スティグ・リンドベリ(Stig Lindberg)がグスタフスベリ(Gustavsberg)でデザインした「ピンタ(Pynta)」シリーズのペッパーシェイカー(大)です。大きめのシェイカーです。胡椒を入れる卓上の容れ物として作られました。
ピンタは、瓶・魚・りんご・フォーク・コーヒーカップ・ぶどう・レモンなど、食卓まわりの小さなモチーフを多色で散らした、遊び心あふれる絵柄が特徴です。一点ごとに描かれるモチーフが異なります。なお「Pynta」はスウェーデン語で「飾る・装う」を意味します。
1962年に発表されましたが、当時のスウェーデン市場には前衛的すぎたためか数年で生産が終了した短命のシリーズで、現存数が少なくコレクターに人気があります。素材はフリント陶器(白雲石質の硬質陶器)で、絵柄は転写(クロモリトグラフ)によって表現されています。
スティグ・リンドベリ(Stig Lindberg)について
スティグ・リンドベリ(1916-1982)は、スウェーデンを代表する陶芸家・デザイナーです。グスタフスベリのアートディレクターとして、ベルサ(Bersa)やプルーヌス(Prunus)など数々の名作を世に送り出しました。ピンタは、彼がコンストファック(Konstfack)で教鞭をとっていた時期に手がけた、ユーモラスで実験的なデザインです。
なぜ短命に終わったのか(考察)
ピンタが姿を消したのは1965年頃で、オイルショック(1973〜74年)によって多くの北欧食器が市場から失われた時期よりも、かなり前のことでした。つまりピンタの終売は、時代の経済的な事情というより、このシリーズ自身に理由があったと考えられます。以下は推測を含みます。
ひとつは、当時のスウェーデン市場には絵柄が前衛的すぎたという見方です。食卓の小物を脈絡なく散らした多色のユーモアは、のちの1960年代後半のポップでキャンプ的な感覚を先取りしており、発表当時は受け入れられにくかったとされています。
もうひとつ、技術面からの推測があります。ピンタの華やかな多色の絵柄は転写によるものですが、この複雑な多色の転写は、単色の連続柄(ベルサ等)に比べて経年で退色・摩耗しやすかったと考えられます。デザイン・作品としては卓越していた一方で、日々使う食器としての絵柄の永続性には課題があり、それが短命に終わった一因ではないか、という見立てです。実際、現存するピンタの多くは退色が進んでおり、本品のように色の鮮やかさを保った個体が少ないことも、この推測と整合します。
いずれも確定した記録ではなく推測を含みますが、「作品としての完成度の高さ」と「食器としてのはかなさ」が同居しているところに、ピンタという短命シリーズの魅力があるといえます。
■詳細スペック
- メーカー:Gustavsberg / グスタフスベリ
- デザイナー:Stig Lindberg / スティグ・リンドベリ
- シリーズ名:Pynta / ピンタ
- 絵柄:食卓まわりの小さなモチーフを散らした多色柄(転写)
- 年代:1960年代(1962〜1965年)
- 製造国:スウェーデン
- 素材:フリント陶器(白雲石質の硬質陶器)
- サイズ:高さ約19.3cm 幅約6cm
- 刻印:底面に「Gustavsberg/Pynta/Sweden」の窯印。底面にはオリジナルのゴム栓(グスタフスベリのマーク入り)が残っています
■コンディション:★★★★★(5:完品)
割れ・欠け・修復はなく、製造時のコンディションをそのまま留めた完品です。ピンタは絵柄が転写のため経年で退色しやすいシリーズですが、本品は色の鮮やかさをよく保っています。短命で生産数の少なかったシリーズであることを考え合わせると、これほど良好な状態で残っているのは奇跡的といえます。底面にはオリジナルのゴム栓(グスタフスベリのマーク入り)が付属します。








