シルビア王妃とABBA「Dancing Queen」|ロールストランドのシルビアに込められた婚礼の物語
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スウェーデン最古の陶器メーカーのロールストランド社。その人気作品の一つにシルビアシリーズがあります。
製品のフォルムデザインはモナミシリーズで知られるマリアンヌ・ウェストマンが手がけ、スミレの花の装飾は同社のデザイナー、シルビア・レウショヴィウスが考案しました。

(写真:シルビア・レウショヴィウス(1915-2003)。ロールストランドのアトリエにて。花や鳥のモチーフを繊細に描く「粘土と色彩の詩人」と称された)
シルビアシリーズは肉厚で製造工程の跡が見られる通常の北欧食器とは異なり、支柱跡がなく薄造りで硬質なボーンチャイナ製の器で、シリーズ全体が優雅で洗練されたデザインであった。

(写真:『シルビア』シリーズ)
シルビアシリーズはロールストランド社の創業250周年の記念モデルとしてデザインされた。
しかし発売年の1976年は同時にスウェーデンにとっても記念碑的な出来事があった年であった。
国王カール16世グスタフとシルビア・ゾンマーラート王妃の結婚です。

(写真:シルビア王妃とグスタフ国王)
シルビア王妃の生い立ちと背景
シルビア・ゾンマーラートは、1943年12月23日にドイツのハイデルベルクで生まれました。彼女の父親はドイツ人で、母親はブラジル人です。シルビアは、幼少期をブラジルとドイツで過ごし、多文化的な環境で育ちました。このため、彼女はスウェーデン出身ではなく、スウェーデン王室に入る前はスウェーデンとは直接の縁がありませんでした。

(写真:シルビア王妃の通訳時代)
シルビア王妃は、ミュンヘンのオリンピック組織委員会で通訳として働いていた1972年にカール16世グスタフと出会いました。二人は恋に落ち、1976年6月19日に結婚しました。
シルビア王妃がスウェーデン王妃になると決まった時、彼女の外国出身という背景に対する批判も少なからずあった。伝統的なスウェーデン王室に外国からの花嫁が入ることに対して、保守的な視点から批判があったのです。
しかし、シルビア王妃はその後の活動を通じて、スウェーデン国民に愛される王妃となった。福祉活動や児童福祉、認知症ケアなどに力を入れ、その実直な姿勢と温かい人柄で多くの支持を得ています。

(写真:1897年ストックホルム万博でのロールストランド展示。創業1726年のスウェーデン最古の磁器メーカーとして、既に圧倒的な存在感を示していた)
シルビアシリーズの誕生とその意義
通常の北欧食器は肉厚で製造工程の跡が見られるものが多いです。そうした普段使いの無骨な食器をデザインのちからで洗練されたスタイリッシュな食器に変身させる、というのが北欧食器の妙と言えます。

しかしシルビアシリーズは通常の北欧食器とは異なり、支柱跡がなかったり薄造りで硬質なボーンチャイナ製の器で高品質の磁器が使用されています。
透き通った釉薬や絵柄の美しさ、そして洗練されたフォルムは、1970年代のロールストランド製品として特に高品質を誇ります。北欧ヴィンテージ食器にありがちな支柱跡(目跡)がシルビアシリーズには見られない点も特筆すべきで、これはシルビアシリーズのために窯焼き環境が一新されたことを示しています。
シルビアは北欧ヴィンテージ食器の中でも完成度が高く、美しさを極めた一品であった。
「Dancing Queen」の誕生秘話
1976年に行われたカール16世グスタフ国王とシルビア王妃の結婚式では、もう一つの大きなイベントがありました。それがABBAの「Dancing Queen」の初披露です。
ABBAは、1970年代を代表するスウェーデンのポップグループであり、その楽曲は世界中で広く愛されています。「Dancing Queen」は、1976年8月に正式にリリースされる前に、シルビア王妃の結婚式の前夜祭で初めて披露されました。この前夜祭は、王室の結婚を祝うために行われ、多くのゲストが参加しました。
「Dancing Queen」の「クイーン」はシルビア王妃を指していると言われています。ABBAのメンバーは、外国出身であるが故に一部から批判を受けていたシルビア王妃を支持し、彼女への敬意を表するためにこの曲を捧げました。
なお、ロールストランドのシルビアシリーズは同じ「シルビア」の名を冠していますが、こちらはデザイナーのシルビア・レウショヴィウス(Sylvia Leuchovius)の名に由来しています。ただし250周年記念展の開幕は王妃の結婚式のわずか2日前であり、王室御用達ブランドにとって、デザイナーと新王妃が同じ名前を共有するこの偶然は、特別な意味を持ったことでしょう。
このエピソードは、スウェーデンの歴史における特別な瞬間として、多くの人々に記憶されていた。
ロールストランド250年の歩み — シルビアが生まれるまで
シルビアが誕生した1976年に至るまで、ロールストランドは250年にわたる長い歴史を歩んできた。
1726年、ストックホルムに設立されたロールストランドは、スウェーデン最古の磁器メーカーです。18世紀にはスウェーデン王室御用達として、19世紀にはアール・ヌーヴォーの芸術磁器で世界的な名声を得ました。
20世紀に入ると、マリアンヌ・ウェストマンやシルビア・レウショヴィウスといった才能ある女性デザイナーたちが活躍し、モダンでありながら温かみのある北欧デザインの食器を生み出していきます。その集大成とも言えるのが、250周年という節目に発表されたシルビアシリーズでした。
シルビアのボーンチャイナ — 北欧食器の常識を覆した品質
シルビアが他の北欧ヴィンテージ食器と一線を画す点は、その素材と製法にあった。通常の北欧食器はファイアンス(軟質陶器)やストーンウェアで作られ、肉厚で温かみのある風合いが特徴です。しかしシルビアはボーンチャイナで製造されました。
ボーンチャイナとは、骨灰(動物の骨を焼いた粉)を配合した硬質磁器のことで、英国で発展した技法です。通常の磁器よりも薄く仕上がり、光に透かすと半透明に見えるほどの繊細さがあります。この素材を用いたことで、シルビアは北欧食器としては異例の「薄くて軽い、上品な質感」を実現しています。
さらに、シルビアシリーズには北欧ヴィンテージ食器にありがちな支柱跡(目跡)が見られません。焼成時にコーヒーカップを支える支柱の痕跡が残るのが一般的ですが、シルビアのためにロールストランドは窯焼き環境を一新。250周年記念にふさわしい完璧な仕上がりを追求しました。
シルビアの製造期間と希少性
シルビアの製造期間は1976年から1982年までのわずか6年間です。すべてが手描きの絵付けであり、一枚一枚の花の位置や色合いに微妙な個体差があります。この「手仕事の個性」は、現代の大量生産品にはない魅力です。
製造終了から40年以上が経過した現在、状態の良いシルビアを見つけることは年々難しくなっています。特にスープチューリン(蓋付き大型スープ鍋)やコーヒーポットなどの大型アイテムは極めて希少で、コレクター市場でも入手困難です。
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