
ミッドセンチュリーの旗手が生んだ グスタフスベリの名品
スウェーデンの老舗陶器メーカーのグスタフスベリ社のアトリエで製作されたドンキホーテの陶板です。グスタフスベリでは大量生産を製造するラインとは別に、職人が一点一点手作業で陶器を製造するG-Studionと呼ばれる社内アトリエがありました。デザイナーは20世紀の北欧を代表するミッドセンチュリーの旗手スティグ・リンドベリです。
セルバンテスの小説『ドン・キホーテ』の主人公ドン・キホーテとロシナンテに乗る従者のサンチョ・パンサを描いたものです。正面右下にはスティグ・リンドベリが刻印した自署が見られます。2キロ以上の重さがあるずっしりとした陶板で、北欧モダンの全盛期を現代に生き生きと伝える名作の一つとなります。
ドン・キホーテは妄想に取り憑かれた老騎士が旅の途中で風車と戦ったりするエピソードが有名ですが、真実を知ろうとすると魔法使いが魔法を使っているからとかそれらしい理由をつけて、本当の事実には延々と辿り着けないという話です。
陶板のドン・キホーテの目もどことなく正気に見えないような描かれ方に見えます。白目の部分は黒く、黒目は肌と同じ色となっています。面長で細面の表情は無感情で、それが不思議な魅力をもっています。
上下枠はタイル調で、上はドット柄、下はよく見るとチェック柄となっています。それぞれ兜と鎖かたびらを表現しているようです。飾りの陶板ですが、どちらかというと京都の鐘馗さんのような使い方が適している迫力のある作品です。
■詳細スペック
メーカー:Gustavsberg / グスタフスベリ
デザイナー:Stig Lindberg / スティグ・リンドベリ
作品名:Don Quixote / ドン・キホーテ ドンキホーテ
年代:1960年代
生産国:スウェーデン
コンディション:★★★★☆(4:美品)
背面の右下角にわずかな欠けが見られます。色味に変化がなく素焼きの陶板のため製造工程によって生じ、そのまま出荷されたものとなります。それ以外の全体に欠けや割れは見られず、オリジナルのコンディションを保った美品のコンディションとなります。
■サイズ
横幅27cm 縦幅28.5cm 厚み1.5cm
■関連コレクション
グスタフスベリ — 200年の歴史を持つスウェーデン陶磁器の聖地

1825年、ストックホルム群島のヴェルムド島に創設されたグスタフスベリ磁器工場。当初はイギリス式の製法を導入し、1839年に現在も知られる錨(アンカー)のマークを採用しました。1863年にはコーンウォールから粘土を輸入し、ボーンチャイナの生産を開始。やがてスウェーデンを代表する磁器ブランドへと成長しました。

黄金時代を築いた巨匠たち
1917年に初代アートディレクターに就任したヴィルヘルム・コーゲ(1889–1960)は、「美しい日用品をすべての人に」という理念のもと、労働者向けの食器「リリエブロー」を発表。さらにアルジェンタ、ファルスタなどの名シリーズを生み出しました。
1949年にコーゲの後任となったスティグ・リンドベリ(1916–1982)は、ベルサ、スピサリブ、プルーヌス、アダムなど数々の名作を手がけ、グスタフスベリの黄金時代を築きました。「千の芸術家(Tusenkonstnären)」と呼ばれた彼は、陶磁器だけでなくテキスタイル、ガラス、グラフィックデザインなど多岐にわたる分野で活躍しました。

このほか、ベルント・フリーベリ(1899–1981)は中国宋代の青磁に影響を受けた独自の釉薬技法で世界的な評価を得、リサ・ラーソン(1931–2024)はシャモット粘土を用いた愛らしい動物フィギュアで日本でも絶大な人気を誇りました。
ヴィンテージの見分け方 — バックスタンプ(刻印)ガイド

グスタフスベリの食器には裏面にバックスタンプ(刻印)が施されています。このスタンプのデザインは時代とともに変化しており、製造年代を特定する重要な手がかりとなります。1839年に採用された錨(アンカー)マークは現在まで同社のシンボルとして受け継がれています。1993年にオリジナルの食器生産が終了し、現在はHPF社が復刻版を製造しています。ヴィンテージ品はフリント陶器やフェルトスパット磁器で、復刻版のボーンチャイナとは素材が異なります。

