:Ahmet / アーメット
- 年代:1968~1973年
- 製造国:フィンランド
■コンディション:★★★☆☆(3:並品)
割れ・欠け、ペイントロスがないコンディションですが、表面と縁は光に透かすとカトラリー跡と重ね置きのスレが見られます。使用上の問題はありませんが実用的なに向いているコンディションです。









