ヴィンテージ スヴェップアスク 赤地にクルビッツの花文様|スウェーデンの曲げ木の箱

スヴェップアスク(Svepask)完全ガイド|スウェーデンの曲げ木の箱——クルビッツ装飾とダーラナの手仕事

北欧食器タックショミュッケ編集部

スウェーデンの古い家に、薄い木を丸くくるりと巻いてつくった箱があります。スヴェップアスク(svepask)と呼ばれる、蓋のついた木の入れ物です。バターや旅の食料をおさめ、晴れ着や大切な品を守り、家から家へと受け継がれてきました。

名前は「巻く」を意味する動詞svepa(スヴェーパ)と、「箱」を意味するask(アスク)が結びついたものです。伝統的な作りでは、薄く削り出した木の帯を湯や蒸気でやわらげ、丸や楕円に曲げ、重なった端を木の根などで縫いとめます。

この記事では、スヴェップアスクという道具の成り立ちを、語源と技法からたどります。どんな木でどのように作られ、暮らしの中でどう使われ、なぜダーラナ地方の花模様「クルビッツ」で彩られるようになったのか。北欧の森と湖の風景、そして手仕事を守ろうとした人々の物語とともに、ひとつの木の箱の背景をゆっくりとご紹介します。

スウェーデンの伝統的なスヴェップアスク 白樺樹皮を巻いて作られた蓋付きの箱
白樺の樹皮を巻いてつくられたスヴェップアスク。蓋には彫り模様と曲げ木の持ち手がつく(Photo: Holger.Ellgaard / CC BY-SA 3.0)。

この記事でわかること

  • スヴェップアスクの語源と、薄い木を巻いてつくる「スヴェップ技法」の工程
  • 白樺・松・ヤマナラシなど、地域によって変わる材と作りの違い
  • 鉄器時代からヴァーサ号まで——どれほど古くから使われてきた道具なのか
  • クルビッツ装飾の由来と、ダーラナの絵付け文化・ヘムスロイド(手工芸)運動とのつながり

スヴェップアスクとは——薄い木を巻いてつくる箱

スヴェップアスク(svepask)は、薄く削り出した木の板を丸または楕円に曲げ、木の底と蓋を組み合わせてつくる収納容器です。スウェーデン語版の百科事典やスウェーデン手工芸のガイドは、この箱を「薄い木の帯を型に巻きつけ、重なった端を縫いとめたもの」と説明しています。

語の成り立ちはとても素直です。「巻く・くるむ」を意味する動詞svepa(スヴェーパ)に、「箱」を意味するask(アスク)が付いて svepask となりました。この svepa は古ノルド語の sveipa(くるむ・投げかける)につながる古い言葉で、布を人にふわりと掛けるような動きを表します。箱そのものが「木で巻かれてできる」ことが、名前にそのまま刻まれているのです。

spånask、äska、svepkärl——呼び名のいろいろ

スヴェップアスクには、いくつかの別の呼び名があります。へぎ板を意味する spån(スポーン)を冠した spånask(スポーンアスク)、古い言葉の äska(エースカ)、そして巻き技法でつくる容器全般をさす総称 svepkärl(スヴェープシェール)です。äska はもともとトネリコ材(ask)の小箱を指した言葉でしたが、のちには材の種類を問わず使われるようになりました。いずれもほぼ同じものを指す言葉と考えてよいでしょう。

また、食料を意味する mat(マート)と結びついた matask(マートアスク)という言葉もあります。これは「弁当箱・食料箱」という用途をあらわす呼び名で、旅や野良仕事に食べ物を持って出るための入れ物でした。matask はスヴェップ技法でつくられることが多かったものの、技法の名前ではなく使い道の名前である点に、ちょっとした区別があります。当店が「お弁当箱」とご紹介してきたのも、この matask としての使われ方に由来しています。

スヴェップアスクの構造 曲げた薄い木の側面と木釘で留めた底
蓋のない浅いスヴェップアスク。曲げた薄い木の側面と、重ね継ぎ目を木釘でとめた作りがよく見える(Photo: Holger.Ellgaard / CC BY-SA 3.0)。

「巻いてつくる」——スヴェップ技法の工程

スヴェップアスクをつくる一連の手わざは、スヴェップ技法(svepteknik)と呼ばれます。大きくは「木を割る→やわらげる→曲げる→縫いとめる→底と蓋をつける」という流れで進みます。どの工程にも、木という素材の性質を読み切った知恵が詰まっています。

木は「挽く」のではなく「割る」

まず驚かされるのは、薄い板を鋸で挽き出すのではなく、楔(くさび)を打ち込んで繊維に沿って割り出す点です。木口に切り込みを入れ、繊維の方向にまっすぐ裂いていくと、鋸で切るよりも薄くしなやかで、折れにくい板がとれます。そのため、節が少なく木目のまっすぐな「直木(rakved)」を選ぶことが、仕上がりを左右する最初の勘どころになります。

湯と蒸気でやわらげる——basning

割り出した板は、そのままでは曲げると折れてしまいます。そこで、熱湯で煮たり蒸気にあてたりして木をやわらかくする工程が入ります。これを basning(バースニング)と呼びます。木の繊維をつなぐリグニンという成分が熱と水分でゆるみ、板が思いどおりに曲がるようになります。直火であぶる方法もありますが、局所的に強く曲げられる一方で煤がつきやすく、煮る・蒸す・あぶるのそれぞれに長所と短所があります。

型に巻き、根で縫いとめる

やわらいだ板を丸や楕円の型に巻きつけ、乾かして形を落ち着かせます。そして重なり合った端を縫いとめるのですが、ここで糸のかわりに使われるのがトウヒの根(granrot)や木の根の細い繊維です。地域によっては鳥の羽軸(vingpennor)が、サーミの人々のあいだでは錫の細い線(tenntråd)が用いられました。縫い目には鎖のように連なる kedjesöm(チェーンステッチ)がよく見られ、この縫い自体が箱の表情の一部になっています。最後に木の底をはめて固定します。伝統的な作例には、根による縫い合わせや木釘など、木や植物由来の素材を生かした接合が見られます。

ローズマリング装飾の曲げ木の箱 側面に縫いとめた継ぎ目が見える
ノルウェーの曲げ木の箱ティーネ(tine)。スヴェップと同じ巻き技法でつくられ、側面には縫いとめた継ぎ目、蓋には立ち耳がつく。北欧に共通する装飾絵画ローズマリングが施されている(Photo: Asbjørn Tyssen / CC BY-SA 3.0)。

材と地域の違い——白樺、松、ヤマナラシ

スヴェップアスクに使われる木は、ひとつではありません。その土地に豊かに育つ木が選ばれてきたため、材には南北で明確な違いがあります。

南スウェーデンでは目の細かい良質な広葉樹が、ダーラナ地方より北では白樺(björk)が、さらに北のノルランド地方やフィンランド語圏ではヤマナラシ(asp)が好まれました。松(tall)も広く使われ、松の辺材は数か月水に浸すと割りやすくなると伝えられています。サーミの人々は白樺の樹皮(björknäver)を巻いた容器もつくりました。「スヴェップアスクは白樺でできている」と一括りにできないのは、この道具がそれぞれの土地の森から生まれてきたからです。

作りにも地域差があります。底のおさめ方は、南では薄い側板の内側に底板を入れ、北では決り(fals)という溝を刻んで底をはめ込みます。縫い目も北は鎖縫いが多く、南は別の縫い方が用いられました。こうした小さな違いが、産地を読み解く手がかりになります。

ダーラナ地方の白樺とトウヒの森
ダーラナ地方の森。白樺とトウヒが混じり合う。まっすぐ育った木が、へぎ板や縫い材の根を生み出した(Photo: Public domain)。

どれほど古い道具か——鉄器時代からヴァーサ号まで

薄い木を巻いて容器をつくる技法は、たいへん古いものです。スウェーデンの百科事典ナショナルエンサイクロペディーンは、スヴェップ技法が鉄器時代から知られていたと記し、その証拠のひとつとしてノルウェーのオーセベリ(Oseberg)で出土したヴァイキング期の品を挙げています。起源をさらに古く石器時代までさかのぼるとする記述もありますが、木は腐りやすく古い実物が残りにくいため、最古の年代については諸説があると考えておくのが正確でしょう。

より確かな実物としてよく知られているのが、1628年に沈没した軍艦ヴァーサ号から引き上げられたスヴェップアスクです。ストックホルムのヴァーサ号博物館には、乗員が身のまわりの品を入れていた複数のスヴェップアスクが収められ、17世紀前半には船の中でも日用の入れ物として使われていたことを伝えています。

古い作例には、蓋の裏や枠に年号や持ち主の頭文字を記したものが少なくありません。ボロースの博物館には「ADER PÄRSON 1777」と記された箱が、北方民族博物館には花や薔薇を描いた「S A S 1830」の作例が残っています。名前と日付を刻むという習慣は、この箱が単なる入れ物ではなく、贈り物や記念の品としても大切にされてきたことを物語っています。

ヴィンテージのスヴェップアスク 経年の風合いのある古い曲げ木の箱
当店で扱った古いスヴェップアスク。長い時間を経た木肌の色と、曲げ木の継ぎ目に手仕事の跡が残る。

暮らしの中の役割——バター、旅の食料、晴れ着の箱

スヴェップアスクは、農村の暮らしのさまざまな場面で活躍しました。バターなどの食料を保存し、パンや乾いた食べ物をおさめ、衣類や装身具、小物を仕舞う——軽くて丈夫なこの箱は、まさに万能の入れ物でした。

旅や仕事に出るときには、食料を詰めた matask(食料箱)として持ち出されました。晴れ着を守る箱(färdskrin)としても使われ、大切なものを湿気や埃から守る役割を担っていました。

移動しながら暮らしたサーミの人々にとって、軽くて持ち運びやすいスヴェップ容器はとりわけ重要な家財でした。住まいであるコタ(kåta)の中では、事実上ただひとつの「家具」ともいえる存在だったと伝えられ、大人はひとりひとつ自分の容器を持っていたともいわれます。木の箱ひとつが、暮らしの土台を支えていたのです。

時代がくだると、スヴェップアスクは薄焼きパンのクネッケブロー(knäckebröd)や焼き菓子を入れる器としても親しまれるようになりました。用途を少しずつ変えながら、この箱は北欧の台所に長く生き続けてきました。

スカンセン野外博物館のスコーガホルム荘 赤い付属建物と黄色い母屋
ストックホルムの野外博物館スカンセンに移築されたスコーガホルム荘。ファールンレッドの付属屋が、かつての農村の暮らしを伝える(Photo: Chme82 / CC BY-SA 4.0)。

クルビッツ——彩色されたスヴェップアスク

スヴェップアスクの多くは、飾りのない実用の箱でした。けれども中には、鮮やかな花模様で彩られた作例があります。とりわけダーラナ地方の民俗絵画「クルビッツ(kurbits)」を描いたものは、北欧ヴィンテージの市場でも人目を引く存在です。

瓜からきた名前——ヨナ書の物語

クルビッツという言葉は、瓜やカボチャの類をさすラテン語 cucurbita に由来し、ドイツ語の Kürbis を経てスウェーデン語に入りました。スウェーデン語での初出は1538年で、1541年のグスタフ・ヴァーサ聖書の「ヨナ書」にもこの語が現れます。旧約聖書のヨナ書には、神が炎天のもとに座るヨナを日差しから守るため、その頭上に一夜で植物を生やしたという逸話があります。この植物こそがスウェーデン語聖書でいう kurbits であり、ダーラナの絵師たちが描いた、うねる茎と大きな花のモチーフの名の源になりました。

クルビッツの花文様の図案 花瓶から立ちのぼる花と葉
クルビッツの図案。花瓶から立ちのぼる花と葉が左右対称に広がる。下部に「Kurbitsen」の文字が添えられる(画:ペレ・ヘドマン、1893年/Public domain)。

ダーラナの絵付け文化——ダールマーレリ

クルビッツは、ダーラナ地方の壁画や家具を彩った民俗絵画「ダールマーレリ(dalmålning)」の中で育まれました。18〜19世紀のダーラナでは、旅の絵師たちが農家の壁いっぱいに聖書の物語や祝祭の情景を描き、その余白を花模様で満たしました。スヴェップアスクの丸い側面や蓋も、格好の画面になったのです。

ダーラナ地方の壁画 1799年 四隅にクルビッツの花文様
ダーラナ地方の壁画(1799年)。四隅にクルビッツの花文様、中央には揺りかごから墓へと向かう「人生の階段」が描かれる(画:Winter Carl Hansson/Public domain)。

「クルビッツ」という語がダーラナの花模様の呼び名として広まったのは、実は比較的あたらしいことです。百科事典は1893年にこの語がダーラナ絵画の花にあてられた例を伝え、詩人エリック・アクセル・カールフェルトが1920年代にこの言葉を作品に用いて広めたとされます。呼び名として定着したのは1930年代以降と考えられ、模様そのものの歴史と、その呼び名の歴史には少しずれがあります。

クルビッツの花文様 青と灰の葉に囲まれた中央の花
クルビッツの花文様。左右対称に広がる葉と、色づいた蕾、中央の花座。ダーラナの絵付けらしい配色(画:カール・エリック・リッデシュテット、1925年頃/Public domain)。

ダーラナの絵付けは、ノルウェーの装飾絵画ローズマリング(rosemåling)とも響き合います。いずれも花や渦巻きをのびやかに描く北欧の民俗絵画で、曲げ木の箱という同じ画面の上で、それぞれの土地らしい表情を見せてきました。クルビッツについては、当店のダーラナホース完全ガイドでも木馬の絵付けとあわせてご紹介しています。

ダーラナ絵画で飾られた部屋 壁一面の民俗画と青い椅子
ダーラナ絵画で飾られた部屋。壁いっぱいに町や人物、花模様が描かれ、赤く塗られた櫃が置かれる(Photo: Peterappelros / CC BY 3.0)。

ダーラナという土地——シリヤン湖と森のほとりで

スヴェップアスクやクルビッツを育んだダーラナ地方は、スウェーデン中部に広がる森と湖の土地です。中心には大きなシリヤン湖(Siljan)が横たわり、そのほとりに古い村々が点在しています。この風景こそが、木の箱や花模様を生んだ背景でした。

シリヤン湖 レトヴィークへ向かう湖と森の風景
ダーラナ地方のシリヤン湖。レトヴィークへ向かう湖面に、雲間から光がさす(Photo: Johan Jönsson / CC BY-SA 4.0)。

ダーラナは、スウェーデンの伝統文化がとりわけ色濃く残る土地として知られます。夏至祭には民族衣装をまとった人々が花輪を掲げて輪になって踊り、古い歌と踊りが今に受け継がれてきました。国民的画家カール・ラーションがこの地方のスンドボーンに暮らし、あたたかな家庭の情景を描いたことでも知られています。その暮らしぶりは、当店のカール・ラーションの記事でもたどっています。

レトヴィークの夏至祭 民族衣装で輪になって踊る人々
ダーラナ地方レトヴィークの夏至祭。民族衣装をまとった人々が手をつなぎ、輪になって踊る(Photo: Swedish National Heritage Board/Public domain)。

湖のほとりには、ファールンレッドに塗られた木の家が点々と建ちます。白樺が風にゆれ、夏には水辺に睡蓮が浮かぶ——こうしたおだやかな風景の中で、人々は森の木を割り、箱を巻き、花を描いてきました。ひとつのスヴェップアスクは、この土地の時間をそのまま抱いています。

ダーラナの湖畔 白樺と赤い小屋のある夏の風景
ダーラナの湖畔。白樺のそばに赤い小屋が建ち、水面に睡蓮が浮かぶ夏の一日(Photo: Public domain)。

ヘムスロイドと博物館——消えゆく手仕事を残す

19世紀の終わり、スウェーデンは急速な工業化と都市への人口移動を経験しました。手仕事でものをつくる暮らしが失われていくなかで、その技を国民の文化として書きとめ、守ろうとする動きが生まれます。それがヘムスロイド(hemslöjd=家庭手工芸)運動です。

その機運を早くから支えたひとりが、アルトゥール・ハーゼリウス(Artur Hazelius, 1833–1901)でした。ハーゼリウスは1873年にストックホルムで北方民族博物館(Nordiska museet)の礎を築き、のちに野外博物館スカンセンを開きました。農家の道具や衣装、そしてスヴェップアスクのような日用の品々を集め、暮らしまるごとを未来へ残そうとしたのです。

1870年代から民俗文化や手仕事の収集・保存に取り組んだハーゼリウスの活動は、のちのヘムスロイド運動の基盤のひとつになります。1899年にはリッリ・シッケルマン(Lilli Zickerman)の主導でFöreningen för Svensk Hemslöjdが設立され、手仕事を守り、作り手と市場を結ぶ運動が組織化されていきました。

スウェーデン手工芸協会の会合 1924年の記録写真
スウェーデン手工芸協会の会合(1924年)。手仕事を国民文化として守る組織的な動きが、各地で育っていった(Photo: F. Flodin/Public domain)。

北方民族博物館は、いまも数多くのスヴェップアスクを所蔵しています。ヴァーサ号博物館やダーラナ博物館の収蔵品ともあわせ、これらの箱はデジタルアーカイブ「デジタルトムセウム(DigitaltMuseum)」で見ることもできます。一軒の農家で使われていた木の箱が、こうして公共の記録として残されているのです。

北方民族博物館の大広間 ストックホルム
ストックホルムの北方民族博物館の大広間。ハーゼリウスが集めたスウェーデンの民衆文化を伝える(Photo: Arild Vågen / CC BY-SA 3.0)。

ヘムスロイド運動は、手仕事を「古いもの」として博物館に閉じ込めるのではなく、生きた技として次の世代に手渡すことを目指しました。ダーラナホースで知られるヌスネースの村のように、量産と伝統のあいだで揺れながらも、手仕事は今日まで続いています。スヴェップ技法もまた、学校の工作(スロイド)や工芸の現場で今なお教えられる、生きた技です。

ヘムスロイド店の看板 ダーラナホースの刺繍
ダーラナホースを刺繍したヘムスロイド店の看板。1930年代半ばのもので、手工芸のつくり手と暮らしを結んできた(Photo: Holger.Ellgaard / CC BY-SA 4.0)。

日本の曲げわっぱとの響き合い

薄い木を曲げて器や箱をつくる手わざは、じつは日本にもあります。秋田の曲げわっぱをはじめとする曲げ物は、薄い杉やヒノキの板を曲げ、樺(かば)などで縫いとめてつくられます。接着剤に頼らず、木そのもののしなやかさを生かすという発想は、スヴェップアスクと驚くほどよく似ています。

日本では、名もなき職人がつくった日用の器の美しさを見出した柳宗悦(やなぎ むねよし)らの民藝運動が、20世紀前半に大きな流れをつくりました。暮らしの道具に宿る簡素な美を尊ぶこの感覚は、ヘムスロイドが手仕事に見た価値と、どこかで通じ合っています。両者に直接の影響関係が確かめられているわけではありませんが、離れた土地で同じころに、人々が手仕事の美へ目を向けたことは印象的です。

余白を生かし、素材の声を聞き、簡素であることをよしとする——こうした美意識については、当店の北欧食器の価値とはの記事でも掘り下げています。スヴェップアスクの丸みと木肌に、日本の曲げ物と響き合うものを感じる方も多いのではないでしょうか。

当店のスヴェップアスク

当店では、ダーラナ地方のクルビッツで彩られたスヴェップアスクをお届けしています。赤い地に黄色い花と青い花芯、黒い葉が伸びやかに描かれ、蓋には小さなアーチ形の持ち手、両脇には立ち耳がつく——ダーラナの絵付け文化をそのまま写したような一点です。

ヴィンテージ スヴェップアスク 赤地にクルビッツの花文様 スウェーデンの曲げ木の箱
赤地にクルビッツの花文様を描いたヴィンテージのスヴェップアスク。立ち耳と小さな持ち手のついた伝統的な形。

曲げ木の側面には花模様が描かれ、木肌には時代を経た北欧ヴィンテージらしい落ち着きがあります。棚の上や飾り棚の一角に置けば、北欧の農村の手仕事を思わせる静かな存在感を添えてくれます。詳しくは商品ページヴィンテージ スヴェップアスク(Svepask)赤地×クルビッツ 曲げ木容器をご覧ください。

スヴェップアスク 木のお弁当箱 小物入れ
木を巻いてつくられたスヴェップアスク。小物入れとして棚に置いても、北欧の手仕事の気配が漂う。

まとめ

要点の整理

  • スヴェップアスクは、薄い木を曲げて縫いとめる「スヴェップ技法」でつくる箱で、名前は「巻く(svepa)+箱(ask)」に由来します
  • 木は割り出して湯や蒸気でやわらげ、伝統的には木の根や羽軸などを使って重なりを縫いとめます
  • 材や作りには南北で違いがあり、白樺・松・ヤマナラシなど、その土地の森の木が使われました
  • 巻き技法は鉄器時代から知られ、ヴァーサ号からも複数の実物が見つかっています
  • ダーラナのクルビッツで彩られた作例は、絵付け文化とヘムスロイド運動の記憶を今に伝えます

ひとつのスヴェップアスクには、森の木、手を動かした職人、花を描いた絵師、そしてそれを守り伝えた人々の時間が重なっています。木を巻いてつくられた小さな箱を通して、北欧の暮らしと手仕事の風景を感じていただけたら幸いです。

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参考資料:Nationalencyklopedin「svepkärl」「kurbits」/スウェーデン語版Wikipedia「Svepask」「Svepteknik」/Hemslöjdsguiden「Svep」/Svenska Akademiens ordbok(SAOB)「svepa」/DigitaltMuseum(Nordiska museet, Vasamuseet, Borås museum 収蔵記録)。

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