「野に咲く花」の名を持つ一皿 1940年代の職人がハンドペイントで描いた草原
スウェーデンの代表的な陶器メーカー、ロールストランド社が1940年代に製造したビルダ・ブロッモーというシリーズです。ビルダ・ブロッモーはスウェーデン語で「野に咲く花」という意味で、草原に咲く多種多様な草花をハンドペイントで描いています。乳白色の下地に自由な筆致で伸び伸びと描かれた草花が映えており、職人が一つひとつの柄を丁寧に描いていた古き良き時代が感じられます。
デザイナーはラース・トーレンという人物で1935~1957年まで同社に在籍していました。ペイントが専門のデザイナーで、ロールストランドの巨匠カール・ハリー・スタルハンなどの作品の絵師も担当しています。ラース・トーレンの頭文字をとったLThというイニシャルサインが底部には刻印されています。
ビルダ・ブロッモーはファイアンス焼きが用いられた現代では珍しい作品です。ファイアンス焼きとは、赤土で形成した器を乾燥させて錫釉と呼ばれる白の釉薬にどぶ漬けして焼成されたものです。古代エジプトで考案された手法で、世界で最も古い釉薬を使った製陶方法となります。肌さわりがしっとりとした乳白色の下地が特徴で、硬質なガラス質でないため破損しやすいのが特徴です。きれいな状態で現代に残るのが珍しいため、80年ほどの前の器としては非常に状態が良いものです。
ロールストランド — ヨーロッパ最古級の磁器工房、300年の伝統

1726年、ストックホルムに設立されたロールストランドは、スウェーデン最古の陶磁器工場です。スウェーデン王室の支援のもと、ファイアンス焼きから始まり、やがてボーンチャイナ、フリント陶器へと技術を発展させました。1926年にヨーテボリ、1936〜39年にリッシェーピングへと工場を移転し、2005年12月30日に約280年の歴史に幕を下ろしました。

ロールストランドを彩った名デザイナーたち
マリアンヌ・ウェストマン(1928–2017)は1950年から1971年までロールストランドに在籍し、青い花柄のモナミ(1952年〜)や、大胆なポップアートのようなピクニック(1956年〜)など、スウェーデンで最も愛される食器シリーズを生み出しました。
グンナー・ニールンド(1904–1997)はストーンウェアの巨匠として知られ、深みのある釉薬のアート陶芸で国際的な評価を獲得。カール=ハリー・ストールハーネ(1920–1990)も30年以上にわたりロールストランドでスタジオ作品と量産食器の両方を手がけました。

1930年にはルイーズ・アーデルボルグ(1885–1971)がストックホルム博覧会で発表した「ナショナルサービス」(後のスウェディッシュ・グレース)が、スウェーデン王室や大使館で愛される名品となりました。
ヴィンテージの見分け方 — バックスタンプ(刻印)ガイド

- 1730〜1884年:「Stockholm」または「Rörstrand」の手書き・型押し。絵付け師のイニシャルや年号が添えられることも。
- 1884〜2000年:ロールストランドの象徴的な「三つの王冠」マーク。イタリック体の工場名の周りにスウェーデンの紋章が配されたデザイン。1937年以降は3桁の数字コード(最初の2桁が製造年、3桁目が年内の時期)で年代特定可能。
- 2000年〜現在:王冠をかぶった「R」のシンプルなマーク。2005年にスウェーデンでの生産終了後も使用。
- ヴィンテージ品の特徴:「SWEDEN」または「MADE IN SWEDEN」の刻印はスウェーデン工場製の証。リッシェーピング工場閉鎖(2005年)以前の製品は、手仕事の温もりと北欧デザインの黄金期の品質を持つ貴重なヴィンテージ品です。
■詳細スペック
- メーカー:Rörstrand / ロールストランド
- デザイナー:Lars Thorén / ラース・トーレン
- シリーズ名:Vilda Blommor / ビルダ・ブロッモー
- 年代:1940年代
- 生産国:スウェーデン
■コンディション:★★★★☆(4.5:極美品)
ハンドペイント特有のコンディションとして表面にごく薄くペイント飛びが見られます。内部にはわずかに使用された形跡が見られますが割れ欠けがなく大変きれいなコンディションです。また高台に見える凹みは釉薬が上に重なっているため割れや欠けではなく、製造工程によって生じたものとなります。








