
スウェーデンの国民的作家が生んだ 手のひらに宿る北欧の物語
スウェーデンの代表的な陶芸家リサ・ラーソンが1967年に製作したUNIKシリーズという陶板です。リサ・ラーソンはこの年に猫、鳥、馬、象などを含んだ9種類の陶板をデザインしました。これはそのうち座り猫を描いたものです。陶板は首都ストックホルムにあるグスタフスベリ社のGスタジオと呼ばれるアトリエで一点一点が手作りで製作されました。
UNIKシリーズには座り猫と丸い猫の2種類の陶板があり、こちらは前者となります。ちょこんとお行儀よく座る猫を真正面から捉えた描写で、口を真一文字に結びすこしいじましくも見える表情が可愛らしい逸品です。通常の座り猫は金色の毛並みですが、こちらは青い目をした黒毛で、ほとんど製造されなかった「希少色」と呼ばれるブルーアイズの座り猫の陶板です。毛並みもよく見ると青みがかった深みのある黒で、UNIKシリーズのなかでもかなり珍しいものでコレクターズアイテムの一つです。
UNIKシリーズはロングラン生産されたため、時代によって作風にかなり違いがあります。基本的には後年の作になるほど色が明るく変化し、陶板の厚みも1cmほどになります。こちらは比較的暗い色調で、22.5cm角サイズで薄造りの8mm厚のため、おそらく1960年代後半から70年代にかけて製作されたものです。
リサ・ラーソンは猫のモチーフを好んで多用していますが、猫はリアリティのある鋭い眼差しの作風が多くみられる反面、同じくネコ科のライオンは逆に猫のような温和さで描かれているのが特徴です。可愛いものは鋭く、鋭いものは柔和に、というリサ・ラーソンならではのデフォルメが感じられます。
リサ・ラーソン — 北欧の愛すべき陶芸家
師匠スティグ・リンドベリとリサ・ラーソン。1年の試用期間が26年に。
リサ・ラーソン(1931-2024)。スウェーデン南部スモーランド地方エルムフルトに生まれ、ヨーテボリの工芸学校でテキスタイルから陶芸に転向。1954年、学生コンペの審査員を務めたグスタフスベリの巨匠スティグ・リンドベリに才能を見出され、「1年の試用期間」で工場に招かれました。その1年は、やがて26年間の創作活動へと続いていきます。
リンドベリが「レクストゥーガ(遊び小屋)」と呼んだ工房で、リサは「リッラ・ズー(小さな動物園)」「ABCガールズ」「アフリカ」など数々の名作を生み出しました。ある日、暗褐色のシャモット陶土でしっぽを立てた猫を作ったことが、生涯で約30種もの猫の陶器を生むきっかけとなります。
日本とリサ・ラーソン
ABCガールズの「ドーラ」に命を吹き込むリサ。1950年代の痩身美の風潮に対し、古代の豊穣の女神に着想を得たふくよかな女性像を創りました。
一つひとつ手描きで絵付けされるリサ・ラーソンの陶器。職人の手仕事ゆえの個体差が、ヴィンテージ品の魅力です。
1970年、リサは大阪万博を訪れ、益子焼の人間国宝濱田庄司と出会います。民藝運動に触れたこの体験が、彼女の手仕事への信念をさらに深めました。2010年には日本の絵本のために赤い縞模様の猫「マイキー」を描き、やがてこの猫は日本中で愛されるキャラクターに。2014-15年の日本巡回展には21万人以上が来場しました。
ヴィンテージと復刻版の見分け方
リサ・ラーソン作品の制作時期は、バックスタンプで判別できます。
- グスタフスベリ工場時代(1954-1980) — 錨マークに「GUSTAVSBERG」「LISA L.」「SWEDEN」の刻印。最もコレクター価値が高いヴィンテージ品。
- フリーランス時代(1980-1992) — ロールストランド、イエ・ガントフタなど各メーカーの刻印。
- ケラミックストゥディオン時代(1992年〜) — 「K-Studion」の刻印。リサが共同設立した工房で、ヴィンテージの名作を手作りで復刻。高品質ですがオリジナルとは異なります。
当店で取り扱うリサ・ラーソン作品は、スウェーデンから直接買い付けたヴィンテージのオリジナル品です。
■詳細スペック
- メーカー:Gustavsberg / グスタフスベリ
- デザイナー:Lisa Larson / リサ・ラーソン
- シリーズ名:UNIK / ユニーク
- 作品名:Katt / 猫
- 年代:1967〜1970年代(推定)
- サイズ:縦横:22.5cm 厚み:0.8cm
■コンディション:★★★★☆(4.5:極美品)
背面の上部に陶板の来歴を記載した跡が薄く見られます。北欧は陶板を買った日時や場所を裏面に記入することがよくあり、その跡だと思われます。全体的に割れ欠けのない極美品です。表面はオリジナルの造形を留めた最良のコンディションです。