リンドベリのGスタジオから生まれた 古代技法ファイアンス焼きの逸品
スウェーデンの名窯グスタフスベリ(Gustavsberg)のファイアンス焼きのピッチャーです。同社の代表的なデザイナーのスティグ・リンドベリ(Stig Lindberg)の作品で、北欧食器の黄金期と言われるミッドセンチュリー(1950年代)に製造されたものです。ファイアンス焼きとは、赤土で形成した器を乾燥させて錫釉と呼ばれる白の釉薬にどぶ漬けして焼成されたものです。古代エジプトで考案された手法で、世界で最も古い釉薬を使った製陶方法となります。
青い花柄はアイリス(あやめ)の花だと思います。その隣に柳の葉、スズランなどが丁寧に描かれていて、草原に咲く野草の風景が表現されています。
プレート背面にはグスタフスベリのスタジオ(G-Studion)で制作されたことを示す”G”のハンドサインがあります。”F・98”とは型式(絵付けの種類)の表記で、右端には絵付け師のハンドサインである三つ葉マークが描かれています。グスタフスベリには歴代で40名ほどのデコレーターが在籍していました。
グスタフスベリのG工房で制作されたファイアンス焼きは現在では骨董的な価値を持つアンティークです。ファイアンス焼きの特性上、一般的な陶器よりも脆く、完品で残ることは珍しいものです。当時の制作風景を伝える映像が残っています。丸メガネをかけている男性がデザイナーのスティグ・リンドベリです。本作品もこちらの工房で制作され今に残るものとなります。
グスタフスベリ — 200年の歴史を持つスウェーデン陶磁器の聖地

1825年、ストックホルム群島のヴェルムド島に創設されたグスタフスベリ磁器工場。当初はイギリス式の製法を導入し、1839年に現在も知られる錨(アンカー)のマークを採用しました。1863年にはコーンウォールから粘土を輸入し、ボーンチャイナの生産を開始。やがてスウェーデンを代表する磁器ブランドへと成長しました。

黄金時代を築いた巨匠たち
1917年に初代アートディレクターに就任したヴィルヘルム・コーゲ(1889–1960)は、「美しい日用品をすべての人に」という理念のもと、労働者向けの食器「リリエブロー」を発表。さらにアルジェンタ、ファルスタなどの名シリーズを生み出しました。
1949年にコーゲの後任となったスティグ・リンドベリ(1916–1982)は、ベルサ、スピサリブ、プルーヌス、アダムなど数々の名作を手がけ、グスタフスベリの黄金時代を築きました。「千の芸術家(Tusenkonstnären)」と呼ばれた彼は、陶磁器だけでなくテキスタイル、ガラス、グラフィックデザインなど多岐にわたる分野で活躍しました。

このほか、ベルント・フリーベリ(1899–1981)は中国宋代の青磁に影響を受けた独自の釉薬技法で世界的な評価を得、リサ・ラーソン(1931–2024)はシャモット粘土を用いた愛らしい動物フィギュアで日本でも絶大な人気を誇りました。
ヴィンテージの見分け方 — バックスタンプ(刻印)ガイド

グスタフスベリの食器には裏面にバックスタンプ(刻印)が施されています。このスタンプのデザインは時代とともに変化しており、製造年代を特定する重要な手がかりとなります。1839年に採用された錨(アンカー)マークは現在まで同社のシンボルとして受け継がれています。1993年にオリジナルの食器生産が終了し、現在はHPF社が復刻版を製造しています。ヴィンテージ品はフリント陶器やフェルトスパット磁器で、復刻版のボーンチャイナとは素材が異なります。
■詳細スペック
- メーカー:Gustavsberg / グスタフスベリ
- フォルムデザイン:Stig Lindberg / スティグ・リンドベリ
- パターンデザイン:Anita Roi / アニータ・ロイ
- 年代:1950年代
- 製造国:スウェーデン
- サイズ:幅15cm(取手含む)高さ18cm
■コンディション:★★★★★(5:完品)
使用歴のないミントコンディションです。製造された当時の姿をそのまま留めた大変美しいコンディションとなります。なおフタはオリジナルものですが、口と本体に数ミリの遊びが見られます。








