ミッドセンチュリーの旗手が生んだ グスタフスベリの名品
スティグ・リンドベリが手掛けた馬をモチーフにした陶製フィギュリンです。1960年にデザインされた「Springare(スプリンガレ)」シリーズの一つで、その愛らしくぽってりとしたフォルムが特徴的です 。白地の柔らかなマット釉薬の上に、黒い線刻と彩色によって鞍や手綱を思わせる細かな模様が丁寧に描かれており、静かな雰囲気の中にも独特の存在感とキャラクターが感じられます 。丸みを帯びた胴体と流れるような曲線で構成された造形からはリンドベリならではのユーモアと優美さが漂い、まさにスウェーデン・ミッドセンチュリー期のモダンアートピースと呼ぶに相応しい作品です。
作品名の「スプリンガレ」とはスウェーデン語で軍馬や馬を意味する単語です。生き物としての馬というより、チェスでいうナイトの駒のように、彫刻として立体化された塑像を意図していたようです。
底面にはグスタフスベリ製スタジオ作品の証である手のマーク(Gの刻印)と「Stig L」のイニシャルサインが刻まれています 。リンドベリ自身が工房で手掛けたオリジナル作品であることを示す直筆サインで、細部にまで作家のこだわりが感じられる逸品です。
グスタフスベリ社には、大衆向けの日用食器を大量生産する部門と、スティグ・リンドベリやリサ・ラーソンなど著名デザイナーが芸術性の高い陶芸作品を制作したアトリエ部門(G-スタジオ)がありました。本作はそのG-スタジオで生み出された作品であり、リンドベリのぽってりとした馬のオブジェシリーズはスウェーデン・モダンデザインの象徴的作品として広く知られています 。ミッドセンチュリーと呼ばれる北欧デザイン黄金期に制作された快作の一つで、現在でもコレクターから高い評価を受ける大変貴重なヴィンテージ・オブジェです。
グスタフスベリ — 200年の歴史を持つスウェーデン陶磁器の聖地

1825年、ストックホルム群島のヴェルムド島に創設されたグスタフスベリ磁器工場。当初はイギリス式の製法を導入し、1839年に現在も知られる錨(アンカー)のマークを採用しました。1863年にはコーンウォールから粘土を輸入し、ボーンチャイナの生産を開始。やがてスウェーデンを代表する磁器ブランドへと成長しました。

黄金時代を築いた巨匠たち
1917年に初代アートディレクターに就任したヴィルヘルム・コーゲ(1889–1960)は、「美しい日用品をすべての人に」という理念のもと、労働者向けの食器「リリエブロー」を発表。さらにアルジェンタ、ファルスタなどの名シリーズを生み出しました。
1949年にコーゲの後任となったスティグ・リンドベリ(1916–1982)は、ベルサ、スピサリブ、プルーヌス、アダムなど数々の名作を手がけ、グスタフスベリの黄金時代を築きました。「千の芸術家(Tusenkonstnären)」と呼ばれた彼は、陶磁器だけでなくテキスタイル、ガラス、グラフィックデザインなど多岐にわたる分野で活躍しました。

このほか、ベルント・フリーベリ(1899–1981)は中国宋代の青磁に影響を受けた独自の釉薬技法で世界的な評価を得、リサ・ラーソン(1931–2024)はシャモット粘土を用いた愛らしい動物フィギュアで日本でも絶大な人気を誇りました。
ヴィンテージの見分け方 — バックスタンプ(刻印)ガイド

グスタフスベリの食器には裏面にバックスタンプ(刻印)が施されています。このスタンプのデザインは時代とともに変化しており、製造年代を特定する重要な手がかりとなります。1839年に採用された錨(アンカー)マークは現在まで同社のシンボルとして受け継がれています。1993年にオリジナルの食器生産が終了し、現在はHPF社が復刻版を製造しています。ヴィンテージ品はフリント陶器やフェルトスパット磁器で、復刻版のボーンチャイナとは素材が異なります。
■詳細スペック
- メーカー:Gustavsberg / グスタフスベリ
- デザイナー:Stig Lindberg / スティグ・リンドベリ
- 作品名:スプリンガレ / Springare
- 年代:1960〜72年
- サイズ:横15cm 幅7cm 高さ13cm
■コンディション:★★★★★(5:完品)
特筆すべきダメージがなく非常に良好なヴィンテージ品です。制作当時の姿をそのまま留めた完品です。陶器としての出来栄えも優れたものです。







