フィンランドを代表する食器メーカーARABIAの隠れた名作カルタノのティーポットです。
シリーズ名のカルタノとはフィンランド語で荘園や大邸宅という意味で、中世の貴族が居住した豪邸のことを言います。華美な名前とは裏腹にシンプルな装飾ですが、貴族の荘園の風景を表現しているのではないかと思います。規則正しく並んだドットとぶどうの実のような紋様がキレイに整備された庭先を想起させます。
デザインを担当したのは名作クロッカスを考案したペテル・ウィンクヴィストとエステリ・トムラのコンビです。装飾を担当したエステリ・トムラの作風は必ずといっていいほどデザインに草花を取り入れています。
カルタノはクロッカスが発売される前々年まで短期間製造されたシリーズです。クロッカスは今でもヴィンテージ市場でよく見かけますが、もともとの生産量が少なかったためか、カルタノはほとんど入手できない珍しいものです。今回は特に珍しいティーポットが入荷しました。
■詳細
メーカー：ARABIA / アラビア
シリーズ：Kartano / カルタノ
フォルムデザイン：Peter Winquist / ペテル・ウィンクヴィスト
パターンデザイン：Esteri Tomula / エステリ・トムラ
年代：1973〜1976年
生産国：フィンランド
コンディション：★★★★☆（4.5：極美品）
口の付近に蓋を置いた跡のスレが光に透かすとごく僅かに見られます。また側面に一箇所のペイント飛びが小さく見られます。使用上の問題やフタの収まりに影響はありませんがストレーナー（茶こし）の座りに少しカタツキが見られます。全体的には使用感のないデッドストック品に近いコンディションです。
■サイズ
直径16.5cm 横幅24cm 高さ11.5cm
エステリ・トムラ（Esteri Tomula）
エステリ・トムラ（Esteri Tomura，1920〜1998年）
フィンランド首都のヘルシンキの生まれ。大学教授だった父親がヘルシンキ北西部のウルヤラン（Urjalan）という田舎に別荘を購入し、幼少時代は毎年夏になると家族と自然豊かな別荘地で過ごしたことが彼女の自然への造詣を深めたとされる。エステリ・トムラは先天性の小人病の疾患があり、ヘルシンキのアールト芸術大学ではじめは陶芸を専攻するが体力的・身体的な理由から満足に土を扱うことが出来なかった。そのため陶芸の道を諦めてデザインに自らの専門性を求めていく。
ARABIAに入社後は終生の友となったライヤ・ウオシッキネンとともにパターンデザイナーとしての腕を磨いていく。ウオシッキネンは抽象的で幾何学的模様を好んだが、トムラは幼少期の原風景であったフィンランドの草花に自らの意匠の原点を求めている。身体的なハンディキャップをものともせず名作を生み出したトムラは、小児麻痺を患いながらも不朽の名作パラティッシをデザインしたビルガー・カイピアイネンとも相通じる面がある。