早熟の天才リサ・ラーソン - 北欧食器Tacksamycket

早熟の天才リサ・ラーソン

リサ・ラーソンは1931年9月9日にスウェーデン南部のスモーランド地方に生まれました。クロノベリ(Kronoberg)郡エルムフルト(Älmhult)地区にあるハールンダ(Härlunda)という人口500人ほどの小さな村の出身です。

リサ・ラーソンは最初服飾デザイナーを志しますが、南西部の港町ヨーテボリの芸術大学に入学した後は陶芸を学んでいます。在学中にフィンランドのヘルシンキで開催されたコンペに出展することがありました。たまたま来場していたスティグ・リンドベリに見い出されたことがきっかけとなり、老舗陶器メーカーのグスタフスベリ社に見習いとして入社しました。出展した作品はしっぽがピーンと立った小さなネコの陶器像で、のちのLilla Zooシリーズへと繋がっています。

スティグ・リンドベリは20世紀のスウェーデンを代表するモダンアートの巨匠です。緑色の葉っぱ柄が連続するベルサ(Berså)の意匠などで知られています。リンドベリは今までにない斬新なデザインかつ大量生産できるような作品を追い求めており、若手のデザイナーたちにグスタフスベリで1年間自由に創作をさせるという実験的な企画をしていました。リサ・ラーソンは当時すでに結婚してヨーテボリに夫と暮らしていましたが、1954年にストックホルムに引っ越す決意をします。リサが23歳のときでした。

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(創業当時のグスタフスベリ)

グスタフスベリはストックホルム東部郊外の地名で、グスタフスベリ社は1825年から操業しています。創業者の名前がグスタフで当地で産地とする土で陶器を製造していたため、ベリ(焼き物の土が取れる山)という意味でグスタフスベリと呼ばれるようになりました。同社は運河に面しており、水運を利用をして商品を出荷していました。そのためグスタフスベリ社のマークには船のいかりが描かれています。

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(グスタフスベリの社章)

リサ・ラーソンが入った工房は若手の陶芸デザイナーにとって理想的なものでした。専用の陶土、釉薬、窯などが完備されており創作活動に没頭することができる環境でした。リサはプロジェクトに参加した翌1954年に正式にグスタフスベリに入社しています。動物たちをモチーフにしたStora ZooシリーズやABCガールで有名なABC-Flickorシリーズもこの直後に作られたものです。

stig lindberg

(写真中央:工房で監修を行うスティグ・リンドベリ)

また、当時はウィルヘルム・コーゲ(Wilhelm Kåge)がグスタフスベリに在籍していました。コーゲは20世紀スウェーデンのミッドセンチュリーと呼ばれる黄金期の伝説的なデザイナーです。前述のスティグ・リンドベリの師にあたり、緊張感のある芸術的な作品を多く生み出した伝統と革新の転換点に位置する人物でした。コーゲは1956年に日本に旅行し、日本の焼き物を多くスウェーデンに持ち帰っています。

willhelm kage & stig lindberg

(写真左:ウィルヘルム・コーゲ)

社内では各国の陶器を題材に毎週のようにワークショップ(勉強会)が開催されていたようです。リサ・ラーソンの作風が日本人にとって親しみを感じるのは決して偶然ではなく、この当時に日本の陶器にふれたことが彼女のインスピレーションに影響を与えた側面もあると思います。

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(スティグ・リンドベリとリサ・ラーソン)

○20代までのリサ・ラーソン略歴

・1931年 スモーランド地方に生まれる

・1948年 大学入学

・1952年 グンナー・ラーソンと結婚

・1953年 グスタフスベリ社に入る

・1955年 Lilla Zoo(小さな動物園)製作

・1957年 Stora Zoo(大きな動物園)製作

・1958年 ABC-Flickor(ABCガールズ)、Skulpturer(彫刻)製作

・1959年 Granada(グラナダ)製作

granada

(グラナダシリーズの大皿)

・1960年 Harlekin(ハーレキン)製作

・1961年 UNIKシリーズを製作

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(UNIKシリーズの一つ、ひまわりの陶板)

これらの業績を見ても20代の頃に創作の下地が完成していたことが伝わってきます。若手で無名のデザイナーであったリサ・ラーソンの才能を見出し世界的なアーティストに押し上げたスティグ・リンドベリの目利きはやはり間違っていませんでした。

リサ・ラーソンの作品は陶器像が多いですが、30代、40代には創作の幅を広げ、食器のデザイン等も担当しています。早熟かつ息の長い創作活動をおこなってきたリサ・ラーソン。当店では彼女の多くの作品を取り揃えております。この機会にぜひ当店HPのリサ・ラーソンのコレクションをご覧ください。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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